『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の最新情報が発表される、プロデューサーレターLIVEが2019年12月14日に実施。高難度レイドダンジョンの希望の園エデン零式:共鳴編や、漁師専用の新コンテンツ“オーシャンフィッシング”など、次期大型アップデートのパッチ5.2でリリースされる新要素の概要が発表された。
今回のプロデューサーレターLIVEは、“第6回 14時間生放送”のプログラムの一環として実施。吉田直樹プロデューサー兼ディレクターは、グローバルコミュニティプロデューサーの室内俊夫氏と軽妙なトークを交えながら、本作の直近の未来を語っていった。
『漆黒のヴィランズ』の物語が完結に向け走り出す!
それでは、この日の放送で発表されたパッチ5.2関連の情報をダイジェストでご紹介しよう。箇条書きで示したコメントは、すべて吉田氏によるものだ。
メインクエスト
- “追憶の凶星”というタイトル(から予想されるシナリオの中身)は、イヤな予感しかしない
- 『漆黒のヴィランズ』の物語は、完結に向かって急加速を始める
インスタンスダンジョン
- パッチ5.2で追加されるインスタンスダンジョンは、黒風海底 アニドラス・アナムネーシス
- いわゆる“偶数パッチ”では、インスタンスダンジョンをふたつずつ追加してきたが、今回のアップデートからひとつのみになる。複数のインスタンスダンジョンを作るよりも、そのコストをほかの遊びの開発に振り向けたほうが、よりプレイヤーの方々によろこんでもらえると判断した
蛮族クエスト
- キタリ族の蛮族クエストは、ギャザラー向けのコンテンツ
- ナマズオ族の蛮族クエストは、クラフターとギャザラーの両方に対応していたため、開発にものすごく手間取った。これを避けるべく、今回は双方を分けることにした
クロニクルクエスト
- 『紅蓮のリベレーター』の四聖獣奇譚に相当する新たなクロニクルクエストのタイトルは、ウェルリト戦役
討伐・討滅戦
- ウェルリト戦役に関連して、ルビーウェポン破壊作戦/極ルビーウェポン破壊作戦が登場する
- これらふたつのコンテンツとは別に、新たな討伐・討滅戦も別途用意されている
高難度レイドダンジョン
- 希望の園エデン:共鳴編と、その高難度版である希望の園エデン零式:共鳴編のふたつのレイドダンジョンがお目見えする
- パッチのリリース日から少し遅らせて“零式”を入れてほしいというリクエストを多くいただいたが、検討を進めた結果、今回も同時実装とさせていただくことになった
- 前回と同様、光の戦士の“記憶力”が試されるのかどうかに、ぜひご期待いただきたい
- シナリオも一気に進展するので、こちらも合わせてご注目を
装備強化コンテンツ
- メインシナリオで地名だけがたびたび登場した、シタデル・ボズヤをめぐるストーリーがくり広げられる。“シタデル・ボズヤ蒸発事変”など、いくつかの設定を事前にチェックしておくと、シナリオがより深く楽しめるはず
- パッチ4.Xシリーズ当時は、禁断の地エウレカの中で武具の育成が楽しめたが、今回は装備強化コンテンツだけを独立して遊べるよう設計した。ただし、双方が完全に分離しているわけではないのでご注意いただきたい
- パッチ5.2以降も、継続的にアップデートを行っていく予定
ジョブ調整
- いろいろなジョブに調整が加わる予定
- 赤魔道士は、確実に手が入ると思う
- 詳しくは、次回プロデューサーレターLIVEでお伝えする
イシュガルド復興
- 雲海探索 ディアデム諸島がギャザラー専用コンテンツとして生まれ変わり、イシュガルド復興と関りを持つようになる
- エリア内の景観を楽しみながら、ゆっくりと採集していただきたい
- 単純に採集を進めていくだけにとどまらず、ちょっとした楽しみも盛り込まれている
- いわゆる新式装備は、新たに設けられる“高難易度レシピ”に含まれない。このため、当該アイテムの製作のありかたは変わらない
