“BEST HIT CHRONICLE”企画の第1弾として、2020年3月、2/5スケールのプレイステーションとセガサターンのプラモデルを世に送り出し、そのリアルさでモデラーのみならずゲームファンも唸らせたBANDAI SPIRITS。

 その企画の第2弾として発表されたのが……カップヌードルの原寸大プラモ化!? いったい何がどうなってこのセレクトに!? 頭の中に疑問符が飛び交いまくる中、カップヌードルを組み立てるという斬新すぎる新感覚を体験できるプラモデル、“BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル”が生まれた経緯について、BANDAI SPIRITS ホビー事業部 ニューホビーチームの寺島 塁氏にお話を伺った。

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フタも着脱が可能というこだわり具合。ちょっと離れたところから見ると、本物のカップヌードルと見分けがつきません……。

なぜカップヌードルがプラモに!?

――商品の発表後の反響は、いかがですか?

寺島想像よりも大きな反響をいただいていて、プラモデルユーザー以外の、商品を届けたかった新規のお客様にも知られた結果かな、という手応えを感じています。

――賛否はありましたか?

寺島否定的というか、今回のコンセプト自体が「なんで!?」っていう驚きの部分が大きかったな、というのはあるので、そういう意味では、皆さん「なんで?」、「意味がわからん」というような反応がありつつ、お客様の属性によっては「おもしろいから買ってみよう」という方もいれば、「訳わからん、こんなん誰が買うんだよ」っていう意見もあるので、それは商品に対する否定なのかというと、またちょっと別かなとは思いつつも、そういったいろいろな反応は確かに見受けられましたね。“皆さんにおもしろがっていただいている”というのがいい表現かもしれませんね。

――商品のコンセプトをお聞かせください。

寺島ひとつは、プラモデル技術の限界に挑戦して、カップヌードルをどこまでリアルに作り込めるか。それと、「なぜ、カップヌードルをプラモに?」という部分にもつながるのですが、世界中の、まだプラモデルを触ったことがないお客様に、どうすればプラモの楽しさを伝えられるかを考えたときに、誰もが知っているものを題材にしたらおもしろいのでは、と。そこから、“国民食”とも言われるカップヌードルに着眼してプラモデル化に至った、という経緯がありました。プラモデルを買ったことがない人たちが触って、プラモデルっておもしろい、すごいと思っていただける構造、イコール、リアルに作り込む、というコンセプトにもつながった感じですね。

――日本国内では、ほかにメジャーなブランドのカップ麺もあると思いますが、その中からカップヌードルを選択された理由は?

寺島“BEST HIT CHRONICLE”という企画は、我々だけではなし得ない、企業様とのコラボレーションで成り立っているのですが、その企業様と組むことでどういう相乗効果が得られるかはすごく意識して、考えています。日清食品様は、“永久定番”と呼ばれるような商品を扱いながらも、つねに話題を発信して、新しいことに挑戦し続けている。そんな日清食品様とのコラボレーションは、弊社にとっても非常に大きな新しい化学反応を起こすきっかけになるのではないか、日清食品様とぜひ組んでみたい、という思いがまずありました。そして世界一有名で、ワールドワイドな商品で、“二十世紀最大の発明”とも呼ばれているカップヌードルを、今回、ぜひプラモデル化させてください、と私どもから提案するに至りました。

――経緯をお聞きすると、カップヌードルという選択肢は、納得度が高いです。

寺島カップヌードルというのは、カップ麺のみならず、発明品としても圧倒的な地位を築いているプロダクトだと思いますから。

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カップ側面の注意表記や栄養成分表もリアルだが、印刷やシールではなく、金型技術で再現されている点にぜひご注目いただきたい。彫り込まれた文字が超細かい!

――今回の企画で、御社のスタッフがふと我に返って、「……自分は何をやってるんだろう」とか、「これを本当にプラモデル化していいのか!?」みたいな意見は出たりしなかったのでしょうか?

寺島(笑)。最初の段階では、たしかに「なぜ?」みたいな反応はありました。でも、いざ走り出したら、弊社の企画や設計、金型や生産チーム、さらに営業やプロモーションのメンバーがみんな一丸となって、プロダクトをどうしたらおもしろく出せるのか、おもしろい仕様にできるのか、アイデアを出し合って……ある種、バカなことに真剣に取り組めるメンバーなので、そういった意味では、みんな誰よりも真剣にカップヌードルという食品と向き合って、商品開発をしました。

――“真面目にバカをやれる”というのは、最高にすばらしいですよね(笑)。

寺島そうですね(笑)。作っていても、そういうのがいちばん楽しいです。

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エビやタマゴ、謎肉(肉と大豆由来の原料に、野菜を混ぜて味付けしたミンチ)のパーツもあります。細部まで手抜きなし。

――ところで、パッケージの金色の破線模様は、パーツが分割されているんですよね。なぜ、そんな凝った作りにしようと思ったのですか?

