思春期の男女の恋や友情、そこに生じる葛藤をみずみずしく描いた名作を数多く手掛けてきたアニメ脚本家の岡田麿里。そんな彼女が原作・原案を担当した漫画『荒ぶる季節の乙女どもよ。』のテレビアニメが先日最終回を迎えた。

 高校の文芸部に所属する5人の少女たちが“性”を意識しはじめ、それぞれに戸惑いながらも自身の心境の変化を受け入れていく様子が、ときにコミカルに、ときに切なく描かれていく本作。ニコニコ生放送では、2019年9月23日(月・祝)に1~11話の一挙放送が、9月24日(火)には最終回の配信が控えている。この機会に、本作の魅力をお伝えしよう。

「セックスがしたい」から始まる青春群像劇

  原作漫画の『荒ぶる季節の乙女どもよ。』は別冊少年マガジンで2016年から連載、こちらも今月号で最終回を迎えた。原作漫画では、原作・原案を岡田麿里が、作画を絵本奈央が担当している。アニメ版は『花咲くいろは』の安藤真裕と『いつだって僕らの恋は10センチだった。』の塚田拓郎の共同監督。シリーズ構成は原作者の岡田麿里本人が担当している。いずれも高く評価された青春アニメに携わった実績を持つスタッフだ。アニメーション制作は『Fate/Grand Order - First Order-』や『RELEASE THE SPYCE』のLay-duceが手掛けている。

 小野寺和紗(声:河野ひより)は高校一年生。彼女が所属する文芸部には現在5人の部員が在籍しており、全員が女子生徒。変わり者の多い文芸部は他の生徒からは「掃き溜め」と揶揄され、部員は皆、色恋沙汰とは縁遠い学生生活を送っている。しかし部活動で読む文学作品には性描写が含まれるものもあり、和紗はそこで描かれる行為に気恥ずかしさを覚える一方で、強く興味を惹かれる気持ちも否定できない。

 そんなある日、文芸部で「死ぬまでにしたいこと」について語り合っていると、部員のひとり、菅原新菜(声:安済知佳)が「セックスです」と発言し、波紋を呼ぶ。さらに追い打ちを受けるように、幼なじみの男の子、典元泉(声:土屋神葉)の自慰行為を目撃してしまう和紗。一連の出来事をきっかけに5人の乙女たちは、これまで目を逸らしてきた自らを取り巻く“性”と向き合うこととなり、七転八倒の日々が始まるのだった。

女子も男子も、みんな“性”に振り回されてる

 青春には“性の目覚め”が付きものだ。岡田麿里の作品はこれまでにも「無邪気だったころには戻れない」ことを意味する要素として“性の目覚め”に伴う“気づき”を扱ってきた。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』では安城鳴子というキャラクターが登場する。彼女は幼少のころ友人たちから「あなる」と呼ばれていたが、別の意味を知ってからはこの呼び名を嫌がるようになった。『心が叫びたがってるんだ。』でこれに当てはまるのは成瀬順という女の子。彼女はラブホテルがどういった施設か知らなかったころ、母親に告げたひと言によって家族がバラバラになるきっかけを作ってしまい、自身も心に傷を負ってしまう。『荒ぶる季節の乙女どもよ。』では、まさにそうしたさまざまな“性への気づき”が物語の中心となっている。“性”に振り回される少女たちの姿は滑稽でありつつも、多くの視聴者がどこか共感できるだろう。序盤の見どころは第1話の終盤。意識が過敏になった和紗の目に、街中のあらゆるモノや言葉が性的なものに見えてしまうという演出は、そこに至るまでの展開も含め、必見だ。

 和紗以外の4人の文芸部員たちに起きる変化も見逃せない。和紗と特に仲良しの須藤百々子(声:麻倉もも)は、塾で誘われた男女混合のカラオケで、初めて男子から好意を向けられ、戸惑う。3年生で部長の曾根崎り香(声:上坂すみれ)は潔癖な性格で、周囲のクラスメイトたちの男女関係をふしだらなものと嫌悪する。

