ジャレコの版権を持つシティコネクションから2019年12月12日に発売された『忍者じゃじゃ丸 コレクション』。本作はファミリーコンピュータ用タイトルとして発売された『忍者じゃじゃ丸くん』、『じゃじゃ丸の大冒険』、『じゃじゃ丸忍法帳』、『じゃじゃ丸撃魔伝 幻の金魔城』、『忍者じゃじゃ丸 銀河大作戦』の5作に加えて、新作としてシティコネクションが制作した『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』を加えたタイトルとなっている。

 なかなかの意欲作となる『忍者じゃじゃ丸 コレクション』だが、そんな本作について、新作制作の経緯やどのようにして完成したのか、さらには今後どのような展開を予定しているのかなどを、シティコネクションの開発スタッフに伺ってみた。

吉川延宏氏(文中は吉川)

写真・左端。シティコネクション代表。本作にはプロデューサーとして参加している。

上田祐美氏(文中は上田)

写真・左からふたりめ。シティコネクション所属。本職はグラフィックデザイナー。本作では企画やディレクションを担当。

松下寿志氏(文中は松下)

写真・右からふたりめ。シティコネクション所属。ふだんはプランナーやディレクターを担当しているが、本作では企画とプログラマーを担当。

山邊颯太氏(文中は山邊)

写真・右端。シティコネクション所属。本作のプロモーション担当。

最初はミニゲームを作るつもりが勢い余って新作に

――まずは、『忍者じゃじゃ丸 コレクション』開発の経緯から教えてください。

吉川『忍者じゃじゃ丸くん』のサウンドトラックを作っていたときから、「旧作品を1本にまとめたものを」と考えてはいました。ただ、ゲームのパブリッシュを続けていくうちに「旧作のまとめだけだとあまりおもしろくないから、新規にミニゲームを入れよう。それでパッケージまで出せればいいな」と思うようになったんです。それで、バトンを上田に渡したところ、たいへんなことになってしまいまして……(笑)。

――たいへんなこと(笑)。旧作のまとめだけではなく、なにか新しい要素を入れるというのは、シティコネクションのポリシーみたいなものなのですか?

吉川ちょうど本作を企画しているときに、旧作をまとめたタイトルが多く出ていたんです。ただ、ちょっとしたアレンジや新しい要素が追加されているものもありますが、完全新作が入っているものはあまりないですよね。今回の新作は、ある程度内容的な部分は上田たちに自由に任せていました。とは言え開発人数と時間を考えたら「そこまで大きいものはできないだろう」と高をくくっていたんです。そうしたら、けっこうな規模になってしまった。

上田吉川から話を聞いたときに、「『マリオブラザーズ』みたいに、たくさんの妖怪がシームレスに出てくる『じゃじゃ丸』があったらおもしろいな」とひとりで考えて盛り上がっていたんですよ(笑)。で、最初は企画書作りというかアイデア出しをしていて、やりたいことを書いていたら松下が後ろから見ていて、「これだったらできるかもしれない」って、勝手に作り出したんです(笑)。

――思うがままの行動の伝播ぶりがすごいですね(笑)。

松下プロジェクトの狭間で少し時間があったので、試しにどんな感じになるか作ってみたんです。妖怪を100匹くらい動かしたり、やたら手裏剣を連射させてみたり。

上田フィールドも、「このくらいの広さなら大丈夫」とか。そういうテストから制作が始まりましたね。結果的には、ミニゲームというよりも新作のようなボリュームになってしまいました。

――(笑)。開発はいつから始まったのですか?

松下2019年2月の頭くらいには企画書がありました。

――上田さんは、アイデア出しの段階ではどのようなことを考えていたのですか?

上田オリジナルの『忍者じゃじゃ丸くん』や『じゃじゃ丸の大冒険』は、敵に当たったら一回で死んでしまいますし、操作性も少し難しいゲームと感じていました。新作はライフ制に変えて動きやすくして、気持ちのいいアクションゲームにしたいというのは当初から考えていました。あと、今回の話があったのは、自分がそのときに、ちょうど『Castle in The Darkness』や『ショベルナイト』といった、メトロイドヴァニア系のインディーアクションゲームにハマっていた時期だったんですよ。「こういうのを作りたい!」と思っていたので、そういった作品に感化されている部分もあるかもしれません。『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』はメトロイドヴァニアではありませんが、ダメージ制になっていたり、キャラによって性能が違ったり、一方通行の道があったり……などは影響を受けていると思います。

