2019年10月24日〜11月4日の期間、東京国際展示場を含めたお台場エリアで開催中の東京モーターショー2019。2年に一度開催されるクルマの祭典では、プレイステーション4用ソフト『グランツーリスモSPORT』(以下、『GT SPORT』)関連のイベントも多数実施された。

 とくに、eモータースポーツ関連では、国際自動車連盟(FIA)公認の世界選手権“FIAグランツーリスモ チャンピオンシップ 2019”のワールドツアー第5戦が行われたほか、18歳未満の若き選手たちが速さを競い合う“e-Motorsports都道府県対抗U18全日本選手権”、“GR Supra GT CUP決勝大会”など、多くのレースを開催。

 とくに、“FIAグランツーリスモチャンピオンシップ”の国別代表を競い合うネイションズカップでは、日本人ドライバーが悲願の初優勝を見せるなど、白熱のバトルに会場は大きな盛り上がりを見せていた。

『GT SPORT』FIA公認大会の日本ラウンドで日本人選手が優勝! 山内一典プロデューサーに今年大きな盛り上がりを見せているeモータースポーツの現状を聞く_01
全国各地から自動車好きが集まる祭典、東京モーターショー会場内でのイベント実施ということで、多くの観戦者が集結。各大会の決勝レースでは、会場のボルテージも大きくヒートアップしていた。

山内一典プロデューサーに、eモータースポーツの手応えと思いを聞く

 そんな中で、『GT SPORT』のプロデューサーを務めるポリフォニー・デジタルの山内一典氏にお話を聞く機会が得られたので、ここでその内容を紹介していこう。

山内一典

『グランツーリスモ』シリーズプロデューサー
(文中は山内)

――『GT SPORT』発売から2年を経て、今年はFIA選手権のみならず、国体の種目にも採用され、さらにポルシェジャパンカップやGT Supra GT Cupなど、eモータースポーツの展開が目覚ましい一年になりました。この事象をどのように捉えているか教えてください。

山内昨年は少し困惑していたところがありました。というのも、僕らが6年前にFIAの皆さんとこのチャンピオンシップの構想をして、同時に『GT SPORT』を作り始めた頃には、まだeスポーツの流行がやってくるということは想像できなかったんです。それがたまたま偶然、世の中にeスポーツというムーブメントがきて、そこに『グランツーリスモSPORT』のローンチと選手権の開始というものが重なって、ここまで来たんだなと思っています。

――今年開催された国体でも、『GT SPORT』の大会が行われました。今回国体に協力をしてみた感想をお聞かせください。

山内僕自身、国体という大会は知ってはいましたが、今回の文化プログラムに参加するまで正直、それほど関心を持っていたとは言えませんでした。ですが、実際に参加してみると、各都道府県から代表の皆さんやそのご家族が集まってきて、そこでこのようなスポーツが行われること自体とても素晴らしいことだと実感しました。『GT』のようなeスポーツを通じて、これまで以上にポピュラーなものになっていくのだとしたら、大変喜ばしいものだと思います。

――FIAの公認大会は2年目を迎えていますが、運用面であったり山内さんの気持ちの面で変わったことはありますか?

山内最初の1年目に気づいたことというのは、人は誰でも祝福されたいものですし、あるいは祝福したい。それがスポーツというものの本質なんじゃないかということです。そして2年目となる今年、さらに気づいたことは、人間って競争が好きなんだなということです。自分自身が進歩することと、自分自身が学習して一段高いレベルに行くことって、人にとっての普遍的な欲求なんですよね。ただ、そこで喜びが得られるには、それらの競争がフェアに行われているということが大前提になります。FIAグランツーリスモ チャンピオンシップというのは、eスポーツというカテゴリーの中に位置するものであるとは思っていますが、極めてクリーンでフェアなレース、コンペティションが行われているという意味においては、ものすごく貴重なものなんです。

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――ここまで、FIAチャンピオンシップを行われてきましたが、つぎのシーズンに向けて何か新しい取り組みは考えられていますか?

山内たとえば、今年この東京モーターショーに合わせてU-18の選手権も開催しました。これは、今年日本で行われた国体と関連したイベントになります。これまで行ってきたFIAグランツーリスモチャンピオンシップは、世界のトップ・オブ・トップのドライバーたちが競い合う、極めてハイレベルな戦いになっています。今後は、モータースポーツの裾野を広げていくためにも、もう少し下のカテゴリーのチャンピオンシップなども手掛けていきたいですね。先ほど申し上げたとおり、クリーンでフェアな競争、スポーツの本質というのは人間を幸せにするものなんです。ですので、勝者ってたくさんいればいるほどいいんですよ。

――FIAグランツーリスモチャンピオンシップは来年も継続して行われますか?

