2020年6月6日に3周年を迎えたスマートフォン向けバトルファンタジーRPG 『SINoALICE -シノアリス-』(以下、『シノアリス』)。それを記念して、プロデューサーの前田翔悟氏、原作・クリエイティブディレクターのヨコオタロウ氏を始め、運営・開発に携わる6人にインタビューを実施。開発秘話や運営裏話など、ここだけでしか聞けない話が盛りだくさん!

※インタビューはオンラインにて実施しました。

前田翔悟(まえだしょうご)

ポケラボ
『シノアリス』プロデューサー。予算、スケジュール、プロモーションといったさまざまな業務を担当している。

ヨコオタロウ(よこおたろう)

ブッコロ
『ドラッグ オン ドラグーン』や『NieR(ニーア)』シリーズなどのディレクターを担当。『シノアリス』では原作とクリエイティブディレクターを担当している。

松尾綾樹(まつおりょうき)

フリーシナリオライター
メインシナリオのプロットやジョブストーリー、コラボイベントのメインプロットを担当。

赤羽良保(あかばねよしほ)

ハイエスター
メインシナリオ本文やイベントシナリオ本文、ジョブストーリーを担当。

成富正基(なるとみまさき)

ポケラボ
リードクリエイティブプランナー・プロマネユニットリーダー。一部の季節・コラボ企画やイベントプロット、製作物の発注など、企画全般を担当。

黄之瀬永昊(きのせえいこう)

ポケラボ
クリエイティブプランナー。イベントプロットやウェポンストーリーに加え、一部のコラボ・季節イベントの企画・プロットも担当。

多彩なメディアミックスを展開! そして、3年目はさすがに「飽きる」発言!?

――まずは、2周年からのこの1年を振り返ってみたいと思います。2019年6月5日に2周年を記念し初のユーザーを招待した公開生放送イベントが実施されましたが、初のユーザーとのイベントはいかがでしたでしょうか?

前田熱量の高い多くのユーザーさんにお越しいただけました。生放送の前には、ユーザーの皆さんと話す機会を設けて、顔を見ながら直接さまざまな意見や感想を伺うことができ、貴重な経験ができましたし、もっとがんばろうという気持ちになりました。

――開発・運営サイドと直接触れ合える機会は少ないので、ユーザーとしてはこういったイベントがどんどんあるとうれしいです。ゲーム外の出来事といえば、2019年6月6日にマンガ、12月19日に小説の連載が開始されましたよね。マンガ、小説の住み分けは、どのような感じなのでしょうか?

ヨコオ『シノアリス』は、ひとりのキャラクターにさまざまなジョブがあり、極端なことを言えば、ジョブごとにアリスがいるんです。マンガでは、その中のひとりのアリスに焦点を置いた物語が展開していきます。対して小説は、本作の元ネタである童話の物語に近いストーリーがくり広げられています。

――ユーザーとしてはゲーム同様、マンガ、小説のこれからの展開も気になるところです。

ヨコオゲームに関しては3周年ということで、そろそろ終わっていいかなって思っています。少なくとも僕個人は、終わったらどうかという気持ちでいますけど(笑)。
 
一同 ……!?

前田ユーザーさんがいっぱいいますから……。

ヨコオ開発・運営側としては、飽きたというのが本音だと思うんですよ。ソーシャルゲームって飽きませんか?

前田やることがつねにいっぱいあるじゃないですか。やらなきゃいけないことをやるためにずーっと走り続けている感じだと思います。

ヨコオもう十分、前田さんはがんばった! 実家に帰ってお母さんに甘えましょう。もう少し親孝行したほうがいいですよ!

前田急にマジメな話ですね(笑)。

――松尾さんと赤羽さんも長く携わっていますよね。

松尾企画当初からなので、もう4~5年は経っています。人生でいちばん長く時間を割いている物かもしれませんね。

――飽きという話が出ましたが、ユーザーを飽きさせないための工夫はあるのでしょうか。

ヨコオユーザーさんも飽きているんじゃないですか? 売上だって無限に上がるわけではないし、「飽きさせないための仕組みでこんなにがんばっています!」と言っても、そりゃユーザーさんも人間だから飽きますよ。

松尾話の作りかたのパターンはそこまで多くないので、飽きているユーザーさんもいると思います。野球のピッチャーで言うとストレートと変化球ぐらいの数しかないと思っていて、それの組み合わせを変えていかにバッターであるユーザーさんを幻惑できるか……日々、そこを意識しながら書いています。

ヨコオいちばん作業がたいへんな赤羽さんは?

