2019年11月27日に稼動開始したアーケード用シューティング『アカとブルー タイプレボリューション(以後、『アカとブルー』)』。長らくの間、ゲーセン用新作シューティングがリリースされなかった中、新基板“exA-Arcadiaのローンチタイトルを導入し、満を持して登場した。

 今回は、“ゲーセンの音楽”に深く関わってきた『ソニックウィングス』シリーズの作曲を手掛けた細井聡司氏とゲーセンミカドの店長イケダミノロック氏の特別対談をお届けする。2020年2月16日日曜日には、“ゲームとテクノがスキ!”と題したロックライブでの共演を目前に控えているふたり。“ゲーセンサウンド”に受け継がれているものについて、自由に語らっていただいた。
 

左から細井聡司氏、イケダミノロック氏

細井聡司(ほそいそうし)

かつてビデオシステムにて『ソニックウィングス』シリーズの作曲からサウンドまでを担当。現在はアーティストのプロデュースや自身のLIVE活動、動画配信などに関わる。

イケダミノロック

株式会社INH代表取締役。ゲーセンミカド店長として日々の企画や業務をこなしながら、HMRのリードギタリストとしても活動するミュージシャンの顔も持つ。

ゲーセンの音に憧れて

イケダ僕の中では、あの『雷電』の作曲者である豪さんと知り合ってバンド活動をするようになり、さらに大好きな『サイヴァリア』の作曲者であるWASi303さんや、ケイブの松本大輔さんとも仕事をさせていただくという流れの中で、最後の砦が、『ソニックウィングス』だったんです。

 だから、どうしても細井さんとお話してみたいなと思っていました。同じくバンドマンでもありますし。

細井じつは、ライブ会場などでイケダさんとは、ニアミスだけはずっとしていたんですよね。それに、僕自身がふつうにミカドさんに遊びに行っていました(笑)

 年代的に家庭用ゲームよりはアーケードに対する憧れが昔から強かったものですから。 いまではもちろんNGですけれど、ウン十年前の若かりしころには、 電池駆動のラジカセをゲーセンに持って行って、 直に録音をして家で耳コピをしたりとかしていたので。

 そういうことが許されていた時代の話なので、いまはダメですけど。

イケダ人が少ない朝早くに行くんですよね。

細井そうですそうです。人のいないときに(笑)。

イケダノイズを消すために、ゲーセンの灰皿ふたつをラジカセにかぶせて抵抗をしたりする技がありました(笑)。

細井うまく録音できた、なんて思って帰ってから聞くと、お客さんの声が入ってたりして、冷めるんですよ(笑)。

ゲーセンのサウンドとジャンル

細井やっぱりゲーセン筐体から流れる音が、無性に魅力的に感じたんですよね。

イケダ筐体というと、 最新のゲーセンのシューティングゲームとして、『アカとブルータイプ レボリューション』が稼働したんですが、遊ばれてみてどうでしたか?

細井アカとブルー』はスマホ版から遊んでいたんですけれども、今回アーケード専用にほぼすべて作り直しての登場とあって、手触りがぜんぜん違いますね! 

 レバーとふたつのボタンという“原点”に帰った感じがあるというか……ゲーセンのゲーム感を肌で感じられるシューティングで、ゲームセンターでしか味わえない感覚でしたよ。

イケダ楽曲はどうですか。『アカとブルー タイプレボリューション』のように、完全にROCKというジャンルのみに振り切っているゲーセンのシューティングゲームサウンドって、昨今けっこう珍しいと思うんですけれども。

細井そうですよね。しかも生演奏を収録しているんですから。僕自身、もともと楽器演奏ができなくて、一般的なミュージシャンたちのような音楽的バックボーンがなかったりするんです。

イケダそうなんですか。 細井さんの曲って、多種多様なジャンルを取り入れている印象があったので意外ですよ。

細井でしょう(笑)。ROCKも知らなかったくらいで。なので、音楽ジャンルの話もぜんぜんついていけなくて。

 ……なので、『ソニックウィングス』シリーズの作曲では、途中で開き直って「ジャンルは作家が決めることじゃない」と自分に言い聞かせるようになりました。

シューティングゲームの曲に受け継がれるべきもの

イケダソニックウィングス3』では、当時最先端だったジャングルなんかもネタとしてフィーチャーされたりしていて驚いたんです。

 『ソニックウィングス』では、各面でいろいろな国を巡っていくんですが、こてこての日本やアメリカ風ではない曲をチョイスする感じが、すごくいいなと思いました。「俺ならこうしたい」という発想の源泉はどんな部分なんですか?