――そして出来上がったものは新作として出せるものになってしまったと。

吉川結果的にはそうですね(笑)。

上田やりたいと思っていたことを盛り込んでいたら、「これはミニゲームじゃないよ」って松下に突っ込まれまして(笑)。

吉川『じゃじゃ丸』が永遠に“ジャレコの『じゃじゃ丸』”から出られないというのは嫌だったんです。かといって、いきなりメトロイドヴァニア風のゲームにしてしまうのもファンからしてみたら疑問になると思うので、ある程度『じゃじゃ丸』のお作法的な部分を守りながら、アレンジを効かせたような作品になりましたね。

『忍者じゃじゃ丸 コレクション』に収録された新作『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』は、つぎつぎと出現する妖怪を倒していくプラットフォーム型の2Dアクションゲーム。

アルファ版の反応がイマイチで露頭にさまよう……

――どのような流れでプロジェクトは進められていったのですか。

上田2019年の頭くらいから構想が始まり、2月のアイデア出しから3ヵ月くらいでアルファ版ができましたね。作業ができるところからひとつずつ進めていって、徐々に積み重ねていった感じです。

松下みんな別の作業と平行しながら、『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』に取り掛かっていました。

――制作自体は順調だったのですか?

吉川E3 2019でロサンゼルスにいる友人に制作途中のものをプレイしてもらったんですが、そこでの反応がイマイチでよくなくて。そこからは大変でしたね。

松下制作的にもちょうど「動いているけど、果たしておもしろいのか?」と悩んでいた時期だったので、さてどうしたものかと。

上田その一件があって、完全に露頭に迷いましたね。ロスのホテルのラウンジで夜にミーティングをしていたときに「私、今回の『じゃじゃ丸』がおもしろくなかったら責任をとって会社を辞めるわ!」とか言っちゃったりして。チームメンバーからは「何を言っているんだ。みんなで作っているんだから」とアツく叱咤激励されました(笑)。

――前が見えなくなった感じですね。

上田その後山邊から「あとどのくらい敵を倒せばステージクリアーになるのか、目安になるような表示がほしい」と言われて、それがひとつのアイデアとして突破口に繋がりました。敵の数を明確にすることで目標ができて、プレイするモチベーションに繋がるという新しい意見もあったからこそ、新しい『じゃじゃ丸』になれたのではないかと。

吉川今回私は傍から見ていることが多かったのですが、『じゃじゃ丸』というIPの新作を作るというところで発生する、ファミコン時代の不親切な「こんなものはいらなくても大丈夫なんだ」という作法の部分と、容量による制限から、当時も本当は入っていたのではないか? 入れたかったものかも? という推測、新作アクションゲームとしての必要な部分という、3つのバランスをどう取るかというのは、すごく難しそうだなと思いました。たとえば、自分の場合だと、『忍者じゃじゃ丸くん』で“あと何体敵を倒したらクリアー”というのは感覚で分かるので、表示はいらないんですよ。でも、新しいプレイヤーにはそれは分からない。しかも今作はステージによって敵の数も変わります。『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』のターゲットは、過去にプレイしていた人と、新規ユーザーの両方なので、トライアンドエラーをくり返して答えを導き出していった感じです。

松下どこまでをわかりやすくして、どこまでを省くかというのは、本当に悩みましたね。

上田一番長く揉めましたね。

――『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』はたしか、8月に行われた“ぜんため”にはプレイアブルで出展されていたので、E3で露頭に迷ってから約2ヵ月弱のあいだで、一気に制作が進んだということですね?

上田そうですね。メンバーがふたり、プログラマーとエフェクトデザイナーが増えたのも大きかったです。始めは私と松下のふたりでずっと制作していて、あるとき(松下氏と)「こんなんじゃ終わらない!」とケンカになったりもしました。そんなときに、新しく入ってきた若いスタッフが、ほかの作業をしながら『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』に参加してくれたんです。最初はプログラマーとして参加していたのですが、ある日「オープニングアニメーションを作っちゃいました!」とか、言ってきたりするんです(笑)。「だったらエンディングも作ってよ」と頼んだら、本当に作ってきてくれて。

