Nintendo Switchにて発売され、独自の作風で注目されている『アンリアルライフ』。本作をリリースしたインディーゲームレーベルの“ヨカゼ”は、発足とともに世界観に重点を置いた4タイトルを発表。さらには、個人開発者やパブリッシング企業同士の“ハブ”を目指すという方針も打ち出し、ゲーム業界内で話題を集めている。ヨカゼを立ち上げた理由や、第1弾タイトル『アンリアルライフ』に寄せられた反応、さらにはレーベルとしての今後の展開などを、キーマンである木村征史氏、hako 生活氏にうかがった。

木村征史氏

room6代表取締役

hako 生活氏

個人ゲーム開発者

気鋭クリエイターが手掛ける新作も続々! ヨカゼが目指す未来とは?

――さっそくですが、ヨカゼ立ち上げの経緯を教えてください。

木村国内の個人開発者および、小規模なインディーゲームメーカーの作品をコンシューマー向けにリリースするパブリッシング事業として、room6をスタートさせたのですが、事業を進めていくなかで、「我々のやっていることは、開発者側にとっては意義のあることだが、購入してくださるお客様に対しては、本当に意味のあることをしているのか? room6としてのカラーをきちんと打ち出せているのか?」と考えるようになって。そんなときに、お付き合いのあったhako 生活さんから、『アンリアルライフ』のパブリッシングを依頼していた業者が降りることになったというお話しを聞き、「それなら、うちからリリースしませんか?」と提案させていただいたんです。そこから、どんどんお話しが進んでいき、「せっかくならこれを機に、新しいレーベルを立ち上げよう!」ということになりました。

『アンリアルライフ』はNintendo Switchのほか、PCでもリリース。iOS、Androidでのリリースも予定されている。

――その話し合いにいたるまでは、“レーベル立ち上げ”という発想はなかったのですか?

木村もともと、近い雰囲気を持つゲームに絞ってリリースしていくというアイデアはあったのですが、それではパブリッシャーとしての多様性は保てないですし、ビジネスとしても難しくて……。ですが、レーベルという形を取れば、多様性を保ちながらも弊社独自のカラーを打ち出すことができる。hako 生活さんに後押ししていただけたことで踏ん切りがつき、レーベルの立ち上げを決意することができました。

――立ち上げ時のプレスリリースに「思わず世界に浸ってしまうような、情緒のある体験を持つゲームをリリースする」というコメントがありましたが、ヨカゼの提唱するコンセプトに一致するのであれば、現時点で発表されている4タイトルとは趣の異なる作品もリリースされる可能性はあるのでしょうか?

木村その可能性は大いにあります。現時点で発表しているタイトルだけでも、それぞれゲーム性は大きく異なるので、「本当に共通点はあるのか?」と感じられるかもしれませんが、実際にプレイしていただければ、そこに流れる空気や世界観から共通する要素を感じ取っていただけるはずです。ただ、私個人としては、レーベルとしての方向性やカラーというものは、ファンの方たちの意見も取り入れつつ、時代の流れに合わせて少しずつ変化していくものだと思っていて。

――不変的なものではないと?

木村取り扱うゲームに共通する関連性は維持しながらも、既存のイメージを破る、意外性をもったゲームを定期的にリリースしていかないと、この業界では生き残れないと思うんです。なにより、おなじようなタイトルばかり発売していては、ユーザーの皆さんに飽きられてしまうので、コンセプトは継承しつつも変化を出していくことが、レーベルを展開・維持していくうえで、非常に大切なことであると考えています。

レーベルの立ち上げと同時に発表された4タイトル。『ghostpia』は2020年秋〜冬シーズンに発売予定。

――プレスリリースには「NDA(秘密保持契約)の壁により、なかなか共有できなかったコンソール機の技術情報や、アートに関する知見の共有などを、ヨカゼを通じて行っていこうと考えています」ともありましたが、現時点で実現できていることはありますか?