細井それってシューティングの音楽をどう捉えるか、というところにつながるので、難しい質問ですね。『アカとブルー タイプレボリューション』は、ノリのいいロックギターサウンドが入っています。これはひとつの正解だと思います。

 シューティングってひと口に言っても、ゲーム自体のテンポ感や世界観とかゲームごとに千差万別あると思うので。シューティングだからといってキャッチーでアップテンポならオーケーか、というとそういうわけではないんです。

イケダですよね。

細井『アカとブルー』はそのあたりもしっかり練り込んだうえで、「バンドサウンドにしよう」と決めている。「シューティングゲームだからこういう音楽だよね」とひと言で片付けられるのは、僕はすごく嫌なんです。

イケダたとえば『雷電』はスクロールスピードが遅い。だから豪さんはミディアムテンポの楽曲で合わせているってことですよね。

細井ええ。『サイヴァリア』などは、逆にゲームのテンポがものすごく速いから、WASi303さんはテクノを使っていると。

 それは当然のことですが、最終的には作り手側から感じ取った“熱意”みたいなものをすべて融合してアウトプットするのが、映像音楽家の仕事だと思っているので。でも豪さんなんて、とにかく真面目な方なので、きっと考えすぎて悩まれることがあるんだろうな、なんて思います。

 でも、そこで悩んで収縮するのではなくて、はじけてアウトプットができるというのは、いままで培ってきたキャリアと才能なんですよ。僕も悩むタチなので(笑)、今回も、効果音の意義を徹底的に考え抜いた“いまのシューティング”に必要な音をちゃんと提案する姿勢も、すごくリスペクトしていて。

細井氏の効果音が特徴的な理由

イケダ細井さんの効果音も特徴的ですよね。俺、『ソニックウィングス3』の効果音がすごく好きなんです。ショットや、敵に打ち込んでいるときの音とか。みんなどうやっていい音を作っているんだろうって。

細井やはり遊んでみて調整する、のくり返しですよね。あとは基板によって、だいたい音の方向性が決まってくる“音色あるある”を排除する心です(笑)。

イケダ細井さんとかWASi303さんとかがネオジオポケットで作曲すると、ぜんぜん違う音が鳴って驚いたこともあったし。「こんな音鳴らす機能あるの?」みたいな。ほら、『ラストリゾート』で鳴っている曲が『龍虎の拳2』で聞こえてきても、違和感はない感じがする。でも、『ソニックウィングス』シリーズはまるで違う印象で。

細井あのころは音源にすごく差が出た時代で。FM音源って、なんというか「追い込まないと音が出ない」イメージなんです。追い込まないとデフォルトの音になってしまうような。X68000で作曲した人ならわかると思うんですけれども、デフォルトで128個の音色が入っているんですが……どれも使い物にならない。

 なので、 サウンド制作は、まずはそこを“捨てる”ところから始まるというか。捨てたうえで、なんとなく野生の勘で「このあたりをいじったら何とかなるんじゃないか」という作業を何時間もかけて、ひとつずつ音を作っていったんですよ。

全部つながっている みんながいれば天候も大丈夫

細井だから、今回『アカとブルー タイプレボリューション』で佐藤 豪さんが効果音を担当されたと聴いて、改めて、いまの時代にすごいなあと心底思います。イケダさんも、基板の仕込みでずいぶんお忙しかったでしょう。

イケダ『アカとブルー タイプレボリューション』では、俺は楽曲をほとんど弾いていないんですよ。今回は装飾の部分じゃなくて、ボトム部分で基板の営業で世界中を飛び回ったり、オペレーターさんへのプロモーションなんかの仕事をしていたので。

