こんにちは。ライターの斎藤充博と申します。僕は国家資格を持った指圧師でもあります。そんな僕にファミ通.comの編集者から、ちょっと変わった依頼がありました。

「『ファイナルファンタジーVII リメイク』(以下、FFVII リメイク)にマッサージ店が出てくるんですけど、指圧師の視点でレビューしてもらえませんか」

 何それ?

 そんな戸惑いもよそに、やがて編集者からマッサージ店の動画が送られてきました。

『FF VIIリメイク』の“手揉み屋”とは

 ストーリーの進行で、ドン・コルネオに会わなくてはけないクラウドとエアリス。しかしウォール・マーケットの顔役である彼には会うのは簡単ではありません。

 そこで、クラウドとエアリスは“手揉み屋”に行きます。その店主兼施術者であるマダム・マムはウォール・マーケットの商業地区を取り仕切る実力者。彼女からドン・コルネオに推薦してもらうのです。

 僕は原作の『ファイナルファンタジーVII』はやったことはあるのですが、『FFVII リメイク』はプレイしていません。こんな場面は記憶にないのですが、担当編集者によると追加要素とのこと。きっとリメイクするにあたって重要なシーンなのでしょう!

 ……それはいいとして、この“手揉み屋”の雰囲気はものすごくあやしいですね。マムは和服(遊女の服?)を着ているのですが、こんな格好でマッサージができるんでしょうか。

 ともあれ、頼まれたからにはプロとしてチェックさせていただきます。

独特の店構えと見たことのない料金システム

 入った瞬間に目を引かれるのが、あでやかな朱色を主体とした色使い。神社の鳥居の色ですね。“和風”というより“ジャパン!”という感じ。

 現実にこんな色使いをしているマッサージ店はみたことがありません。和の雰囲気を出すとしたら、藍染めの“濃紺”や木の“茶色”を使用するでしょう。

 この段階でマムのただならぬセンスがうかがえます。ちょっとびっくりしますが、決して趣味が悪いとは思いません。

 手揉み屋には“極上の揉み(3000ギル)”と“普通の揉み(1000ギル)”と“ごぶごぶ揉み(100ギル)”という3種類のコースがあります。

 マッサージは時間で料金が変わるのが一般的。揉みかたで料金を区別するのはかなり珍しいシステムです。なぜなら施術者の方が料金に合わせて“揉みかた”を調節するのは、かなり難しいからです。

 極上とごぶごぶで30倍もの差があります。マッサージ師になったと思って想像してほしいのですが、自分の揉みかたひとつでそこまで料金に差をつけるのは、かなりたいへん!

 自分の技術に相当な自信がないと採用できない料金体系です。おそるべし、マム。

施術室にある大量の“枕”はサービスか

 コースによって施術内容が変わるようなのですが、今回は“極上の揉み”を中心に見ていきます。

 施術が始まります。ここは手を揉む専門店にもかかわらず、施術台に寝かせるのですね。ハンドマッサージだったら机で行うのが一般的だと思います。もちろん横になった方が身体の疲れは取れるので、これはいいサービスです。

 戸棚の下段に枕がいくつも用意されているのが見えます。お客さんごとに替えるのでしょう。ふつうに考えれば、枕の上にタオルや不織布などを敷いて、それを替えさえすれば、衛生面はこと足ります。

 枕ごと替えるのは理由があるはず。ひょっとしたら、お客さんの姿勢などを見て、もっともリラックスできる固さや大きさの枕をマムが選んでいるのかもしれません。そのサービスについて特段言及しないマム、なかなか粋ですね。

 ベッドの中央やや上部には赤い布が敷かれています。なぜこんなところに布がしいてあるんだろう……? ちょっと疑問だったのですが、考えたらすぐにわかりました。

 布の敷かれているのは、お客さんの“手の位置”です。マムは施術の開始時に、お客さんの手にクリームを塗っています。マムはクリームを滴るくらい、大量に使っているのではないでしょうか。赤い布はクリームによってベッドのシーツを汚さないようにするためのものだったのです。

 クリームやマッサージオイルは、大量に使ったほうが気持ちよさが出やすいんですよね。安いマッサージ屋さんだったら、ケチって使うところも少なくありません。マムの手揉み屋は、かなりラグジュアリーな施術をしてくれそうです。

実力派ながら謙虚な姿勢を崩さないマムの施術

「あら 痛かったかい?」

 マムはクラウドの表情を見て聞きます。マッサージにおいて「痛いか」を聞くことは非常に重要です。施術者にどれだけ自信があって、やわらかく押したとしても、マッサージの感じかたは人それぞれ。