赤羽私は雇われライターなので非常に答えにくいです……(笑)。

前田文字数で言えば、赤羽さんがいちばん書いてますよね。

赤羽そうですね。でも私は会社員時代に長いプロジェクトにも所属していたので大丈夫ですよ! やり過ごす術は身に着けています(笑)。

ラプンツェルには実在のモデルがいた?

『シノアリス』ヨコオタロウ氏、プロデューサー・前田翔悟氏ら開発・運営陣がこの1年を振り返る! まさかの「サービス●●」発言も!?【3周年記念インタビュー】_01
“純潔”らしからぬ(!?)ラプンツェル。

――ここからはゲーム内の要素に触れていきたいと思います。2019年6月13日に新キャラクターの“ラプンツェル”が登場しましたよね。

前田それまでアラジン、三匹の子豚、くるみ割り人形という変化球のようなキャラクターが続いていたので、ラプンツェルは『シノアリス』らしい、かわいらしさのあるド直球なキャラクターで、ユーザーさんの反応もよかったです。

黄之瀬そういえば人気投票ではシンデレラを抑えて6位に入っていましたよね。

前田そうそう。新キャラクターは人気を得るのに時間がかかることが多いんですが、ラプンツェルはすごく人気が出て、ユーザーさんにハマったと思います。

ヨコオいま人気がないのは?

前田ハーメルン……。

黄之瀬圧倒的ですよね……。

ヨコオわかりました、殺しましょう。

――殺さないであげてください……。ラプンツェルの純潔ながら男好きというキャラクター性はどのようにして生まれたのでしょうか。

赤羽ラプンツェルの設定を最初にいただいたときは、どうプロットからシナリオに持っていこうか悩みましたが、自分の大学時代のことを思い出して、「こういう友だちいたなぁ」というリアルな経験をもとにして書きました。ですので、私としてはすごく書きやすかったです(笑)。

――なんとモデルがいたのですね!

赤羽思い当たる何人かの女の子たちの要素をひとつにまとめたのが、いまのラプンツェルです。

ヨコオそんなにいたんですか、あのタイプが。

赤羽私はサークルを掛け持ちしていて、各サークルに必ずあんな感じの子がひとりはいたんですよ。

ヨコオ赤羽さん、自分は違う体で話してますけど……。

赤羽私は違います! ホントに。私はどちらかと言うと、一升瓶を抱えてサークルの部室で寝ていたタイプなので(笑)。

――ラプンツェルの思わぬ誕生秘話を聞いてしまい、おどろくばかりです(笑)。そんなラプンツェル実装後の7月には、国内版のユーザーが500万人を突破しましたよね。

前田500万はかなりキリがいい数字で、そこを達成できたのはよかったです。最初のメンテナンス地獄だったときのインストール数がすごかったので、そこから比べるとちょっと鈍化してきた感はあります。ちなみに500万というのはリセマラを含んでいない数字です。

松尾500万という数字は頻繁に目にしますが、アプリによってはリセマラ込みの場合があるので、そう考えると『シノアリス』の500万人はすごいと思います。

――ユーザーが500万人という大台に乗った翌月の8月22日には、恒例の水着イベント“残響ノ夏、壊レタ傀儡”が開催され、かなり話題になりました。

ヨコオ前田さんは、ガチャが売れるからってすぐ水着にしたがるんですよ。隙あらば水着イベントをやろうとして、その結果“一定期間内に水着イベントをくり返してはダメ”という鉄の掟を課した思い出があります。

――やはり水着は売れるのでしょうか?

前田売れます、それはこの世界の決まり事です。

――水着は偉大ですね(笑)。このイベントでは、“乙女心ヲ震わスイケボのアンキ”が登場したのが衝撃的でした。

ヨコオ『シノアリス』では、ユーザーさんが新鮮な気持ちで遊べるように“イベントには必ずひとつギミックを入れる”というルールがあります。水着イベントのギミックとして、アンキがイケボになったらおもしろいかも、という提案があったのが登場のきっかけでした。

――そんなイケボのアンキが登場した“残響ノ夏、壊レタ傀儡”を含め、『シノアリス』のシナリオには運営の声のようなネタが盛り込まれているシナリオが多い印象を受けます。

松尾じつは、僕が最初の季節イベントのときにノリでやったのが始まりでした。それをきっかけにほかのプロットを書いてくれている人たちが「自分も1回はそういうノリのイベントをやってみたい!」という流れになり、いまにいたります。

