筋金入りのシリーズファンがガチでレビュー!

 ついに2019年12月12日、プレイステーション4で発売となるセガゲームスの新作『新サクラ大戦』。前作『サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~』からじつに14年振りのリリースとなるシリーズ最新作で、2019年3月末の“セガフェス2019”以降、惜しみなく情報を出していく積極的なプロモーション活動でも話題となり、シリーズファンであるなしを問わず注目を集めている。

 本稿では、週刊ファミ通にて記事を担当しているライター、ギャルソン屋城による同作のプレイレビューをお届けしていく。

“努力、恋愛、勝利”! 王道を外さないストーリー展開

『新サクラ大戦』は、10年前の“降魔大戦”でほぼすべての隊員を失い、すっかり落ちぶれてしまった都市防衛部隊“帝国華撃団・花組”の隊長に任命された主人公、神山誠十郎が、幼なじみの新米隊員天宮さくらを始めとした個性的な女性隊員たちと絆を深めながら、帝都の平和を脅かす“降魔”と戦ったり、華撃団を立て直すために奔走する……というアクション・アドベンチャーゲーム。

 プレイヤーは、神山を操り、舞台となる大帝国劇場や銀座の街を探索しながらストーリーを進めていく“アドベンチャーパート”と、従来のシミュレーション形式からアクション形式へと生まれ変わった“バトルパート”をくり返していくことになる。

 テレビアニメを模した構成(複数話で成り立っていて、次回予告などもある)や、アニメ音楽界の巨匠、田中公平氏によるBGMや多彩なキャラクターソングなどもよき特徴である。

『新サクラ大戦』プレイレビュー――ヒロインのジト目も快感! 遊びどころが詰まった会心の最新作_01

 さて、いよいよ本編。ストーリーはヒロイン天宮さくらの幼少期の回想シーンから始まり、主人公神山が帝都へとやってくるところから操作可能となる。第1話のお約束として、システムのチュートリアルを盛り込みつつ、主要キャラクターの顔見せが続いていく。

 最初からLIPS(時限式選択肢)がバンバン出てきて、しかもそれぞれにオモシロ選択肢が混ざっている。そうなったら、ついついそれを選んでしまうのが人情というもの。しょっぱなからヒロインたちにジト目で見られまくりである。無論、それもまたよし。

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さくらと言えばジト目である。ここテスト出ますよ~。

 プレイヤー的には「さてこれからがんばって女の子たちとイチャイチャするぞ!」と希望に満ちた心持ちで始めた第1話だが、さっそく何やら雲行きの怪しさを感じることになる。冒頭にも書いたが、じつは帝国華撃団はすっかり落ちぶれていて破綻寸前、予算も人員も、神山が乗る機体さえもないのだ。お金を稼ぐために舞台興業を打つも、さくら主演の『ももたろう』で大失敗。隊員の東雲初穂やクラリス、さらには神山自身もどこかあきらめムードだし、女の子たちと仲よくするどころか、いきなり失業のピンチ!?

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 しかし、そんな苦境にあえぐ面々に活を入れてくれるのがさくら。降魔が作り出した“魔幻空間”でのバトル中、大ピンチに見舞われるも、決してあきらめない強い気持ちを見せてくれるのだった。

 そして、どこか投げやりだった神山がここで奮起! 見事にさくらのピンチを救い出し、バトル勝利へ大きく貢献することになる。まさに一点の曇りなき“王道”展開で、どこかのマンガ誌の“努力、友情、勝利”ならぬ“努力、恋愛、勝利”という『サクラ大戦』の醍醐味を体現したような“掴みの1話”だった。

 そんな第1話を皮切りに、ゲーム前半は、ないない尽くしだった新生帝国華撃団がひとつずつ問題をクリアーしていきながら、次第に強くなっていく成長ストーリーが展開していく。意外性という意味では物足りないかもしれないが、困難を乗り越えていくさまを眺めるのはいいものである。

 各ヒロインのストーリーがひと通り終わった中盤以降、真の敵の存在が明らかになり、急展開を見せるというお約束の構成も健在で、ゲーム全体としてはよどみない流れとなっている。

 なお、ヒロインのひとりから司令官となった神崎すみれは、シリーズファンを号泣させようとしてくるのでプレイ時はハンカチの用意を忘れないように。

変わるは必定。新たな魅力に気付いたらもうハマっている!

