新型コロナウイルスの世界規模での蔓延により、大小さまざまなイベントが自粛を発表する昨今。その影響はゲーム業界も例外ではなく、2020年6月9〜11日に開催予定だったE3 2020(アメリカ)を始め、8月25~29日に開催予定だったgamescom 2020(ドイツ)も会場での開催断念が発表されるなど、大規模イベントが軒並み中止に追い込まれています。こうした現状によって、毎年あるいは一定周期で開催されるイベントが必ずしも従来と同じ形式で行われるとは限らないこと、そしていざ不測の事態に陥った時に各イベント主催者および出展者はどのようなアクションを起こせるのかということが、図らずも明るみになったといえます。

 そんなきびしい状況の中で注目を集めているのが、さまざまなコミュニケーションサービス・アプリを介して行うオンラインイベント。ひとくちにオンラインイベントといっても、参加形式やスパンなどによりさまざまなタイプが存在します、中でも“インターネットを介して不特定多数のユーザーが同じ時間帯に同一セッションに参加し、臨場感をもって情報を共有するタイプ”が、物理会場でのイベントの代替手段として選択されつつあります。

 そうした流れに、ゲーム業界内でとりわけ柔軟かつスピーディーに対応しているのがインディーゲーム界隈。日本最大規模のインディーゲームの祭典BitSummit The 8th Bitが延期し、代替イベントとしてBitSummit Gaidenを6月27、28日にオンラインで行うことを発表したのはご存じの通りです。もともとインディーゲームは“コミュニティの活性化と維持”が命題だけに、どんな状況下でも行動し続けなければならないからでしょう。

 今回は、2020年4月に開催された、ふたつの国内インディーコミュニティによるオンラインイベントの参加リポートをお届けします。正直まだ模索段階との印象はぬぐえませんが、小~中規模のセッション共有型オンラインイベントのありかたの一例として参考にしてください。

インディーコレクションJAPAN

2020年4月21日 20時開催

 東京を拠点とする老舗インディーゲームコミュニティ“Tokyo Indies”と、2019年に誕生したインディーゲームクリエイター支援プラットフォーム“asobu”が協力して立ち上げた、オンラインミートアップ。毎月中旬の火曜日夜にデジタルものづくりカフェ“FabCafe Tokyo”(東京都渋谷区)にて交流会を開催してきたTokyo Indiesが2020年4月の開催を断念したことを機に、両代表を中心に企画されたものです。

 イベント形式はTwitchでのライブ動画配信+Discordの専用チャット。Tokyo Indies代表・アルヴィン氏の司会進行で、従来イベントの中心的企画である“インディーゲームおよび関連プロジェクトのプレゼン”が、プレゼン参加者各自の自宅からリアルタイムで行われました。

FabCafe Tokyoの店内風景画像をバーチャル背景に進行するアルヴィン氏。2020年3月にリリースされたNintendo Switch用シューティングゲーム『Dezatopia(デザトピア)』の移植開発・パブリッシングを担当したインディースタジオ“Hanaji Games”の代表でもある人物です。

 自分の番が回ってくるとなぜかPCが不調になるプレゼンターが何組かいたものの、プレゼンの順番を変更するなど臨機応変に対応し、無事全8組行うことができました。

Steam、Nintendo Switchでのリリースが予定されている対戦型ロボットアクション『デモリッションロボッツK.K.』。ヘッドハイ代表の一條貴彰氏は、実況動画で配信中の本作のゲーム展開に視聴者が介入できるシステムについて詳しく説明しました。
2019年にリリースされたiOS/Android用パズルゲーム『タシテケス』。作者のMotto氏によれば、ユニークかつちゃんとおもしろくなる問題を無限に生成可能とのこと。
雨見基ノ介氏が制作する『ヤドカリサバイブ』。ヤドカリを操作し、殻を投げつけて敵を倒しながらゴールを目指す2Dアクションゲームです。最初は殻を着替えながら進んでいくゲームとして作っていた……などの開発エピソードも披露しました。

 これはまさにオンラインイベントならではと感じたのは、一番最後に行われた『Skate Story』のプレゼン。スケボーに乗ってはるか遠くに浮かぶ月を目指すアクションゲーム……という作品自体のインパクトもさることながら、作者のサム・エング氏が、現地時間で早朝のアメリカ・ニューヨーク市から参加し、いままさにロックダウン(外出制限)中の生活について語ったことが印象的でした。コロナ禍以前はブルックリン区のインディーゲームコワーキングスペース“GUMBO”でゲームを制作していたというサム氏。先の見えない状況の中ゲームを制作し続ける心境を、物理的距離を越えて共有できたことは、常時80~90人程度だった動画視聴者たちにとって(ユニークビューワーは約300人)、貴重な経験になったのではないでしょうか。

Asobu創設者 Zen Chao氏のコメント

 昨今、情報交換やプロジェクトの発表、進捗共有をする機会として重要だったTokyo Indiesなどのイベントが軒並みキャンセルになっています。こんなタイミングだからこそ、オンラインでもいいから集まって、コミュニティの活動をすべきだと(Tokyo Indies代表の)アルヴィンと相談して開催することにしました。実際には予想以上の人が集まって、かなりポジティブなフィードバックも得られました。外出制限されているいまだからこそ、オンラインでもできることを今後も試行錯誤していきたいと思います。

