2019年3月に配信が始まったものの、直後に問題が見つかり約8ヵ月間に及ぶ改修が行われた後にサービスを開始した『魔界戦記ディスガイアRPG』。サービス開始からまもなく1周年だが、この1年は運営にあたって苦労も多かったことだろう。
インタビューでは、日本一ソフトウェアの新川宗平氏とフォワードワークスの川口智基氏と1年の思い出を振り返るとともに、現在実施中の1周年前夜祭や、今後の展開についても語っていただいた。
新川宗平氏(にいかわそうへい)
日本一ソフトウェア代表取締役社長。文中は新川。
川口智基氏(かわぐちともき)
フォワードワークスエグゼクティブディレクター。文中は川口。
トラブルを乗り越えて迎えた1周年
――まず『魔界戦記ディスガイアRPG』の開発経緯について教えてください。
川口もともと私はソニー・インタラクティブエンターテインメントに在籍していたのですが、その当時から日本一ソフトウェアさんとご縁がありまして。いまから20年以上ほど前から新川社長とはさまざまなタイトルでお仕事をごいっしょさせていただいていたんですよ。
それから月日が経ち、2016年にフォワードワークスを立ち上げ、スマートフォン向けのゲームを展開していくことを新川社長にお伝えしたところ、「何かおもしろいことをやりましょう!」とご提案いただき、開発が決まりました。
――おふたりのかなり長い付き合いなのですね。その20年以上前からの関係が『魔界戦記ディスガイアRPG』の開発につながったと。
川口そうなんです。じつは、私がゲーム業界で働き始めて、スタッフロールに名前が載った初めてのタイトルも、日本一ソフトウェアさんの『リトルプリンセス マール王国の人形姫2』なんですよ。
新川それは知らなかった……(笑)。
――新川さんも知らなかった川口さんの過去が明らかに(笑)。開発が始まってからはどのようなことを意識していたのでしょうか?
川口コンシューマータイトルは腰を据えてプレイするのが一般的ですが、スマートフォンではユーザーさんによって遊びかたが異なります。
そのため、『魔界戦記ディスガイアRPG』ではより多くの方に楽しんでいただけるよう、短時間でも気軽に遊べるようなシステムをふんだんに盛り込む方向で開発しました。
新川私が意識したのは、ゲーム画面を縦にすることですね。スマートフォンアプリだと、通勤時間などの空き時間にプレイする方が多いと思うのですが、そういった時間に片手でも遊べるようにと、縦画面でのプレイにはこだわりました。
――コマンドバトル式になっているのも『魔界戦記ディスガイアRPG』ならではですよね。
新川『魔界戦記ディスガイア』シリーズはシミュレーションRPGなので、ひとつのバトルをじっくり遊んでいただく作りのゲームなんです。
ただ、スマートフォンで遊ぶことを想定するならば手軽さを強みにしていきたいと考え、『魔界戦記ディスガイアRPG』では、早い段階からコマンドバトル式のRPGとして開発することを決定しました。
そもそも『ディスガイア』シリーズはキャラクターをとことん育成できることがもっとも重要な要素だと思っているので、『ディスガイアRPG』でも育成システムにかなり力を入れてきました。
――多くのシリーズファンに受け入れられているので、その判断は正しかったのではないでしょうか。2020年11月27日には1周年を迎えますが、現在の率直な感想をお聞かせください。
川口ふつう、こういったインタビューでは「あっという間だった」という言葉を目にすることが多いですが、私としてはとにかく長く感じる1年でした……(苦笑)。
新川わかります(笑)。
川口長かったですよね。昨年3月に一度アプリをリリースしたのですが、ユーザーさんにはたいへん申し訳ないことに、こちらのトラブルでプレイしていただけない状況に陥ってしまいました。それから長期メンテナンスを行い、昨年11月にようやくサービスが開始しまして。
これまでの道のりは長く苦労も多かった印象がありますが、ユーザーさんが楽しくプレイしてくださっていることには感謝しかありません。
新川私もこんな産みの苦しみは初めてで、当時は各所にご迷惑をおかけして申し訳ない気持ちでいっぱいでした。サービス開始を待ってくださっていただいたユーザーさんや、いまでも遊んでくださっているユーザーさんに本当に感謝しています。
――これまでの『魔界戦記ディスガイアRPG』の運営の中で心掛けてきたことはありますか?
川口ユーザーの方々からのご意見などを参考にしながら、問題点をいち早く改善していくのを心掛けて運営してきました。あとは公式の生放送などの場を活用して、タイムリーに最新情報などの発信も行ってきましたね。そういった取り組みは引き続き行っていきたいと思っています。
新川日本一ソフトウェアとしては、新規キャラクターの提案であったり、シナリオテキストの制作も行っています。せっかくスマートフォンで『魔界戦記ディスガイア』を遊んでいただくからには、そこでしか味わえないような体験を実現することを心掛けてきました。ナンバリングを越えたキャラクターどうしの掛け合いや季節感のある特別な衣装など、アプリならではの要素を取入れることはとくに意識していますね。
――アプリならではというと、『魔界戦記ディスガイアRPG』のメインストーリーにディエス、ルーシー、虎千代の3人のオリジナルキャラクターが登場したことには驚きました。
新川第1部では歴代シリーズのキャラクターたちがストーリーを盛り上げてくれましたが、第2部を開始するにあたって、「せっかくだから『魔界戦記ディスガイアRPG』だけのオリジナルキャラクターをメインストーリーに登場させよう」という話になりまして。第2部にはあえて、メインストーリーの中に3人のオリジナルキャラクターを出演させました。
――ユーザーからの反響も大きかったのではないでしょうか。
川口オリジナルキャラクターを登場させたことは、1年を通して反響が大きかった出来事のひとつでした。「オリジナルキャラクターも出るんだ!」と驚かれていたり、すぐに3人を好きになってくださったりと、受け入れていただけたようでうれしかったですね。
新川本編に見知らぬキャラクターが突然出てきたことで、戸惑いを感じた人もいたかもしれませんが、今後物語を展開させていく中で、オリジナルキャラクターは出すべきだと考えていました。
アプリならではのキャラクターが活躍するのも大事なポイントだと思っているので、これからもチャンスがあれば新たにキャラクターを登場させていきたいですね。
――『魔界戦記ディスガイア』シリーズでは、歴代キャラクターがなんらかの形で仲間になりますが、『魔界戦記ディスガイアRPG』のキャラクターがコンシューマー版に登場することは……?