 ストーリーのことを語ったところで、あらためてこれまでのシリーズ作品から大きく変わったポイントを確認してみよう。

 おもなところでは、

  • メインキャラクターデザインが藤島康介氏から久保帯人氏へ
  • メインキャラクターが神崎すみれを除き一新(ストーリー上はつながっている)
  • シナリオ構成があかほりさとる氏からイシイジロウ氏へ
  • グラフィックが完全3Dへ
  • バトルがシミュレーション形式からアクション形式へ

といったところが挙げられる。

 スタッフやキャストが変わっていくのは、むしろ自然なことだろうと思っている。日本には20年以上続く人気シリーズがいくつもあるが、そのほとんどが少しずつ(ときには一気に)スタッフを入れ替えながら続けている。分野は違うが、たとえばプロ野球の一球団を応援していても、20年も経てば選手はもちろんスタッフもだいたい入れ替わっているし、場合によっては経営母体が変わってしまうこともあるくらいだ。

 久保帯人氏が描くキャラクターについては、藤島康介氏のそれからテイストがガラッと変わったために最初は少し面食らったが、プレイしていくうちにだんだん気にならなくなる……どころか、ある瞬間ハタと気付くことになる。「みんなカワイイ」と(アナスタシアだけは“カワイイ”ではなく“セクシー”かも)。

 これはまさに“革命”である。シリーズお約束の“ヒロイン選択イベント”が後半に出てくるのだが、きっと多くのプレイヤーが誰を選ぶかで丸1日くらい悩むはずだ。

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なお、生足はクラリスだけである。ヒロインたちは意外に身持ちが堅い!?

 グラフィックの完全3D化についても、操作は快適だし、ネガティブな要素はとくにない。キャラクターだけでなく、カメラも操作しないと見付けられないものがあったりするわけでもなく、強いていえば特定の場所に落ちているブロマイドをもう少し見付けやすくしてほしいと思ったくらい。

 また、じつは大帝国劇場以外のマップはいずれもかなり狭めで、探索が面倒に感じることもないし、大帝国劇場にしてもどこに何があるのかすぐに覚えられる程度の広さ。画面切り替え時の読み込みもそれほど気になるレベルではない。

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ちなみに、フリー行動の大半は大帝国劇場内の移動になる。劇場内のマガジンラックにはすみれが表紙の冊子も……。

 バトルは、想像以上にしっかりとしたアクション性が楽しめた。“セガゲームスが総力を挙げて~”とは何度も聞いていたが、挙動もシャープだし、操作するキャラクターによって豊富なバリエーションのアクションが用意されているなど、シリーズ初の試みとは思えないデキで、「さすがセガ!」と唸らされた。

 ただ、基本的な操作以外は細かく説明されないので、たとえば空中戦で有効な攻撃手段などは自分であれこれ試してみる必要がある。

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神山ならジャンプ(×ボタン)して△ボタンでの攻撃が空中戦で役立つなど、攻撃方法は自分で考える必要がある。

 ゲーム後半になると難易度もだいぶ上がってくるが、ボス戦など強敵との戦いでは相手の攻撃パターンを覚えて隙を突けば必ず勝てるようになっている。アクションが苦手な人には若干きびしめの難度かもしれないが、隊員たちと絆を深めることで、バトル中のパートナーの基本能力を上昇させられる“絆レベル”を高めたりすれば、だいぶラクに戦える。

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 基本的には神山とパートナー(バトルによって異なる。一部を除き固定)のふたりを切り替えながら戦うシステムになっているが、上海華撃団などと戦う“華撃団大戦”のみ、神山のほかにふたり隊員を任意で選べる。

 バランス型の神山に一点突破型のさくら、小回りは利かないが絶大な攻撃力を誇る初穂、1対1に強いあざみ、遠近両対応の万能型アナスタシア、自動ロックオンの遠距離攻撃でラクに戦えるクラリスと、個性もうまく配分されていてアクションゲームとしてもなかなかおもしろい。

 全体としてジャスト回避を使いこなせるようになると非常に戦いやすくなるのだが、そういう細かい操作は面倒だ、という人は、パートナーには初穂がオススメだ(もっとも、選べる戦闘はそれほど多くない)。

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おなじみのやり込み要素や楽曲もスゴいんだから!