- ランキングシステム導入にともない、クラフター&ギャザラーのドットアイコンもお目見えする
クラフター&ギャザラー大改修
- パッチ5.1から引き続き、アクションの調整が行われる
- アクションを実行する前にその結果が把握できるよう、専用の予測機能を追加。これを活用して、先述の“高難易度レシピ”に挑んでいただきたい
- パッチ5.2以降のアップデートで、製作を練習できる機能が実装できればいいなと考えている
漁師のシステムアップデート
- 『FFXIV』のギャザラーの中で漁師は独立した存在なので、専用のアップデートを用意した
- オーシャンフィッシングという、漁師専用の船釣りコンテンツが入る
- 経験値が獲得できるので、レベリングにもぜひご活用いただきたい
- オーシャンフィッシングに出掛けられる場所は、今後少しずつ増やしていこうと思っている
スカイスチールツール
- クラフター&ギャザラー向けに、スカイスチールツールと呼ばれる主道具強化コンテンツが入る
- ゾディアックウェポンストーリーに代表される、装備強化コンテンツのような高難度にはしない
- 蒼天街でクエストを受注することになるが、イシュガルド復興関連のアイテムをいまのうちから集めても、スカイスチールツールの早期攻略にはあまり結び付かないはず
- 錬精度が100まで溜まった装備からマテリアを取り出すと、その数値がリセットされる仕組みに変更。つまりマテリア化を実行した装備が、今後失われないようになる
そのほかのアップデート
- 次期アラガントームストーンの名称は、まだ秘密
- エオルゼアの世界で、傘が差せるようになる
出演者9名に合同インタビューを実施!
“第6回 14時間生放送”のプログラムの合間を縫って、吉田氏を始めとする開発スタッフがメディア合同でのインタビューに応じてくれている。その模様もお伝えしよう。
吉田直樹氏(プロデューサー兼ディレクター)写真右
室内俊夫氏(グローバルコミュニティプロデューサー)写真左
──今年1年の振り返りと、来年への抱負をお聞かせください。
吉田 『漆黒のヴィランズ』がセールス的にも評価的にも過去最高というのは何よりうれしいのですが、まだまだ日々あまりにも忙しいので、過去のことになっちゃっていて……。ようやくこの14時間生放送で、年内の大きな仕事は一区切りです。今年は本当にスタッフがよくがんばってくれて、ものすごく成長しました。それもうれしかったです。
室内 『漆黒のヴィランズ』が出たのが、体感的には1年前とかじゃないの? というくらい、時間が経つのが早いと感じました。イベントが多かったせいもあるとは思うんですけど、楽しく、そして忙しくやれた1年だったかなと。来年に向けては、前回の“あれ”から2年経つということは、また大型イベントの年なのかな……なんて(笑)。その準備をそろそろしないといけないなと思っています。「そろそろ」と言いながら、もう全力で走らないといけないころになってきたので、準備を進めていきたいなと。
吉田 これまでは勢いで行けたところがあったんです。“しばき倒した! 次! しばき倒した! 次!”みたいな感じでしたが、最近は僕たちも正気に返ってきたせいで、「あれ? もしかして、もう準備しなくちゃいけない……?」というような、“やらなきゃいけない感”が出てきていて、それはよくないなと。やっぱり、(長期開発は)飽きるんですよ。開発側が飽きるのはよくないと思うので、(定常アップデートなど)大きなことはきちんとやりつつも、またいろいろと趣向を凝らしていけたらなとは思っています。僕らが楽しそうに企画をして、楽しく開発しているほうが、結果みなさんも楽しいはずなので。そこは忘れず、定常業務みたいにならないように、また来年も開発していきたいなと思います。パッチの計画もかなり先までできていますので。
──例年と違った点はありましたか?
