ホラーゲームファンからの注目度が急上昇中の兄弟ゲームクリエイター

Chilla's Art(チラズアート)という兄弟ホラーゲームクリエイターをご存知だろうか。彼らは2018年に活動をスタートし、2019年6月から2020年2月までの期間に『Blame Him』、『Okaeri』、『赤マント』、『事故物件』、『犬鳴トンネル』、『雪女』という6本のホラーゲームを手掛けるなど、精力的な活動を続けている、いまインディーゲーム業界で注目のクリエイターだ。

 ここでは、ホラーゲームファンのみならず、ゲーム実況者やVtuberのあいだでもいま人気急上昇中のChilla's Artを直撃。ゲームづくりのルーツや気になる制作体制といった興味深いお話を伺ったのでチェックしてほしい。

Chilla's Art(チラズアート)

3Dアーティストの兄と、プログラミング担当の弟による兄弟ゲームクリエイターチーム。2019年9月以降、レトロ風和風テイストホラーゲーム路線にシフト。短期間で作品をリリースし続けている。(Twitterアカウント:@ChillasArt)

『事故物件』『赤マント』『雪女』。Steamで話題の兄弟ホラーゲームクリエイター“Chilla's Art(チラズアート)”インタビュー。なぜレトロ和風ホラーを作り続けるのか_05
事故物件【2019年10月26日配信】幼なじみのアパートを訪れた女子高校生が、周囲を探索することになる、ホラーウォーキングシム。

Chilla's Artインタビュー

――まずは自己紹介をお願いします。

CA(以下、CA) こんにちは、Chilla's Art(チラズアート)です。兄弟ふたりで、レトロ風和風ホラーゲームを作っています。

――Chilla's Artの名前の由来は?

CA Chilla's Art のChillaはチンチラのChillaですね。1日も早くSteamでゲームを配信したかったので、パッと浮かんだ名前がチンチラの“Chilla”から取ったChilla's Artでした(笑)。

――ご兄弟でゲームを作ることになった経緯についてお教えください。

CA 僕はもとから3Dアーティストでして、ずっとホラーゲームを作りたいと思っていました。僕は2年前まではアメリカに住んでいて、日本に戻ると同時に実際に何かを作ってみることにしました。まず最初にひとりで『Evie』というホラーゲームを作ったのですが、バグが多かったりして、僕にはプログラミング力が欠けていることに気づき、弟の手を借りることにしました。弟はプログラミング未経験でしたが、英語ができたのでUNITYエンジンとコーディングはそこまでてこずらず、開発すればするほどお互い慣れてきて、いまに至ります。

『事故物件』『赤マント』『雪女』。Steamで話題の兄弟ホラーゲームクリエイター“Chilla's Art(チラズアート)”インタビュー。なぜレトロ和風ホラーを作り続けるのか_01
Evie【2018年2月16日配信】Chilla's Artの初リリース作品。暗い森へ迷い込んでしまった少女が、近くにある廃墟の謎に迫る。

――ご兄弟でのゲーム作りの役割分担は?

CA 僕がすべてのモデリングと3D関連の作業をし、ほとんどのエンジン内でのセットアップを任せています。ゲームデザインやアイデアは、兄弟でいっしょに考えています。

――ホラーゲームにこだわる理由は?

CA シンプルにホラー作品が好きで、子どものころからホラー映画やホラーゲームといっしょに育ったからです。

――ゲームのテーマはどのように決めているのですか?

CA 僕たちはサバイバルホラーとサイコロジカルホラーの2種類のホラーゲームを作っています。サバイバルホラー系は、『Granny』、『Stay out of the house』、『Monstrum』など人気のあるインディーホラーのタイトルに影響を受けています。精神的ホラー系はただ単に日本の風景を見て怖いと思ったものを見つけたら、それらをゲーム化しているだけです。

――ホラーゲームの魅力は?

CA 僕らは、どこからともなく出てきて、まるで何もなかったように消えていくような小さなインディーホラー作品たちが大好きです。 誰もががんばって怖がらせようとするのですが、多くはけっきょくぜんぜん買われずに消えていきます。そういうゲームたちに魅力があると感じています。なぜならシンプルな3D背景やチープな演出でそのスリルの心理を追求するおもしろさを味わえているからです。 僕たちのゲームも正直なところほかのインディー作品とさほど変わらないと思っていますけどね(笑)。

――2019年9月以降、グラフィックのテイストがVHS風というかプレイステーション初期のようなローポリゴンテイストの和風レトロテイストホラーへと転換したような印象ですが、その意図は?

CA ただの偶然だったかもしれません。和風ホラージャンルを作る直前のゲームは、グラフィックスにこだわった『Blame Him』というゲームでしたが、開発に必要な時間と労力がハンパなくて、もう同じことは絶対にしたくないと思いました。そんなとき、ちょうど周囲で流行り出した
のがレトロホラーというジャンルでした。そして僕たちも「もっとインディーズらしいものを作りたい」と思ったのがきっかけです。

『事故物件』『赤マント』『雪女』。Steamで話題の兄弟ホラーゲームクリエイター“Chilla's Art(チラズアート)”インタビュー。なぜレトロ和風ホラーを作り続けるのか_03
赤マント【2019年9月24日配信】赤いマントと白い仮面を身に着けた怪人にまつわる都市伝説をベースにしたサバイバルホラーゲーム。

――無機質なテイストのホラーゲームに反して、メインとなるビジュアルは美少女のイラストが使われています。このビジュアルはどのようなイメージで制作されているのでしょうか。

CA メインビジュアルには目立つ中心キャラクターのようなものを入れたいという思いで作っています。 よくある漠然としたホラーイラストには少し飽きを感じていたので、アニメの女の子で明るくしたいなと。

――2019年は短期間で作品をリリースしていますが、狙いはありますか?