寺島今回の商品では、“プラモデルを組み立てる”という行為を通じて、作る楽しさを感じてほしかったんです。ひとつひとつのパーツを自分の手で組み合わせていくと、みんなが知っているデザインが浮かび上がってくる。それを体験をしてほしい、という思いが強かったので、パーツ分割を選択しました。

――パーツがパチッとはまったときの感触は、プラモデルならではですよね。さらに、実際に手を動かす楽しさも加わりますし。

寺島そうですね、そこはまさにプラモデルの醍醐味かなと。

――バンダイさんといえばガンダムのプラモ、“ガンプラ”がありますが、そこで培われた技術が今回活かされたり、フィードバックされたりしたものはありますか?

寺島ガンプラを中心に、多数のプラモデルを作ってきた弊社をもってしても、カップヌードルのプラモデル化は、構造的にもかなり新しい試みでした。ですので、構造体としていかに成立させるか、みんなで頭を悩ませ、議論を重ねながら作っていったので、従来の技術のフィードバックというよりは、新しいものにチャレンジしている、という感覚で開発が進みましたね。たとえば、実物のカップヌードルは、カップの模様は印刷されていますが、これをパーツ分割するとなると、パーツを重ねることでどんどん厚みが出て、カップが分厚くなってしまい、リアリティーからかけ離れていく。薄さやリアルさを保ちながら、パーツでの色分けや分割をいかに実現するか……みたいな、ふだんのプラモデルでは悩まないポイントが、今回のカップヌードルのプラモではネックになったりしました。そういうことが続いたので、ある種、新鮮で新しい取り組みだったと強く感じています。

――薄くしようとすると、強度とかがたいへんそうですよね。

寺島そうですね、パッケージした後にパーツが破損したり、お客様が組み立てているときに壊れてしまったりすると意味がないので、そのへんのバランスのせめぎ合いは、すごくたいへんでした。

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複数のパーツの組み合わせで、おなじみのあの模様が再現される。寸分の狂いもなくピタッとはまる気持ちよさは、プラモデルを組み立てる醍醐味です。
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“CUP NOODLE”のロゴも複数のパーツで構成。自分自身でロゴを組み上げるという新感覚!

――プラモ作りにあまり慣れていない人で、組み上げるのにどれくらいの時間が掛かる想定でしょうか?

寺島我々は「3分では組めないけど、慣れている人なら30分で組めますよ」という、キリのいい言いかたをしていますが(笑)。パーツの組み立て自体はそれほど複雑ではないので、プラモ作りに慣れていない人だと、ランナーからパーツを切り離すほうにある程度時間が掛かるかもしれません。それでも、1時間もあれば組めるんじゃないかな、と。

――カップヌードルの側面が開いて麺の状態が見えるギミックは、ガンプラの“メカニックモデル”を連想しました。

寺島残念ながら、着想はガンプラからではないです(笑)。カップヌードルミュージアムに巨大なカップヌードルの模型があって、側面が外れて中の麺が見えるようになっているんですよ。それがすごく印象深くて、せっかくならプラモデルで同じことができたらおもしろいな、と。食品のカップヌードルは、運搬中の衝撃で麺が崩れないように底に空間を設ける“中間保持構造”とか、すごく考えて作られているプロダクトなので、細部までプラモで再現して、手に取ってそれを楽しめるようにもしたかったんです。

――なるほど、そこまで考えて……。

寺島カップヌードルという食品は、我々にとって当たり前のものでしたが、いかに食べる人のことを考え抜いて作られているプロダクトなのかが、真剣に向き合って勉強して、プラモデルを開発して、ひしひしと伝わってきました。企画を進めるにつれて、日清食品さんへの尊敬の念はどんどん強くなっていきましたね。

カップヌードルミュージアム……横浜と大阪・池田にある、インスタントラーメンにまつわる展示や体験工房などが楽しめる体験型ミュージアム。

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容器の側面のパーツは取り外し可能で、“中間保持構造”がどのようなものかを鑑賞できます。
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カップヌードル特有の“疎密麺塊構造”(麺の塊の上部は密度が高く、下部を低くすることで、お湯を注いだ麺が自然にほぐれ、水分を均等に吸収する構造)も、麺塊を実際に3Dスキャンすることで再現しているとのこと。

――それにしても、BEST HIT CHRONICLEという企画が、ゲーム機のプラモ化から始まって、いきなりカップヌードルを出してくる展開は、あらためて驚きです。

寺島ゲーム機や、今回のカップヌードルをきっかけに、少しでもプラモデルに興味を持っていただけたら、ぜひ商品を手に取ってください。プラモの進化、作ることの楽しさ、そしてプラモデルの組み立てを通じて何かを発見する喜びといったものを体感していただきたいですね。

――今回の1/1 カップヌードルに続く、今後の企画というのは……?

寺島まだ公にできる段階の企画はないのですが、今後も企業様とのコラボレーションを通じたまったく新しいプラモデルや、皆さんが想像もつかないような取り組みを考えていけたら、と思っています。ふだんプラモデルを作らない方にも、何か共通点というか、タッチポイントが見つかるコンテンツを、今後も取り扱っていきますので!


BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル

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<おもな仕様>
価格:2200円[税抜](2420円[税込])
発売日:2020年9月18日(金)発売予定
対象年齢:15歳以上
サイズ:全高約108ミリ(1/1スケール)
パーツ数:全62パーツ
販売ルート:全国のホビーショップ、玩具店、家電店・量販店のホビー・玩具売場、インターネット通販、日清食品グループオンラインストアhttps://store.nissin.com/jp/)など

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