――松尾さんが最初にやって、それが定番化したと。そういったネタに対してユーザーさんの反応はどうなのでしょうか。

松尾さすがに飽きていると思いますが、どうでしょう(笑)。

――そういうネタはほかのタイトルにはないので、差別化のひとつになっていると思います。

前田たしかに差別化はできますが、運営のネタは一発ギャグのようなものなので、それをやり続けると飽きられちゃいます。ですので、今後はどうしようかと……。嘘ではないリアルなことを書いているので、ユーザーさんにとっては運営の裏側が見えて楽しめていただけている面もあるのかなと思いますね。

『シノアリス』ヨコオタロウ氏、プロデューサー・前田翔悟氏ら開発・運営陣がこの1年を振り返る! まさかの「サービス●●」発言も!?【3周年記念インタビュー】_02
水着は売れる!!

イベントへの力の入れかたが尋常じゃない

――2019年10月10日には、新たな男性キャラクター“ハーメルン”が実装されました。先ほど人気がないという話が出ましたが……。

前田新しいキャラを実装すると、そのガチャはそこそこ回してもらえるのですが、ハーメルンの場合はガチャを回してもらえず、奮わなかったですね。もともといる女性キャラクターの人気が根強いため、後から入ってくる男性陣が苦戦しているという部分があると思います。

――そうなると今後は男性キャラクターを出すタイミングが難しそうですね。

前田売上のことを考えるとたしかに……。

松尾水着を連発しちゃうような運営ですからね(笑)。

前田でもハーメルンを実装したときには、乙女ゲーム系の雑誌から「アラジンとハーメルンの特集を組みたい」という話が来たので、いままでとは異なる層のユーザーさんにアプローチできる機会が増えたと思っています。あと、基本的にはキャラクターズによってゲーム内での扱いに優劣を持たせない方針にしており、平等にキャラクターズを出していくことにはしています。

――そういえば前田さんはハーメルン実装後の“執事達ノ饗宴”に合わせて実際に執事体験していましたが、どういう経緯で決まったのでしょうか。

前田会議中にその場のノリで決まることが多いです。以前放送した“ぼっち在宅生シノアリス”もノリで決まっちゃいました。

ヨコオいろいろとやっていますけど、前田さんって不思議な立ち位置ですよね。最初、前田さんは“お金が欲しい人”なのかなと思っていたんですが、最近はズレたことをやっていて、お金にならないことが多いですよね。

前田何でしょうね……自分でも本当にわからな
いです(笑)。

――そういう企画を楽しんでいるユーザーも多いと思うので、これからも楽しみにしています。2020年に入ると、2月4日から実施されたバレンタインイベントの"恋菓子の挽歌"がありました。恋愛ゲーム風の画面がすごくよくできていて、思わず笑ってしまいました。

黄之瀬2019年のバレンタインイベントは、アリスのガチャと人気投票を兼ね合わせたものでしたが、2020年はシナリオを作りたいという話を前田さんからいただきました。本来であればILCAの方に頼むのですが、今回は時間がなかったので僕が書かせていただきました。

――かなり気合が入っていたと思います。苦労した点も多かったのでは。

黄之瀬とくに表情差分の設定とスクリプト作業はたいへんでした。本来『シノアリス』は縦画面で表情差分がないのですが、今回のバレンタインイベントでは意図的に画面を横にして、表情差分をすべてつけました。赤羽さんにプロットの段階から表情差分のことをお伝えして、それを想定したテキストを考えていただきました。乙女ゲームを手がけたことがあるプランナーさんにも手伝っていただき、「赤羽さんのテキストはこういう表情で入れたほうがいい」など、さまざまな相談をしながら実装しましたね。

――そういった新しい試みがユーザーに受けたと。

黄之瀬正直言うと、かなり挑戦的なことをやり過ぎたので、ユーザーさんの反応に戦々恐々としていたのですが、SNSでいい反応が多かったので安心しました。自分自身が楽しく作れたからこそ、その楽しさがユーザーさんにも伝わったのかなと思います。

ヨコオポケラボさんは、ちょっと売れているからって調子に乗って、ふつうではやらないようなコストの掛けかたをしますよね。とくに『スペースインベーダー』コラボは正気かよって思いましたよ。

一同 (笑)。

ヨコオきっと会社の上の経営陣は、ここの部分のお金が無駄にかけられていることを知らないのでは?