新川それが『6』のタイミングになるかどうかわかりませんが、人気次第でコンシューマー版でも実装したいですね。そのような動きはあってもいいのではないかと思っています。
――楽しみにしています! これまでアプリを運営している中で、とくに思い出に残っているイベントやキャンペーンを教えてください。
川口今年の3月に実施した“大反省祭”ですね。一度リリースしたものの延期してしまい、それからちょうど1年のタイミングが今年の3月でして。本来サービスが開始しているところ、ユーザーさんの期待を裏切る形になってしまったので、その出来事をつねに忘れず、それでも明るく楽しく前に向かい、応援してくださった方々へ感謝の気持ちを込めたキャンペーンとして開催しました。正直ネーミングはかなり悩みましたけど。
もちろん、我々も明るく楽しく前に向かっていきたいと思っていますが、やはり心のうちに留めておく必要は感じていますので。これからも、毎年3月には必ず“大反省祭”を開催していきたいですね。
新川日本一ソフトウェアとして挙げるとするならばアサギ(※)が登場した“脱出不可能!?ディスガイア・ウォーズ(仮)”ですね。これまで通り、アサギがただ出てくるだけではなくて、まったく容姿の異なる“世紀末魔王アサギ”と“クリエイターアサギ”もお披露目できたのはうれしかったです。
※アサギ:2005年に発売された日本一ソフトウェアの『ファントム・キングダム』内に“次回作の主人公”として登場してから、その後も数々の作品で“次回作の主人公”として扱われていたが、アプリゲーム『魔界ウォーズ』で念願の主人公デビューを果たす。
発売前の『魔界戦記ディスガイア6』が魔界史回想で先行体験!
――発売前のタイトルが登場するというところで、ユーザーからすると『魔界戦記ディスガイア6』(以下、『6』)関連のイベントは思い出に残るものになりそうですね。
川口『魔界戦記ディスガイアRPG』はシリーズと密接に関わりながら展開しているのですが、私自身、まさか最新作を発売前にユーザーさんに触れていただけるとは想像していませんでした。
新川発売を待っていただいているファンの皆様に喜んでいただけるのではないかと思いご提案しました。“魔界史回想”ではひと足早く『6』の世界の一部を楽しめるようになっています。そこで『6』に興味を持たれた方は、ぜひ発売後に本編を遊んでみてください!
川口私たちの実現したかったことでもあったので、このタイミングで『6』とコラボできたことは素直にうれしかったです(笑)。
――そういえば、『6』には『魔界戦記ディスガイアRPG』でも採用されているバトルの倍速やオート機能が採り入れられていますよね。
新川そうですね。倍速バトルや同じステージの周回プレイ、オートバトルなどは『6』でも採用しています。あのスムーズな戦闘を一度体験してしまったら、ユーザーさんは「なぜ『6』にはないのか」と思うじゃないですか。
今後もコンシューマー版とスマートフォン版で、相互補完し合いながら成長できるコンテンツを提供できればと考えています。
――前夜祭だけでもたくさんのイベントが実施されますが、1周年記念イベントはどのような内容になるのでしょうか……?
川口はい。まだお伝えできることは少ないのですが、キャンペーンやイベントが盛りだくさんな1周年になっていることはお伝えしておきます。
1周年では、タイトルの記念すべき節目にふさわしい、ちょっと洒落込んだキャラクターも登場しますので、そのあたりも期待していただければと思います!
――魔晶石を貯めておいたほうがよさそうですね(笑)。今後のアップデート内容についてほかにお聞きできることはありますか?
川口先日、キャラクターを育成できる上限をレベル7900からレベル9999に解放したことでユーザーさんから「レベル9999まで育てたら、今後はどうなるのか」と意見をいただいていますが、育成したキャラクターで挑む新たなコンテンツも用意する予定です。
まずは各種キャンペーンやイベントを活用してレベル9999を目指してもらいつつ、キャラクターの育成を楽しんでいただきたいです。
さらに、魔界つながりのタイトルとのアプリ外でのプロモーション企画なども裏で着々と進めているので、楽しみにお待ちしていただければと思います。
新川私としては、今後『ディスガイアRPG』を運営する中で、シリーズ未経験の方が初めて『ディスガイア』に触れる“入り口”として、そしてシリーズファンが落ち着く“帰る場所”として機能するようなアプリにしていきたいと考えています。
ユーザーさんの期待に応えられるよう、フォワードワークスさんと手を取り合って開発を進めていくのでよろしくお願いいたします。