2019年9月4日~6日まで、パシフィコ横浜にて開催された日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けのカンファレンスCEDEC 2019。9月5日には、“一流クリエイターに聞く、魅力的なキャラクターを生み出す秘訣とは!?”という講義名の対談セッションが行われた。その模様をお届けしよう。

キャラ作りでは立ち位置が重要?

 出席者は、漫画家の鈴木みそ氏、カプコンのアートディレクター・塗和也氏、アークシステムワークスの取締役・石渡太輔氏​の3名だ。セッションは、鈴木氏が進行役としてテーマを挙げ、塗氏と石渡氏が質問に答える形で進行。冒頭ではまず、3人がそれぞれのプロフィールを自己紹介した。

 鈴木氏はファミ通でゲームマンガを連載し、2013年に『限界集落(ギリギリ)温泉』をAmazonでセルフパブリッシュ、1千万円を売り上げて話題に。塗氏は『逆転裁判 蘇る逆転』から『逆転裁判』シリーズに参加、『逆転裁判4』までキャラクターデザインと原画を担当したのち、『レイトン教授VS逆転裁判』『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒険-』、『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覚悟-』においてアートディレクターおよびキャラクターデザインを担当。石渡氏は『ギルティギア』の企画立ち上げをきっかけにイラスト・デザイン・グラフィック・作曲・シナリオなどを兼任し、現在は取締役に就任して『ギルティギア』シリーズの監督を務めている。

鈴木氏。
塗氏。
石渡氏。

 最初に鈴木氏が塗氏に、「どういう点を気にしてキャラクターを作っているのか?」を質問。塗氏がまず考えるのは、“動かすキャラ”か“見るキャラ”かだと言う。たとえば『逆転裁判』の場合は後者の、ストーリーのキャストとして“見るキャラ”にあたる。なお開発初期から担当しているときは、ビジュアルを提示するとともに、性格や特徴の設定にも関わる場合が多いそうだ。

『逆転裁判』のようなアドベンチャーは代表的な“見るキャラ”。

 一方で、石渡氏が手掛けるキャラクターは、格闘ゲームの、プレイヤーが“動かすキャラ”。作りかたについては、一方向ではないと石渡氏は語る。ビジュアル優先ではなく、先に設定やアクションから入ることもあり、たとえば“ベッドマン”などは、「つねに寝ながら戦っているのはおもしろそうだな」という発想から生まれたキャラで、それに合わせて絵や動きをあてていったという。

格闘ゲームに代表される、操作するキャラは“動かすキャラ”となる。

ゲームだからこそのウソを活用

 つぎのテーマは、「ゲームならではのキャラ作りのポイントは?」。これについて石渡氏は、「たとえば格闘ゲームなら、蹴りが強いキャラなら、足にパーツを付けたり色味を強調したりします」と語り、同様に塗氏も「つねにキャラの背中を見て動かすアクションゲームだったら、同じように背中にポイントを置きます。これはゲーム特有かもしれませんね」とコメントした。塗氏によると、見下ろしなどアングルの変化により、頭身なども調整していくそうだ。

 ここで石渡氏が例として挙げたのが、『キン肉マン』のバッファローマンだ。助っ人として登場するとき、足のシルエットだけで、「バッファローマンだ!」とわかる演出がなされているという。
 「体の一部分がシルエットで映っただけでキャラが誰だかわかるような、キャラ作りを心がけています」(石渡氏)。

 またゲーム中の画面の遠近、全身が映るのか上半身だけなのかという点でも、デザインは変わってくる。たとえば石渡氏によると、『ギルティギア』の場合、格闘ゲームとしての引きの画面だとどうしてもキャラが小さくなるので、顔の目鼻立ちを強調していると言う。それがアップになると子どものような顔に見えるので、遠近でモデルを切り換えているそうだ。

 鈴木氏がここで、「絵だからこそつけるウソは、実際にキャラを作るときにどうなるの?」と質問。それについて石渡氏は、「僕らはウソをつきまくってますね」と即答した。『ギルティギア』は、3Dだけれども2Dに見えるように作るのがコンセプトで、もともとのデザインに寄せるため、顔の輪郭やパーツ配置なども微調整を重ねたそうだ。その作業を手作業で加えることで、不自然さを軽減している。

デザイン画を3Dにして、さらに2Dっぽく見えるように修正する。

 ちなみに2Dのラフ画を3D化する作業も、塗氏は以前は自分でも担当していたそうだが、いまは社内の専門部署にお任せだとか。
 「でも、ヒラヒラした“なびきモノ”は嫌われますね。肩回りとかは制御が難しかったりするので。長い髪の毛、三つ編みとかもそうです。2Dだと楽なんですけど、3Dだと手間がかかるんですよ」(塗氏)。

