Peter Nagy(ピーター・ナギー)

Games Farm/Grindstone
CEO兼クリエイティブディレクター(文中はPeter)

 日本のゲーム文化がどのような変貌を見せてきたのかはよく知っているが、諸外国ではいろいろと違っているからこそ興味深い。個人的にあまり馴染みのなかった、スロバキア共和国にゲーム開発会社があることを知り、どのような文化の違いがあるのか興味を持った。Pikiiから2020年7月30日にNintendo Switchで発売された『Air Missions:HIND』を開発したGames Farmのピーター氏に、スロバキアのゲーム文化を始め、避けては通れない新型コロナウイルスの現状など、どのような違いがあるのか聞いてみた。

気になったので聞いてみた! スロバキアのゲーム文化と新型コロナウイルスへの対策_01
  • スロバキア共和国
  • 面積:49037平方キロメートル(日本の約7分の1)
  • 人口:545万人(2019年)
  • 首都:ブラチスラバ
  • 言語:スロバキア語
  • 政体:共和制

Games Farm設立から開発中タイトルまで

――設立時期と、社名の由来を教えてください。

PeterGames Farmの設立は2001年です。約20年間、会社を続けられたことを誇りに思います。ゲーム開発は、作物を育てるように慎重に種をまき、栽培し、熟してから収穫するまで、大切に育てていく必要があると思います。ですので、Games Farmという名前は、私たちの哲学をもっともよく表していることから、採用となりました。会社としては、継続と誠実さを重要視しています。そのおかげか、2004年に発売した最初のゲーム『Kult: Heretic Kingdoms』の開発メンバーが、いまでも残っていますよ。

――現在のスタッフは何名ですか。また、スロバキア以外の方も在籍されているのでしょうか。

Peter当社のチームでは50人以上が働いています。大部分がスロバキア人ですが、チームの規模が大きくなればなるほど、インターナショナルな成長が必要です。現在、社内にはドイツ人の作曲家が在籍し、日本、フィンランド、イギリス、そのほかの国の人たちともリモートで仕事をしています。

――最新作『Air Missions:HIND』を開発したきっかけと、セールスポイントをお教えください。

Peter前作『Air Conflicts』シリーズの制作が終わった後、新たなスタートを切りたいと思っていました。そのとき『Air Missions:HIND』のアイデアが生まれたのです。HINDは象徴的な攻撃用ヘリコプターとして知られており、このようなフライトシミュレーターが興味を持ってもらえると信じています。ヘリコプターのシミュレーションとしてリアルさを備えながらも、気軽にプレイしてもらえるよう工夫しました。また、プレイヤーどうしで対戦できるよう、マルチプレイも実装しています。

――現在開発中のタイトルはありますか。

PeterHeretic Kingdoms』シリーズの次回作に取り組んでいるほか、『ブシドーブレード』シリーズにインスパイアされた“一撃必殺格闘ゲーム”『Die bythe Blade』も開発中です。

気になったので聞いてみた! スロバキアのゲーム文化と新型コロナウイルスへの対策_04
気になったので聞いてみた! スロバキアのゲーム文化と新型コロナウイルスへの対策_05
開発中の『Die bythe Blade』

スロバキアのゲーム文化について

――スロバキアでは、どのようなプラットフォームでゲームが遊ばれているのでしょうか。

Peterスロバキアでは長い間、PCゲームがメインでした。理由として、家庭用ゲーム機とそのソフトが高すぎたからです。15年ほど前に経済状況が改善されてから、家庭用ゲーム機で遊ぶ人が増えたと思います。いまは、PCもまだまだ根強い人気ですが、家庭用ゲーム機ではプレイステーション4がもっとも強い地位とブランドを持っていると思われます。また、現在はNintendo Switchが急速に伸びてきていますね。

――スロバキアでは、どのような層の方々がゲームをプレイしているのでしょうか。

Peterスロバキアのゲームプレイヤーの多様性は、広がりを見せています。Facebookやスマートフォンのようなプラットフォームを通じて、女性や高齢者など、より多くの人々にエンターテイメントのジャンルを開放してきました。ゲームはオタク文化のニッチな娯楽から、自由な時間を過ごすためのメインプラットフォームへと変化しました。しかし、50歳以上の人々はコンピューターの知識習得やゲームで遊ぶことの機会を逃しており、そのためコンピューターとの相性が悪く、ソリティアとマインスイーパを除いてゲームをプレイすることはほとんどありません。しかしながら、若いプレイヤーの増加にともない、プレイヤーの幅は中高年層へも広がりを見せています。

新型コロナウイルスの現状と社内での対策

――世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスですが、スロバキアで行っている対策をお教えください。

Peter私はスロバキアに住んでいますが、感染者が非常に少なかったため、とても幸運でした。政府が迅速に行動し、最初に感染者が出た後、数日のうちに学校や公共の集会所などをシャットダウンし、すべての人々にマスクを着用するよう命じました。感染者数が少ないのは、このおかげかもしれません。

――日本ではまだ油断できない状況ですが、スロバキアの現状をお聞かせください。

Peterこのところ、新規感染者数が0~3件と低いため、政府はすべての対策を解除し、今後実施される対策もありません。当社でもスタッフが仕事に戻り、ほかのほとんどの企業でも仕事を再開しているようです。人々は通常の状態に戻り始めていますが、ここで言う通常とは“新しい生活様式”のことです。多くのことが変化し、それにともない人々も考えかたを変えていると思います。Covid19によってさまざまな問題が起こりましたが、私たちの行動において何かポジティブな面が見い出せたらよいと思います。

――Games Farmで行っている、具体的な新型コロナウイルス対策をお教えください。

Peter当社では、スロバキアで感染が確認された直後に、自宅からのリモートワークに切り替えました。状況が落ち着くまでの数ヵ月間、たくさんの人がリモートで仕事をしなければなりませんでした。当社では感染のリスクを最小限に抑えるために、日常的な衛生基準を高め、消毒や清掃などをこまめに行いました。この予防策は他の感染症にも有効だと思うので、今後も続けていきたいと思っています。

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Peter氏から日本のゲームユーザーへのメッセージ

 最後まで読んでくださってありがとうございます! このようなインタビューの機会を与えてくださり感謝しています。もし皆さんがヨーロッパを訪れることがあれば、私たちのオフィスがあるスロバキアのコシツェという、小さいけれど魅力あふれる町にも足を運んでいただけるとうれしく思います。私たちの文化にはそれぞれ多くの違いがありますが、その違いは非常に刺激的です。世界中の才能ある人々といっしょに仕事ができ、異なる文化を持つプレイヤーと私たちが作ったゲームを通じて話すことができるのは、本当にすばらしい経験になります。

気になったので聞いてみた! スロバキアのゲーム文化と新型コロナウイルスへの対策_02
  • Air Missions: Hind
  • ハード:Nintendo Switch
  • メーカー:Pikii
  • 2020年7月30日発売
  • 3500円[税抜](3850円[税込])
  • ダウンロード版は2500円[税抜](2750円[税込])