 対面じゃないからこそ気軽に質問できたり、海外からも参加できたりと、オンラインならではの要素やメリットはたくさんあります。次回は2020年5月19日20時からの開催を予定していますが、その際には公式配信とは別にDiscordのGoLive(画面共有機能)を使って参加者が自発的に即興のプレゼンをできるようにしたり、参加者どうしがさらに交流を深められるような仕組みの導入にトライします。

Tokyo Indies公式サイト
asobu公式サイト

プチピクセル

2020年4月24日 20時開催

 2016年より大阪市北区のバー“Bar Escae”で毎月末開催されている、ゲームについて語りあう飲み会“iIchi Pixel(イチピクセル)”主催のオンラインミーティング。 関西を代表するインディーゲームミートアップのひとつとして行動を起こした形となりました。

 イベント形式は、オンラインミーティングアプリ“Zoom”をメインとした、いわゆるZoom飲み会。会話に出てきたゲームタイトルなどの補足情報を共有する場所として、Discordの専用チャットが使われました。

 イベント中はスタッフが常時会話を回し、アットホーム(ステイホーム?)なムードで進行。時おり新規の参加者が入ってきてもすぐに退出……ということが何度かあったのは、物理の会場のように“自分なりの居場所・たたずまい”をキープするのが難しい場だからかもしれません。

イベント中のZoomの画面。常時10人前後が参加していました。記者はイベントスタッフとは旧知の仲だったため抵抗なく顔出し参加できましたが、どんなものだろうかと覗いてみた人にとっては、少し威圧感がある絵面かも。

 後半では、昨今のコロナ禍の影響で苦境に立たされているゲーム系店舗の“リモート支援”に関する情報が主催側から紹介されました。こういった情報はイベントで共有することでさらなる広がりが期待できるだけに、より多くのユーザーが見られる環境づくりの必要性を感じました。

当初予定されていなかったライトニングトークコーナーに、なぜか記者が自作のゲームで急きょ参加することに(笑)。Zoomの画面共有機能を使って、実機のプレイ映像を披露しました。このあたりの操作が直感的に行え、かつ高品質な音と映像で共有できるのは、Zoomの利点です。

Ichi pixel代表 小川浩史氏からのコメント

やってみてよかった点

 まずはとにかくも、どんな形であれ、イベントを行えた点に尽きます。デザイナー、プログラマー、プランナーなど、さまざまなセクションの方の話を聞けるのはやはり刺激的で、新たなゲームの知識や知見を仕入れることができたのは事実です。リアルの集まりではどうしても仲のよい者どうしでグループで固まりがちになりますが、オンライン飲み会では全員が一堂に会するフラットな距離感のため、「リアルよりも話しやすかった」という意見もいただけました。試験的に行ったプレゼンテーションも、プレゼンター以外の参加者の音声をミュートすることである種落ち着いて観賞でき、オンラインイベントの可能性を垣間見ることができました。

拙かった点

 開催側も参加者も、オンラインイベントに慣れていない点は仕方がないことですね。一斉に皆が話し出すと取り留めがなくなったり、参加しているけど発言機会がない方もいらっしゃったため、ある程度の運営側での仕切りが必要だと感じました。顔出しで話す人、顔出しで話さない人、顔なしで話す人、顔なしで話さない人、チャットだけで話す人……さまざまなタイプの参加者にどう対応していくかが今後の課題です。

ichi Pixel公式サイト

両オンラインイベントに参加してみて

 ただ自粛し中止するだけではなく、できる範囲で平時のイベントに近い形をオンラインで再現しよう……という試みで開催された、今回のインディーゲームコミュニティによるオンラインイベント。

 テレビゲームはもともとデジタルな媒体だけに、モニター越しにプレゼンされることに関しては相性のよさを感じました。また物理空間のイベントでは、その場の臨場感や、見知った相手・見知らぬ相手との即興的なコミュニケーション自体が楽しみの中心になりがちですが、オンラインイベントでは、そこで紹介される情報に対してよりまっすぐに向き合えるように思いました。実際、「プレゼンされたゲームの感想をDiscordのチャットに書いてみんなとすぐに共有できるのは新しい」という参加者の意見もあり、今後オフラインイベントが復活した時も、何らかの形で残っていく可能性を感じました。

 どのサービスやアプリケーションを使用するかといったことについては、まだまだ試行錯誤の段階。イベントの規模や何を主眼に置くかによってそれぞれ最適な構成がありそうですが、それが細分化するほどユーザーひとりひとりの負担が大きくなってしまうのもまた事実。「いざという時にこれさえあれば……」という定番セットが、この期間のフィードバックから生まれることを期待したいです。

 次回開催されるのであれば参加してみたい……という方は、TwitchにアップされているインディーコレクションJAPAN 1回目のアーカイブ動画をみて、雰囲気をつかんでおいてはいかがでしょうか。

asobudevのインディーコレクションJAPAN 4月版!Indie Collection JAPAN First editionをwww.twitch.tvから視聴する" frameborder="0" allowfullscreen>

※画面は配信番組をキャプチャーしたものです。