三つ編みやヒラヒラ系は表現が難しい。

 石渡氏はここで、格闘ゲームでのキャラの大小について補足した。大小の差が激しいとバトルのバランス調整も当然難しくなるが、「あえて、今回はデカいキャラを作ろう!」というノリのときもあり、そこは覚悟を決めるという。ただ強いて言えば、いわゆる“しゃがみ状態”の仕様が、見た目はしゃがんでいるように見えないことが難点だとか。

ゲームならではの大小キャラのバトルを演出。

 それだけ気を配って作られるキャラクターの、作成時間はどのくらいなのか? もちろんケースバイケースだが、石渡氏は「ウチの場合は、1体につき半年くらい。もちろん各キャラが同時進行ですけどね」とコメント。塗氏も、「ゼロから始めて最終形になるまでは、それくらいかかるでしょう」と同意した。ここで鈴木氏が、「それなら会社でも毎日、絵を描いている感じですか?」と質問。

 これに対し塗氏は、ふだんはモデルチェックなどの作業が中心で、「空いた夜中の時間などに自分の絵を描きます。また描かないまでも、キャラのイメージを考えてたりはしますね」とのこと。石渡氏も、「僕も同じです。家に帰っても、お風呂やトイレでも、結果的に仕事のことを考えていることはありますね」と、ともに仕事のアイデアはつねに気に留めていることを明かしてくれた。

多彩なことが問題となるキャラ作成

 セッション終盤では、「ゲームでのキャラ作成で、ほかにはどんな工夫が?」という、さらに突っ込んだ内容となった。まず石渡氏が指摘したのが、ゲームの全体画面のなかで、キャラクターがどのサイズで映るかという点。前述したが、見せ方によってデザインは大きく変わってくる場合もある。

 「『逆転裁判』シリーズはバストアップがメイン。そのため全体像のときは、下に向かってポリゴン数が減ってたりもするんです。ちなみに髪型などは、モコモコしたものは嫌がられますよ」と塗氏。髪型については石渡氏も重ねて、「『ドラえもん』のスネ夫タイプの髪型は、3Dならどうなるの? ってなりますよね」とコメント。確かに2Dイラストを3D化するときにはついて回る問題かもしれないが、そこについて塗氏は、「逆にその場合は、いろいろな角度から見られないように、立ち位置を決めるような演出をします」と答えてくれた。

 また「他作品からの影響などは?」というテーマでは、「たとえば『アベンジャーズ』でも、キャラそのものというよりは、内面の描写を参考にしてます。スーパーじゃなく弱い一面があったりですね。あまりに完璧だと嘘くさいですから」と塗氏。
 「絵で見ると超二枚目ですけど、映画での行動は三枚目とか、よくありすよね。そういったところは参考になります」(塗氏)。

 最後はキャラ作成のテクニカルな部分ではなく、取り巻く環境がテーマとなった。まず鈴木氏が挙げたのは、キャラ作りにおけるレギュレーションについて。ゲームの市場がワールドワイドになった現在、ロリータ、暴力、人種差別など、キャラクター表現の規制もより厳しくなってきている。

 「eスポーツの浸透などもあり、国際的な視点は外せないでしょう。たとえば格闘ゲームでも、少女が大男に殴られるのはどうかといった見かたもあるわけです。RPGでも、子どもが大魔王を倒すなんて設定は、海外では受け入れられませんよね」という石渡氏。その事情を踏まえたうえで、どう海外市場に向けた作品を作っていくのかは、社内でもたびたび話題になるとのことだ。

 女性キャラに関しては、「胸の上が大きくはだけているとか、露出度はチェックされますね」(石渡氏)だそうだ。
 「対象キャラがアマゾネスみたいな大人の女性じゃなく、少女に見えることが問題になるんです。もちろん理解してくださる関係者も多いのですが、なかなか難しいところです」(石渡氏)。

女性の露出度に関しては、各国でレギュレーションが違ってくる。

 ラストのテーマは、「描いたイラストの版権はどうなっているの?」ということ。塗氏も石渡氏も、会社に属してはいるが、自分の手でキャラクターデザインを行っている。その際の版権はどうなっているのだろう?
 これについては塗氏も石渡氏も、「キャラを描いたのは自分だが、版権は会社」との回答。つまり、おおもとのキャラクターデザインは自分が担当したが、ゲームでのキャラとして修正・完成されたものは会社全体のキャラIPという認識だそうだ。
 「自分が描いたのはあくまで絵ですが、そこにキャラクターとして命を吹き込んでもらったわけですから」(塗氏)。

 まだまだ話がつきない内容だったが、残念ながらここでセッションは時間切れ。最後に塗氏と石渡氏の締めのコメントを紹介して、リポートを終えよう。

石渡太輔氏
このメンバーにお会いしたのは初めてですが、こうしたセッションだと時間が足りませんね。僕自身も聞きたいことがまだたくさんあるので、これを機に公私ともに、いっしょに何かやれればと思います。今回は皆さま、楽しんでいただければ幸いです。

塗和也氏
キャラクターデザインの話ということで、過程の素材も多少は用意してきたのですが……、時間切れですね。また機会があれば、どこかでお見せできればと思います。