まるでアニメのような世界をそのまま冒険できる。そんな幻想的なグラフィックが特徴のオンラインアクションRPGが『BLUE PROTOCOL』だ。

 本作はバンダイナムコオンラインとバンダイナムコスタジオが共同開発するPCオンラインゲーム。2019年7月26日~28日にかけて抽選1万名を対象とするクローズドαテストが行われたばかり。

 クオリティの高さもさることながら、そもそも国産のオンラインRPGが新たに開発されていること自体が注目されている。それが、超ハイクオリティのアニメ調グラフィックで、新規IPを、スマホゲーム隆盛の時代にPCオンラインゲームを、あのバンナムが作っているのだからなおさらだ。

 新規IPというと少々わかりにくいかもしれない。“機動戦士ガンダムのような原作を活かしたゲームを作る”ではなく原作そのものを作るといった感じである。スケールが違う。

 国内のオンラインゲーム事情についてある程度知っていれば、「嘘だろ!?」と思うようなできごと。もはや事件だ。

 事件が起きたならば、原因を調査して世に伝えるのがメディアの責務だ。ゆえに、われわれは当事者たちへ突撃取材を行った。

こちらのお三方に話を訊きました。

下岡聡吉(しもおかそうきち)

バンダイナムコオンライン『PROJECT SKY BLUE』エグゼクティブプロデューサー。文中では下岡。

鈴木貴宏(すずきたかひろ)

バンダイナムコオンライン『BLUE PROTOCOL』運営統括ディレクター兼プロデューサー。文中では鈴木。

福﨑恵介(ふくざきけいすけ)

バンダイナムコスタジオ『BLUE PROTOCOL』開発統括ディレクター。文中では福﨑。

どうしていま、新規IPを作るのか?

――最初にいちばん気になることを訊きたいのですが……なぜ! いま! 新規IPのPCオンラインゲームなんですか?

下岡酔狂な話ですよね(笑)。オンラインゲームの開発には、ただでさえ大規模な投資が必要です。約5年前、『BLUE PROTOCOL』を始めとする“PROJECT SKY BLUE”(新規IP創出プロジェクトの総称)が動き出した当時は、同じ予算があればアプリゲームに投資するのがいちばん効率のよい運用方法だったかもしれません。

 ふつうはそうするんです。そもそも、それだけ大規模な資金を比較的不安定なオンラインゲームに投資できるような会社はほとんどありませんでした。だからこそ、そこにブルーオーシャンがあると判断しました。

――言われてみれば理解できる話ですね。他社が効率的に利益を上げようとスマホゲームを作るから、本格的なPCゲームは少ない。ライバルが少ない。でも、求めている人はいるはずだからPCゲームを作ろう、と。

下岡それと、開発を終えてサービス開始する頃には、人気の既存タイトルがリリースから数年が経過するようなタイミングになるだろう、と。ちょうど、新たなタイトルに手を出したくなる時期。そこにもチャンスが生まれるはずだと考えました。

――なるほど。でも、それだと新規IPを作る理由とは少し違うような。バンダイナムコグループには強い既存IP(アイドルマスター、機動戦士ガンダムなど)がたくさんありますよね。

(2019/09/05 17:30 上記質問の表現を修正しました)

下岡何の制約にも縛られず、自由なモノ作りがしたかったんです。既存IPを使わせていただく場合、こちらが何かやりたいことがあっても原作側の許諾が必要になます。それではスピード感が失われてしまいますし、オンラインゲームを長期的に運営していくうえで厳しい制約になります。自分たちが思い描いた理想を実現するためには、新規IPでなければならなかったわけです。

 それと、もうひとつ。新規IPの国産オンラインゲームを国内でヒットさせて、さらにはグローバルに展開していく成功モデルを作らなければならない、と。使命感ですね。初めから輸出を前提に作られたゲームは、最近でこそ日本でも見かけるようになってきましたが、それもすでに世界的に人気のIPだから世界でも売ろうという考えかたのものが多いです。新規IPでグローバルを見据えているものはかなり珍しいと思います。

 ですが、海外では最初からグローバル展開を見越しているものばかり。この差は大きいですよ。ですから、新規でグローバルチャレンジをすべきだと最初から思っていました。この考えに対して、バンダイナムコグループ全体からご理解をいただけたのが大きかったです。

――グループ全体が理解を示してくれるのは心強いですね! とはいえ、改めてこの時代に新規IPのオンラインRPGだなんて、我々ですら衝撃を受けました。これに関わられることになる福﨑さんや鈴木さんは、それはもう気が気じゃなかったと思うのですが。

福﨑最初に話を聞いたときは正気を疑いました。

鈴木つい「頭おかしいんじゃないの?」と声に出してしまいましたね(笑)。

下岡(笑)。そういった驚きの声はユーザーさんからも多数あがっています。ですが、だからこそこのチャレンジを応援してくださる声が大きいのだとも思っています。「新規IP!? 嘘だろ!?」みたいな雰囲気ができあがったことで話題性が増したのではないかと。

――新規IPの国産オンラインRPGなんて、日本のオンラインゲーマーたちが半ば諦めかけていた夢です。そりゃあ応援せずにはいられませんよ! 絶対成功してほしい!