CA 短編和風ホラーというジャンルをやろうと決めたときにアイデアがたくさん湧き出てきました。この無数のアイデアを早く具体化しなければと思い、短時間で作るようになりました。

――思い入れのある作品は?

CA もちろん全部なのですが、いちばんは『おかえり』ですかね。この作品が僕たちのちょっとした成功への扉を開いてくれたと思っています。『おかえり』がなければ、『事故物件』や『犬鳴トンネル』、『夜勤事件』といった作品は生まれなかったと思います。

『事故物件』『赤マント』『雪女』。Steamで話題の兄弟ホラーゲームクリエイター“Chilla's Art(チラズアート)”インタビュー。なぜレトロ和風ホラーを作り続けるのか_02
おかえり【2019年9月7日配信】新居に引っ越した中学生と母親を題材としたホラーゲーム。レトロテイストのグラフィックを採用。

――影響を受けたホラーゲームはありますか?

CA ホラーゲーム製作者として挙げがちなのが『サイレントヒル』、『バイオハザード』、『P.T.』だと思いますが、僕らはどちらかというとインディーズから影響を受ける時が多いです。『Detention』、『Dread out』、『Witchhunt』『Home Sweet Home』『Granny』 などから影響を受けましたし、もちろんホラー実況者さんたちが遊んでいる小規模な作品も全部遊んで影響も受けています。

――低価格のゲームが多い印象ですが、価格はどのように決めているのでしょうか?

CA だいたいプレイ時間で決めています。サイコロジカルホラーの場合は、ボリュームを出すのが難しいので300円。サバイバルホラーの場合、リプレイバリューがあって少し長めに楽しめるので500円というところです。ですが、今後内容に応じて値段を変更するかもしれません。

――最近、ゲーム実況者やVtuberにも作品が好評を博しています。こうした状況をどう感じていますか?

CA ゲームプレイと反応を直に見聞きできるので非常に助かっています。何より純粋に楽しんでくれているのを見ると、とてもうれしい気持ちになりますね。

――今後リリース予定の最新作『夜勤事件』はどんなゲームですか?

CA 『事故物件』や『犬鳴トンネル』のようなサイコロジカルホラーです。コンビニエンスストアで真夜中のシフト中に怪しい人が入って来たり、心霊現象を見たりしてじわじわと恐怖を感じていくという内容になっています。

『事故物件』『赤マント』『雪女』。Steamで話題の兄弟ホラーゲームクリエイター“Chilla's Art(チラズアート)”インタビュー。なぜレトロ和風ホラーを作り続けるのか_04

――今後、ゲーム化したいホラーのテーマはありますか?

CA ホラーの中でももっと幅広いジャンルに挑戦したいと思っています。敵を倒していく“バトル系”はまだ挑戦したことがないので、作ってみたいですね。

――Chilla's Art作品を楽しみにしている人にひと言お願いします。

CA Chilla's Artは作品ひとつひとつを学びながら作っています。最近は毎日楽しんで制作に取り組んでいられるので、ファンの方々やいつも遊んでくださっている方々には感謝の気持ちでいっぱいです。これからも応援よろしくお願いします。

Chilla's Art作品紹介

――最後にChilla's Art各作品についてコメントをお願いします。


Evie 【2018年2月16日発売】
兄がひとりで作ったチラズアートでの初リリースのゲームです。暗い森へ迷い込んでしまった少女が近くにある廃墟の謎に迫ります。

Welcome Back Daddy 【2018年5月10日発売】
おもしろいゲームだと思いますが、かなり難しい内容となってしまい、おそらくいまだにクリアした人はひとりもいないと思います。サラリーマンの父として家に帰ったら家族全員呪われていたという設定の脱出ゲームです。

Sphaera 【2018年6月27日発売】
唯一のリラックスゲーム。弟がプログラミングを始めて最初に作ったゲームです。ただただボールを使って万物を集めていくというゲームです。

Blame Him 【2019年6月3日発売】
旧チラズアートでの最後の作品です。一度がんばってみようと思い、およそ10ヵ月で作り上げた作品です。制作面ではかなり苦痛でしたがチラズアートとして大事な変換点となりました。ステルスとパズル要素をメインとしたサバイバルホラーゲームです。

Okaeri 【2019年9月7日発売】
チラズアートのブランディングの変更と同時に作った作品です。『赤マント』制作中にどうしても作りたくて出しました。

Aka Manto | 赤マント 【2019年9月24日発売】
赤いマントと白い仮面を身に着けた怪人にまつわる都市伝説をベースにしたサバイバルホラーです。『Granny』、『Stay Out of the House』、『Monstrum』から影響を受けました。

Stigmatized Property | 事故物件 【2019年10月26日発売】
僕たちの初ヒットの作品です。女子高校生として幼なじみのアパートに行ったものの誰もおらず、探索するハメになります。

Inunaki Tunnel | 犬鳴トンネル 【2019年11月19日発売】
作ってていちばん楽しかった作品です。ビデオブロガーとして犬鳴峠にひとり肝試しをしに行くというウォーキング・シムゲームです。

Yuki Onna | 雪女 【2020年1月3日発売】
『赤マント』の精神的続編ですね。赤マントみたいな都市伝説ではなく、妖怪雪女をベースとしたサバイバルホラーゲームです。