日本ファルコムの名作アクションRPG『イース』シリーズの始まりの物語を描いた『イース・オリジン』。2006年にPC版がリリースされた本作は、『I』・『II』の時代から700年前の、古代イース王国が天空に上がった時代を舞台とした、前日譚を描くタイトルとなっている。見習い騎士の少女、若き天才魔道士、恐るべき魔人と化す力を持つ謎の男の3人が、それぞれ異なる戦術を駆使して、多数の魔物がはびこる“塔”を冒険していくことになる。
そんな『イース・オリジン』が、現行機で蘇ることになった。同作を手掛けるのは、フランスのパブリッシャーであるDotEmu。DotEmuというと、往年のタイトルを現行のプラットフォームに積極的に移植していることでおなじみ。最近では、26年ぶりとなる最新作『ベア・ナックルIV』を共同開発したことでも話題を集めた。DotEmuでは、『イース・オリジン』を2017年にプレイステーション Vitaとプレイステーション4向けに、2018年にはXbox One向けにそれぞれ配信。そして2020年にNintendo Switch版を発売することになる。
DotEmuはなぜ、『イース・オリジン』を現在に蘇らせることにしたのか。DotEmuの最高経営責任者(CEO)のシリル・アンベール氏にメールインタビューという形で疑問に答えていただいた。合わせて、オリジナルを手掛ける日本ファルコム 代表取締役 近藤季洋氏にもコメントをいただいているので、チェックされたし。
なお、パッケージ版『イース・オリジン スペシャルエディション』は、Nintendo Switchとプレイステーション4向けに3gooより2020年10月1日に発売予定だ。こちらは、ゲーム本編にオリジナルサウンドトラックCDとスペシャルディションアートブック(72ページ)、オリジナルポスターが同梱された、特製レトロサイズボックス仕様のパッケージとなっている。
『イース・オリジン スペシャルエディション』(Switch)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『イース・オリジン スペシャルエディション』(PS4)の購入はこちら (Amazon.co.jp)高い評価を得ている本作を、世界中の人にもっと知ってほしかった
DotEmu 最高経営責任者(CEO)シリル・アンベール氏
――レトロゲームの現行プラットフォームへの移植を、オリジナル版制作者とのコラボレーションにより展開することに定評のあるDotemuですが、『イース・オリジン』に白羽の矢を当てたのはなぜですか?
シリル ありがとうございます! 私を含むチームのメンバーのほとんどがもともと日本製のRPGに精通していますし、『イース』シリーズの開発実績を有していることから、我々にとっても『イース』は数多くあるJRPGの中でも特別な立ち位置にある作品です。中でも『イース・オリジン』はシリーズの中でも高い評価を得ているエピソードのひとつであり、ユニークな作品でもありますから、世界中でもっと多くの人々に知ってもらいたいと思っていました。
『イース・オリジン』については、すでにプレイステーション4、Xbox One、およびPS Vita版への移植の実績がありましたので、Nintendo Switchに移植することはつぎなるステップのひとつでした。このゲームに対する私たちの愛をさらに多くの人たちと共有するもうひとつの方法が、Nintendo Switch版の開発だったということです。
――日本ファルコムさんへのイメージと、実際にコラボレーションしてみての感想を教えてください。
シリル 日本ファルコムとのコラボレーションは本当にスムーズに進みました。『イースI クロニクルズ』、『イースII クロニクルズ』の開発においても、私たちを信頼して任せてくれたことを本当に感謝しています。日本ファルコムは非常に独特な、ユニークな会社です。素晴らしいストーリーとゲーム体験。日本製のARPGを、とてもピュアに創り出している会社だと思います。
――Nintendo Switch版への移植にあたって注力したポイントを教えてください。
シリル ゲーム自体は2006年のものですし、私たちもこの作品には2016年から取り組んでいるので、ゲームのコードについては十分に知り尽くしていました。また、Nintendo Switchへの移植にも精通していますから、それほど大きな苦労というのはありませんでした。強いてあげるとすれば、PS Vitaへの移植のときがいちばんチャレンジングだったかもしれません。しかしSwitchはよりパワフルなハードなので、問題なく完成させることができました。
とはいえ、Nintendo Switch版への移植において、パフォーマンスの再現はつねに課題です。私たちの目標も、プレイステーション4やXbox Oneとまったく同じように再現することでした。
――パッケージ版の発売もアナウンスされました。パッケージへの期待を聞かせてください。
シリル 米国、ヨーロッパ、日本のパートナー各社は、『イース・オリジン』のNintendo Switch版パッケージをじつにユニークな、コレクターズエディションのようなスタイルで販売するために一生懸命取り組んでくれています。私たちも実物を手にする日を心待ちにしていますし、みなさまにもぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
――最後に、発売を心待ちにしているファンのみなさんへのメッセージをお願いします。
シリル みなさんのサポートのおかげで、私たちはまもなく、日本の最高のARPGのひとつをNintendo Switchにもたらすことができます。このような素晴らしいプロジェクトに取り組み、世界中の人々と共有することを受け入れてくれた日本ファルコムに感謝しています。ということで、“塔”でお会いしましょう!