吉田 今年はけっこう変わったなというところはあって。スタッフの成長というところがいちばん大きいです。彼らからの提案というのは、いままでより一段レベルが高くなりました。僕としては、これまでMMORPGを遊んできて「自分だったらこうするのにな」みたいなアイデアは、ほぼほぼ『漆黒のヴィランズ』までに突っ込めたかなと思っていて。ここからは、新しいステージに向かって行かないといけないと思っています。ほかのMMORPGではやっていない、もしくは『FFXIV』でしかやれないようなところを作っていく中で、自分の引き出しを改めてひっくり返し直したりもしました。そういう意味では、今年は苦しんだかなという気はしています。それと同時に、スタッフからいいアイデアが出てきて、それらを組み合わせてみたり、「(いいアイデアだけど)このインパクトってこのタイミングで本当に大丈夫なの?」みたいなやり取りをしています。
あとは、振り返ってみたらコンテンツボリュームの横幅がものすごいことになっていて。定常アップデートをかけるだけでも、たとえばテキストの文字数だけでも1.3倍とかになっているので、かつてはこのローテーションでローカライズできていたのが、無理になってきています。この状態でさらに新コンテンツを開発するなんて、もっと増員しないと回らないよねとか、そのへんも見直す1年になったかなという気はしますね。(ゲームとプレイヤーの)規模が想定よりも大きく外側へ膨らんで、そのぶん至らぬところが出始めているとは思うんですけど、いまのサイズではある程度はしかたないのかなと。全部完璧にやろうとすると、全員疲れて破綻してしまいます。そこのバランスはうまく取りたいと思っています。ですので、内部的にはけっこう変わっていっている1年だったかなという感じがします。
室内 スタッフの充実度はすごく上がったなと如実に感じますね。国内外でのイベントで、いろいろと立ち回ってくれています。海外のイベントで吉田が動くときは、我々はいっしょにアテンドをして、サポートしたり、インタビュー対応のときに通訳の方と打ち合わせるなど、裏方役をやるんですけど、そうしたことを私以外にもやってくれるスタッフが格段に増えました。スタッフの層が厚くなった1年になったと思います。
──ちなみに、室内さんの衣装の着心地はいかがですか?
室内 これね、朝着てみたら意外と涼しいなと思っていたんですけど、いますごく暑いです(笑)。
吉田 11〜12年くらい連続でgamescom(ドイツで開催されるヨーロッパ最大級のゲーム見本市)に行っているんですけど、定宿にしているホテルのすぐ近くに、こういったものしか売っていないお店があって、なぜか毎年、そこで室内の衣装を買うっていう。本当に納得いかないのは、けっこう高いんですよ。これ、30000円以上しますから。
室内 フルセットでね。
吉田 (こんな見た目なもんだから)なんとなく領収書が切れなくて(苦笑)。なので、毎年僕のポケットマネーです。誰か止めてくれればやめられるんですけど。
室内 最近は私も自分から試着しちゃってるし(笑)。
吉田 今年は室内といっしょに行って、本人に試着させながら、「今年はフォーギヴンだな」とか(笑)。
──そういえば、齊藤さん(齊藤陽介氏。『ニーア』シリーズなどのプロデューサー)が吉田さんのパーカーと同じ柄で色違いのものを着ていましたが……(笑)。
吉田 パーカーについては、けっこうひどい目にあってですね……。“5.1パッチノート朗読会(2019年10月29日配信)”でこのパーカーを着た後、会社に着て行ったんですよ。そうしたら、ぜんぜん知らないウチの社員らしき人から、「あ、吉田直樹着用モデルですね」って言われて。僕からしたら「そもそもあなた誰? 着用モデルも何も、俺が吉田直樹だっつーの」っていう(苦笑)。まわりの人も「よくぞ言った!」みたいな空気で。すごく恥ずかしくなって、もう着てこれなくなったんですよ、すると、齊藤さんが……
室内 黒を買った。
吉田 けっこうな金額で買ったのに、4回しか着ていないですよ。誰かにプレゼントしようかなと(笑)。
(という雑談のまま終了)
祖堅正慶氏(サウンドディレクター)
──今年1年の振り返りと、来年への抱負をお聞かせください。
祖堅 今年、『漆黒のヴィランズ』が発売されたんですけど、その開発とオリジナルサウンドトラックの制作、オーケストラコンサートが同時進行だったので、開発始まって以来のしんどい前半でした。『漆黒のヴィランズ』発売以降のパッチ制作については、いつも通りたいへんではあったんですが、サウンド面のコンフィグを追加したり、フィルターを入れたりと、ボトム部分にテコ入れをしたので、いままで手が届かなかったところをやっていっているという感じですね。あと、オーケストラコンサートやって本当に思ったんですけど、新規のお客様がすごく増えていて。「オーケストラを初めて聴きました」という方も半数くらいでした。今後もいろいろなお友だちをエオルゼアに誘っていただいて、冒険をした後に音楽を聴いてもらえたらうれしいなと思っております。
──来年に向けてはいかがでしょうか?