――新人さんなんですよね? 自由なプロジェクトだなあ(笑)。

松下指示もお願いもしていないのに、どんどんよくなっていくのが新鮮でした。皆が皆「いいゲームにしたい」という気持ちが強かったのだと思います。

上田『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』にはグラフィックは私ひとりしかいなかったので、こういうことをしてくれるとテンションが上がって、「だったらこういうこともできるね!」というふうに、新しい意見がどんどん出てくるんです。エフェクトデザイナーだったもうひとりの新人も、ほかのグラフィックもこなしてくれそうだったので、アイデアだけ出して任せてしまいました(笑)。最終的には自分はマップの調整やレベルデザイン、バランス調整などに集中できたのも大きかったです。自分の持ち場だけに留まるだけではなくて、「こうしたらもっとおもしろいんじゃないか?」という発想で、いろいろとアイデアを出すことは、周りのテンションアップに繋がるんですよ。「あいつがこういうことをやるなら、こっちもやっちゃおう!」という感じで。

――モチベーションを高めあっていったのですね。

吉川『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』に関しては、ゲームの作りかたがファミコンの時代に戻っているような感じでした。あと、これはシティコネクションの方針とも合致していたのかもしれないですね。シティコネクションのメンバーは、プログラマーはプログラムしかしないといった、専門職に特化するわけではなくて、ひとりあたり2~3は絶対に掛け持ちで作業をするようにしているんです。企画であってもプログラムもやるし、グラフィックもやるというように。

――なるほど。で、6月で露頭に迷って、手応えが感じられたのは?

山邊手応えを感じたのは8月に岐阜で開催された“ぜんため”じゃないですかね。

上田“ぜんため”で遊んでもらったときの第一印象や反応がよかったんです。『じゃじゃ丸』を知らないお子さんとかも飲み込みが早くて遊べていたので、あとは微調整でいけるのではないか、という自信に繋がりました。東京ゲームショウ2019も大きかったですね。プレイした方から「ちょっと難しい」という意見をいただいたので、少しやさしくすることにしたのですが、難易度を下げるにしても敵のHPを下げるのか、攻撃力を下げるのか、方法論はいろいろありますよね。そのときに、ダメージを受けたあとの無敵時間を調節することで、理不尽さが消せたのがよかったのではないかなと。“ぜんため”にしろ、東京ゲームショウ2019にしろ、ユーザーのみなさんからのフィードバックをいただいて、細かい微調整をしてきたことが、大きかったのではないかなと思っています。

吉川難しいけど、理不尽な難しさを少しずつ削っていったという感じですね。

上田難しくてもがんばってクリアーして達成感を得られるゲームを目指していました。簡単に誰でもクリアーできるものは、あとあと印象に残らないと思っていて。難しいけど理不尽ではない、がんばったらクリアーできる、というバランス感は、とにかく試行錯誤しましたね。

吉川HPや攻撃力を、(上田氏が)ずっとイジっていたよね。

上田『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』には妖怪がたくさん出てきますが、最初はHPも多くて強かったんです。でも、初心に帰ってみると、「たくさんの敵を気持ちよく倒したい」と考えていたことを思い出したんですね。逆に、敵をたくさん出して、1体ずつは弱くてもいいんじゃないかと発想の転換をしたんです。結果として、そちらのほうが断然おもしろくなりましたね。

吉川あとは、使えるキャラクターがDLCを除いて24体いて、それぞれ強み弱みがあるのですが、あまりにもオールマイティーに強いキャラクターが序盤から使えてしまったらつまらないじゃないですか。そのへんはつねにフィードバックを戻したりはしていました。

登場するキャラクターは24名。使用できるキャラクターは、敵を倒すと出現する“金つぶ”や“タマシイ”を集めることで増えていく。

上田そうですね。『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』にはゲームを遊ぶと溜まっていく“ジャレコイン”というのがあって、それを集めることでキャラクターが開放される仕組みになっています。これは『Downwell』などのゲームに影響されている部分なのですが、何度も遊んで集めていく楽しみがほしくてこういう形にしました。集めていく中で出会ったキャラクターを使って、自分に合うキャラクターを見つけるといったコレクション要素って楽しいじゃないですか。

吉川“ジャレコイン”といえば、今作ではその“ジャレコイン”を集める貯金箱として、昔ゲームセンターやデパートに設置されていた、“じゃじゃ丸ポップコーン”の筐体がモチーフのマシンが登場するんですよ。個人的には、この落とし込み方はかなり気に入っています。

上田ジャレコに関するものを何か出したいなと思っていたんです。リザルト画面で“ジャレコイン”を貯めるものが“じゃじゃ丸ポップコーン”だったらおもしろいなと思って入れました。