前田調子に乗り過ぎるとエンジニアやプログラマーからめちゃくちゃ怒られますけどね(笑)。

ヨコオそりゃ怒りますよ。エンジニアさんとプログラマーさんはよくやっていると思います。

松尾でも、それは『シノアリス』がヨコオさん原案のタイトルだからですよ。

ヨコオいやいや、僕は関係ないでしょ(笑)。

松尾『スペースインベーダー』コラボのときは皆それで納得していました。ヨコオさんがシューティングゲームを好きだからって。

ヨコオ『シノアリス』の馬鹿馬鹿しさが出ていて、すごく楽しかったです。

――たしかにコラボとはいえ、かなり力が入っていましたよね。

前田『スペースインベーダー』コラボは、タイトーさんに監修していただきました。1ドット単位の動きまで見ていただいたので、あのクオリティーで再現できました。

松尾ひたすらゲームを遊んで仕様を読み解いて『シノアリス』に実装していくという、かなり地道な作業でした。改めてインベーダーゲームの仕様ってすごいなと思いました。

――コストをかける基準のようなものはあるのでしょうか。

前田明確な基準というのはありません。そのイベントに合っているかどうか、ユーザーさんがそのイベントで期待するもの、そしてその期待をどこまで超えていくのか、そういうところを考慮しながら判断しています。あまりにも外れすぎていてもダメだし、かといって枠に収まり過ぎていてもダメかなと。

――その判断って難しそうですね。

前田そうですね。ヨコオさんが言ったらやる、みたいな部分もありますよ。

ヨコオイベントに関してはぜんぜん言ってないし!

前田ヨコオさんがボソッと言うアイデアを拾ってやっていたりするんですよ。

ヨコオたしかに、いただいたアイデアに対して「こっちのほうがおもしろいんじゃない?」と、提案することはありますね。

前田ヨコオさんと話しながらアイデアを膨らませて、それを再現していくというパターンが多いです。

――ちなみにイベントは何ヵ月前から仕込んでいるのでしょうか?

松尾最初のころは1~2ヵ月前ぐらいからでしたが、いまでは半年前から仕込むようにしています。

幼児化イベントは当初の構想ではバッドエンドに?

『シノアリス』ヨコオタロウ氏、プロデューサー・前田翔悟氏ら開発・運営陣がこの1年を振り返る! まさかの「サービス●●」発言も!?【3周年記念インタビュー】_03
まさかの幼児化実現にユーザー困惑?

――4月28日からは多くのユーザーさんが困惑(?)した幼児化イベント“童歌ノ聖域”が開催されました。どういった経緯で生まれたのでしょうか。

成富もともとは、5月にコラボイベントをやる予定だったのですが、それがきびしくなり、別のイベントを行うことになりました。その際に黄之瀬さんと相談して、僕が「こどもの日だし、シノアリス幼稚園はどうか?」と言ったのが、このイベントのきっかけです。

黄之瀬その案をもとに僕が企画を考え、ロリアリスが誕生しました。シナリオ的にはギャグかシリアスで悩みましたが、今回は泣かせる系のシリアス路線で行くことにしたんです。

ヨコオオタクっぽいイベントって、黄之瀬さんが関わっているものが多いですよね。

黄之瀬僕はオタク気質なので、どちらかと言うとそういったイベントを手がけることが多いかもしれません。

――ヨコオさんとしては、幼児化イベントのプロットを見たときはどうでしたか。

ヨコオ「これガチャで売れるのかな」と思いました。それよりも最初に出てきたプロットのオチが残酷過ぎて、直すように言った記憶があります。

――それほど残酷な内容だったのですか?

黄之瀬当初は、シンデレラが死んでそのまま終わるというバッドエンドを用意していたのですが、ヨコオさんからハッピーエンドにしたほうがいいというご指摘があって修正しました。ユーザーさんの反応も「ハッピーエンドでよかった」という意見が非常に多かったので、ヨコオさんには改めてお礼を言いたいです。

ヨコオ僕はバッドエンドでもよかったのですが、死んで終わり! という一時期のフランス映画のようなオチのつけかただったので、これでは誰もついて来られないと思いました。

黄之瀬自分の好みの悪い部分が出てしまいました。結果的にハッピーエンドにしてよかったです。

――そもそもシンデレラをママ役にした理由は何だったのでしょうか?