祖堅 とくにノープランですけど(笑)。引き続き、開発は全力でがんばらせていただきます。これ(自身のTシャツを指差して)、やりたいですね。
──サウンドのスタッフにも新しい顔ぶれが加わっているようですが、それについては?
祖堅 サウンドで新人を採るにあたって、効果音のスタッフはいままでも採ってきたんですけど、コンポーザー枠として新人を採るということはなかなかできていなかったんです。今回、それが叶って、新しいコンポーザーが『FFXIV』に参加してくれることになり、アレンジの幅も広がりました。とはいえ、教えないといけないこともたくさんあって、彼らも『FFXIV』で要求されるクオリティーはものすごく高いということが身にしみて最近わかってきたようで、ものすごく悩んでいるようです。でも、彼らはすごく若いので、その若いエキスを『FFXIV』に注ぎ込んで、新しい風を入れられればと。おじさんばかりになってもしょうがないので(苦笑)。僕にはなかなかできない表現もあるので、それは彼らがやってくれるはずです。僕も楽しみにしています。
──今後、チャレンジしたいことはありますか?
祖堅 オーケストラコンサートもそうなんですけど、ひとつのサウンドの形として、パッケージ以外でも何かできるといいなと思っていて。というのは、どうしてもパッケージだと、海外のお客様に対して物流的になかなか難しいところもあるんです。この中身をオンデマンド(音楽配信サービスの提供形式の一種)に上げるなりできるといいなと。模索はしているんですけど、なかなか技術的にも難しいところがあって。あまり期待はしてほしくはないのですけど、トライはしようと、もがいている最中です。冒頭にも言いましたが、拡張も作った、インストアイベントもやった、オーケストラコンサートもやった、あとは“これ”をやらないと! たぶん、光の戦士が待っていると思うので、“これ”を早く実現したいです。
鈴木健夫氏(リードアーティスト)
──今年1年の振り返りと、来年への抱負をお聞かせください。
鈴木 今年の前半は、やはり『漆黒のヴィランズ』を作るまでがけっこうたいへんでした。自分が担当していたのは、第一世界のフィールドやカットシーンまわり、あとは新種族をアニメーションも含めて見ていたのですが、拡張版ってすごく期間をかけて作るものなので、そこを作りきるというのがたいへんでした。自分が予想していた以上に多くのプレイヤーから賞賛をいただき、楽しんでいただけたので、今年の後半はうれしい期間でした。フィールドは拡張版でないと足せないですし、4年ぶりくらいに新種族も追加できたので、それもよかったです。カットシーン、シナリオもすごくよかったと評判をいただいたので、がんばった甲斐がありました。
この評判を取れたのは、積み重ねの部分がけっこうあるのかなと自分では思っていて。自分だけでなくて、開発のスタッフそれぞれが積み重ねてきたものが評判につながっているなと感じています。それこそ、何か大きく変えたかというとそうではないんですけど、このまま積み重ねていって、いいものを作り続けていきたいなというのが、来年以降の抱負になります。
──今回で拡張パッケージも第3弾となりましたが、これまでの拡張パッケージの制作と比べていかがでしたか?
