「農家っていいよね、スローライフな感じで」

 こんな風に考えちゃっている方々、ちょっと待った。まずは2020年9月17日にDMM GAMESから発売予定のタイトル『アトミクロップス』の一幕をご覧いただきたい。

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 このように、大自然を相手にする農業は命がけだ。ナメてかかると、スローライフどころか即座に昇天して、来世的な意味のセカンドライフに突入しかねない。

 だが、物事はたいへんだからこそおもしろく、やり遂げたからこそ達成感が味わえる。『アトミクロップス』は、そんな厳しくも素晴らしい農業の尊さを教えてくれるついでに、アクション、シューティング、ファーミング、ハック&スラッシュ、タワーディフェンスなど、あらゆるゲームの魅力を一度に味わえる贅沢なタイトルだ。

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現役農家ならば、野菜に目鼻が付いていたり、野菜泥棒が弾幕を放ってきたりする事態にも慣れっこかもしれないが、我々素人はそうはいかない。

 農業独特の慣習に最初は面食らうかもしれないが、慣れてくるとかなり遊びやすく、また自由なプレイスタイルで楽しめるタイトルでもある。実際のプレイフィールも交えて、詳しく紹介していこう。

◆『アトミクロップス』概要

  • メーカー:DMM GAMES
  • 開発/パブリッシャー:BiRD BATH GAME / RAW FURY
  • 配信日:2020年9月17日(予定)
  • ジャンル:ファーミングアクション
  • 価格:2980円[税別]
  • 対応機種:PS4、Nintendo Switch、PC

荒廃した世界で始まる新世代の農業

 まずは本作『アトミクロップス』のシステムをざっくり解説。

  • 農場の畑で野菜を育ててお金に換える
  • 農場周辺を探索してアイテムや種を集め、農場を拡充する
  • お金で買った武器で邪魔なやつらをことごとく肥料にする

 プレイヤーはこの世界における一般的な農業従事者だ。なお、あまり重要ではないことなので(たぶん)言い忘れていたが、『アトミクロップス』の舞台は、付近で謎の大爆発が起き、環境が一変してしまった農場である。

 その影響か、農作物や畑を荒らしに来る野生動物はいずれも変貌している。常軌を逸したデザインではあるのだが、緩い雰囲気のドット絵で描かれているため、どこかキモカワイイ。

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オープニングで突然こんなことに。ふつうの農業よ、さようなら。
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ドット絵のおかげでかわいらしいが、野菜の姿はどれもすごいことになっている。このうえ、畑に生えている状態でもよく動く。

 本作ではまず、3×3マスの小さな畑がプレイヤーの目の前に用意される。畑にカーソルを合わせ、農作業ボタンを押し続けると、そのマスの土を耕すことができる。さらに、耕し終えたマスでボタンを押し続けると、持っている農作物の種を植えられる。

 種を植えたらつぎは水やり。近くの井戸から組んできた水を与えると育ち、さらに肥料を使えば販売価格が高くなる。これが本作における基本的な“農作業”だ。

 植えた種は一定時間で作物になり、マスに近づいて収穫。この収穫した野菜が、ステージクリア時にお金として清算される。

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耕したり種を植えたりする動作は、離れた場所からカーソルを合わせてボタンを押し続けるだけでも行える。
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井戸に触れて水を補給した後、作物を植えたマスに重なると自動で放水開始。放水中にいくら畑から離れても、中断されることはない。
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野菜を収穫してお金にする。本作の基本だ。

 これだけならmixiなどで流行った農場アプリのようだが、本作の農作業はもっと激しい。1ステージ(1日)は、昼と夜で構成されており、比較的のんびりした時間が流れる昼が終わって夜になると、畑に襲撃者がやってくるのである。

 野生動物(?)の撃退も農家の大切な仕事のひとつ。中には野菜をムシャムシャと食べてしまう連中も含まれているので、各種武器をぶっ放してなぎ倒そう。倒した敵は肥料として再利用可能。作物の育成、ひいては入手できる増収にもつながる。片っ端から土に還らせてやるのだ。

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デフォルト装備の“マメ鉄砲”では、賊の撃退には心もとない。野菜を売ったお金を使って、街で武器を買うべし。
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ただし、銃は1日使うと翌日には壊れる使い捨てアイテムだ。店頭に並ぶ武器はランダム。農業は運をも味方につけないといけない。

 日本と同じく春夏秋冬の4つの季節があり、各季節は3日で終了する。そうして1年間(=12日間)の農業と戦闘を乗り越え、年の最後に出現するラスボスを撃破すると、ひとまずのゲームクリアーを迎える。

 クリアーしたからといって『アトミクロップス』による農業体験が終わるわけではない。プレイ内容によってアチーブメントを開放すれば、2年目、3年目と、ゲームを続けられる。もちろん、年数が進むほどに難度は高くなっていく。

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農業の歯ごたえはかなりのもの。恋人と協力しろ!

