ユービーアイソフトが2020年11月10日に発売する『アサシン クリード ヴァルハラ』は、9世紀の北欧をヴァイキングの戦士エイヴォルとともに生き抜くオープンワールドRPG。プレイステーション5とXbox Series X/Sでプレイできるほか、現行機でも発売される。
本稿では、『アサシン クリード オデッセイ』に続くシリーズ最新作のプレイレビューを掲載。前作『オデッセイ』をトロフィーコンプリートまでやり込んだライターが本作の遊び心地、操作感などを解説していく。端的に言うと、『オデッセイ』を楽しめた人なら絶対に買い。男なら、いや、女でも血湧き肉躍るヴァイキング体験に胸を熱くさせられるはず。俺たちに流れるヴァイキングの血がそうさせる(たぶん流れてないけど)!
『オデッセイ』をさらに研磨したのが『ヴァルハラ』だ!
前述のとおり、本作は、9世紀の北欧を舞台とした『アサシン クリード』シリーズ最新作。主人公は、幼いころに故郷を襲撃された過去を持つエイヴォル。それから17年の時が経ち、屈強な戦士となったエイヴォルは、故郷と両親を奪った仇を討つために立ち上がる……というのがプロローグとなっている。
その後、ストーリーが進むと、さらなる地イングランドに仲間とともに旅立つ。イングランドはいまだ多くの戦いが続く群雄割拠の地となっており、この地を征服するのが目標になる。
ゲームシステムは、『オデッセイ』から続くオープンワールドRPGの要素をさらに磨き上げた内容になっている。序盤こそエイヴォルは弱く、できるアクションも少ないが、敵を倒し、クエストをこなし、各地に眠る財宝を探し当てることで少しずつ強くなっていく。
キャラクターの経験値が最大まで溜まると、スキルポイントを獲得。このポイントはスキルの解放に使用できる。スキルには攻撃力や体力が上がるもの、攻撃アクションを覚えるものなど、種類はさまざま。メニューはスキルツリー形式になっているので、自分の好きなバトルスタイルに合わせて能力を伸ばすことができる。
インベントリでは、体の各所に装備をセットできる。装備は素材を集めることで強化できるほか、特殊な能力を付与させる“ルーン”をつける要素も登場している。
最初に手にする武器は、剣ではなくて斧! だってヴァイキングだもの。
なお、本作での体力を回復するアクションは、ストックしてある食料を消費して行うスタイルになった。食料は道や町中に落ちているので、拾ってモグモグしよう。
ジャパニーズスタイルのRPGとは異なり、レベルが上がるとドーンと強くなるのではなく、スキルや装備品を集め、コツコツと強くなっていくのが特徴。アドレナリン(ゲージのようなもの)を消費するアビリティは、各地に眠る財宝である“知識の本”を入手することで習得できる。
地道ながらも、確実に少しずつ強くなれる感覚が味わえるのがこういったタイプのRPGの醍醐味。メインではないサブのクエストをクリアーしても経験値が獲得できる。また、各地に眠る財宝を集めれば、装備やアビリティが強化される。メインシナリオを読み進めたくもなるが、キャラクターを強化したいがためについつい寄り道をしたくなるのは、『オデッセイ』でも味わえたゲームの魅力だ。
また、これは前作『オデッセイ』からも感じたことだが、本作には隠された要素を視覚的に見つけやすくなるシステムが複数導入されており、それ以前のシリーズ作品と比べ、親切さが増している。
たとえば、“オーディンの眼”を使用すると、周囲にあるアイテムや敵キャラクターが発見できる。フィールドには拾えるアイテムが非常に多く散らばっているが、これを使えば周囲に何があるのかが楽にチェックできる。
さらに、上空に飛ぶカラスの視点からフィールドを見渡すことも可能。わざわざ近くに移動しなくても、離れた位置に何があるのかを確認できる。
ワールドマップを調べると、プレイヤーが移動した場所が明らかになるほか、隠し要素のだいたいの場所が自動的に記される。隠し要素の近くまで行ってからオーディンの眼を使えば、さらに詳細な場所を調べることが可能だ。
広大なマップを自由に探索できるのがオープンワールドゲームの醍醐味だが、隠し要素をコンプリートするためにすべての地を巡るのはかなり時間を要する。「収集欲は満たしたいけど、それほど時間をかけたくない」という悩みにバッチリ答えてくれる親切設計だ。
ちなみに、町やエイヴォルが“シンクロ”したポイントにファストトラベルする機能は、もちろん本作でも搭載。プレイステーション5でのプレイならば、移動中のロードもかなりの短さに。「一瞬でロードが完了した」……と書くと言い過ぎになるが、そう書きたくなるほど、これまでオープンワールドゲームをプレイしてきた人が遊ぶと、そのロードの早さには必ず驚かされるだろう。
プレイステーション5では、DualSenseのコントローラのハプティックフィードバックにも対応しており、一部のシチュエーションではリアルな振動がコントローラから返ってくる。筆者がいちばん感じたのは、水面に飛び込んだ瞬間だ。
飛び込んだときに体に水がぶつかる感触。泡が体を伝って水面に向かう感触。そういった感覚が両手から伝わってきた瞬間は、かなりの驚きを感じた。もう一度体感するため、わざわざもう一度水面に飛び込んでみたのは内緒だ。
