ディライトワークス(以下、同社)は、新作オリジナルボードゲーム『シブヤ ストラグル』のメディア向け先行体験会を2019年11月19日(火)に東京・高田馬場の廃墟風スタジオ“スタジオキコリ”で実施した。本記事では、開発スタッフによる制作秘話が公開されたトークセッションの模様をお届けする。

 同社は、新人クリエイターの育成活動の一環として、2018年から新入社員自らが考え、0からボードゲームを制作し販売する取り組みを行っている。

 『シブヤ ストラグル』は、ゲームデザイナー・カナイセイジ氏(カナイ製作所)(※1)とボードゲームカフェオーナー・白坂翔氏(JELLY JELLY CAFE代表)(※2)両名の監修のもと、2019年度の新入社員が制作したオリジナルボードゲーム。

 プレイヤー同士がマップ上に手駒を配置し、バトルを繰り広げながらエリアを支配していき、最強の座を目指すギャングをテーマとした“覇権争奪ギャングバトルゲーム”だ。

 “ボードゲーム初心者でも楽しめる”をコンセプトに、シンプルなルールでありながら戦術を楽しめ、複数人でワイワイ遊べるようにデザインされている。

※1……日本を代表するゲームデザイナー。代表作『ラブレター』は国内外で受賞歴あり。
※2……日本のボードゲームカフェの第一人者で、日本全国に12店舗を展開する“JELLY JELLY CAFE”の代表。

コンセプトが“ギャング”になった理由

 2019年度の新入社員6名により2019年5月に動き出した本プロジェクト。当初はSF、ファンタジー、マフィア、スパイなど、7つの企画案があり、中にはインターネット上での盛り上がりやSNS映えのする内容ということで“タピオカ”がテーマのライトなゲームという案もあったという。

 しかし、監修を担当した白坂氏から6人で時間をかけ、会社の看板を背負って作るボードゲームがタピオカでいいのか? といった内容のアドバイスがあり、6人体制で作るからこそできる規模の企画に舵を切ったという。ちなみに白坂氏は、もしも2人体制で制作期間が2ヵ月だったらタピオカゲームでオーケーを出していたかもしれない、とコメント。惜しくもお蔵入りとなってしまったタピオカボードゲームが一体どんな内容だったのか気になるところだ。

 6月中旬、コンセプトが“近未来マフィア”へと決まり、イラストの制作を開始。7月下旬に社内向けのプレイ会を開いたのだが、体験したスタッフからもらった「このゲームの軸は何?」という質問に制作チームは答えることができなかったという。

 近未来の“SF”と“マフィア”という2つの要素が混在していたことで設定が甘くなり、軸がぶれてしまっていた『シブヤ ストラグル』。もともと20~30代をターゲットに設定していたというが、本当に“近未来マフィア”がその年齢層に刺さるのか、改めてチームで相談したところ、アニメや漫画でも取り上げられている“ギャング”にシフトしていったそうだ。また、企画しているゲームシステム自体が人を殺害するというよりも、力でねじ伏せ撤退させるというイメージのほうが強かったこともあり、コンセプトを“ギャング”に決定したという。

急きょ企画の練り直しが必要となり、制作期間が約3ヵ月と短くなり苦労したそうだ。

ダサかっこいいを目指して世界観を構築

 当初は“スタイリッシュ”な世界観を目指していたという『シブヤ ストラグル』。制作が進むにつれて、だんだんと中二病感を意識し始め、最終的には“ダサかっこいい”がチーム内の共通認識になっていったという。

 その“ダサかっこいい”を描くために、キャラクターの性格、年齢、生い立ち、キャッチフレーズなど、設定を細かく決めていったそうだ。

本作に登場する四天王と、彼らを全員撃破すると登場するラスボス“KING”。

 例えば、本作には“四天王”と呼ばれる4人の敵キャラクターが存在する。ラスボス“KING”の右腕となる“NO.1”は、寡黙に組織を支え続けるサイコパスというテーマでデザインされている。ゲーム中で運というステータスを司っているため、運がいいギャングとはどんな人物なのかを煮詰めたところ、残忍・腹黒で笑顔が卑劣なキャラクターというデザインが出来上がったそうだ。