 じつは本作には野菜を育てないという選択肢もないわけではない。時間経過によって、じっとしているだけでも勝手にゲームが進行していくからだ。

 だが、各季節の3日目の夜には強力なボス敵との強制バトルが発生するため、漫然と生きているだけではゲームオーバーは避けられない。生き残るためには武器が必要。そのためにもお金を稼がないといけない。

 また、作物を収穫した際に種を入手できるわけではない。農業を続けるには種の補充も必須となる。加えて、農業は体が資本のため、体力(画面左上のハート)管理も重要。

 ハートは敵を倒すとまれに出現したり、街で特殊な農作物“バラ”を渡すことで入手できるが、なかなか補充できるものではない。『アトミクロップス』は限られたハートでどこまで生き延びられるかという、サバイバルアクションゲームでもあるわけだ。

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ハートは敵や敵弾との接触で減り、ゼロになると何も持たない状態で最初からやり直しとなる。

 それを踏まえると、本作の難度はなかなかに高い。敵の弾幕は激しく、何も考えないでプレイしていると1年目の秋あたりの夜を越えられない(越えられなかった……)。

 そこで大事になるのが、農場以外の周辺地域の探索だ。農場を離れ、東西南北にある各エリアに赴くと、さまざまなアイテムを抱えた敵集団がランダム配置で待ち受けている。撃破してプレイヤーを強化するアイテムを集めよう。

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東西南北の各エリアは熱帯や雪国など、特色もさまざま。そのエリアならではの作物の種も拾えるので、探索すれば農作物を増やす助けにもなる。
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頭上に旗アイコンがついた敵を全滅させると、その旗のところにある種やアイテムが拾えるようになる。このとき、ふたつのアイテムからひとつを選択するパターンが多い。

 入手可能なアイテムの中には、畑に設置することで敵を撃退してくれるタレットとカカシのほか、自動で水やりをしたり、畑を耕してくれたりする便利な家畜も含まれている。

 これらが揃えばプレイヤーが畑から離れている間にも作物が育つので、より探索に時間を割けるようになるわけだ。

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スクロール型アイテムは武器と同じく使い捨てだが、それ以外はゲームオーバーまで効果を発揮する。種類は豊富で、農作業の動作で攻撃が発生するようなユニークなものも。
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夜が明けると、農場にいようが探索エリアにいようが、ヘリが迎えに来て街へと送還され、1日が終わる。限られた時間をより探索に割くためにも、プレイヤーと農場の強化は必須だ。

 また、街の住人と“結婚”することでも、戦闘がより楽になる。種が手に入りにくい貴重な作物“バラ”を各住人にプレゼントしていくことで仲が深まり、最終的には結婚できるのだ。ちなみに、街にいる住人は毎日ランダムで変化する。

 結婚相手は、そのまま武器を持ってプレイヤーに追従してきてくれる。敵がいると自動で戦ってくれるうえ、本作では家畜やタレット、この住人も含め、NPCはつねに無敵状態。非常に頼もしい。

 なお、結婚は性別を問わず可能。さらに、とあるレアアイテムを入手すると何人とでも結婚し、全員を一度に連れ歩けるようになる。

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住人と仲よくなると強力なボーナス効果を得られる。結婚せずとも、全員と仲を深めて損はない。
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住人の攻撃力はさほど高くないが、しっかりと敵を狙い撃ちしてくれる。それだけでも、素早い敵が大量に押し寄せてくる本作では十分助かる。

より計画的な効率重視農業に挑戦しよう!

 本作の基本的な流れは以上のとおり。実際にやってみるとお金やバラが圧倒的に足りなくなり、武器を買うこともままならない。購入した武器に費用を積むとさらに強化でき、1年目の秋冬あたりからは強化もしっかり行わないと、攻撃力不足が目立つようになる。

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2段階、3段階と強化するには大金が必要。これが使い捨てなのだから、お金はいくらあっても足りない。

 もしお金が足りなかったり、使いづらい武器だけが販売棚に並んでいたりした場合は、1日のプランの組み直しをおすすめしたい。具体的には、無理に探索に出かけたりせず、昼の間に畑の世話に集中し、逆に夜になったら探索に出かけて農場から離れるのだ。

 夜になると作物を食べる襲撃者が現れる。逆に言えば、畑に作物がなければ夜に畑を放置しても、何の被害も被らないのだ。大規模な襲撃に遭っても、農場を離れていれば回避できる。これなら、武器が弱くても、ある程度お金を稼ぎつつ生き延びることができるはずだ。

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昼と夜で行動が制限されることはなく、自由に時間を使える。タワーディフェンス要素があるタイトルなのに、タワーの守りを放棄してもまったく構わないのは斬新。

 また、畑のマスの使いかたをパズルゲームのように突き詰めていくのも、本作における農業の魅力だ。同じ作物を2×2の正方形の配置で植えて十分な肥料を与えることで、その作物は合体して巨大化する。すると、売却価格が跳ね上がる。

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インパクト満点な見た目の巨大作物。なお、“バラ”も巨大化させることで収穫量が増えるので、活用していこう。さらに畑を広げれば、もう一段階上の巨大作物も……!?