鈴木 1、2を争うくらい、たいへんでしたね(笑)。毎回、たいへんなんですよね。
──運営開始から6年が経って、ピークアウトどころか逆に規模が大きくなっていますが……。
鈴木 開発目線で言うと、ジョブなどが都度増えていくので、後になればなるほど苦しむ量が増えていくというのがあるんですね。新しい武器を作るにしても、前回の拡張に加えて、さらに2種類ずつ追加されていくというのがあるので。そういう意味で言うと、どの拡張よりもたいへんでした。また、それぞれの拡張パッケージで特徴を持たせるのも苦労するポイントとしてあって、『蒼天のイシュガルド』だったら、フライングができる背景作りというのがけっこうたいへんでしたし、そのほかにも絵作りを大きく変えていくというのがありました。続く『紅蓮のリベレーター』では、そのまま積み上げていけばいいのかといったらそうではなくて、泳いだり、潜ったり、ゲーム体験を変えつつストーリーを見せていくというところが大きな変化でしたね。
今回は、「そういう追加はなし!」という話だったので、じゃあ大丈夫かなと思っていたんですが、“光の氾濫”でずっと同じ天候を引っ張ったまま絵作りをしていくというのが、逆にたいへんでした。いままでは、昼から夜への変化だったり、天候の変化に頼った絵作りというのもあったんです。それによって、プレイヤーにいろいろな印象を与えられたのですが、今回は新しいフィールドに行っても見た目が同じに感じてしまう恐れがあると。それだとおもしろくないので、世界を冒険していくという感じを作るのがたいへんでした。
織田万里氏(世界設定/リードシナリオライター)
──今年1年の振り返りと、来年への抱負をお聞かせください。
織田 本来であれば、『漆黒のヴィランズ』への反応を話したいところなのですが、あまりの忙しさに、なかば忘れかけていてですね(苦笑)。設定やシナリオ側は上流工程になってくるので、つぎのパッチ、さらにつぎのパッチと考えていかないといけない都合上、方々からせっつかれている状態で、感慨にふけっている場合ではないと。
──もはや遠い昔の出来事に?(苦笑)
織田 そうですね。いまは“仕込みの1年”みたいな感じが自分としては強くなってしまっていて。今年の前半は『漆黒のヴィランズ』の開発追い込みとリリースというのがあったんですけど、そこから通り過ぎてしまっているかなという感じです。
──来年以降の抱負みたいなものはありますか?
織田 どうしても運営が長いタイトルなので、作っている側にも“慣れ”というものがでてきてしまいがちです。つねに新しい挑戦を忘れないということと、プレイヤーのみなさんの動向をちゃんと見守りながら、寄り添っていければ、というのは強く思っていますね。
──『漆黒のヴィランズ』のシナリオが高く評価されていますが、「こんなところが注目されているんだ」と思ったところはありますか?
織田 これは海外の話なんですけど、たとえばラケティカ大森林で、中南米のメソアメリカの神話とかをモチーフにしたことがやたらと刺さったと印象がありまして。海外のインタビューを聞く限り、「中南米を取り扱ってくれてありがとう!」みたいなことを言われていました。自分ではそんなに意識していないですし、むしろ日本人からして古代文明でインカやアステカは“どメジャー”なんじゃないの? と思っていたので、意外な反応だったなというのがありますね。
──世界設定本の第3弾の予定は?
織田 なかなか言いづらいところではございますが……(苦笑)。ただ、ありがたいことに反応がいいというか、続編を楽しみにされている方がたくさんおられるということは承知しております。自分はもともと出版業界にいた人間なので、たくさん本を作っていきたいという意思があるんですね。ゲームの仕事に追われていると、唐突に本を作りたくなるという病気があって、「作りたい」という話はするんですけど、グッズを統括している方に「絶対に通常業務を遅らせるな」と。そうなるようだったら、どんな状態でも取り上げると脅しをかけられておりまして(苦笑)。いろいろ自分的にやりたい本があって、企画書は出していますが、それが実際に形になるかどうかというのは、取り上げられるかどうかにかかっているかなと。
──以前、CEDEC(日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンス)でクエスト制作について講演されていましたが、今後もこういった取り組みは続けていかれるのでしょうか?