 しかし、ちょっかいを出してくる男子が現れたことをきっかけに、その頑なさが解きほぐされていく。もうひとりの2年生、本郷ひと葉(声:黒沢ともよ)は出版社に自身が執筆した小説の持ち込みを行っている。その中で、編集者が提示した「女子高生作家がエロに切り込む」という企画と、自身の性経験の乏しさとのギャップに悩む。セックス発言の菅原新菜は恵まれた容姿ゆえに幼い頃から男性から求められることの多い人生を歩んでいた。セックスへの興味もそんなこれまでの異性との関係をきっかけに抱いたものだったのだが、和紗や泉との触れ合いを通じて、自分自身が異性に求めていることが本当は何なのかに気づくことになる。

 彼女たちに共通するのは“性への気づき”によって自分が置かれた状況にひどく思い悩んでいることだ。傍から見ればとても滑稽なそれらの悩みは、しかし当事者にとっては天と地がひっくり返るくらい深刻なもの。けれどそんな“性への気づき”が悪いことや苦しいことばかりではないことも本作は描いている。

 異なる悩みを持つ人たちと悩みを共有し合うことで5人はその元凶である“性”について、それぞれに折り合いを付けようとする。それは他者の痛みを理解することにも繋がり、少し大人になることも意味する。そしてやがて、よくわからない生き物に見えていた男子たちもまた、性に振り回され、悩んでいることに気づくのだ。

“恋愛”と“性”、切り離せないテーマを描き切るクライマックス

 “性”をテーマとして扱いながらも生々しくなりすぎないのは、原作の雰囲気に寄せた淡いタッチで清涼感のあるキャラクターの作画や、背景美術によるところも大きい。CHiCO with HoneyWorksが歌うオープニング主題歌『乙女どもよ』の軽快で疾走感のある曲調も、本作のイメージを爽やかなものにしている要因だろう。

 男女ともに一癖も二癖もある人物が揃い、特に男性キャラクターの中には女子から近づくべきではない、救いようのない人間も登場する本作。しかし理解しようと歩み寄ることで生まれる関係性の変化、それに伴う胸の高鳴りはドラマチックに描いている。

 過去の岡田麿里の代表作と同様、しっかり“胸キュン”する展開が用意されているのもこのアニメの魅力のひとつ……なのだが、終盤では、恋愛成就でハッピーエンド! とはいかない、ひと捻りある展開が待っている。

 物語の決着は、“綺麗なもの”として描かれがちな恋愛の要素と、“綺麗じゃないもの”として排除されがちな性の要素、本来切り離せないこれらをどちらも大切に扱ってきたこの作品ならではのものといえるだろう。最終的に彼女たちの青春がどういった結末を見せるのか、見届けてほしい。

 公開を間近に控えた実写映画『惡の華』や、『心が叫びたがってるんだ。』のチームによる新作アニメーション映画『空の青さを知る人よ』でも脚本を手掛ける岡田麿里。どちらも非常に楽しみな作品だ。しかし、彼女が携わったアニメに心を奪われた経験がある方には、これまでの作品でも“性”の要素を頻繁に扱ってきた彼女が、それを自らメインテーマに据えた『荒ぶる季節の乙女どもよ。』にまず目を向けてほしい。

 ちょっと観ていて恥ずかしくなるようなシーンも少なくないかもしれない。だが、そこには「荒ぶる季節」を過ぎた人たちにこそ強く響く、あの頃にしか存在しない青春の輝きと、岡田麿里の作品に共通する胸がざわざわするような感触が詰まっている。

ニコニコ生放送「荒ぶる季節の乙女どもよ。」1~11話振り返り一挙放送

放送スケジュール
2019年9月23日(月・祝)
開場:13時30分/開演:14時00分

第1話 「豚汁の味」
第2話 「えすいばつ」
第3話 「バスガス爆発」
第4話 「本という存在」
第5話 「私を知らぬ間に変えたもの」
第6話 「乙女は森のなか」
第7話 「揺れ、の、その先」
第8話 「Legend of Love」
第9話 「キツネノカミソリ」
第10話 「穴」
第11話 「男女交際禁止令」

最終12話は9月24日(火)23時30分より配信

※放送スケジュールは予告なく変更となる場合があります。

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