週刊ファミ通2019年8月22・29日合併号で掲載した、『Fate/Grand Order』(FGO)サービス4周年記念企画“表紙イラストメイキング”とイラストレーター・こやまひろかず氏のインタビューページを特別にファミ通.comで公開します。

 もちろん、サービス5周年を祝って大特集を行う週刊ファミ通2020年8月13日号(7月30日発売)の表紙も、『FGO』が飾ります。どのような描き下ろしイラストになるのか、お楽しみに!

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※以下の内容は、週刊ファミ通2019年8月22・29日合併号に掲載した“表紙イラストメイキング”とインタビューを一部編集したもの。

こやまひろかず氏が解説する表紙イラスト完成までの流れ

 入道雲が浮かぶグランドキャニオンの夏空の下、水着に包まれた健康的なナイスバディがきらめく宮みや本もと武む 蔵さし。そんな彼女が描かれた今回の表紙に注目し、イラストが完成するまでの流れを、担当イラストレーターのこやまひろかず氏の解説付きでお届けする。

(1)大ラフ作画

【こやま氏の解説】

 ファミ通さんに提出する前段階、社内チェック用のラフです。キャラクターの見映えとファミ通さんの表紙ロゴを考慮した、最低限のラフと言えます。

(2)武器の3D出力指定

【こやま氏の解説】

 武器は作画の手間を軽減するために社内で3D制作してあります。このようなレイアウト指定で武器の線画だけを出力し、キャラクターや背景と同じく2D彩色します。

(3)ラフ画完成

【こやま氏の解説】

 完成時のイメージがつかめるよう、背景や色彩情報を加え、ファミ通さんに提出しました。

(4)線画制作

【こやま氏の解説】

 彩色用の線画をクリーンアップします。

(5)基本色配置

【こやま氏の解説】

 完成した線画に基本色を配置します。

(6)選択範囲の分割

【こやま氏の解説】

 同時に彩色の便宜を図り、範囲選択用の塗り分けもしておきます。

(7)基本彩色

【こやま氏の解説】

 おおよその陰影を付け終わった状態です。キャラクターの見映えを考慮して、ラフ時の光源とは左右逆に彩色しています。

(8)武器彩色

【こやま氏の解説】

 クラシックな銃をモチーフにしたデザインで、ステンレスシルバーをイメージして彩色しています。空の色を写しこんだ青味の強い金属光沢を表現しています。

(9)背景作画

左からレイアウト、ラフ、完成版。

【こやま氏の解説】

 グランドキャニオンと夏らしい雲の組み合わせ。果たして、かの地にこんな積乱雲が発生するのかどうか……?

(10)彩色完成

【こやま氏の解説】

 環境光の照り返しや、映り込み、模様などを加え、ひと通りの彩色を完了した状態です。

完成

【こやま氏の解説】

 線画の色トレス、カラーバランスなどの最終調整を行って完成としました。

おまけ

【こやま氏の解説】

 骨格や筋肉の連続性を維持するため、完成時に見えなくなってしまう箇所でも、ある程度は作画しておくこともあります(あえて省く場合もあります)。

こやまひろかず氏が語るイラスト制作の裏側!

 本号の表紙は『FGO』プレイヤーにはおなじみのこやまひろかず氏による特別イラスト。そのこやま氏にイラスト制作の裏話をたっぷりとうかがった。新たに実装された水着姿の宮本武蔵の誕生秘話や、同氏のイラストレーターとしての流儀など、貴重な話が盛りだくさんだ。

こやまひろかず 氏

TYPE-MOONのグラフィックチーフで、『魔法使いの夜』で原画を担当。『FGO』のサーヴァントでは、スカサハや宮本武蔵、ランスロット(バーサーカー)などのデザインを手掛ける。

アメリカンな水着武蔵が誕生するまでの過程

――すばらしい表紙イラストをありがとうございます! 水着姿の宮本武蔵が描かれていますが、表紙が彼女に決まった理由は?

こやま今回は、『FGO』の4周年記念特集とお聞きしました。この時期は水着姿のサーヴァントがたくさん実装されまして、武蔵もそのうちの1騎なんです。彼女が持つ華やかさは表紙を飾るにふさわしいだろうということで、採用されたようです。僕としても、ひさしぶりに彼女を表舞台に出せたようでうれしく思っています。

――武蔵が着ているアメリカをイメージさせるような柄の水着は、イベントに何か関係が?