山内もちろんです。

――プレイヤーの裾野を広げるということで、以前ポルシェカップの発表をされたときに、ゆくゆくはシニア層の大会を開きたいという話をされていました。旧来からのクルマ好きな世代をターゲットにした大会も考えられていますか?

山内それはつねに念頭に置いて考えています。いまは何をどの順番で実現していくのか。そういった段階だと思ってください。

――今回の東京モーターショーでのイベントはすごい盛り上がりを見せてくれました。今後、eモータースポーツをさらに発展させていくための具体的なビジョンなどはありますか?

山内とくに具体的な目標や数字があるわけではありませんが、自分たちが価値があると信じていることを行い、人に楽しんでもらえていることという手応えは感じています。ですので、ひとつひとつベストを尽くして、さらに細かく改善していくことが必要なんだと思っています。

――先日ミシュランとのコラボを発表されました。この取り組みによって、現時点で何らかの変化・改善はもたらされているのでしょうか。それとも、今後行われていくのですか?

山内今後になります。すでに僕らが持っているタイヤの物理モデルというのは、かなり精度の高いものになります。ただ、もっともっと知りたいことがあるので、シーズンが終わって少し余裕ができたらミシュランのテクニカルセンターにうかがわせてもらい、本当に僕らがまだわかっていないことをミシュランのエンジニアの皆さんと議論できたらいいなと思っています。タイヤの世界は奥が深いので、正解には永遠にたどり着けないかもしれませんが、少しでも精度の高いものにしたいと思っていますからね。

――先日PS5の2020年発売という発表がありました。当然『GT』の新作もPS5で登場することを期待していますが、どのような進化が果たされるのか。また、どこを目指していくのか。いまお話しできる範囲で教えてもらえますか?

山内すみません、この件に関してはまだ僕からはお話しできる立場ではないんです(笑)。

――それでは、最後に来年以降の目標があれば教えてください。

山内僕は目標って掲げたことがほとんどないんですよね(笑)。基本的には目の前に現れた方をハッピーにしたいという思いだけでずっとやってきていますので、今後も同じように取り組んでいくだけです。

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FIAグランツーリスモチャンピオンシップで日本人選手が初優勝! 東京モーターショーで行われたeモータースポーツの模様をプレイバック

 前述のとおり、東京モーターショー2019では、FIA公認の世界選手権“FIAグランツーリスモ チャンピオンシップ 2019”のワールドツアー第5戦を始め、“e-Motorsports都道府県対抗U18全日本選手権”、“GR Supra GT CUP決勝大会”、“自動車メーカー対抗・真剣勝負”など、多くのレースが行われていた。

 ここで、これまでの『GT SPORT』の大会でも最高と言っていいほどの名勝負となった“FIAグランツーリスモ チャンピオンシップ 2019 第五戦東京 ネイションズカップ”を含む、各レースの模様を紹介していこう。

GR Supra GT CUP決勝大会

 トヨタが2019年に発売を予定しているGR Supraを用いて行われるワンメイクレース。2019年4月〜10月にかけてオンライン予選が行われ、上位成績を収めたドライバーによる決勝大会を東京モーターショー2019の会場にて実施。世界一のGR Supraの使い手を決めるバトルが行われた。

 結果、“FIAグランツーリスモ チャンピオンシップ 2019”第4戦オーストリアのネイションズカップでの優勝など、これまでの大会で好成績を収めてきたドイツのミカイル・ヒザル選手が優勝。世界一のスープラ乗りの称号を手に入れた。

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大会優勝者のミカイル・ヒザル選手は、オンライン大会でもつねにトップに君臨するヨーロッパの王者。2位には日本の川上奏選手が、3位にも同じく日本の宮園拓真選手が入っている。ちなみに、ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイドスタジオのプレジデント、吉田修平氏はミカイル選手のファンとのこと。

e-Motorsports都道府県対抗U18全日本選手権

 2019年10月に開催された第74回国民体育大会“いきいき茨城ゆめ国体”の文化プログラム“全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI”の『グランツーリスモSPORT』部門、少年の部(6歳~18歳未満)の都道府県代表決定戦、茨城特別代表予選のトップ選手が集結。若きeモータースポーツドライバーによる日本一の座を賭けて争うレースがくり広げられた。

 レースは、18歳以下とは思えない大人顔負けの高レベルなバトルがくり広げられ、愛知県代表の水野航希選手が優勝。2019年10月に行われた国体に続いての連覇を達成していた。続く2位には茨城県代表の箕輪卓也選手が、3位には東京代表の佐々木唯人選手が入るなど健闘を見せていた。

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今回表彰台にあがった3人(箕輪卓也選手:写真左、水野航希選手:写真中央、佐々木唯人選手:写真右)は、いずれも17歳の選手たち。来年は、FIAグランツーリスモチャンピオンシップでの活躍も来される。