黄之瀬いばら姫、かぐや姫、シンデレラがママ役の候補でしたが、成富さんと相談していてふとヤンママのシンデレラが嫌々ながらもマジメに育児に励むというビジョンが浮かんだんです。そのギャップがいいと思い、シンデレラをママ役に選びました。

『シノアリス』ヨコオタロウ氏、プロデューサー・前田翔悟氏ら開発・運営陣がこの1年を振り返る! まさかの「サービス●●」発言も!?【3周年記念インタビュー】_04

――個人的にはヤンママのシンデレラはピッタリでした! イベントに対するユーザーの反応はどうでしたか?

前田エイプリルフールのネタとして公開した際、「『シノアリス』なら本当にやるのでは?」という期待感を持つユーザーさんが多かったです。そういった中で実際に開催したので、「やはりやってくれた!」という感じでかなりよろこんでもらえました。

――ちなみにアリス、アラジン、ドロシー、人魚姫以外の幼児化については?

前田いまのところ予定はないです。

ヨコオちなみに水着と幼児ってどちらが売れますか?

前田水着は出しすぎて需要と供給が飽和状態なので……。

ヨコオでしょうね(笑)。

前田幼児のほうが需要はある……のかな。

――つねに変化していく環境の中で、ユーザーさんのニーズに合ったものを提供していくのはたいへんですね。売上という点では、予想以上に売れた、または予想以上に売れなかったものというのはあるのでしょうか?

前田予想以上に売れたものはないですが、予想通り売れなかったのはドロシーのクレリックと怠熊のミンストレルですね。

――作っている段階から「売れないなぁ」という雰囲気でした?

前田売れないというわけではないですが、「これはどこの層に刺さるのか?」と(笑)。

ヨコオクレリックを実装したときに全然ガチャを回してもらえなくて、前田さんから「水着が売れます!」と言われたんですよ。ですので、首から下は水着で首から上がクマの怠熊のミンストレルを用意して「はい水着です」というやり取りがありましたね。

――(笑)。

ヨコオドロシーはネタキャラであり、ソーシャルゲームの闇を映し出す鏡のような存在だったりします。

前田ユーザーさんもそういうドロシーの存在に喜んでくれている部分もあるので。逆にドロシーでかわいいものを出すと「アレ?」という反応をされることがあります(笑)。

――たしかにドロシーはそういう立ち位置でいてほしい気がします。ドロシーを含め、本作のキャラクターは個性が強いですよね。シナリオに反映させるうえで難しくないのでしょうか。

松尾僕はこのタイトルで初めてシナリオを書くことになったので、最初のころは単純に実力が足りず、ギシンとアンキに頼りがちなところがありました。

赤羽私は噛み合わないキャラクターどうしがメインのイベントのときは苦しいですね。それでもなるべくそれぞれの個性を生かして噛み合うようにシナリオを書いています。

――具体的にどういうときが苦しいのでしょうか。

赤羽ボケとツッコミが揃わないと辛いですね。ボケだらけの場合は、「誰を進行役にすればいいのか」とか、ツッコミだらけの場合は「誰かにボケさせたい!」とか、そういうところで毎回悩んでいます。

前田たしかに『シノアリス』のキャラってボケが多いですよね。

赤羽そういう意味では貴重なツッコミ役としてドロシーが使いやすいです。ありとあらゆる意味でドロシー様様だと思います。

ヨコオあとアリスが使いづらくないですか?

赤羽そうですね。じつを言うと若干ですが、アリスは使いづらいです。ゲームの顔になるキャラクターなので下手にイメージを壊せない部分もあって、「アリスにこんなセリフを言わせるわけにはいかない!」という感じでお姫さまのように扱っています。その点、くるみ割り人形には助けられることも多いです。どう扱ってもおじいちゃんは、広い心で受け止めてくれますので(笑)。

――成富さんと黄之瀬さんはどうでしょうか?

成富キャラクターどうしが絡むイベントのときは、主体性のあるキャラクターがいないとシンドイですね。そういうときってどうしてもシンデレラが使いやすくて、3月のお花見イベントのプロットを担当したときは、シンデレラを進行役にしました。そして、主体的に動くのでどんどん面倒見のいい立ち位置になってきている気がします(笑)。

黄之瀬いまだに扱いづらいのは、グレーテルですね。スタンドアローンにさせるべきか、ほかのキャラクターズともっと関わらせるべきか、どう動かせばいいんだろうと悩むことが多いです。

――やはり個性が強いゆえに苦心していることもあると。ストーリーといえば、ウェポンストーリーはものすごい量がありますよね。

成富いままで書いたウェポンストーリーの本数は1700本以上ありまして、文字数はざっくりですが、えーっと……75万文字あります。

一同 (笑)。

ヨコオギネスに登録しましょう。

前田そうですね。“ひとつのゲームに収められているストーリーの数”というギネスを出そうかと考えています。あとは、いつかウェポンストーリーを含めたすべてのストーリーが載っている本を出したいですね。

――相当な分厚さになりそうですがいいですね! ウェポンストーリーはどれぐらいの時間をかけ書くのでしょうか。

松尾当時は1本30分で書いてました。

――30分ですか!?