木村まだまだ小さな一歩ですが、Nintendo Switchの開発情報にアクセスできる方を対象に、弊社のクローズドなSlack上で開発におけるさまざまなノウハウを共有したり、疑問点の相談をさせていただいたりしています。本格的に活用していくのはこれからですが、意義のあるものにしていきたいと考えています。

――続いて、『アンリアルライフ』についてお聞きしたいと思います。こちらの作品は、どういった経緯で開発されたのでしょう?

hako 生活東京に引っ越してきたばかりのころ、よく街を散策していたのですが、東京には密集しすぎているビル群や、進化した街中に放置された古い建物、サラリーマンが多すぎる駅など、“平然を装った異常な光景”がたくさんあるように感じました。その不思議な光景が、僕にとってはすごく魅力的に見えて。この感動をゲームで表現したいという衝動が、開発のきっかけになります。また、以前作った『COLOR FINDER』というゲームが、少年と猫の物語だったので、それの対になるよう、“少女と何か”が主人公のバディものにしたいという思いもあって。家の前にある交差点でぼんやりと信号待ちをしていたとき、信号機のランプが目のように見えてきて、そこで「信号機がパートナーだったらおもしろいかも!」というアイデアを思いついたんです。

主人公のパートナーとなるAI信号機。
“触ったものの記憶を読み取る”能力を駆使して、謎を解いていくことになる。

――日常生活のなかで得た発想が活かされているわけですね。そんな『アンリアルライフ』で、ヨカゼとしてのコンセプトが感じられるポイントを教えてください。

hako 生活特定の一部分だけというわけではなく、グラフィックから音楽、効果音、ストーリー、キャラクター、ユーザーインターフェース、HD振動にいたるまで、ゲームを構成するすべての要素で世界を表現しているので、触っていただければすぐに、ヨカゼが目指している方向性も感じ取っていただけると思います。その中でもとくに自信があるのがUIのデザインで、アイテム管理画面を実際のカバンに見立てたり、AI信号機が提供してくれる機能としてメニュー画面が表示されるようになっています。いずれも世界観を邪魔しないデザインになっているので、より深く物語に没入していただけるのではないでしょうか。

カバンの中に見立てたアイテム管理画面。所持品が増えても、簡単操作ですぐに必要なアイテムを取り出すことができる。

――プラットフォームにNintendo Switchを選ばれた理由を教えてください。

hako 生活いちばんの決め手はプレイスタイルの自由さですね。僕自身、家の中でも携帯モードとTVモードを切り換えて、いろいろなシチュエーションで遊んでいるので、『アンリアルライフ』も好きなスタイルで自由に遊んでいただけたらいいなと思い、Nintendo Switchでリリースさせていただきました。

――『アンリアルライフ』と同時に発表された『ghostpia』、『From_.』、『果てのマキナ』についても、概要を教えていただけますか?

木村『ghostpia』は幽霊たちが住む、決して外に出ることができない“幽霊の街”を舞台としたアドベンチャーゲームです。そんな街にやってきた異邦人の少女のお話なのですが、アートワークや世界観、没入感が高いストーリーに加え、素晴らしい音楽や演出も楽しめる作品になっています。『From_.』は青と黒だけで構成された、美しいピクセルアートの世界を旅するアドベンチャーゲームです。水の国を舞台に、主人公の郵便屋さんと、彼についてくるようになった“とんでもないもの”がいっしょにお話を進めていく、謎めいた展開をお楽しみいただけます。作曲家の椎葉大翼さんによるピアノ楽曲も素晴らしいので、こちらもご期待ください。『果てのマキナ』はほかの3作と違い、メトロイドヴァニア系の骨太アクションゲームになっています。刀で攻撃するだけでなく、それをブーメランのように投げて、飛んでいった場所までワープできる能力も駆使してステージを攻略していく、やり込み要素の高い1作です。ピクセルアートの美しさやアニメーションの出来栄えにもご期待ください。

『ghostpia』 クリエイター:超水道
『果てのマキナ』 クリエイター:ozumikan.

――各タイトルのクリエイター陣からはヨカゼの活動方針について、どのような意見が寄せられているのでしょう?

hako 生活立ち上げが決まったときから、お互いに意見を出し合ってコンセプトを固めてきたので、そこに関しては全員、共通の認識を持っています。そのうえで今でも、「ドット絵のゲームに限定せず、自由な発想で開発に当たろう」や、「海外市場も視野に入れたアピールをするべき」など、日々、さまざまな意見が飛び交っているので、そうした声や、ユーザーの皆さんからお送りいただいたご意見も真摯に受け止めつつ、今後の展開を模索していきたいと考えています。