自動車メーカー対抗・真剣勝負(ガチバトル)

 トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、スバル、三菱自動車、ダイハツ、スズキ、ベンツ、ルノーの10社によるエキシビションマッチを開催。各社の社員と契約ドライバーに加え、『グランツーリスモSPORT』のスタープレイヤーによる3人でチームを結成し、白熱のバトルが披露された。

 2018年10月に行われた東京モーターフェス 2018ではトヨタ、本田、日産、マツダ、スバル、三菱自動車の6社によるエキシビションマッチ“真剣勝負・自動車メーカー対抗戦”が行われていたが、このときファイナルラップまで表彰台争いをしながらも最終コーナーで痛恨のスピンを喫し、最下位に終わったトヨタ陣営が本機を出し、国体の愛知県代表として参加した実績も持つ長和樹選手を社員ドライバーとして送り出し、契約ドライバーにはスーパーGT選手権などで活躍する若手ホープの阪口晴南選手、スタープレイヤーには国際大会の経験も豊富な山中智瑛選手という最強布陣を形成。

 レースは、公式大会とは趣が違い、押し出しや強引な追い越しなど何でもありに近い様相のバトルがそこかしこでくり広げられていたが、実況解説にゲスト参加した世界のドリキンこと土屋圭一氏から「反則級」と言われるだけの圧倒的な速さと安定さを見せつけたトヨタが、見事昨年の雪辱を果たすこととなった。

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表彰プレゼンターとして登場した山内一典氏は、「ピリピリとした白熱のレースが続いたので、ときにはこんなレースがあってもおもしろい」と、エキシビションマッチならではのコメントも飛び出していた。

FIAグランツーリスモ チャンピオンシップ 2019” ワールドツアー第5戦 TOKYO マニュファクチャラーシリーズ

 “FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ”で活躍する世界のトップランカーたちが一堂に会し、直接対決を行うワールドツアー。各自動車メーカーを代表して戦うチーム戦のマニュファクチャラーシリーズと、世界各国のドライバーが自国を代表して戦う個人戦のネイションズカップを実施。

 これまで第1戦・フランス(パリ)、第2戦・ドイツ(ニュルブルクリンク)、第3戦・アメリカ(ニューヨーク)、第4戦・オーストリア(レッドブル・ハンガー7)と世界各国を回る形で行われてきた、まさに『GT』サーカスとも言える一大レースイベントのツアー最終戦が、いよいよ東京で行われることに。

 マニュファクチャラーシリーズのは、上位トップ6予選で、2位をコンマ7秒以上も引き離す圧倒的なタイムを見せつけたイゴール・フラガ選手が所属するトヨタチームがポールポジションを獲得。ポルシェチームが2番手、フォードチームが3番手に続く形でレースがスタートした。

 最終レースは、ファイナルラップまでトヨタチームが快走を見せるものの、最終スティントのタイヤ選択がハードのトヨタ陣営に対し、ソフトタイヤで猛烈な追い上げを見せるポルシェチームがオーバーテイク。その際にポルシェの後方にいたBMWチームにも抜かれたトヨタはゴールを目前に3位に転落。最後まで果敢なアタックを仕掛けるものの、タイヤの寿命的に追い上げも叶わず、3位フィニッシュ。最後に軽い燃料でソフトタイヤを使い、つぎつぎとオーバーテイクを仕掛けていったポルシェチームが見事な逆転優勝を果たした。

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優勝チームの3人。「言葉にならないくらいうれしいです」(アンゲイル・イノストローザ選手:写真左)、「戦略もはまりました。今日の勝利はがんばってくれたアンゲイル選手のおかげでもあります」(マット・シモンズ選手:写真右)、「アンゲイル選手が驚異的な追い上げを見せてくれ、マット選手の予選も素晴らしかった。本当にうれしいです」(トリスタン・ベイリス選手:写真中央)と、よろこびのコメントを披露。ワールドファイナルのモナコでの活躍も誓っていた。

FIAグランツーリスモ チャンピオンシップ 2019” ワールドツアー第5戦 TOKYO ネイションズカップ

 ネイションズカップは、スターティンググリッドを決めるトップ6予選が行われ、日本代表の宮園拓真選手がトップ、2位には同じく日本の國分諒汰選手が入り、それぞれレース1、レース2のポールポジションを獲得。レース1、レース2の上位4名と、それぞれのレースの5位〜10位の選手10人による敗者復活戦で上位4位までに入った選手の合計12名でグランドファイナルレースが行われることになる。

 サルディーニャ・ロード・トラックコースを舞台に行われたレース1は、ポールスタートの宮園選手がスタート直後の混乱に巻き込まれる形で後方に転落。その後猛烈な追い上げを見せるものの5位に終わり、敗者復活戦に廻ることに。

