2019年9月25日に、アメリカ・ロサンゼルスにてノーティドッグが開発を手掛ける『The Last of Us PartII』のメディア体験会が行われた。体験会では、ライター兼ディレクターを務めるニール・ドラックマン(Neil Druckmann)氏がプレゼンを行ったあと『The Last of Us PartII』のデモプレイを体験(その記事は下記を参照)。

 そして、そのデモプレイ後にニール・ドラックマン氏にインタビューをする機会を得た。本作のテーマやこだわりの部分、全世界待望の続編について、いろいろとうかがった。

ニール・ドラックマン

ノーティドッグが開発を手掛ける『The Last of Us PartII』のライター兼ディレクターを務める。

テーマは“愛”から“憎しみ”へ

――『The Last of Us』は、リアルな人間関係やストーリーが魅力のゲームだと思いますが、もっともこだわったところはどこでしょうか?

ニール本作はキャラクター中心のストーリーであり、何よりも人間ドラマ、人間関係に充填を置いて描いています。エリーとジョエルのふたりは前作で厳しい状況を乗り越えてきていますから、本作ではここからどうするかを考えたのですが、前作と同じことをくり返すのではなく、新しいものでなくてはいけないと。

 エリーは彼女を不当に扱った人たちを捕らえ、不正を正したいと願いながらも彼女自身もまたトラウマを抱えており、それにどう対処していくかが展開されます。彼女もまた誰でも感じる“愛”と“憎しみ”という大事な感情を持っているのです。こうした概念を追及してゲームに反映する、それが続編である『The Last of Us PartII』のストーリーのポイントです。

――本作のテーマを、前作の“愛”から正反対ともいえる“憎しみ”にした理由をお聞かせください。

ニール“愛”と“憎しみ”は人間の核となる感情であり、憎しみはたびたび愛から生まれます。世界には暴力のサイクルから逃れられなくなっている社会もありますね。家族が怪我をした場合など、ほかの人を思いやる愛があるために憎しみが生まれるわけで、“愛”と“憎しみ”はこのサイクルがくり返されているわけです。そう考えると、暴力そのものは孤立して存在しえないわけで、この概念を追及したい、暴力行為にはそれに対する反応、それによって招かれる結果がつねにともなう、こういったテーマを扱いたいと思ったのが発端ですね。

 このテーマからもおわかりいただける通り、前作にも登場したすでに慣れ親しんだキャラクターが出発点になるわけですが、前作とは異なる新たなストーリーが展開していくことになります。

――ジョエルがデモプレイの最後に登場しましたが、本作では彼はどのような立ち位置になるのでしょうか?

ニールエリーとの関係には歪みが生じ、前作の最後に私たちが見た関係ではなくなっています。その詳細はゲームを進める中で明かされていきますが、(前作からの)4年間でさまざまなことがありました。ジョエルはストーリーにおいてもゲームプレイにおいても、本作で重要な役割を演じることになります。

――トレーラーに出て来たセラファイトは、敵グループのひとつなのでしょうか?

ニール2018年のE3で見せたものではセラファイトが敵でした。今回の敵となったのはワシントン・リバティ・フロント(WLF)ですが、両グループともシアトルを活動拠点としています。両者が相互にどう関係するのかはストーリーの大きな部分を占めていますよ。

――その敵グループたちは、どのような背景を持っているのでしょうか?

ニールゲーム内で彼らの背景、動向、目標もわかります。お楽しみに。

――デモプレイの舞台にシアトルが登場しましたが、本作におけるシアトルはどのような場所ですか?

太平洋側北西部に位置し、雨量が多く資源に恵まれているので、多くの人たちがこの都市を配下に置きたいと思っています。セラファイトもWLFも例外ではなく、エリーは両グループのあいだに挟まれ、さらに彼女を不当に扱った人たちを探しています。

 シアトルでは、シアトル内で敵対集団の紛争が起きているのに加え、数年前からいる感染者がいまも建物や地下に隠れています。ミッションでは、エリーはこれらすべてに対処しながら進んでいかなくてはならないのです。

――デモプレイで初登場した犬ですが、導入した意図をお聞かせください。

ニールそうですね、まずどのようにしたらプレイヤーにもっと脅威を感じてもらえるかと考えました。まずは敵のAIです。AIの思考、視力、聴力を改善し、相互コミュニケーションも洗練されて、名前を聞くとそれでお互いを呼び合うようになります。こうすることで、より敵が人間らしくなりました。そして、嗅覚については犬を導入することにしたのですが、WLFは犬を育種し、不法侵入者を嗅ぎ分ける訓練する能力を持っています。ここではエリーが不法侵入者というわけです。