こやまはい。デザインをするときに「ウェスタンな感じにしてくれ」と指示がありました。

――ウェスタン×サムライというわけですか。チャンバラが映えそうですね。

こやまイラストでは銃と日本刀の魔改造武器を持っていますが、これは武内(崇氏)や奈須(きのこ氏)らと話し合って決まっていきました。クラスが変わっても武蔵は武蔵ですね。

――よく見ると、長さだけでなくグリップのデザインも違いますね。

こやま最初は両方ともリボルバーのグリップだったのですが、武内から「日本刀っぽい要素を残そう」という要望があって、長刀だけ日本刀の柄のデザインにしました。古いリボルバーと日本刀の和洋折衷感は、『FGO』の武蔵らしいかなと思っています。

――髪型からも、いままでの武蔵とはひと味違う印象を受けました。

こやま髪のお団子は僕の好みというか、希望で付けました。セイバーの武蔵とのわかりやすい差別化と、お団子の色を変えればバトル時に再臨段階がわかりやすくなるかな? となんとなく考えていたのを覚えています。「描きやすいかな」とも思っていたのですが、意外と描きにくくてちょっと苦労しました(笑)。

――ちなみに、この姿はどの再臨段階のものなのでしょうか?

こやま第2段階ですね。ただ、ゲーム内では第1段階と第3段階でまったく違う姿になります。

――7月に実装された魔王信長(織田信長)のように、大きく変化するのですか?

こやまあそこまではとても(笑)。魔王信長(織田信長)は最初に見たときにびっくりしました。あれ、差分じゃないですもん。

 バーサーカーの武蔵は第1段階の姿が競泳水着なのですが、それは僕が描きたくて提案しました(笑)。話し合いで、持っている武器はスポーツチャンバラのエアソフト剣にしています。スムーズに決まった第1段階とは対照的に、第3段階のデザインはすごく迷いました。詳しくは言えませんが、今回の水着イベントのキーキャラクターとしてのデザインになっています。

――第3段階の姿が早く見てみたいです! ところで、表紙イラストではアップの姿が描かれていますが、その理由を教えてください。

こやま見栄えを第一に考えてのことですね。長物の武器を持ったキャラクターを配置するときは、いつもどうすれば見栄えをよくできるかで頭を悩まされます。

――構図は何パターンか考えられたのですか?

こやま多くはないのですが、2、3パターンくらいは考えます。武器を正面でクロスに構えたものや、かっこよさを重視した構図も考えましたが、最終的にはご覧の通り、水着のボディーラインが目に付きやすく、健康的なカラッとした色気を見てもらえるような案を提出させていただきました。制作中には、「あまりセクシーになりすぎてもよくないかな」と意識はしたのですが、怒られたら直せばいいか、と(笑)。

ひとりのキャラクターを生み出すということ

――イラストを制作されるときは、どういった工程を踏んで描かれていくのですか?

こやま今回の表紙イラストでは、あらかじめファミ通さんのロゴの位置を確認して、武蔵の頭が被るか被らないかくらいの位置に収めることだけを決めて、レイアウトを模索しました。

 イラストの用途にもよりますが、今回の表紙のように縦横比のサイズが決まっているものは、そのサイズにキャラクターがうまく収まるようにラフを考えます。見栄えと構図のバランスを取るのはいつも悩ましいです。

――イラストの構図やデザインに迷ったときは、何かを参考にされたりするのですか?

こやまふだんからいろいろなものを見まくってインプットしています。いまは資料になる画像や動画がたくさん見つかりますから。

 あとは、アクションフィギュアをいじりながら構図を考えたりもしますが、おおよそのポーズの方針が決まったら、あとは見ないで描き進めます。「これはよさそうだな」と思ったポーズでも、実際に描いてみると「あれ? そうでもないな」となることはしばしばあります。デザインに付随するもろもろがジャマをしたり、縦横の構図への収まりが悪かったりと、見たままでは済まないので、あれこれアレンジしながら整えます。

――フィギュアで見たときはよさそうでも、イラストにするとしっくりこないことがあると。

こやまフィギュアなら全身をくまなく見ることができますが、それが指定サイズにきれいに収まるとは限らないので、そのままでは使えないことのほうが多い気がします。

――やはり、キャラクターのポーズはかなりこだわって決められているのですね。

こやま求められる絵の用途にもよりますが、キャラクターイラストを描かれている方はだいたい皆さん同じだと思います。見栄えを第一に考えると、それに直結するポーズには細心の注意を払います。