 レース2はウェットコンディションのスパ・フランコルシャンサーキットで開催。ポールスタートの國分選手はトップを維持したままファイナルラップに突入。世界トップランカーのオーストラリア代表、C.N.ラコトフスキー選手の猛烈な追い上げを凌ぎきり、見事トップチェッカーを受け、グランドファイナルでのスターティングポジション2位の座を獲得。

 ル・マン サルトサーキットで行われたグランドファイナルは、レース2の勝者、國分選手が2位、敗者復活戦で勝ち上がった宮園選手が9位のポジションでレースがスタート。これまでの『グランツーリスモSPORT』の競技は、ローリングスタート(各車が一定距離を保ったまま走行し、スタートラインを超えた時点でレースが始まる方式)がとられていたが、このレースは珍しくスタンディングスタート(スタートの号令とともに、全車がいっせいに静止状態からスタートする方式)を採用。

 ポールスタートのブラジル代表A.カラザ選手がホールショットを決め、國分選手が2位に続く形でレースは始まるも、スリップストリームを使いオープニングラップで國分選手が首位に浮上。しかし、2周目にコースオフして3位に後退するなど、緊迫した状態でレースは進行。これまで圧倒的な速さは持ちながらも、レースでの勝負では結果を残せなかった國分選手だが、今大会では積極的にしかける姿勢を見せ、最後まで果敢なバトルを展開。

 最終ラップ、激しい抜き合いの末に見事、逆転でトップチェッカーを受け、日本人ドライバーとしてFIAグランツーリスモチャンピオンシップ ネイションズカップで初の栄冠を獲得した。

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國分選手は、2019年のオンラインシーズンでアジア1位になるなど、日本を代表する『GT SPORT』トップドライバーのひとり。タイムアタックやオフラインレースなどでは圧倒的な速さを見せてきたものの、オフラインでのバトルではこれまで実力を発揮できていなかったところ、ついに念願の優勝を獲得。「うれしいのひと言以外、何も言い表せないくらいうれしいです。いつもは予選で下位に沈むことが多かったところ、今回は予選から流れが来ていて、その勢いを最後まで続けられてよかったです。(モナコでのワールドファイナルに向けて)今回の結果を繋げられるようにがんばります」と、喜びの声を聞かせてくれた。

 ちなみに、グランドファイナルのレースは、上記動画の2時間16分50秒頃からスタート。『GT SPORT』史上最高のレースと言っても過言ではないほどのバトルがくり広げられているので、ぜひとも一度見ていただきたい。

 筆者は、2016年5月に英国で行われた『グランツーリスモSPORT』のアンベイルイベントで行われたプレシーズンイベントから、2018年開催のFIAグランツーリスモチャンピオンシップ、“全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI”など、多くのバトルを目にしてきており、本物のモータースポーツも長年にわたって観戦してきたが、今回行われた大会のネイションズカップの興奮と感動は格別なもので、山内氏が以前語っていたスポーツの本質、参加する人も見ている人も、少しだけ幸せにするという言葉の意味をあらためて思い知らされた次第である。

 とくに今大会で勝者となった國分選手は、2018年10月に行われた“FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018 ネイションズカップ アジア・オセアニア リージョンファイナル”にて、圧倒的な速さを見せて優勝を果たしており、このときに優勝のコメントをもらったのだが、オフラインでの大会は初参戦とのことで、メディア取材に対する緊張感がこちらまで伝わってきたのがいまでも思い出されるほど。

 その後、2018年11月にモナコで行われた“FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018 ワールドファイナル”にも参戦するものの、目立った成績を残すことができずにいた。

 國分選手は、デビューの頃から右足でアクセルとブレーキペダルを操っていた運転方法を特徴としていたが、今シーズンは途中からは左足ブレーキを導入。さらに、多くの大会で揉まれたことで一皮むけ、これまで持っていた速さに加えて強さを身につけることになったのだろう。

 結果、日本人として初優勝のみならず、2018年のリージョンファイナル、2019年のワールドツアー東京と、2年連続で勝利をつかみ取ることとなった。

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國分選手優勝の瞬間、惜しくもネイションズカップ グランドファイナルの出場が叶わなかった山中選手を筆頭に、多くの選手が國分選手のもとに駆けつける様子は見ている側も感動するほど。会場もこの3日間で最高の盛り上がりを見せていた。

 2019年11月にモナコでの開催が予定されているFIAグランツーリスモチャンピオンシップ 2019 ワールドファイナルには、欧州・中東・アフリカ地区、北米地区、中南米地区、アジア地区、オセアニア地区を勝ち上がった36名による決勝戦が行われる。

 ワールドファイナルには、今大会には出場しなかったが昨年のワールドチャンピオン、イゴール・フラガ選手など、世界の強豪選手が多数参戦することになる。國分選手のさらなる活躍にも期待したいところだ。