山邊発表後、 日本各地に現存する“じゃじゃ丸ポップコーン”の発見報告がSNSで相次いで行われたりして、反響も大きかったですね。

上田あとは開発終盤に、やりこみ要素として“功績”というものを追加しました。これは、わかりやすく言えば“実績”や“トロフィー”に近い要素なのですが、Nintendo Switchにはそういう仕組みがなかったというのもあり、私もやり込み要素は好きなので松下からの提案を元に実装しました。内容は遊びながら目標になるようなものだったり、偶然見つけて楽しめるものだったりいろいろあるのですが、作業感だけを感じるようなものはなるべくなくそうと話しながら決めていきました。

松下もともとトロフィー機能をゲーム内に盛り込むつもりだったので提案しました。プレイステーション4でのリリースも予定としてありましたので、類似機能を実装しておけば実際のトロフィーを作るときに楽かな、と思いまして。ただ最終的には“功績”の数が140個にまで膨れ上がったため、楽どころか極めて困難な作業に(笑)。

山邊 “功績”には、解放すると読めるようになるフレーバーテキストも付いていて、そこにキャラクターのセリフや小ネタが少し入っているんです。今回は明確なストーリーなどは敢えて描かなかったのですが、ゲームを遊んで夢中になっているうちにいろいろな要素が解放されて、世界観を補足するような情報が見られるという導線が作れたことも、“功績”を追加してよかった部分ですね。あ! あと『忍者じゃじゃ丸 コレクション』のパッケージイラストにもなったメインビジュアルのことも、ぜひとも聞いていただきたいです!

――ほう? メインビジュアルは今回新たに描き下ろされたものなのですよね?

上田はい。当初メインビジュアルは、既存の素材を使って制作しようとしていたのですが、ジャレコの作品が大好きなロサンゼルスのイラストレーターさんがいらっしゃるということで、描き下ろしていただいたんですよ。

――アメリカの方なんだ! 日本人のテイストと区別つかないですね。

吉川スカルガールズ』のキャラクターデザインを担当されたジョナサン・キムさんなのですが、『ソルダム』が大好きな方なんですよ。弊社からリリースした『そるだむ 開花宣言』の北米版をジョナサンさんが購入されていて、日本の知り合い経由でサインを求められたことから接点ができまして。

山邊ジョナサンさんは、『ゲーム天国 CruisinMix』のときに企画で行った“クラリスボンバーコンテスト”(※)にも応募されていましたね。

※デジカ企画により実施されたイラストコンテスト。1位に選ばれたイラストは、ドット絵化されて、クラリスボンバーとして『ゲーム天国 CruisinMix』に実装された。

――熱心な!

吉川あと、これは偶然なんですが、『ぺんぎんくんギラギラWARS』の北米版のパッケージイラストもジョナサンさんが手掛けているんです。僕たちが知らないところで、北米版のパブリッシャーからたまたまイラストを依頼されていたようで。そんな経緯もあって、今回お願いしたいと思って、お話しさせていただきました。

上田それで聞いたら『じゃじゃ丸』も大好きで(笑)。

山邊じつは、このメインビジュアルからゲームに反映されている部分もあって、キャラクターセレクトのポーズとかは、ジョナサンさんのイラストからインスパイアされたものもあるんです。

吉川こちらの意見や要望もちゃんと汲んでいただけて、スピードもクオリティもすばらしく、本当にお願いしてよかったです。上がりもほぼ一発OKでしたからね。

上田ああ、その点では少しこぼれ話がありますね。じつは最初に仕上がってきたときは、なまず太夫の眼帯が逆だったんですよ。ただ私たちはイラストがあまりにすばらしすぎて、そこまでは目がいかなかった。それが入稿1日前にデバッグの子から指摘されて……、青くなりました(笑)。慌ててジョナサンさんにご連絡したら速攻でご対応していただけたので、ギリギリで間に合いました。

――すばらしい(笑)。あと僕的にはテーマソングとしてKICK THE CAN CREWのMCUさんが参加しているのが印象的でした。

吉川この企画ができる前からラップの曲は絶対に使おうと思っていたんですよ。フリースタイルとかが流行っていたのもそうですが、レトロなテイストとラップは相性がよいと感じていたんです。そんななかで、MCUさんが『忍者じゃじゃ丸くん』のアレンジ曲を作られていたり、レトロゲーム中心のファンイベントにもMC8bitという名義で出展されていたので、お声をかけさせていただいたところ快諾していただきました。

個々のスキルがあればこその制作体制

――松下さんとしては、今回の制作はどうだったのですか?