本作が日の目を見ることができてうれしい
日本ファルコム CEO 近藤季洋氏
――『イース・オリジン』Nintendo Switchへの移植と、パッケージ版『イース・オリジン スペシャルエディション』の発売に関して、ご感想をお聞かせください。
近藤 『イース・オリジン』はもう十年以上前に制作したスピンオフ作品であるにも関わらず、こうしてDotEmu様のおかげで長期間さまざまなプラットフォームに広がり続けているということに、私たち自身も驚いています。『イース・オリジン』は発売当時、商業的に大成功とは言い難いタイトルでした。ただ限られた条件の中で恥ずかしくないものを創ったと、胸の張れるタイトルでもあります。それだけに日の目を見ることができてうれしいですね。
――周囲の反響などは感じていますか?
近藤 10年以上前に開発したタイトルがほぼそのままで何度も発売されることには、周囲によく驚かれます。
――DotEmuからのラブコールを受けたときの正直な感想は?
近藤 また『イース・オリジン』をやってくれるのかと驚きました。本当にありがたいことです。
――Nintendo Switch版への移植についてはどのような期待がありますか? すでにNintendo Switch版で展開している『イースVIII -Lacrimosa of DANA-』で得た手応えや学びなどはありますか?
近藤 『イース・オリジン』は、『イースVIII -Lacrimosa of DANA-』以上に激しいアクションなので、そういうタイトルが多いNintendo Switchとの相性はいいかもしれませんね。Nintendo Switch版ならでは要素とかつい考えたくなってしまいます。
――『イース』シリーズを知らない、Nintendo SwitchユーザーのアクションRPGファンへの訴求も期待できそうですね。Nintendo Switchユーザーへの期待感はいかがですか?
近藤 海外で、「タイトルは聞いたことあるけど遊んだことはない」とか「"Ys"は知っているけど何て読むんだ?」と聞かれることがあります。手に取っていただけると、爽快な心地よいアクションが楽しめることはお約束できますので、これを機にNintendo Switchユーザーの皆さんに楽しんでいただけると嬉しいです。
――『イース・オリジン』は、『イース』の始まりの物語ということで、アドル・クリスティン以外のキャラクターが主人公となるほかにも、始まりならではのドラマや設定が存在します。本作の独自性や魅力をどう感じでいますか?
近藤 『イース』シリーズがアドルの冒険を描くタイトルであるというのはファルコムにとってもファンの皆さんにとってもあまりに当たり前のことで、『イース・オリジン』の制作はかなり悩みました。ふだんだったらなかなか決断できない内容ですが、いろいろな条件が揃ったことで自分の中にゴーサインが出た瞬間をよく覚えてます。
――発売を心待ちにしているファンのみなさんへのメッセージをお願いします。
近藤 『イース・オリジン』は、『イースVI』から採用したアクションバトルの完成形で最終作でもあります。最近の『イースVIII -Lacrimosa of DANA-』や『イースIX -Monstrum NOX-』とはひと味違うので、最近『イース』を始めた方には、「こういう『イース』もあったんだ」と、ぜひ感じて楽しんでほしいですね。
キャラクター紹介
落ちこぼれの騎士見習い ユニカ=トバ
神官トバの家家系に生まれた天真爛漫な少女。幼少のころからサルモン神殿の女神宮に忍び込み、そのつど女神たちから妹のようにかわいがられていた。神官の家系に生まれながら魔法を使えない落ちこぼれだが、あえて神殿騎士に志願し、女神の捜索隊にも強引に参加した
若き魔道の天才 ユーゴ=ファクト
六神官のひとり、カイン=ファクトの息子で次期継承者。若くして強大な魔力を秘めている天才魔道士で“ファクトの眼”と呼ばれる強力な魔法貝を使いこなす。その才能ゆえか、クールで傲岸不遜にも見える態度をとり、周囲の者から煙たがられることが多い。
謎の男 鉤爪の男(トール)
“闇”を率いる黒衣の魔道士・ダレスに協力し、捜索隊の前に立ち塞がる敵のひとり。名前は仲間にも明かさず、ただ“鉤爪の男”とだけ呼ばれている。“魔”の因子を解放することで、恐るべき力を振るう“魔人”と化す。