戦争によって文明が崩壊した世界。汚染された地上や凶暴なミュータントから逃げるように、人類は地下鉄網を生きる場所として選んだ。しかし、そんな状況にあっても、人間は互いに争うことを止めることなく、ただ刹那的に自分の生を生きていく――。

 2020年4月23日に3gooから発売される、Nintendo Switch用ソフト『メトロ リダックス(ダブルパック)』は、そんな退廃的な世界観を楽しめる、完全ひとり用のストーリー重視のFPSタイトル。2010年に発売された『メトロ2033』と、2013年に発売された続編『メトロ ラストライト』がセットになっており、かつ発売後に配信されたDLCなどもすべて同梱されているため、全体のボリュームはかなり多いお得な作品です。おおもとのゲーム自体は少し前にリリースされていますが、本作はプレイステーション4やXbox Oneなどで発売されたリマスター版の移植であるため、グラフィック的にも気になりません。

 本記事では、隠れた名作とも言わしめた『メトロ リダックス』の魅力を改めて紹介しつつ、Nintendo Switch版のプレイフィールについて触れていきます。

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ゲーム全体からあふれ出す、ロシア生まれの小説を原作とした濃密な空気感

 『メトロ』シリーズの魅力といえば、何といってもゲーム全体から徹底して感じ取れる、その独自の世界観。ロシアの作家、ディミトリー・グルホフスキーが書いた小説を原作として作り上げられた世界は、汚染されてミュータントの支配域となった地上と、一定の安全を得られる閉塞的な地下世界という二面性が非常に魅力的です。どこへ行こうとも人間にとって住みやすい環境はなく、ただ毎日を生きるので精いっぱいという、絶望的な世界をうまく描き出しています。

 ミュータントという人類共通の敵となる存在が現れた世界で、ようやく人は一致団結できるのかというとそうでもなく、地下鉄網に点在する各駅を集落のようにして生きる人間たちの中には、縄張り争いを続けるような人たちも存在します。駅間の物流を担う交易商を襲う盗賊などもおり、まさに世紀末とはかくやと言わんばかりの世界を垣間見ることができます。

 もちろん登場するすべての人間がそのように生き汚いわけではなく、駅に群がるミュータントを協力して撃退したり、交易商の護衛として雇われる傭兵がいたりと、ある程度の秩序もしっかりと構築されているところがまた、リアルさを強調していますね。

 中でも、弾丸(この世界では弾丸が通貨となっている)と引き換えに案内を申し出てくる人や、病気の子どもへの薬を買うために弾丸をねだってくる人など、困窮した者たちの“生活”が描写されていたのが、個人的にはグッときました。そういった、悪環境で噴出する人間の生き汚さのようなものを描いた世界が好きであれば、間違いなく本作を楽しめるはずです。

人々の“おねだり”に応えるかどうかの選択をプレイヤーができる点も高評価! 命乞いをする敵を殺すか殺さないかなどのちょっとした選択が、のちのち影響するかも?

 ちなみに『メトロ2033』と『メトロ ラストライト』は主人公も同一で、物語的にもしっかりとつながっています。アルチョムという若者が、住んでいた集落がミュータントに襲われたことで、遠くの駅まで助けを求めて旅をする……という流れですが、もちろんそれだけでは終わりません。

 人間どうしのドラマはもちろん、ミュータントや不可思議な現象との遭遇など、オカルトホラー的な物語を存分に楽しめるため、発売順に遊ぶのをオススメします。

手持ちの物資の管理など、世界観に重きをおいたゲームプレイに注目

 ゲームプレイにおいても、『メトロ』の世界観を色濃く反映しているのも本作の特徴。たとえば、人間相手の銃撃戦とミュータントとの戦闘の違いです。

 人間相手の戦闘では、多くのFPSのように遮蔽物を生かした射撃戦が展開されます。もちろん、装備した武器によって適正な距離感が異なるため、それを生かした戦術を立てることも有効。武器は3種類まで持ち運べるほか、駅には武器を改造できるショップもあるため、得意なプレイスタイルを突き詰めることもできます。

 相手に気付かれずに背後に回り、ステルスキルを狙うことも可能です。このとき敵を殺さずに気絶させる選択肢もでき、FPSとしては本格的なステルスプレイも可能になっていました。本作ではほとんどの光源を点けたり消したりすることができるため、ひっそりと行動しつつ暗闇を増やすことで、敵に気付かれにくい環境を作り出せる点は、いいギミックとなっていると感じました。暗がりに潜んでいるとかなり見つかりにくくなるため、見つかるまではステルスプレイで弾薬を節約しよう、といった思考になるのです。

 当然ですが、暗闇になると自分もその影響を受けることになる点には要注意。接近する敵に気付かなかったり、足元のワイヤートラップに引っかかりやすくなるというデメリットもあるので、明かりの消灯はケースバイケースですね。

 一方で、ミュータントとの戦闘は、よりサバイバル味が増すものとなっています。ミュータントは人間とは違い、近づいて爪や牙で襲いかかってくるというシンプルな動きを行いますが、とにかく数が多かったり素早かったりで対処が大変! とくに地上では開けた場所に留まっていると、空を舞う大型のミュータントに捕まれて大ダメージを負ってしまうので、かなり危険です。

 がんばって倒したところで(当然ですが)アイテムを落とさないため、戦えば戦うほどコチラが物資を消費するだけという点が非常に厄介で、場合によっては戦わずに逃げるという判断も必要になるでしょう。