松下上田からの多岐にわたるリクエストを私自身で取捨選択できたのがよかったですね。ほかのスタッフにお願いなどすることなく実装可能かどうかや実装時間の見積もりを瞬時に出せるのでスピード感がありました。ダメならダメってすぐ言える。

上田松下から「やめましょう」って断ってきたのに、その1時間後にはお願いしたものができていたりするんですよ(笑)。「できちゃったよ」とか言って。

松下断った後でも気になって考えちゃうんですよね。どうにかできないか、よい方法はないかと。そこで思いつくと数時間後にできあがる(笑)。あと、最初から「やる」と言ってできないと印象がよくない気がして、一旦断ってから考えてみて、「これはできそうだ」と判断できたら作って見せる、ということも多々(笑)。

――なんだか(笑)。

上田そういうことが何回も続いたので、私も「とりあえず言っておけば、都合のいいときにやってくれるかな」とも考えつつ、とりあえず要望は伝えるようにしていましたね。

吉川(笑)。ファミコンを開発していた人から、これと同じような話を聞いたことがあるよ。

――そんなところもファミコン流なんだ(笑)。

山邊当社が、Nintendo Switchからゲーム開発を始めたのも大きかったと思います。もちろんゲーム開発経験者も多くいたのですが、チームとして当初から体制ができあがっていたわけではなくて、いきなり「このメンバーでゲームを作るぞ!」と気合を入れて開発が始まったので。

松下私はPCエンジンのころからゲーム開発に携わっていたのですが、今回のような迅速にアイデアを形していく開発手法は初めてでした。スタッフの熱意が高いときは、今回のような作りかたのほうが向いているのかもしれないですね。

吉川もちろん、大前提として、個々がしっかりとした力を持っていて、さらにお互いの信頼関係が築けていることがないと成り立たないです。

――ああ、しっかりとした信頼関係があってこその制作スタイルということですか。なるほど。それで言えば、研修として入ったふたりの新人さんもすんなりなじめたというのは大きかったのかもしれないですね。

吉川そうですね。今回のふたりに関しては、入社前から僕もその人間性はわかっていて、「いけるだろう」とは思っていたんですよ。事前に、「うちに入ったら『じゃじゃ丸』をお願いするかも」とは伝えてありましたし。まあ、新人のふたりと上田と松下との波長が合ったということも大きかったと思います。

上田今回のプロジェクトに関して言えば、とにかくよいものを作りたかったので、「ちょっとでも気になったことがあったら全部言おう」と思っていたんです。いつもだったら「あれをやってもらいたいけども……」と、少し言葉を飲み込んでしまっていた部分もあったのですが、今回は遠慮しなかった。そのため、松下とはケンカのような議論もしましたが、それを見ていたふたりも、「自分たちも意見を言っていいのかな」と思ってくれたみたいで、そこから積極的に意見を言ってくれるようになった気がします。

吉川自分以外の人をどれだけリスペクトできているか……というか、信用してないとケンカもできないじゃないですか。苦手なところは任せるし、その人が言い出せないことは周りが察してあげてサポートに回るとか。当たり前のことができていないケースも多いです。まあ、規模が大きくなるとこの作り方は絶対にできないですよ。当社の規模でこのくらいの時間があれば、こういう作品ができるかなというのは、本作でやっと分かってきた感じです。

今後はSteam版の発売や高難度モードがアップデートで追加予定

――そして2019年12月に発売を迎えたわけですが、手応えはいかがでしたか。

吉川「ありそうでなかったタイプのゲーム」といった感想がけっこう多かったですね。

上田たしかに昔なつかしいドット絵のままで、こういう形のゲームはあまりなかったかもしれないですね。ユーザーさんから、「こういう形の『忍者じゃじゃ丸くん』も楽しい」という意見をいただくと、「やっぱり、こういうゲームが好きな人もいるよね!」とうれしくなりましたね。それにドット絵はデザイン表現のひとつであり、決して懐古に留まるだけのものではないと自分では思っているので、面白ければ新規の方にも受け入れられるんじゃないかなと。

――『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』の今後の展開を教えてください。

上田本作をやり込んでくださっている方や、より歯ごたえのあるアクションを求めている方に向けて、“地獄モード”という高難度のモードを、アップデートで追加する予定でいます。と言いますのも、『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』にはたくさんの操作キャラクターがいるのですが、最終版に解禁されるキャラクターは、ゲームプレイ全体を通してどうしても使う期間が短くなってしまうんですよね。せっかくユニークで強力な性能を持っていても、本編をクリアーした後はランキングステージをやり込むくらいしか活躍の場がなくって。そこで、あまり使うタイミングのなかったキャラクターも思う存分使えるように、既存のステージが難しくなるモードを考えています。

――“地獄モード”というのは、開発の早い段階から決まっていたのですか?