 畑マスを増やすには探索マップなどで“ツルハシ”を入手すればいいのだが、畑を拡げる形によって、巨大作物の育てやすさも変わってくる。

 また、自動で遠距離射撃を行うタレットと周囲に範囲攻撃をくり出すカカシといった防衛設備も存在。これらは畑マス内にしか設置できないので、作物の邪魔にならず、なおかつ効率的に守れる配置を突き詰めることになる。

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タレットもカカシも、序盤に拾えるとそれだけで楽になる強力なアイテム。一度配置しても、収穫すれば別のマスに再配置できるぞ。

 こうして防御布陣を固めれば、夜の間に農場を離れて探索エリアに出向いたり、敵の猛攻をさばきつつ多くの作物を育てて収穫したりと、行動の幅がより広がっていく。こうなると本作はグッとおもしろくなる。わくわくが止まらない。

 なお、最初の方で少し触れたように、畑に関する操作は、畑マスから離れていても自在に行なえる。つまり、夜の猛襲撃のさなかに敵と交戦しながらでも、畑の手入れと収穫を行えるのだ。さすがに慣れは必要だが。

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農作業ボタンと攻撃ボタンは別々なので、畑を遠くから耕しつつ武器の連射も難しくはない。これぞ新時代のエクストリーム農業!

 敵の弾幕をかわしつつ作物に水や肥料をやるという、このシチュエーションがじわじわくる本作。こうした農業と戦闘が融合したおもしろさが何より際立つのが、年の終わりに発生するラスボスとの戦いだ。

 ラスボスには武器による攻撃は一切効果なし。ではどうやってダメージを与えるかというと、野菜である。畑の作物を収穫するたびに、特殊な野菜弾(こうとしか呼びようがない)がボスめがけて飛んでいき、ダメージを与えてくれるのだ。本作の集大成とも言える戦闘だろう。

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画面外まで伸びた巨大ヒマワリによる種の高速連射をはじめ、作物ごとに攻撃パターンが異なるのもおもしろい。

慣れれば慣れるほどおもしろい、自由すぎる農業!

 最大効率を突き詰めようとすると、夜間に戦いながらの農作業なんて当たり前な本作。とはいえ、敵をしっかり全滅させてから作物に愛情を注いでも問題ないくらいの余裕はある。

 さらに、どのようなプレイスタイルで遊んだとしても、生き延びてさえいれば徐々にお金は貯まってくる。そのお金で武器以外にも、開拓用のツルハシや探索エリアを広げる“橋の修理材料”などのアイテムを買えば、より遊びかたの幅が広がっていく。

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各エリアの橋を修理すると、より難度が高いエリア深部へと進行可能。レアな種やアイテムが待っているので、農作業がはかどること間違いなし!

 農作業をひとまず放置して、探索エリアでのハック&スラッシュ要素をとことん楽しむのもいい。農場から出ずに、ひたすら農作業に打ち込んでスコアアタックに挑戦するのもいい(雑草を刈る際にもまれに種が出現するので、種の補充は農場内だけでも可能)。

 アクションゲームやタワーディフェンスゲームといった、さまざまなジャンルのおもしろさを詰め込んだゲームではあるが、それをどう摘まむかはプレイヤーの自由となっている。

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季節の終わりには報酬としてアイテムがもらえるほか、街ではお祭りが開かれ、会場でレアアイテムをバラやお金で購入できる。
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一定時間ごとに強力な攻撃をくり返し出せるアイテム“トラクター”の中には、雑草を大量の肥料や種に変えるものもある。

 さらにゲームを進めていけば、独自の性能を持つ新キャラクターがアンロックされ、どこまでも遊びの幅が広がっていく。筆者は本作の発売前に1週間ほどプレイさせてもらったが、まだまだ遊び足りていない。より多くの楽しみかたが隠されていると見ている。

 カジュアルなのんびりプレイから、とことん突き詰めた頭脳派プレイまで、さまざまな形の農業が楽しめる本作。どう遊ぶかはプレイヤーしだい。ぜひ自己流の農業で荒廃した世界を生き抜いてほしい。

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キャラクターは3人まで選択可能。能力や初期アイテムが異なるため、使い勝手もおもしろさもまた違う。さすが農業。奥深い。
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