織田 お声掛けいただければ……というのと、通常業務との兼ね合いというところでございまして。ただ、ああいうところに出ていくということが業界にとっては大事なことですし、新しい仲間をお迎えするという意味でも重要な場だとは思っているので、良きタイミングと、良き機会があればとは思っています。
石川夏子氏(メインシナリオライター)写真右
髙柳早紀氏(クエストデザイナー)写真左
──今年1年の振り返りと、来年への抱負をお聞かせください。
石川 とにかく、今年は『漆黒のヴィランズ』をリリースできて、気がついたらキャラがヒートテックを着ていて、駆け足の1年だったなと思います。来年は、とりあえず2月にパッチ5.2があるんですけど、パッチ制作をバリバリ並走しつつ、この勢いを続けていければと思っているので、休めない……がんばりたい……と思います。
高柳 私も同じように『漆黒のヴィランズ』の制作で上半期ずっと走り続けていて、本当に親の声より聞いた“ラヒッ”(笑)。本当にたいへんだったけれど、あれだけプレイヤーのみなさんに喜んでもらえたなら何よりかなと思う1年でした。じつは私、パッチ5.1からは『YoRHa: Dark Apocalypse』のコラボのクエスト実装をやっていて、これから続いていくヨコオさん(ヨコオタロウ氏。『ニーア』シリーズのディレクター)とのタッグクエストを盛り上げていければと思っています。
──『漆黒のヴィランズ』によって、『FFXIV』のストーリーのよさが改めて評価されたことについてはいかがですか?
石川 それは本当にありがたくて。私はもともと売り切りのゲームを作っていて、だいたいそのゲームの話題って発売から3週間もすればなくなってしまうものなんです。『FFXIV』はMMORPGであるという特性がいい方向に働いていて、話題が途切れず聞こえてきますし、それを聞いた別の人がプレイをしてまた感想をいただけるという、私の開発の経験にないことが起こっています。シナリオを書くほうとしても、こんなに長く連載することってなかなかないので、新鮮な喜びをいただいております。
髙柳 メインストーリー制作の傍、私はカットシーンがあまりないサブクエストのプロットから実装までを担当しています。自信満々でお届けした“闇色シロップ”をみなさんに拾っていただいて、本当にうれしかったです。……自信満々と言いつつも、プロット初挑戦だったので、石川さんに「大丈夫かな……」と言いながらこわごわと毎日過ごしていたので、そこを見ていただけて、本当にありがたいです。
──これからチャレンジしてみたいことはありますか?
石川 そういえば、イシュガルド学園(エイプリルフール企画)のマンガの原作が届くのをずっと待っているんですけど、ついに今年1年どこからもこないまま、来年のエイプリルフールを迎えようとしています。イシュガルド学園じゃなくてもいいんですけど、お待ちしております(笑)。
髙柳 来年こそ、好みのミッドランダーを特注で……(笑)。
石川 コイツやばいんですよ。疲れてくると全員イケメンにするから、一時期スリザーバウとか超イケメンだらけで。「やばくない、これ? ちょっと下げてくれる? (顔の)アベレージを」って言って(笑)。
髙柳 じつは、『漆黒のヴィランズ』でイベント班に内緒でミッドランダーの顔を新しく作って(笑)。夏子さんに「作った!」って。つぎは、それこそエレゼンの新しい顔もいいし……でも私はミッドランダーが大好きだから、ミッドランダーかハイランダーの新しい何かを……いまこれを言ったらキャラ班の人がザワッとするかもしれないけど、どうにかキャラ班の方と仲よくして、作っていけたらなと思っています。
石川 ルガディンの子どもを作りたい織田さんと戦うみたいな(笑)。
市田真也氏(リードアーティスト)
──今年1年の振り返りと、来年への抱負をお聞かせください。
市田 無事に『漆黒のヴィランズ』を作りきることができました。その後のパッチ5.1、パッチ5.2と開発は進んでいますけれど、日々、チーム全体でうまく進めていくことができて、ホッとしています。あと、直樹さん(吉田氏のこと)もチームのみんなが成長してきていると言っていましたが、若手だけでなく、ベテランのほうもさらに力を伸ばしていて、いいものがどんどんと作れています。この力をうまくひとつにまとめて、今後もよりいいものを作っていきたいなと、がんばっているところです。
──来年以降の抱負としてはいかがでしょうか?