 ちなみに、“NO.1”にはほかにも以下のような設定がある。

  • 年齢は24歳
  • メインカラーは紫
  • 幼なじみであった“KING”とともにギャング組織を設立
  • “KING”の参謀役として働く
  • キャバクラとカジノを経営。組織の資金繰りを担当
画像左が四天王の1人“NO.1”だ。

 使用すると特殊な効果が発生する“抗争(ストラグル)カード”も本作の特徴であり、世界観を構築している要素のひとつ。ストラグルカードにはそれぞれセリフが用意されており、ルール上、効果を発動するにはプレイヤーがセリフを読み上げなければならない。

 「逃がさねぇ」や「好きにしてこい」、「今だ、やれ」ほかいろいろなセリフが用意されている。たとえカッコいい内容であっても、逆転されるなどして失敗すると場がおもしろい雰囲気になることも。静かに黙々とプレイするのではなく、セリフによって盛り上がってほしいという意図から入れたシステムだという。

 ちなみに、セリフの言い回しはプレイヤーの自由とのこと。「今だ、やれ」というセリフは、女性プレイヤーであれば「やっておしまい」といった内容にアレンジするのもいいだろう。

初心者でも遊びやすいシステムを設計

 システム部分は、初心者でもボードゲームに慣れることができるようなシンプルさを意識して構築したという。

 また、ボードゲーム初心者でもストラグルカードの使用タイミングやフィールドの効果の発生順、四天王を撃破するまでのコンボなど、ゲームに勝利するための作戦を立てられるようにステップアップすれば、他の作品でも有利にゲームを進められるようになると考えているそうだ。

 カードなどのコンポーネントについても、伝えるべき情報に優先順位を付けて、フォントにメリハリをつけるなどしてボードゲーム初心者でもわかりやすいようにUIを調整している。

 監修を担当したカナイ氏は、人気のある“ワーカープレイスメント”(※3)には複雑なゲームが多い中、『シブヤ ストラグル』は60分程度の軽いプレイ時間であっても、しっかりとしたゲーム体験が得られると評価していた。

※3……プレイヤーが共通のアクションボードに順番にコマ(労働者=ワーカー)を配置して、マスに書かれた内容に応じた利益を得るゲーム。ボードゲームの中でも人気のあるジャンルのひとつで、プレイ時間が長めになるケースが多い。

ストラグルカードには足跡が描かれているが、模様を変えるなどしてパターンを用意することで抗争を演出している。

カナイ氏・白坂氏の監修内容とは?

 日本を代表するゲームデザイナーであるカナイ氏とボードゲームカフェオーナーの白坂氏の監修のもと制作された本作。総合的にアドバイスをしていたというカナイ氏だが、ゲームバランス部分は特に力を入れて監修したそうだ。

 具体的には、ラスボスとのバトルがいかにギリギリの勝負になるか、プレイヤー全員にチャンスが訪れるか、ラスボスを倒して「よっしゃ!」と喜べるか。プレイヤーが自分のアクションに対して満足できるかどうか、そんなプレイヤーの感情の動きを意識するように制作スタッフと意見交換を繰り返したという。

 ちなみに、カナイ氏は意見交換の中でプレイヤーの感情を動かすシステム、ポイントなどを“よっしゃポイント”と呼称しており、制作スタッフはそのワードが特に印象に残っていると回答していた。

 白坂氏は世界観部分を主に監修。どうすればゲームに感情移入し、没入できるかをアドバイスしたそうだ。その部分は、ストラグルカードのセリフを読み上げるルール部分に生かされているのだろう。

11月23・24日のゲームマーケットで先行販売

 『シブヤ ストラグル』は、2019年12月4日(水)の発売に先駆けて11月23・24日(土・日)に開催される電源を使用しないアナログゲームのイベント“ゲームマーケット2019秋”で価格4000円[税込]にて先行販売される。

 イベントに訪れる予定の人は、ゲーム業界の未来を担う新人クリエイターたちが開発したワーカープレイスメント系ボードゲーム『シブヤ ストラグル』を体験してみてはいかがだろうか。