2020年5月29日にNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)で発売された『ゼノブレイド ディフィニティブ・エディション』(以下、『ゼノブレイド DE』)。本作は、2010年にWiiで発売された『ゼノブレイド』のリマスター版となる作品だ。
『ゼノブレイド DE』では、主要キャラクターのモデリングが一新されたり、HD画質に進化したりと、ビジュアル面でのアップグレードが行われているほか、ゲーム中で流れる一部の楽曲をオーケストラで再収録。さらに、装備を変えずに見た目だけを変更する“ファッション装備”、一度見たムービーやキズナトークを見返せる“イベントシアター”などの新機能、そして本編のエンディングから1年後の世界を描いた追加ストーリー“つながる未来”が収録されているなど、まさに『ゼノブレイド』の決定版と言える内容となっている。
本稿では、『ゼノブレイド DE』のプレイレビューを通じて、本作の魅力に迫っていく。
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まず、『ゼノブレイド』を未プレイの人に向けて、本作の概要をざっくりと説明しよう。本作の舞台となるのは、かつて壮絶な争いをくり広げた“巨神”と“機神”という“2柱の神の骸(むくろ)”の上。そこにホムス(人間)、そして機神兵が暮らす世界が広がっているという斬新な世界観が特徴となっている。
神様の体の上にできている世界とはいえ、とにかく広い。巨大な滝や幻想的な光に溢れる場所など、“骸(むくろ)”のイメージとは程遠いくらいに美しい景色が広がっていて、世界を歩き回るだけでも十分に楽しいのだ。このフィールドを自由に駆け回れるのが、本作のいちばんの魅力だと言っても過言ではない。
さらに、思いがけないルートが用意されていたり、フィールドの端で秘境が発見できたりと、探求心をくすぐる仕掛けも豊富。昼夜や天候の変化もあり、昼と夜とでフィールドの雰囲気もガラリと変化するのもポイント。人やモンスターの活動時間も決まっていて、同じ場所でも訪れる時間によってまったく違う景色が広がっているので、新鮮な気持ちで探索が楽しめる。本編そっちのけで、ついつい探索に夢中になってしまうほど、細部まで作り込まれているのだ。
また、ビジュアルの向上についても注目したい。オリジナル版と比べると、生い茂る草木や岸壁、おどろおどろしい沼地など、あらゆるオブジェクトの描画がより鮮明に。質感もよりリアルなものへと進化しているので、フィールド探索の臨場感も向上している。とくに、遠景が圧巻。どこまでも世界が広がっているという感覚を与え、探索意欲を掻き立ててくれる。オリジナル版をプレイした人ならなおさら、そのディテールに驚くはずだ。
一瞬の判断が勝敗を分ける緊迫したバトル
本作のバトルはリアルタイム形式で、フィールドの移動からシームレスに移行。自動で敵を攻撃する“オートアタック”と、“アーツ”と呼ばれる技を選択して戦っていく。バトルのテンポもよく、操作していて気持ちがいい。
ただ、決してバトルは単純なものではない。ヘイト(敵対心)を意識したり、デバフ(弱体化)を活用しないと苦戦するなど、戦略性の高いバトルに仕上がっているのだ。特殊な効果を持つ“アーツ”を使うタイミングや位置取りも重要で、強敵を相手にボタン連打で勝つのは難しい。そのぶん、あれこれ悩みながら戦術を練るだけでもおもしろく感じるし、強敵に勝利できたときの快感は格別だ。
バトルを語るうえで、未来視(ビジョン)も見逃せない要素だ。未来視を簡単に説明すると、少し先の未来に訪れる危機を知ることができ、それを特定の行動で回避することで未来を変えられるというもの。キモとなるのが、危険な未来が訪れるまでの猶予が10秒ほどしかないということ。予見した未来に抗うために、瞬時に判断して対策となる行動を取る必要があるのだが、これがいいスパイスとなり、バトルをより緊迫したものにしている。「ここで判断を見誤ればパーティーが全滅する」といったような、手に汗握る戦いが楽しめるというわけだ。実際、勝てるかギリギリの戦いで未来視が発動すると、めちゃくちゃ焦る。そしてうまく未来に抗うことに成功したときは、達成感もあって、「俺うまいんじゃね?」という気持ちにさせてくれる。