市田 MMORPGの開発は、基本的にひとつのサイクルをずっとくり返すことになるので、自分の中で大事にしているのは、つねに新しい体験をプレイヤーのみなさんに届けたいということです。新しいグラフィックだったり、ゲーム体験を入れられるようにとは思っています。
──開発を続けていて、今年だけの変化というのは何か感じましたか?
市田 新しくチームに加わったメンバーの多くがもともとは『FFXIV』のプレイヤーで、そうしたスタッフが大きな核になっています。ベテランのメンバーも、外から見た『FFXIV』のすばらしさというか、『FFXIV』のどこがいいのかということを新しいスタッフから客観的に教えられて、改めて気づかされるというか。ベテランも活気付いていますし、いままでに見られないコミュニケーションというか、活気が生まれていますね。
──開発もいわば“第二世代”に入ったというか?
市田 そうなんですよ。若手がすごく押し上げてきているので。自分もありがたいですね。
──『漆黒のヴィランズ』で新種族が追加されましたが、リードアーティストとしてどのあたりに苦労されましたか?
市田 新種族のロスガルが独特な形状をしているというか、背中を丸めた風貌をしているので共通リソースがあまり使えず、専用コストがいっぱいかかってすごく苦労したなと(苦笑)。あと、手が大きいので、武器とかのグリップに収まりきらなかったり、マウントの手綱がロスガルだけおかしなことになったり……。それらも全部合わせて、新種族ならではの苦労はありましたね。
松澤祥一氏(リードプロジェクトマネージャー)
──今年1年の振り返りと、来年への抱負をお聞かせください。
松澤 『漆黒のヴィランズ』がリリースされ、ビジネスの面でもコミュニティの面でも大きな盛り上がりになりました。MMORPGのような長期運営するタイトルだからこそだと思うんですが、盛り上がりのタイミングを開発側だけでなくて、プレイヤーの皆さんといっしょに作っている感じがすごくありまして、それが強く実感できた1年でした。来年に関して言うと、もう“つぎ”の仕込みをしないといけません。我々プロジェクトマネージャーのメンバーは、長めのスケジュールを組まないといけないところでして。楽しみと同時に、いまからすでにいろいろと心配事が出てきて、がんばって対応しないとな思っているところです。
──今年ならではの変化はありましたか?
松澤 プロジェクトマネージャのチームや宣伝のチームもそうなんですけど、いまいるメンバーのみんながすごく成長してきていて、チームとして仕事が進むようになった感覚が強いですね。個人的には、とても助かった1年だったという印象があります。
──みなさん、チームの成長についてお話しされますね。
松澤 プロジェクトとして規模が大きいので、ひとりひとりの担当は部分的にはなってしまうんですけど、表に出てきていないメンバーが大勢いたうえで成り立っているプロジェクトだなとすごく思っていまして。『FFXIV』は大勢で力を合わせて作っていくという中で、どうやって共通の感覚値を作るかというのが大事だと思っています。プロジェクトマネージャたちは、“お客様の声通信”みたいな、プレイヤーの方がTwitterなどでフィードバックしてくださったことをまとめて、プロジェクト全体に送っていたりするんですけど、プレイヤーの方々といっしょに作っていくということを実感しつつ、つぎの1年もがんばっていきたいです。
──『FFXIV』はグローバルに運営していますが、ビジネス的な展開で心がけていることはありますか?
松澤 言いたいことはたくさんあるんですけど、言えないことばかりで(苦笑)。『FFXIV』って、国産のMMORPGとしてはすごく稀有なポジションにいると思っています。たとえば、フリートライアルを14日間から無期限に変えたりしたこともそうなんですけど、ほかがやっていないことをウチでやるしかないと思っていて。ここからさらに、攻めの姿勢を続けていければと思っています。今後も新しいことに挑戦したいと思っていますが、まだ何に挑戦するかは言えません。追い追い、吉田の口から発表されると思います(笑)。