松下時期としてはマスターアップのあとでした。

上田当初は「アクションゲームでよくあるちょっと難しくなった2周目ってできそうだなあ」くらいに思っていたのですが、例によって、「せっかくやるんだったら1周目に出てこなかった強いボスもいてほしい」とか、「地獄っていう言うくらいなら、禍々しい新ステージもほしいなあ」とか、いろいろとやりたいことが出てきてしまって(笑)。

――配信はいつくらいを予定しているのですか?

山邊今春あたりに、まずNintendo Switch版に向けて無料アップデートでの配信を予定しています。そのタイミングで、“地獄モード”も追加したSteam版を『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』単体でリリースします。同タイミングで、北米とヨーロッパでも、『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』を『Ninja JaJaMaru: The Great Yokai Battle』としてリリースする予定です。そのあとは、Xbox Oneでも出したいなと思っています。

――おお、Xbox Oneですか! リリースが延期しているプレイステーション4版の『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』はいかがでしょか?

山邊オリジナルタイトルの移植の部分で技術的な問題に直面しておりまして、発売が延びており申し訳ありません。リリースのメドが立ち次第、改めてアナウンスさせていただきますので、いましばらくお待ちください。

――最後に2020年に向けての抱負などをお願いします。

山邊『忍者じゃじゃ丸 コレクション』に関して言えば、自分はおもにイベントやグッズなどゲームの外を担当していたのですが、思いついたことをすべて実現しようと開発が盛り上がっていたなかで、自分も“優先順位をつけて悩むくらいなら全部やろう”という気持ちになっていたんです。たとえば、今回プロモーションの一環で“ガマチャリ”という取り組みをしたんですね。これは、“PiPPAシェアサイクル”とコラボして、都内に100台限定で『忍者じゃじゃ丸くん』仕様の自転車を提供するというものだったのですが、初めからプロモ計画を綿密に立てていたとしたら、突飛すぎて実現できなかったことだったかもしれません。居酒屋を貸し切って行った発売記念イベントにしてもそうで、とてもいい経験になりました。2020年もフットワークを軽くして、新しいことをつぎつぎとやっていきたいです。

松下ふだんはディレクターとしてスタッフに実装を依頼する役回りなのですが、今回は依頼される側のプログラマーとして参加しました。お願いされたことをひとつずつ実装していく作業は今までにないプレッシャーがありましたが、それ以上の達成感があり今後の手ごたえにもなりました。2020年は、皆が何気なく口にしている「こんなの作りたいよね」を形にして、新たなプロジェクトの引き金にできればおもしろいなと考えています。

上田私ももともとはデザイナーなのですが、『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』では企画を担当して、気がつけばいろいろな人に指示を出したり、レベルデザインも手掛けて、「自分はこういうことが向いているのか」と視野が広がった部分もありました。次回のプロジェクトも、今回のことを活かしてやっていきたいと思っています。今回チームのメンバーに恵まれて、お互いに言いたいことが言えるプロジェクトとして進められたのは、とてもありがたいことでした。これからもよいものを作るために、遠慮せずに2020年以降もやっていけたらいいなと思います。そしてメトロイドヴァニアを作りたい(笑)。

吉川2017年3月3日にNintendo Switchのローンチとして『そるだむ 開花宣言』を配信して以降、シティコネクションが配信しているゲームはニンテンドーeショップで展開しているタイトルだけでも25本になりますが、これだけ継続してNintendo Switch向けにソフトを発売してきて、改めてよかったなと思っています。
 あとは、今回の開発で、“少数精鋭かつマルチクリエイター的な人間を集めて、やりやすい環境をぼんやりと作ってあげて、締切とコンセプトだけを決めてあとは放置”という開発モデルができるということが分かりました。2020年もNintendo Switchはもちろん、マルチプラットフォーム展開も視野に入れて、IPを活用したコレクション的なソフトや新しいものを作っていきたいなと思っています。ご期待ください。