オンライン対戦アクション『War Thunder』でおなじみのGaijin Entertainment(の傘下のDarkflow softwareが開発)によるバトルロイヤルゲーム『Cuisine Royale』が、2020年8月20日より日本でもサービスを開始する(プレイステーション4版は2020年秋予定)。プラットフォームはDMM GAMES。
Darkflow softwareは『Enlisted』という第二次世界大戦をテーマにしたFPSを開発していたのだが、2018年のエイプリルフールネタとしてなぜか“調理器具で殴ったりするシューター”を発表した。それが『Cuisine Royale』だ。
その後、本当に開発を進めて実際に遊べるクライアントを公開。プレイしたゲーマーやメディアから思わぬ高評価を獲得し、製品としてリリースされることになったというおもしろい経緯がある。
Dinnerware will finally be able to show off its true potential - only in #CuisineRoyale! We are happy to invite you… https://t.co/jHEfaND2gg
— Enlisted (@EnlistedGame)
2018-03-31 20:21:15
誕生の経緯やその見た目から“バカゲー”的な評価を受けがちな本作。ファミ通.comから「シューター好きの視点でちゃんと評価してみてほしい」と依頼されたので、ひとつひとつの要素をチェックしてみることに。
しばらくプレイしてみて、撃ち合いの楽しさとストレスを減らす仕様は好印象。最終的な感想は「けっこうアリなんじゃないか」だった。
『Cuisine Royale』プレイ動画
テンポ重視のゲーム性が撃ち合いを楽しく演出!
ゲームに参加できる人数は40人で、ほかのバトロワゲーと比較すると少々少なめ。そして、実装されているマップは狭めで銃声や足音が響き渡りやすく、敵に居場所を察知されやすい。そのため、ひとたび銃撃戦が展開されると「俺も混ぜろ俺も!」といった感じでほかのプレイヤーがワンサカと現れて地獄の展開を迎えるなんてことは日常茶飯事。おかげでダラダラとするような場面はあまりなく、いい緊張感と快適なテンポで対戦を楽しむことができる。
実際に遊んでみると最初に驚くのがゲームのスタートの仕方だ。というのも、多くのバトロワゲーは参加人数が規定数揃うと輸送機などに乗り込み好きな場所へと降下する流れとなっているのはご存知だろう。だが、本作はこの主流の演出を完全に逆らった形になっている。
まずゲーム参加のためのキューを入れ、ゲームが開始できる最低限の人数(おそらく10人前後)が揃った段階でマップ上のどこかにプレイヤーは強制的にランダムスポーンさせられる。そして、とくにカウントダウンなどもなくゲームが始まるという形式だ。そう、いきなりゲームが始まるんですわ。
実際に初めて本作を遊んだときはゲームが始まったことに気付かず、スポーンした場所をウロウロしていたらサブマシンガンを携えたマッチョなフンドシ野郎に撃ち殺された次第。ほんと、ゲーム開始のアナウンスとかないんでビビるよこれ。
でも、この待ち時間の少なさは地味に大事で、サクサクとゲームが始まるからくり返しのプレイも全然苦にならないと感じた。いやー、気付いたら2時間とか経過してて怖い。
ゲームが始まると最初に気付くのが武器の豊富さだ。本作で登場する武器はおもに第二次世界大戦で使用されたものがメイン。これは恐らく『Enlisted』から多くの武器を持ってきているからだと思われる。数は少ないが、FPSの定番“M4A1”のような現代でも使用されている銃器も手に入れることが可能だ。
ただ、武器が多すぎることの弊害として、弾薬が入手しづらいのは少々いただけない。というのも、筆者がプレイしたバージョンでは落ちている武器は弾薬とセットで配置されていて、そのため、手持ちの武器の弾薬がほしくてもほかの武器の弾薬ばかり落ちていてゲンナリ……なんてことがしょっちゅう起きた。
もうちょっとバカスカ撃ちまくれる感じでもいいのになぁと思ってしまうのは、ほかのバトロワゲーに慣れすぎたからなのだろう。
いろいろな武器を触ってみて強く感じたのが「銃を撃ってる感」が強いということだろうか。登場する武器はどれも火力が高くなっているため、敵を倒すために必要なTTK(Time to Killの略。敵を倒すのに必要な時間)もかなり短い。乱戦のところに殴り込んで敵をサクサクと倒せたときの気持ちよさといったらもうタマランですよ。
銃があるってことは当然身を守るためのアーマーも存在する。……存在するのだが、そのほとんどがフライパンとかの調理器具。ヘルメットやショルダーアーマーの代わりに装着するような感じだ。
いや、一応、SWATヘルメットとかボディアーマーとかも存在はするんだけど、パーセンテージは調理器具のほうが多いような気がする。まぁ調理器具にフォーカスしたバトロワだからってことで。
ちなみに、笑えるわりに使えるアイテムとして、マップ上にはスタミナの消費が激しいけど高く飛び上がれるジャンピングシューズや、ダメージを食らっても自動で回復してくれる点滴スタンド(点滴と吊り下げるスタンドのセット)が落ちていたりとなんかもう滅茶苦茶。
だが、それがいい!
登場キャラクターには固有のスキルがある!