――なるほど。

ニールこうすることでゲーム構造の状況が変化します。犬はエリーの匂いの痕跡を追ってくるので、同じところにじっと隠れていることができなくなり、つねに動き続けなくてはいけない。また、感情のレベルでもおもしろくなります。じつは、人間は犬を殺すと、犬の甲高い悲鳴が人の感情に訴えかけ、人を殺したときより自分が悪いことをしたと感じるのです。そのため、プレイヤーはエリーがやったことに、より共感するようになっていくわけです。

 彼女は正義を追求するため、そしてそれに取り憑かれているため、自分が不快に感じることもやらなくてはならなかった。その不快さを、プレイヤーは共有してしまう。犬は、音とグラフィックを通して、プレイヤーにより暴力がもたらすものを感じてもらうためのひとつの例になるわけです。

――それはおもしろいですね。ジョエルは、エリーとともに行動するときもあるのでしょうか?

ニールはい。今回のデモプレイではディーナが仲間になっていましたが、ジョエルは重要な役割を演じるので、重要なキャストとして違う部分に登場します。

――本作でエリーをメインのプレイアブルキャラクターにした理由を教えてください。

ニール前作ではジョエルが主人公でした。彼のすべてを見せたというわけではありませんが、ジョエルの背景、トラウマなどをいろいろとご覧いただけたと思います。彼が父親からサバイバーになり、また父親に戻る変化も見られましたよね。そして、エリーは前作では無邪気な女の子でした。生き残るために何人か殺し、かなり残忍なやりかたでデイビッドを殺したことは彼女のトラウマになりました。本作では、そんなエリーについてもっと掘り下げたいと思ったのです。

 また、エリーとジョエルの違いはエリーが自分の過去やそのほかの理由で怒りを内に秘めていることです。これは今回のストーリーにぴったりだと思いました。そういったこともあり、エリーだけでなくいろいろな人たちが絡むストーリーになっていますが、最初からエリーをプレイアブルキャラクターにすることに迷いはありませんでした。

――本作でも、ファイアフライのマークが登場しますが、彼らはまだワクチンを作ろうとしているのでしょうか。

ニールいえ、前作の出来事によってファイアフライは解散し存在しません。ファイアフライは軍隊と圧政に抵抗していましたが、本作ではほかのグループが同じようなことをやっています。WLFはその意味でファイアフライに近いですね。ただ、WLFは軍隊と都市を奪取したものの、目指しているものは違います。

――新たなインフェクテッド(敵の感染者)についてもうかがいます。本作で新たに登場したシャンブラーは、前作のブローターより感染が進んだ状態のインフェクテッドですか?

ニールシャンブラーとブローターは枝分かれして違うものになっています。気候と時間の経過により、異なるタイプのインフェクテッドが生まれたのです。これは新たに登場するタイプのひとつです。

――シャンブラーのほかに、あとどれくらい新しいインフェクテッドが登場するのでしょうか?

ニールひとつ以上は出てきます(笑)。

――楽しみにしています(笑)。デモプレイで、エリーはディーナといっしょにいるときにはガスマスクをしていました。ジャクソンでは、免疫を持っていることを秘密にしているのということでしょうか?

ニール前作でのジョエルがとった選択により、治療への希望はなくなりました。従ってエリーは周囲がどう反応するかがわからないため、自分が感染しないことを秘密にしておく必要があります。ディーナは親友ですが、秘密を明かすことなく、必要がなくてもマスクをしています。よく見ていましたね。観察力が鋭い!

――ありがとうございます(笑)。3つの敵グループ(インフェクテッド、セラファイト、WLF)のほかにも敵はいますか?

ニールそれ以外にもいます。ストーリーは、エリーがインフェクテッドと直面するジャクソンで展開し、その後シアトルに移ってさらに進んでいきますが、ストーリーの舞台となるのはこの2ヵ所だけではありません。

――ありがとうございました。では最後に、発売を楽しみにしている日本のファンへ向けてのメッセージをお願いします。

ニール私たちのゲームがどれだけ皆さんに大切にされているかを知り、信じられない気持ちでいっぱいです。私たちはアメリカで仕事をしているので一部のファンにしか会えませんが、日本には多くのファンがいることを知っています。世界中の皆さんがこのゲームにどう反応してくださるのか考えるととてもワクワクしますね。

 このゲームの開発には5年かかっていますが、いままでで一番大きなゲームです。私たちはファンのために作ってきました。日本でどこまで規制がかかるかはわかりませんが、日本を含め世界の皆さんの手に届く日が待ちきれません。

[2019年9月27日午前4時00分修正]
一部表現など、記事の文言を修正しました。