『バーチャロン』専用ツインスティック待望の一般販売がスタート
健康総合企業のタニタが、2018年に始動した『電脳戦機バーチャロン×とある魔術の禁書目録 とある魔術の電脳戦機』(以下、『禁書』)対応ツインスティックプロジェクト。
2018年に実施した最初のクラウドファンディングこそ目標金額未到達であったものの、その後に行った第2回と第3回は見事、目標支援金額を達成。2019年11月より順次、出資者のもとにツインスティックが届けられていた。
今回、支援者への提供が無事に完了を迎えたことにより、待望の一般販売が決定。2020年4月24日より、期間限定での受注生産が行われることとなった。
ツインスティックの実機をあらためてチェック
タニタと言えば、体重計や体組成計といった健康計測機器からタニタ食堂まで幅広く手掛けるおなじみの企業である。そのタニタが、突如としてツインスティック製作を発表したときは、業界の内外で驚きの声が上がっていた。
その後プロジェクトを追っていくと、タニタの社長である谷田千里氏が大の『バーチャロン』ファン(というよりもセガファン)であることがわかり、前々からTwitterを通じて繋がりがあったセガとの関係性から、ツインスティック製作に至ったというのだが、このような取り組みを実現させたのは、“『バーチャロン』(※)をツインスティックで遊びたい”という圧倒的な熱意があったからに他ならないだろう。
※当初は、プレイステーション4用『電脳戦機バーチャロン×とある魔術の禁書目録 とある魔術の電脳戦機』(以下、『禁書』)に対応するツインスティックとしてプロジェクトが立ち上がっていたが、後に『バーチャロン』の復刻作となる『電脳戦機バーチャロン マスターピース 1995~2001』への対応も表明されている。
そんな数奇な巡り合わせのもとに誕生したツインスティック。一般販売の予約開始前に、実際に『バーチャロン』シリーズを遊んでみたので実際のサイズ感や仕様感といったものを紹介していこう。
『バーチャロン』専用周辺機器の圧倒的な存在感は、まさにアーケードのコンパネそのもの
こちらが、クラウドファンディングプロジェクトで支援者のもとに届けられたツインスティック(正式名称:VCD-18-c 18式コントロールデバイス ツインスティック)。一般販売モデルも、基本的に同仕様とのこと。
『バーチャロン』そのものについては、いまさらこと細かに説明するまでもないが、オリジナル版の『電脳戦機バーチャロン』は1995年にアーケードで登場した対戦アクションゲームで、2本のスティックを使って“バーチャロイド”と呼ばれるロボットを操作して楽しめる爽快なバトルが人気を博した作品。
その後、『電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム』、『電脳戦機バーチャロン フォース』とシリーズ化。2018年には、ライトノベル『とある魔術の禁書目録』とのコラボ作品となる『禁書』が発売されるなど、25年の長きに渡ってファンから愛され続けている。
本シリーズ最大の特徴は、前述のとおり2本のスティックによる操作感に尽きるだろう(『禁書』のみ、発売時は通常コントローラでのプレイのみに対応)。
アーケード版以降に登場したセガサターン版、ドリームキャスト版、Xbox 360版などといった家庭用機への移植版が発売される際には、周辺機器としてさまざまなツインスティックも用意されていたというほど、『バーチャロン』シリーズとツインスティックは切っても切れない関係だった。
ちなみに言っておくと、『禁書』を始めとする『バーチャロン』シリーズは、コントローラでも問題なくプレイすることができる。突き詰めていけば、ツインスティック使用時と遜色ないプレイをすることもできるだろう。
それなのに、なぜツインスティックが求められるのか? それはずばり、圧倒的な没入感によるゲーム体験ができるからに他ならない。
ツインスティックによる“バーチャロイド”の操作はとにかく直感的で、コントローラでのプレイ時とはことなるシンクロ感を味わうことができるはずだ。
実際に今回プレイをしてみたところ、その手応えはアーケード筐体のそれに極めて近いものが感じられた。実際、アーケード筐体の制作を手掛ける三和電子が製造をしているのだから、当たり前とも言えるのだが、敵バーチャロイドの方向を向くジャンプキャンセル(両スティックを左右に開いてからすぐに閉じる)なども至極簡単。
約6kgという本体重量も安定化に寄与しており、かなり激しい操作をしても筐体がたわんだり、スティックが変な向きに捻れるといったことはなく、まったくといっていいほど取りこぼしも感じられないのはさすが三和電子といったところ。