2020年8月現在、本作で使用できるキャラクターは5人。それぞれのキャラクターには異なるスキルが用意されている。
たとえば、クライド・“ダース”・ムリカンであれば、ビースト化(見た目は変わらない)でき、発動中はスタミナを無視して高速移動し、耐久度が増し、近接攻撃の威力がアップ。まさに獣といったところ。
ほかには使用者の時間の流れのみを遅くして敵を攻撃しやすくするバレットタイムや、空高く飛び上がって高速で地面へと衝突して敵にダメージを与えるサンダーストライクなどなど。こういったスキルは敵を倒すことで得られるソウルによって発動することができる、言わばウルト(Ult。必殺技のようなもの)だ。
『Cuisine Royale』アビリティ使用イメージ
そして、ソウルを消費することでプレイヤー全員に作用するアイテムも存在する。中でも筆者が衝撃を受けたのが“ゾンビ・アポカリプス”だ。発動するとゾンビが大量に湧き出し、周囲のプレイヤーに襲いかかるというもの。
ゲーム終盤の移動可能範囲が狭まった状況下で使用されたときはさすがに焦った。林の中で隠れ潜んでいた筆者の目の前に大量のゾンビが湧き出し、結果的にあぶり出されてしまう形に。
「もうこんなところに居られるか! 私はひとりで逃げるぞ」といった感じで近場にある建物に逃げ込んだところ、そこにもプレイヤーが潜んでおりさらに地獄に。結果、筆者は敵プレイヤーに倒され、その敵プレイヤーはゾンビの餌食になり……という、ゾンビ映画でみたことがあるような状況に。いや、まじでものすごい数のゾンビが湧くので初見だと超びっくりしますよこれ。
バトロワゲーではお馴染みの乗りもの類についても紹介しておこう。前述したように本作のマップは決して広くないが、プレイヤーの移動を補助してくれる乗りものは数種類が存在する。
しかし、そのどれもがあまり速い速度では移動できない。また、細かいハンドリングができず、操作性はお世辞にもいいとは言えない。プレイヤーを轢こうとしても、速度が乗らないので軽くダメージを与えるに留まることがほとんどと、デメリットのほうが多い印象だ。
とはいえ、耐久度はそこそこあるので身を守りながら進むにはうってつけ。移動用というより、敵の包囲網の突破用として使う分には最適と言えるだろう。まぁ、ドライバーにダメージは通るので過信は禁物だが……。
コインを集めてスロットを回せ
多くのバトロワゲーでは、ゲーム中に補給物資やケアパッケージなどが投入される。そこからは強力な武器や装備品が得られるため、参加プレイヤーが血で血を洗う勢いで取り合いをするのはとても楽しい。本作ではどうかというと、残念だがそういった要素は搭載されていない。
だが安心してほしい。本作にはその代替となる機械がマップ上に配置されている。スロットマシンと冷蔵庫だ。
スロットマシンはその名の通りで、ゲーム中に見かける“アステカの黄金コイン”を拾ったり奪ったりして規定の枚数以上集めれば回すことが可能だ。運がよければ強い銃器と弾薬をガッツリ入手でき、その後のゲーム展開を有利に進められるだろう。
ただ、運が悪いと安全ピンが抜かれた状態のグレネードが大量に出現し、何も手に入らないどころか……なんてことも。ギャンブルって怖いねぇ。
『Cuisine Royale』コインを集めてスロットを回せ
冷蔵庫は体力回復系のアイテムが入手できるのだが、あまり手に持ちすぎると弾薬類を圧迫する恐れがあるのでほどほどに。体力回復系のアイテムは頻繁に見かけるから、無理にキープしなくても無問題だ。
気楽に楽しめる風変わりなバトロワゲー
以上、長々とゲームの紹介をしてきたのだが、実際に遊んでみてどうだったのか。ひと言で言うと「おもしろい」。
というのも、最近のバトロワの傾向として、相手を倒すまでの時間にやたら時間がかかるものが多く、削っても削っても逃げられたり即回復されたり……。緊張感が持続するのはいいが、人によっては煩わしく感じるだろう。実際、筆者は少々ダルく感じている。
しかし、本作には火力の高い武器が多数あり、アーマーもそこまでガチガチではないので、比較的容易に敵を倒すことが可能だ(逆もまたしかり)。たとえ倒されてもパッとつぎのゲームを始められるので、テンポよくゲームをくり返し遊ぶことができる。
マップがコンパクトなので接敵しやすく、ガンガン倒して、倒されたらまたすぐつぎのゲームへ。このストレスフリーな仕様は重要だ。「あーマッチングしねぇなぁ……」というストレスを感じず、手持無沙汰な時間もほとんどないのはうれしい限り。
また、ソウルを消費して発動できるスキルや特殊アイテムもバラエティ豊か。何が起こるかわからない楽しさが毎回違った展開で楽しませてくれる。あ、でもゾンビアポカリプスだけはビビるので勘弁!
これまでに紹介してきたように、ほかのバトロワゲーにはない要素から独特な雰囲気が生まれている本作。おそらく、多くの人が気楽に楽しめる作品になっているのではないかと思っている。昨今は若干落ち着いた印象のあるバトロワ界に新風を巻き起こしたのは間違いない。
一風変わった遊びを楽しめる本作のリリース日は8月20日。8月後半はエアコンの効いた屋内で本作に興じてみるのはいかがだろうか。