 ましてやクラウドは元ソルジャー(と本人が言っている)。戦闘を生業としているのですから、どこかにケガをしている可能性もある。

 自分の技術におぼれない、謙虚な姿勢が「痛かったかい?」から伝わってきます。聞きかたに妙なツヤがあるのがひっかかるのですが、そこを気にしなければ、この対応は100点です。

「凝り固まった老廃物をどんどんとながしていくからね」

 “老廃物”とは、おそらく静脈血やリンパなどの体液のことでしょう。ところが、こういった体液の流れを促進するとき、ふつう“手”は施術しません。静脈血やリンパが溜まりやすい足先や、リンパの流れに重要な膝裏、股関節のあたりを施術するのがセオリーです。

 手揉み屋というだけあって、飽くまでも手の施術にこだわっているのでしょうか。

 マムは具体的にどんな施術をしているのか。今回いちばん気になったところなのですが、カメラアングルからはよくわかりませんでした。それにしてもクラウドは気持ちよさそうですね。

「声 出してもいいんだよ 我慢は体に毒だからね」

 いい施術者はお客さんの声や表情などの反応にあわせて施術を調整していきます。だから、お客さんが声を我慢してしまうのは、お互いにとってもったいない。「声 出してもいいんだよ」と言うマムはそこを意識してのことでしょう。

 これは僕の持論ですが、施術はする側とされる側の、双方向のコミュニケーションだと考えています。きっとマムも同じ考えを持っているのではないでしょうか? マムと施術論を交わしながらお酒を飲みたくなってきました。仕事が終わったらいっしょにセブンスヘブンに行きたい。

 施術室に入る前に、マムはクラウドの手のひらを軽く指圧しています。ここが唯一、マムが使用している経穴(ツボ)がわかるシーンです。

 マムが押したのは親指の付け根にある“合谷(ごうこく)”。合谷は万能の経穴と言われており、さまざまな効果が期待できます。その中でもとくに有名な効果は“頭痛”です。

 ……頭痛!

 クラウドはこれまでの人生のいろいろな出来事により、ときおり記憶が混濁している様子が見受けられます。それを思い出すたびに頭痛に悩まされているようです。

 マムが合谷を押したのは、単なる偶然なのでしょうか。もしや、初見でクラウドが頭痛持ちであることを見破ったとか……。だとしたら相当な達人です。

クラウドを僕が施術するとしたら

 もしも僕がクラウドを施術するとしたら……と考えてみました。

 クラウドがお客さんとして来ても、頭痛持ちであることはわからないので、合谷を押すということはしないかもしれませんね。

 クラウドを見て真っ先に目が行くのは巨大な剣。初期武器のバスターソードはクラウドのトレードマークですよね。

 これはかなりの重量でしょう。こうした武具は腕の力だけで扱えるものではありません。クラウドは全身の力を連携させて剣を振るっています。

 しかし、それでも腕にかかる負担は相当なもの。とくに肘のあたりにある“腕橈骨筋”(わんとうこつきん)はかなり疲労しているはずです。

 ここは“ビールジョッキ筋”などと呼ばれることもある筋肉で、ビールジョッキを口元に持っていくような「肘を下げて手のひらを上げる」ときに使われます。まさにバスターソードを構えるあの動きのときも使われるのです。

 ここをしっかりとほぐせば、戦闘もきっとラクになるはず。攻撃力に対するバフも期待できるのではないでしょうか。

 ミッドガルのウォール・マーケット内にある手揉み屋。マムにも店舗にも相当なクセがありますが、実力、接客ともに高いレベルにあるのではないかと思います。

 施術後のクラウドは呆然とした表情で「悪くない……」とつぶやいていました。エアリスが「変だよ!」と心配するほどですから、よっぽどよかったんでしょうね。なんなら僕もマムに一度施術してもらいたいと思いました。

ゲーマー向けのおすすめのツボ

 最後にファミ通.com読者の皆様に、ゲーマーおすすめのツボを紹介します。

 まずは眼精疲労に効果が期待できる“睛明(せいめい)”というツボ。左右のツボを片手でつまむように一気に押すのがおすすめです。

 続いて指の爪の根元にある“井穴(せいけつ)”と呼ばれるツボ。反対側の手でこちらもつまむように押してください。何度か押すと、指の感覚がスッキリしてきますよ。

 ゲームに疲れたら、ぜひぜひ使ってみてくださいね。

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