ツインスティックでの操作はゲームにのめり込みやすい=必然的に両腕に力が入ってしまう。今回、久しぶりにツインスティックで『バーチャロン』をプレイしたためか、上腕部に軽い疲労感を覚えてしまった。
ここまで手放しで褒めるしかないツインスティックだが、難点をあげるとすれば、やはりそのサイズに尽きるだろう。一般的なパソコンデスクの半分程度を占めるサイズ故に、普段どこに置いておくかといった問題にあたるプレイヤーも多くいるだろう。
また、(激しい操作を求められるゲーム故致し方ない部分もあるが)操作時に発生するガチャガチャ音も決して小さいとは言えず、同じ部屋に家族がいるといった環境では気を使ってしまうというのも、悩ましい点として挙げられる。
とはいえ、本製品はこれらの欠点を補って余りある体験をもたらしてくれるアイテムだということは、声を大にして言っておきたい。『バーチャロン』をここまでのめり込んで楽しめるのは、ツインスティックがあるからにほかならない。
導入するには環境面を含めていろいろと悩ましい部分も多いかもしれないが、『バーチャロン』シリーズが好きゲームファンなら、手元に置いておいてもらいたいところだ。
最後に、2018年から約2年間行われてきた本プロジェクトを担当してきたタニタの久保彬子氏のコメントを紹介。
――2018年6月にプロジェクトを始動し、クラウドファンディングの目標達成を経て、出荷をひと通り終えた今の実感と手応えを教えてください。
久保まずはプロジェクトを応援してくださった皆さまに改めて御礼を言わせてください。ツインスティック・プロジェクトにご支援をいただき、本当にありがとうございました。また、クラウドファンディングの達成からツインスティックお届けまで大変お待たせをしてしまい、申し訳ありませんでした。プロジェクトがスタートしてからいくつものハードルがありましたが、無事に商品化とお届けができてほっとしています。支援者の皆様からは、完成したツインスティックにご満足いただけているというコメントが多数寄せられていて、嬉しい限りです。これはセガさん、三和電子さんのご協力をいただきながら、ユーザーの皆さんと一緒に「一生もののツインスティック」を目指すモノづくりを進められたからこそ実現できたものだと思います。
――いよいよ一般発売が実現しました。発売を待ち侘びていた全国の「バーチャロン」ファンに向けたコメントをお願いします。
久保クラウドファンディングの終了以降、多くのファンの方から「一般販売はないのか」というお問い合わせをいただいていました。特に、『バーチャロンマスターピース』の発表やツインスティックの実機展示があった昨年9月の東京ゲームショウでは、私自身も会場でファンの方から直接声を聴く機会があり、何とか販売ができないかという気持ちが強くなりました。しかし、クラウドファンディングでご支援いただいた方のツインスティックをきちんとお届けすることが最優先でしたので、まずはこちらに注力していました。また、一般販売するためには、前回よりも少ロット生産になることで価格をどうするのか、どういった方法で販売をするのかということも検討を重ねる必要がありました。
製造委託先である三和電子さんと何度も相談し、今回一般販売できる目途がついた為、決定しました。タニタ社長の谷田も、「もっとバーチャロンファンを増やしたい!」という想いがあります。今回が本当にラストチャンスとなりますので、前回のクラウドファンディングでは見逃してしまった、買いそびれてしまった、という方が周りにいらっしゃいましたら、ぜひお知らせしていただけると嬉しいです。また、6月には三和電子さんから補修用パーツが発売されます。タニタで保有するレバー部の金型を三和電子さんに無償で譲渡する契約を結び、補修用パーツを安定して供給できる体制を整えました。真の意味で、一生遊んでいただけるツインスティックになりますので、思う存分『バーチャロン』の世界を楽しんでください。
――タニタがゲームの周辺機器を製作するというプロジェクトは今回の一般販売でひとまず完了といったところだと思いますが、今後何かおもしろい取り組みなどは考えていますか?
久保プロジェクト自体はいったん終了となりますが、ファンの方と引き続き交流できる機会を作れるとよいなと個人的には思います。タニタとしては、楽しみながら取り組める健康づくりを推進する中で、ゲームと健康は親和性が高いと考えています。今後また違った切り口で、健康づくりに役立つような商品やサービスを模索していきたいです。