そのほか、馬や船に乗っているときに自動で目的地まで移動してくれる機能など、『オデッセイ』で好評だった要素はいずれも搭載されていてうれしい限り。オープンワールドゲームならではのプレイを縁の下からサポートしてくれる数々のシステムで、ストレスなく自由なヴァイキング生活が楽しめるはずだ。
このほか、仲間とともに港近隣の施設を襲撃したり、拠点となる場所を拡充する新要素も登場。本作の主人公はヴァイキングなので、多くの野郎どもを従えて船に乗り込むことができる。停船できる場所の近くに敵の拠点があれば、仲間たちとともに襲撃することが可能。ここでは、前作にはなかった多対多のバトルという形になる。
襲撃した拠点からは、拠点を拡充するための資源が手に入ることも。拠点を広げると鍛冶屋や交易所が利用できるようになるため、遠征がしやすく。
イングランドの地では、先住民たちを倒したり、同盟を結んだりして名声を高めていく。すべての地を巡ったエイヴォルには、いったいどのような運命が待ち受けているのか。どんどん先へ進んでみたくなるが、上に書いたように寄り道したくなる要素も膨大なので、なかなかストーリーが進まないといううれしい悩みも生まれそう。
ワールドマップの場所を調べると、そこをクリアーするのに必要な戦力(プレイヤーの強さ)が表示される。戦力が追いつくまでサブクエストを楽しんでキャラクターを育成し、十分強くなったらストーリーのシナリオに挑戦するという順序を進めかたの基本にするとよさそうだ。
個人的には“口論詩”にかなり注目している。
これは出現する選択肢からひとつを選んで相手と交互に言葉を放ち、相手を打ち負かせば勝利となるミニゲームだ。要するに、レスバトルで論破すれば勝ち。ラップバトルのように“うまいこと”を言っているワードを選ぶことが重要だ。このレスバトル、もとい口論をするゲームシステムは、前作『オデッセイ』にも登場。なんと、かの有名なソクラテスともレスバトルできるというレスバトラー垂涎の要素だった。人によってはなんてことない要素だと思うが、『オデッセイ』のソクラテスは本当に性格の悪い返しをしてくる奴でして。歴史では奴は死刑となったと伝えられているが、その理由も納得がいくほど……と、ソクラテスの悪口は本作とは関係ないのでこのへんにしておく。
話が逸れてしまったが、筆者にはそんな思い出のある口論詩。ユーモラスな悪口の応酬には、大の大人が何をやってるんだと思いながらついついやってしまう内容となっている。序盤のキャラクターこそまだやさしい口論になるが、前作のソクラテスのことを考えると、この先どんなやつとレスバトルができるのかと期待が膨らむ……のは筆者だけだろうか(笑)。この口論詩の存在も、筆者が本作を進めたくなるモチベーションになっていると言っても過言ではない。いや、過言だった。
『ヴァルハラ』はそう、美しいのだ
本作の魅力を語るうえで、ワールドマップの美しさにも触れておきたい。舞台となる北欧の地には、まだ人間の手が及んでいないきびしくも美しい自然が存在している。海の表現、空の表現、自然豊かな大地の表現などは、思わず写真に残しておきたくなるような美しさだ(もちろんフォトモードもある)。
高速移動できるようになるシンクロのポイントは、高所に設置されていることが多い。シンクロ中は下のような視点になり、周囲の大自然を思う存分楽しむことができる。この演出は前作にも登場。個人的にかなり好きだった演出なので、引き継がれていて非常にうれしい!
船での移動中は、水面の表現や空の表現を一度に楽しめる。目的地では激しい戦闘が待つので、ヴァイキングたちの歌を楽しみつつ、一時の平和を満喫するといいだろう。
シリーズ経験者はもちろんオープンワールド入門にもオススメ!
『アサシン クリード オリジンズ』から『オデッセイ』へと脈々と受け継がれてきたユービーアイソフトのオープンワールドRPGのDNAは、いままさに『ヴァルハラ』へと受け継がれ、いよいよ花開いた。
『オデッセイ』をプレイしていた当時も、「これほど完成されたオープンワールドゲームはない!」と思ったほどだが、『ヴァルハラ』ではそれを大きく超えるほどのポテンシャルを感じさせてくれている。ゲームシステム、映像美、アクションの爽快感。どれを取ってもシリーズ最高のできばえだと、自信を持ってお伝えしたい。
『オデッセイ』を楽しめた人ならもちろん楽しめるし、次世代機で遊べるRPGを探しているという人は、ぜひ本作をプレイしていただきたい。
前述のとおり、プレイの手助けをしてくれるシステムが満載で、プレイに迷うことはほぼない。バトルで倒れてもオートセーブ機能のおかげで倒れた直前からプレイを再開できるので、うっかり強敵に挑んでしまっても安心だ。オープンワールドゲームとしての自由度も非常に高く、このジャンルの入門作としても最適だ。
ぜひ、はるかなる北欧の地にて、ヴァイキングのサーガを奏でてほしい。
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