 本作で変更された仕様でうれしかったのが、アドベンチャーパートで細かい時間経過がなくなったこと。各地でサブイベントを発生させても時間が経過することはなく、1回のプレイですべてのサブイベントを見られるようになったのだ。

 アドベンチャーパートでは、各話数回ずつ“フリー行動”ができるタイミングがあるのだが、それぞれでかなりの数のイベントが用意されている。LIPSが登場するものも多く、アドベンチャーゲームとしては相当遊びごたえのある内容になっていると言っていい。

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白い“!”マークが表示されているのが、LIPSが登場するイベントだ。

 LIPSでは、選択肢によって対象キャラクターとの信頼度が増減することがあるため、基本的には好印象となりそうなものを選びたくなる。だがしかし、本作では各LIPSにだいたいひとつはオモシロ選択肢が紛れ込んでいて、プレイヤーの魂の根っこに「ほれ、選びなはれ」と語り掛けてくるのである。明らかにマズそうだが、明らかにおもしろそうなことが起きそうでもある。そうしたら、もう真じ……じゃなかった、答えはひとつ!

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 お風呂を前にして体が勝手に動いてしまったり、本気で軽蔑されたり……。神山くんには本当に申し訳ないのだが、やっぱりオモシロ選択肢の結果はおもしろいのだ。あまりやり過ぎると、バトルパートでの能力補正が小さくなってしまって難度が上がるので、ほどほどに(笑)。

 また、ブロマイド集めやミニゲームといったやり込み要素も魅力のひとつ。今回、ブロマイドはフリー行動時に売店で1枚、マップ上でのドロップ(特定の場所に落ちている)で3枚買ったり拾えるようになっていて(その他にもバトルシミュレーター“いくさちゃん”の報酬などでもらえる)、その総数は100枚以上!

 ちなみに、マップ上でのドロップについては大帝国劇場内の“資料室”にメモが用意されていて、そこで場所のヒントが得られるようになっている。探し回るうちに、マップの配置も覚えられるという寸法だ。

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暗号めいた文面。何を示しているのだろうか……。

 ミニゲームとして登場するのは“世界こいこい大戦”。いわゆる、花札の“こいこい”ルールである。対戦相手には花組メンバーなど総勢21名が登場。ストーリーを進めて特定のマップに入ると追加されたり、特定の相手に勝利することで増えていく仕様となっている。対戦中にはよくしゃべってくれて、キャラクターによっては本編では見られなかったノリ(本来のノリ?)になる人もいておもしろい。なお、難易度はけっこうガチなので注意されたし。

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 もうひとつ、忘れてはならないのが田中公平氏による音楽。すべて新しく作曲されたものが入っているのだが、いたるところで聞き覚えのあるフレーズが耳に入ってきてノスタルジーをくすぐる。

 さらに、世界各都市の華撃団にはそれぞれのテーマソング的な位置付けのキャラクターソングが用意されており(歌うのは上海華撃団・ユイ役の上坂すみれさん、倫敦華撃団・ランスロット役の沼倉愛美さん、そして伯林華撃団・エリス役の水樹奈々さん)、それもまたイイ曲なのだ。この作品、神だらけである。

 企画の誕生から発売まで、4年近い月日を費やしたというだけあって、“新しさ”と“『サクラ』らしさ”をギリギリまで追求し、盛り込んでいる本作。グラフィックやシステムなど、目に見える部分だけでも大幅に生まれ変わった一方で、劇場内にあるさまざまな小物にも過去シリーズ作品をしのばせるものがたくさん隠されていたりするなど、ファンのことをよく考えて作ったということが随所に伺える。

 また、思わせぶりなところでとどめている伏線っぽい要素もいくつか見受けられ、続編を出したいという意識も感じた。そんなセガゲームスの“本気”が詰まった作品、この冬のおともとして手に取って遊んでみてほしい。