 この人間戦とミュータント戦の違いが、まさに“静と動”のようなメリハリとしてうまく機能しているように感じました。

 さらに本作のゲームプレイを特徴付けている点は、汚染地帯で呼吸を可能にするためのガスマスクと、暗い場所を照らす際に必要なライトのギミック、そして弾薬の管理です。

 地上を始めとした汚染地帯では呼吸がままならなず、ガスマスクの装着が必須となります。汚染地帯に入ったからといって即死するわけではないですが、ガスマスクを装着せずに行動していると、主人公がだんだん咳き込み始め、やがて死に至ってしまいます。

 ガスマスクは最初から所持していますが、問題となるのはガスマスクのフィルターです。ガスマスクのフィルターは効果時間が限られており、一定時間を超過すると効果がなくなってしまうのです。なので一定時間ごとにフィルターを交換して、ガスマスクの効果時間を延長しなければなりません。

フィルターの効果時間は、手元の腕時計に表示されます。また、効果時間が切れると画面にフィルター交換のメッセージも出るため、交換を忘れて死ぬということはほぼないかと。

 ゲーマー的には探索したくなるシチュエーションでも、フィルターの残量しだいでは探索を早めに切り上げて、一刻も早く地下へ戻らねばならないことも。フィルターの効果時間と所持数、そして探索で得られるかもしれない何かを天秤にかけ、自分の行動を管理するという要素が、ギリギリでの日々となる『メトロ』世界で“生きる”ということがどういうことかを教えてくれます。

 また、舞台のほとんどが地下となる本作では、明かりとなるヘッドライトも重要な要素。こちらはバッテリー充電式となっており、フィルターと違って替えを用意する必要はありません。……が、充電は手持ち式の発電機を使い、自力で行う必要があります。

 探索に夢中になり、充電を忘れてしまうと大変です。地下の暗闇と圧迫感、いつミュータントに襲われるかわからない恐怖感などを感じながら、充電作業を行うのはなかなかに怖いです。もちろん、戦闘中とかであれば目も当てられません。

 このフィルター交換や人力発電機による作業は、人によってはただただ手間に感じるかもしれません。しかし、『メトロ』の世界観において、人間がどんなに逼迫した状況で生きているかを味わう演出としては、とてもいいスパイスになっているように感じました。

 その点で言えば、本作における弾丸の立ち位置も絶妙です。先述したように、本作では弾薬が通貨として使われているわけですが、厳密にいえば弾薬はふたつのタイプが用意されています。

 ひとつめは通常のシューター同様、武器のリソースとして使う弾薬。ふたつめは貨幣用の軍用弾です。おもしろいのは、軍用弾を武器に装填して使うこともできるということ。

 さらに言えば、武器リソースとしての弾薬の入手頻度は、適宜店で補充が必要となる程度には少ないため、消耗具合によっては軍用弾を使わざるを得ない場面も出てくるでしょう。おまけに軍用弾は攻撃に使うと威力が大きいため、ここぞというときは頼りになってしまうのです。

 この“軍用弾を戦闘に使うかどうか”という判断を迫られることが本作ならではの魅力であり、この世界のサバイバル感を味わえる要素としても優れています。

……と、ここまでは世界観になぞらえたサバイバル感を前面に押し出してきましたが、これは“サバイバル”モードと呼ばれる本作の遊びかたのひとつで、じつは別のモードも存在します。

 それは“スパルタン”モードと呼ばれる、強力な主人公が潤沢な武器・弾薬を用いて敵をなぎ倒していく、ハック&スラッシュ的爽快感を楽しめるもの。『メトロ』の世界観からはやや乖離してしまうものの、厳しい物資の管理が苦手だったり、そもそもシューター慣れしていないという人、もっとガンガン攻めたいという人にとっては、かなり遊びやすいモードになっています。

 さらに、モードはあくまでも遊びかたの方向性を決定づけるためのもので、これとは別に難易度も4段階から選択可能。難しいものでは画面上にUIやヒントが表示されず、よりリアルな『メトロ』の世界を堪能できるようになっています。

 モードと難易度を組み合わせることで、多くのプレイヤーに合わせた調整が可能になっているのは、地味ながら大きなポイントと言えそうです。

操作のクセはやや強いが、手持ちでできるのはありがたい

 最後にJoy-Conでのプレイ感について個人的な感想を述べると、正直なところはあまり遊びやすいとは言えませんでした。とくにミッションの進行状況を確認できる“ジャーナル”を表示させる際は-ボタンを押さねばならないのですが、-ボタンの位置の関係で非常に押しにくいのです。

 たまにしか押さないのであればそれほど問題ではないものの、ジャーナルには行き先を示すコンパスの確認という重要な要素も込められています。とくに本作は暗い場所での活動が多く、行き先が目視では確認しにくいこともあって、頻繁にジャーナルを開くことになるため、押しにくさが目立ってしまっていました。

 エイムに関しても細かい調整が難しく、素早く動くミュータントを狙うのが難しかった印象。最終的には慣れとモーションセンサーによる微調整を使うことで、ある程度はできるようになったものの、Joy-Conでのプレイはなかなかにハードに感じました。この辺りはNintendo Switch Proコントローラーなどを使うことで改善できるかもしれません。

 ただ、Nintendo Switch版の強みは場所を選ばずに遊べることにあり、この恩恵は大いに受けられました。シングルプレイ専用である本作の場合、マルチプレイでは重要となる回線速度などを気にする必要もないため、どこでも気楽にプレイできるのが嬉しかったです。『メトロ』の世界観は刺さる人にはド直球レベルの破壊力を持つので、ポストアポカリプスものが好きな人は、ぜひこの機会に本作をプレイしてみてほしいですね。