松尾プランナー時代、どうしてもウェポンストーリーを盛り込みたかったので、「僕が書くので入れさせてください」と直談判しました。平日はプランナーの仕事をやり、休日にウェポンストーリーを書いていましたね。その際、土日でウェポンストーリーを20本仕上げないと間に合わず、時間にして1本30分のペースで書かないと寝る時間がなくなってしまうので、なんとしても30分で書いてました。

――作業量もすごいですが、ネタが尽きないのもすごいですよね。

松尾いえ、けっこう尽きていますよ。最初のほうは被らないようにやっていたのですが、いまはかなり前に使ったネタなら多少被ってもいいかなって(笑)。

運営におけるターニングポイントと4周年に向けて

――3年間を振り返って、節目となったポイントや出来事は何だと思いますか?

前田やはりサービス開始直後のメンテナンス地獄ですね。あそこがターニングポイントだったと思います。運営をしているとたいへんなことがいっぱいありますが、あのときの地獄に勝るものはないです。

ヨコオ僕にとっては1周年の節目がターニングポイントでした。『シノアリス』の準備を進めていく中で、リリースをするまでがんばるのが僕で、リリースをした後の売上をがんばるのがポケラボさんという話を前田さんとしていたのですが、当時は寿命の短いソーシャルゲームがいっぱいあったので、1周年を超えられるかなという思いがありました。ポケラボさんががんばってくださって、1周年を迎えたときは「これで怒られずに済む」という気持ちとともに、よく生き延びたという印象を受けました。

――2019年には、成富さんと黄之瀬さんが新たにシナリオチームに加わりましたが、どういった変化がありましたか?

前田以前は松尾さんと赤羽さんしかいなかったので、そのころよりもやれることが増えました。とくにコラボに対して積極的に取り組めるようになったと思います。

――今後の展開も楽しみです。ちなみに、新キャラクターはそう遠くない時期に登場するのでしょうか?

ヨコオじつは、いちばん最初の段階で、登場キャラクター数の上限を決めていまして、あと●人くらい残っているんですね。つぎは戦隊モノみたいに5人組にするのはどうですか?

前田それ、一気に消費して終わらせにかかってるじゃないですか(笑)。

――(笑)。最後に皆さんの4年目の目標を教えてください。

前田コラボイベントを積極的に行っていきたいです。また今年はグローバルな施策に取り組んで、より多くのユーザーの皆さんに遊んでもらえるようにがんばっていきたいと思います。

ヨコオ僕はエンディングを見せることですね。続けることが必ずしも皆の幸せではないし、それは恋に似ていると思います。終わることもひとつの愛ですよ。というわけでユーザーの皆さん、4周年は永遠に来ないです。

黄之瀬ヨコオさんは終わりたいとおっしゃっていますが、僕は続けられる限りは続けていきたいです(笑)。『シノアリス』は、ほかのソーシャルゲームにはない、独特かつ濃厚な世界観とキャラクターが魅力的で、そこが好きという方が多いと思います。中には『シノアリス』以外のソーシャルゲームは遊ばないというユーザーさんもいるので、そういう方を含め、すべての皆さんがこれからも楽しめるようなコンテンツやシナリオを作っていきたいです。

成富施策の量が増えてきているので、ユーザーさんの皆さんに満足いただけるものを提供できるようにひとつひとつ確実にこなしながら、4年目を無事に迎えられるようにがんばりたいと思います。

松尾いつ終わるかわからないので、つねにユーザーさんへの感謝の気持ちを込めて作っていきたいです。そして、ユーザーさんが『シノアリス』を遊んでいてよかったな、と思い出になるようなものを届けられたらいいなと思います。

赤羽最近、少しだけ作業が遅れてしまうことが続いていたので、初心に返って締め切りをしっかりと守っていきたいです! またプレイしているユーザーの皆さんが『シノアリス』のキャラクターを好きになっていただけるようなシナリオを書き続けたいです。

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