細井そんな忙しい中なのに、ライブにどうしても出てほしくて何度も口説いてしまってごめんなさい(笑)。

イケダいいんですよ。なんせ自分のまわりだけでも、なんだかゲーセンの遺伝子のようなものがずっとつながって受け継がれているみたいに感じていて

 僕とWASi303さんと豪さんがHMRというバンドを組む。木村くんが『アカとブルー』でWASi303さんにROCKサウンドで作曲オファーをする。ゲーセンの『アカとブルータイプレボリューション』の音楽はLIVEをテーマにしようという話になったと思ったら、今回、細井さんがその『アカとブルー』をLIVEで演奏してくれるという話になる……。

 何かしてみると、その先には何かが続いているんですね。でも何もしないと何も起きない

細井そういう意味では、まさに今日(2019年11月27日)稼働が開始した『アカとブルー タイプレボリューション』のサウンドも、WASi303さんとか豪さんみたいな中心になる人がいて、そのまわりにゲームミュージックが好きで業界に入ってきたような人が関わっているというのは、ゲーセンのゲームに関わってきた者として、すごくおもしろいし楽しいなと思います。

 やっぱり、ゲーセンの風景ってあるじゃないですか。たとえば、ゲームオーバーになってコンティニューせずに席を立つといったような。でも、木村さんが言うには、『アカとブルー タイプレボリューション』にはゲームオーバーはなくて“TRY AGAIN”なんだって。

 しかも、「ありがとう、また遊んでね」というメッセージも聞けるという。それが、いいなあって。コンティニューのときの音楽を作るのが、個人的に大好きで。燃えるんですよ

 「もう一度挑戦してみて!」とプレイヤーを引き留める曲を作ってやるぜって思って。

イケダいまそこで対談を聴いているWASi303さんが、激しくうなずいてる(笑)。でも、コンティニュー曲じゃないけれど“続き”と言えば、2020年2月の細井さんのライブでは、HEAVY METAL RAIDENも参加させてもらうことになってありがとうございます。

細井いやいや! こちらこそありがたいです。最初はイケダさんにギタリストとして参加していただく企画のライブでしたが、台風の影響で急きょ2020年2月に延期になってしまってヘコミました。

 でも、ケガの功名か、イケダさんのほかにHMRにも参加していただけることになって……せっかくなので、ただの演奏ではなくて入り乱れて『アカとブルー』を演奏する、なんていうのもできたらいいなって。

細井氏が率いるHOSOIBANDと、アーケードゲームミュージックカバーバンド・O.T.K.、『雷電』の鋼鉄爆音公式ゲームミュージックバンド、HEAVY METAL RAIDENが贈るライブイベント“ゲームとテクノがスキ!”。2020年2月16日、小岩ライブシアターオルフェウスにて開催予定だ。※チケットなど詳細は記事の最後のリンクを参照

イケダ細井さんらしい『アカとブルー』が、いまからすごく楽しみなんです。『雷電』から『ソニックウィングス』へと受け継がれる何かが聴けるような気がして。これらの作品は、もはや兄弟みたいなものかもって(笑)。

細井そうですね。あ、もちろん、さきほどの効果音の話ではないですけど、ふつうに演奏するのではつまらないですからね。何か仕掛けようといま構想中です(笑)。

イケダ問題なのが、俺と細井さんが何かをいっしょにやろうとすると……必ず「台風が来る」ということだけですね(笑)。

一同 (爆笑)

細井2月だから大丈夫だろうと思うんですが、もしかしたら大雪が降るかもしれない(笑)。でも、今日だけは例外で晴れたので、これは稼働日の奇跡ですね。

イケダきっと、みんながいれば大丈夫なんですよ(笑)。

 ゲーセン筐体から流れる音に、作曲者として、そしてギタリストとして関わってきた細井氏とイケダ氏。2020年2月16日日曜日には、小岩ライブシアターオルフェウスで開催予定のライブ“ゲームとテクノが好き!”に出演予定。『ソニックウィングス』シリーズはもちろん、『アカとブルー タイプレボリューション』の楽曲も演奏されるとのことなので、現場で生の“ゲーセンサウンドの遺伝子”を体感できるはずだ。チケット購入やイベント詳細については以下のリンクをチェック!

ゲームとテクノがスキ! LIVEチケット購入サイト