新型コロナウイルス感染症の影響で外出自粛が続いている昨今。eスポーツ界隈も例にもれず、プロツアーやイベントの延期、中止が相次いでいる。『クラッシュ・ロワイヤル』のプロリーグなどオンライン実施を行っているタイトルもあるが、オンラインへの切り替えに課題を残すタイトルも多く、活躍の機会が激減したプロゲーマーも少なくない。

そういった状況の中、プロゲーミングチーム“FAV gaming”に所属するsako選手は、いま自分ができることに取り組んで困難を乗り越えようと、自宅でできる活動に力を入れている。本稿では、sako選手にプロゲーマーの現状や実際に力を入れている活動に焦点を当てて、お話を伺った。

sako(さこ)

プロゲーミングチーム“FAV gaming”所属。世界有数のテクニックを持つ技巧派プロプレイヤー。 国内外の数々の大会で好成績をおさめ、2013年にはカプコン公式世界大会“CAPCOM CUP”に優勝して初代世界王者となった。『ストリートファイターV チャンピオンエディション』ジャパン・eスポーツ・プロライセンス保有。

新型コロナウイルス感染症が与えるプロゲーマーへの影響とは?

――世界的な新型コロナウイルスの大流行により、国内では緊急事態宣言が発出され外出自粛策が取られています。こういった状況でプロゲーマーにはどのような影響が出ているのでしょうか?

sako僕がメインで活動している格闘ゲームでは、昨年のいまごろは月に3回くらい海外大会があったので、海外生活のほうが長いくらいでした。ですが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響で大会の中止や延期が相次いでいますし、そもそも渡航すらできない状態になっているので、4月の大会出場はひとつもありませんでした。

――大会出場がなくなることで、具体的にどのようなことが起きるのでしょうか?

sako僕らプロゲーマーは、大会で結果を出して賞金を獲得したり、活躍して注目を集めることで露出してスポンサーを獲得しています。大会やイベントが実施されないということは、そういった機会を失ってしまうのでかなり痛手となります。

――なるほど。収入に直撃してしまうわけですね。

sakoイベントや番組出演の仕事は明らかに減っています。僕の場合は嫁や娘もいますし、実家の親もいい歳ですから、いざというときに援助をできるように余裕を持っておきたいのですが、この状況がいつまで続くかわからないとなると、やっぱり不安が募ります。

――1カ月では収束しないという見方もありますしね。

sako1ヶ月だったり、2、3か月我慢すればいいとわかっていれば、過去にもそのくらいイベントがなかったこともありますから、なんとかなるんですけど、さすがに1年以上続くとなったらどうしたもんやろと。それに、今期実績が残せないとなると、来期以降に響くと思うので、いまのこうした状況だけではなく、将来に不安を覚えてしましますね。

――こういった状況については家族と話したりはするのでしょうか?

sakoもちろんです。プロゲーマーとして上京するときも、嫁と納得するまで話し合いましたし、今回もこういった状況についてはしっかりと家族会議を行いました。そして、まずは自分たちがいまできることをしっかりやろうと。

プロゲーマーとしていまできることに取り組む

――具体的には、在宅でどのようなことに取り組んでいるのでしょうか?

sako在宅と言ったら、ゲームの練習と配信ですよね。もしかしたら一気に大会のオンライン化が進んで、自粛明けすぐに出場しなければならないということも考えられますので、トレーニングについてはいつも以上に真剣に取り組んでいます。

また、例年であれば、この時期は大会出場の連続だったため、いつも楽しみにしてくれるファンがいながらもなかなか配信できなかったので、この機会にできるだけ配信して楽しんでもらえるようにしています。こういったことで露出機会を増やせば、ファンの皆さんはもちろん、スポンサーさんも喜んでくれると思いますし。

――外出自粛でストレスが溜まっている人もいると思いますから、sako選手の配信を見てやわらぐかもしれませんし、みんなが幸せになれそうですね。

sako配信は僕がゲームをプレイしているもののほか、ほぼ毎日10時~12時くらいのタイミングで、嫁と娘がふたりで『あつまれ どうぶつの森』のゲーム実況を行っているものもあります。同じような年齢のお子さんがいる家庭であれば、楽しく見られるはずです。実際に、視聴者の方から「毎日親子で見ています」という話もいただきますし、そのおかげで子どもと共通の話題ができて、コミュニケーションにつながったとも伺いました。そういった誰かの生活のプラスになれればうれしいと思っています。

――それはうれしいですね。ちなみに、個人だけではなく、チームでも世のゲーマーを元気づけるような活動をする雰囲気があるようですね。

sako個人ではなくチームとしての活動になるのですが、FAVgamingの取り組みとしてFAVCUPというオンライン大会を積極的に実施する予定です。自粛でオフイベントもありませんし、対戦交流会などもできないので、それならFAVCUPを通じて交流して欲しいなと。家でじっとしてると気が滅入ってきちゃいますからね。ぜひ、ゲームをプレイされている方には参加していただき、プレイしていない人は一緒に視聴して楽しんでもらえればと思います。

早朝から一日8時間

プロゲーマーの在宅勤務スケジュールは?