 それと、『FGO』のキャラクターを描くときには、とくにある種の“ケレン味”を意識します。サーヴァントは偉人や神様がモチーフになっていますが、史実のままの甲冑や出で立ちを再現するだけでは『FGO』としては何か足りない。

 また、『FGO』には再臨段階という要素があります。キャラクターデザインの醍醐味でもありますが、その差別化には大いに悩まされます。制作チームの中でも最近は、その流れが顕著ですね。『FGO』の企画が動き出した当初は、それこそ「各再臨段階のイラストの差は少しでも構わない」と言われていましたが、いまでは、イラストの首から下はまったく別物を描くくらいの意識を持っています。この前の魔王信長(織田信長)なんて、顔もすべて違いましたし(笑)

――まるっきり別のイラストでしたね(笑)。

こやま当初は第1段階よりも第2段階、第2段階より第3段階を豪華にして、第3段階をメインに使ってもらうことを想定していました。でも最近では、第1段階でも、第2段階でも、第3段階でも好きな人が好きな姿を選択して戦えるようにしようという流れになりました。そのため、制作にかかる手間も倍増しですね。

――再臨段階で姿が変わる場合は、コンセプトもそれぞれイチから考えられるのですか?

こやまコンセプトはライター陣が物語や舞台の設定を作るので、それにならう場合と、キャラクターデザイン担当が好きに描いていいという場合があります。

 スカサハ=スカディを例にとると、第1段階では物語の舞台となる北欧神話をモチーフにした世界観に合わせて女王感を出しました。第2段階では僕の好みだけでスカサハ(ランサー)を思い起こさせるような魔法戦士っぽい姿に、第3段階では、これも僕の好みでしたが、バトルドレスみたいなものをイメージして、結果的に物語終盤の流れに汲んでもらえる形になりました。

――段階ごとに姿を大きく変えることに対して不安はありませんでしたか?

こやまもちろん、そのキャラクターのいろいろな姿や魅力を見てもらえるメリットの大きさが勝つと思いますが、再臨段階によって姿が違いすぎると、ファンの皆さんが持つそのキャラクターのイメージがブレるのではないかという懸念はありますね。

――そのあたりのさじ加減について、こやまさんはどのようにお考えですか?

こやまキャラクターによるかもしれません。すでにイメージが固定していると、やりにくいこともあります。武内は第3段階で髪型をガラリと変えちゃったりして、それくらい思い切りよくアレンジできると気持ちいいだろうなと思いつつ、僕の場合は髪型を変えると“キャラクターがブレてしまう”ように感じられて、うまく収めることができませんでした。やれるものなら、やってみたい気持ちもあるのですが……。

――ちなみに、キャラクターのイラストは奈須さんも監修されるのですよね?

こやまキャラクターごとに担当ライターが決まっているので、奈須に限らず担当ライターのチェックはあります。

 それに、サーヴァントのデザインは武内が終始見ていて、『FGO』の枠組みの中で作家さんのよさを活かすように舵取りを心掛けているようです。「シナリオで必要なシーンに合わせてこういう表情が欲しい」という要望もあります。今回の武蔵でも、第3段階でいままでの武蔵にはない表情が追加されました。そういえば、“英霊剣豪七番勝負”でもたくさん表情差分を追加しましたね。

 ライター陣が要望を出すわけですが、とくに奈須がシナリオの最終チェック後に要望を出す場合が多いように思います。こういったシナリオに合わせた表情差分は好評をいただけているようで、今回も楽しみにしていただけたらと思います。

――こやまさんは、今回の武蔵がゲームで動く姿をもうご覧になりましたか?

こやまはい。バトルグラフィックは、ディライトワークスさんのグラフィックスタッフさんが描き起こし、バトルの演出、宝具演出、それらモーション、声優さんの演技がついて完成します。自分のデザインからここまでのものが作られる過程を見ていると「ひとりのキャラクターでも、みんなで作っているんだな」ということを強く感じます。ぜひご注目ください。

週刊ファミ通『FGO』5周年記念特集号は7月30日に発売!

 『FGO』のサービス5周年を祝う週刊ファミ通2020年8月13日号は、5周年当日の7月30日に発売。

 奈須きのこ氏&武内 崇氏ほか開発スタッフのインタビューやお2人が読者の質問に答える一問一答企画、5周年記念アンケートの結果発表など、さまざまな特集企画を50ページ前後でお届けする予定です。ぜひご注目ください!

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