とはいえ、自分のレベルが敵よりも大きく上回ると、アーツを連発するだけのゴリ押し戦法でもバトルに勝利できるようになる。寄り道をしすぎたあまり、メインストーリーのボス戦があっけなく終わってしまったということも少なくなく、本来のバトルの醍醐味を味わえないまま物語が進んでしまうこともあるのだ。そこで役立つのが、新たに追加された“上級者設定”の機能だ。この機能を使えば、キャラクターのレベルを調整することが可能。筆者のように、強敵とのヒリつくような戦闘が楽しみたいという人にとっては、この機能の追加は本当にありがたい。低レベルでのクリアーを目指す、“縛りプレイ”をしたい人にもオススメの機能だ。
衝撃の連続で物語に一気に引き込まれる
本作の物語は、巨神の骸の上で暮らす“ホムス”(人間)と、機神の骸の上で誕生した“機神兵”の対立を主軸に描かれていく。ネタバレを防ぐために詳しくは書かないが、とにかく序盤から衝撃の連続という展開で、物語を進めるにつれて、自然と「早く続きが知りたい」という気持ちになってくる。序盤から張り巡らされていた伏線が徐々に回収され、次第に世界に秘められた驚くべき真相が明らかになっていくストーリーは、没入感もすさまじい。とにかくその作りが丁寧で、“おもしろい”と感じさせてくれる。これからプレイする人は、SNSなどでのネタバレに気をつけてほしい。まっさらな状態で物語を体験すると、味わえる感動が何倍も違うはず。
本作では、装備品によって外見も変わる仕組みとなっているが、これはカットシーンにも反映される。オリジナル版では、シリアスなシーンで上半身が裸といったように、少々間抜けな絵面ができ上がってしまうこともあったが、『ゼノブレイド DE』では新たに“イベントシアター”を追加。一度見たムービーやキズナトークをいつでも鑑賞できるようになっている。さらに、見た目だけを変更する“ファッション装備”の機能も加わっており、前述の場違いな格好になる心配がなくなったのも、地味にうれしい。
また、パーティーメンバーになる仲間だけでなく、住人たちひとりひとりにもエピソードが用意されているのも本作の魅力のひとつ。クエストをこなしたり、会話をすることで、その住民との関係性、さらに住民どうしの関係性が変化していく仕組みとなっている。それらを見やすく“キズナグラム”として視覚化したことにより、『ゼノブレイド』という世界がよりわかりやすく、そして入り込みやすくなっている。気づけば世界に没入していて、住人たちと会話するだけでもワクワクしてくる。NPCと会話するだけで楽しいという、RPGならではの魅力を再認識させてくれる作りは、“すごい”のひと言だ。
本編が終わっても、まだまだシュルクたちの冒険は終わらない。『ゼノブレイド DE』では、追加ストーリー“つながる未来”が収録されており、本編のエンディングから1年後の世界を描いた物語が紡がれていく。あまり多くを語るつもりはないが、とにかくメリアがかわいい。そしてかっこいい。このシナリオをプレイすれば、彼女のファンもきっと増えるはず。そして冒険の先でとんでもない事件が!? と、気になる展開が待っている。プレイボリュームも、さすがに本編並みとは言わないが、それでもRPG作品1本ぶんに匹敵するほどの体験はあるので、長く楽しむことができるはずだ。本編クリアー後はぜひ追加ストーリーにも触れてみてほしい。
寝不足必至の圧倒的なやり込み要素
多数のやり込み要素が用意されているのも、本作の特徴。フィールドで手に入れられるコレクションアイテムを全種類集めたり、さまざまな条件を満たすのが目的のプレイアワードの全達成を目指したりと、膨大なボリュームの遊びが詰まっているのだ。
『ゼノブレイド DE』では、新たに“タイムアタックモード”を追加。指定のバトルで、クリアータイムやチェインアタックの使用回数、総回復量などの項目を加味して、評価が下されるというものだが、これがなかなかやり応えがあるものとなっている。アーツを使うタイミングを考慮することはもちろん、操作キャラクターが指定される高難度バトルも用意されていて、どうクリアーするかという戦術を練っているだけでおもしろい。超高難度のバトルも用意されているので、オリジナル版をクリアー済みというプレイヤーも存分に楽しめるはず。
本作はビジュアル面がパワーアップしているが、それでも最先端のゲームと比べると、やや見劣りすると感じてしまう人もいるかもしれない。しかし、そんなことが取るに足らないほど、プレイ体験は極上のもの。フィールド探索、バトル、ストーリーなど、10年前の作品とは思えないくらい、RPG作品としての完成度が高い。RPG好きな人はもちろん、RPGにあまり触れていなかった人にもオススメできる内容、プレイボリュームとなっている(極めようとすると半年は遊べるレベル)。いまなお根強い人気を誇る『ゼノブレイド』、そして以降に発売されたシリーズ作品。その系譜をたどるためにも、ぜひプレイしてほしい。そして、ハマりすぎて寝不足になるのだけ注意を(笑)。