■sako選手のタイムスケジュール
5時:起床
5時~7時:朝練
7時半:家族で朝食
8時~10時に練習
10時~12時:昼寝 ※この間に嫁兼マネージャーのあききさんと娘のふたりが配信
12時:家族で昼食
13時~18時:練習
18時~19時:sako選手が食事の準備
19時~:家族で食事
19時半~:娘と一緒に動画を見ながらエクササイズ
20時~:家族でお風呂
21時~:奥さんと娘が就寝
21時~24時:練習してから就寝

 もともと海外遠征のない期間は在宅で練習することが多いそうだが、それにも増して練習量がすごい。さらに、いつも以上に真剣に取り組んでいることから、通常より濃密な練習が行われていることは間違いない。また、外出自粛もあり室内での運動メニューが追加されており、娘との交流を図りながらというところが、なんともほっこりする。ちなみに、sako選手の配信は、練習が一段したタイミングで行うそうだ。

※sako選手の定期配信「Wednesday SakoAkiki TV」は毎週水曜23時ころからsako選手のTwitchチャンネルにて放送。放送についての詳細はsako選手とマネージャーのあききさんのTwitterを随時チェックしておこう。

――スケジュールを見ると、sako選手が夕飯の当番なのですか?

sakoいま、嫁が首を痛めて満足に動けない状態ですので、食事の準備だったり、お風呂から上がって娘と嫁の髪を乾かすのだったりを自分がやっています。髪は長し、他人の髪をドライヤーで乾かすなんてことをしたことがなかったので、最初はものすごく時間がかかりましたし、サイババさん(たとえが古い(笑))のような爆発した髪型になってしまいましたが、いまはだいぶ慣れてうまくできるようになりました(笑)。

――運動も定期的にやってるんですね。

sakoずっと自宅にいると身体がなまってしまいますし、YouTubeでダイエット用の動画を見ながらダンスをやっています。音楽を聴きながらやるタイプのものなら娘といっしょにできるので、楽しいですよ。

――実際にTwitterでその様子をアップしていましたが、とても楽しそうに見えました。こういう時期ですし、そういったほほえましい様子は見た人も元気になりそうですよね。

sakoそう言ってもらえるとうれしいですね。それに、せっかくなら楽しみながらやりたいですから。でも、Twitterに上げている部分は娘とやるライトなもので、あの後に大人向けのものをやっているのですが、そっちはメチャメチャ過酷です(笑)。

――運動の成果は出てきていますか?

sako体重自体はあまり変わっていないのですが、筋肉がかなりついてきた印象があります。しんどいけど、楽しみながらやっているので続けられそうです。

娘と夕食の準備をするsako選手。
sako選手の手作りカレー。
家族で過ごす時間を大切にするsako選手。

外出自粛も前向きにとらえるプラス思考

――お話を伺っていると、在宅での生活を前向きにとらえているように見えますね。

sakoこの状況を受け入れて、いまできることをやろうと言ったように、この生活に不安はありますけど、前向きにとらえるようにしています。実際に、娘は保育園が休みで、嫁もテレワークになったので、家族の時間がすごく増えました。ここ数年は、毎週のように海外大会に出場していたため、家族で過ごす時間が限られていましたので、そういった面ではうれしいですね。

――ゲームの練習も真剣に取り組んでいるとのことですが、そこも在宅であることを前向きにとらえている部分もあるのでしょうか?

sakoはい。例年はプロツアーが3月~12月に行われていて、その期間は毎週のように海外大会に参加するため、どうしてもゆっくり練習に時間を割くことができません。そうなると、勝利に直結した行動や戦略を詰めることが優先されてしまいます。いわば目先の大会で勝つための練習というか。ですが、本来格闘ゲームは、一見勝ちに直結していないような選択肢でも、最終的に“勝利に結びつく一手”になることもあります。そういった選択肢の“引き出し”を多く持っていることが、強さに深みや安定感をもたらすんです。いまは時間があるので、そういった要素を取り入れる練習を行えているのが大きいですね。

――より深いやり込みが行えているというわけですね。

sakoそれに、もともと僕は勝つためだけではなく、無限に広がる可能性を追い求めて、いろんなことを調べたり練習するのが好きですし、そういった誰もやっていないようなプレイを魅せたいので、たくさん練習の時間が取れるいまは、本当に充実しています。

――タイムスケジュールを見ると、一日8時間以上は練習されているようですが、相当量やっているんですね。

sakoいま僕がメインでプレイしている『ストリートファイターV』シリーズは、登場から5年近くが経ちましたが、プレイしていていまが一番楽しく感じていますし、練習している時間ももっとも長いと思います。

――在宅なので、オフラインでの練習を行えないことが心配でしたが、そういうこともなさそうですね。

sakoオフラインでの練習が必要かは時期によるのですが、いまはオフラインの大規模大会がないので、オフラインにこだわって練習する必要はありません。オンラインやトレーニングモード(ひとりで練習するゲームモード)で満足のいく練習ができています。

――それだけモチベーション高くやっているのであれば、外出自粛明けの大会での活躍を早く見たいですね。では最後に、ファンの皆さんへのメッセージをいただけますか?

sako家にいる時間が増えたぶん、配信の割合を増やしています。ゆるいストリームですが、外出自粛で気が滅入ってる人を少しでも楽しい気分にできたらうれしいですね。おうち時間を工夫して、お互いがんばってこの状況を乗り切りましょう!

取材を終えて

 sako選手は格闘ゲーム界ではレジェンドとして知られる世界的なプロゲーマーです。今回の取材を通じて、そんなにすごい選手でも大きな不安に包まれているという、SNSや配信上ではわからない生々しい実情を知ることができました。

 しかしsako選手は、そんな状況にうつむくことなく、いつトーナメントに出場しても最高のパフォーマンスを発揮できるようひたむきに練習し、家事や育児などの家庭もしっかり両立する。そんな姿にとても感銘を受けました。

 今後、大会のオンライン化が進んだり、事態が少しずつ鎮静化していくことで、プロゲーマーたちの活躍の場も増えてくると思います。eスポーツのイチファンとして、少しでも早くプロゲーマーたちが試合で活躍する姿を見たいです。それまではコロナに負けず、自宅で自分のできることをがんばっていきたいですね。というと、筆者としてはこういった記事を世に発信していくことになるのかな? と思いますので、今後もいろいろな取材を行っていきたいです。(豊泉)