福﨑僕らとしても、クリエイター人生においてこんなチャンスが回ってくることはもう2度とないだろうと思いました。最初に話を聞いたときはそれはもう驚きましたけど、この機会を逃したらモノ作りに関わる人間として絶対に後悔する。それは確信しました。

下岡新たなIPが創られるとき、小説やアニメからとなるといろいろあるのですが、ことゲームになると途端にハードルが上がるんですよ。その成功体験は、バンダイナムコグループとしても貴重なものです。前例がないとどうしてもチャレンジしづらくなってしまいますから。そんな事情がたまたま重なった結果、『BLUE PROTOCOL』に白羽の矢が立てられることになりました。

 とはいえ、昨今の新規IP創出の例を見ても、大きく成功しているのはオリジナル作品。そこに勝算があるとも思っていました。周りからすれば、石橋を叩いて渡るどころか自ら飛び降りたように見えたと思いますが。

――こんな酔狂なプロジェクトを率いるんですから、常識を留めてある頭のネジは何本か外れているくらいでちょうどいいのでは(笑)。

下岡上から下までぜんぶすっ飛んでいたんでしょうね(笑)。

ゲームに必要な利便性が、アニメ表現の邪魔になる!?

――『BLUE PROTOCOL』といえば、やはりいちばんの特徴はアニメの世界に入り込んだような幻想的なグラフィックです。ここまでのグラフィック技術をもってして、アニメ調にこだわったのはなぜですか?

下岡先ほどもお話ししたとおり、本作はグローバル展開を前提に作られています。つまり、僕らが競うおもな相手はオンラインゲーム大国とも称される韓国や中国のタイトル、欧米の強豪タイトルです。これらに並び立つためには、強烈な個性が必要でした。そこで、日本産であることがひと目でわかるグラフィックを目指したんです。

 それをバンダイナムコスタジオさんにプレゼンしたところ「じゃあ、アートは奥村大悟(※)だね」とすんなり決まりまして。以来、アート面はすべて奥村に任せています。もはやアートディレクターというより、世界創造主のような立ち位置に近いです(笑)。

※奥村大悟氏:バンダイナムコスタジオ所属のイラストレーター。長年にわたり、数多くの『テイルズ オブ』シリーズ作品でデザインを担当している。

福﨑そんな奥村が、いま門のテクスチャーをフルチェックしてこうして! ってサンプル画像まで自分で描いているという(笑)

――そんな細かいところまで!?

鈴木逆に不安になりますよね(笑)。“神は細部に宿る”とも言いますし、少しでも手を抜くと世界が完成しないという考えかたなんです。そのぶん作業量はものすごいことになっていそうですが、楽しんでやっていると思います(笑)。

――そこまでの情熱が注がれているからこそ、あそこまでのグラフィックができあがるのですね。公式サイトには“「操作できる」劇場アニメ級グラフィック”というキャッチコピーもありましたが、アニメの絵をゲームとして動かすことに苦労はありませんでしたか?

鈴木アニメの絵が単純にゲームの中に入っているだけでは、逆にチープに見えてしまうことがあります。そうならないように、いかに自然に溶け込ませるか、まさに苦労しているところです。

下岡開発当初からずっとそのキャッチコピーの実現を目指していますね。最終的には『BLUE PROTOCOL』のスクリーンショットを何も知らない人に見せたときに、「これ何のアニメ? おもしろそう」と言ってもらえるのがベスト。それもあって、アニメ制作と同じような手順を踏んでいるところもあります。

福﨑そうは言っても僕らが作っているのはあくまでもゲームなので、どこまでアニメの手法を取り入れるか、その判断が難しくもあります。たとえば、ショップで買いものをする画面では店員のNPCがアップで映ります。ゲーム制作の手法に倣えば、待機モーションとして呼吸などの動作をつけるのが一般的です。

 ですが、それはアニメ制作の手法にそぐわないのです。実際、アートディレクターからは「アニメとしておかしいので修正してほしい」という話もありました。それは一例ですが、アニメらしさを追い求めるあまり、ゲームの文法を捨てすぎると今度はゲームとして成り立たなくなってしまうんですよ。このバランスを保つのが本当に難しいです。

「止まっているときは止まる、動いているときは動く」というのがアニメの画作りの基本。かすかに動くようなことはあまりない。

鈴木αテストではチャットウィンドウの表示が5秒くらいで消える仕様でした。これも、アニメ的表現の邪魔になるからなんです。アニメにはチャットウィンドウなんてないですし、文字でセリフを読むこともあまりないので。

 ただ、チャットウィンドウはゲームとして必要なものですから、そこの兼ね合いをどうするかは今後も議論が必要です。

下岡いちばん大事なことは、遊んでくれたユーザーさんに“アニメに入り込む体験ができた”とプレイ後に感じてもらうことです。そのためにはゲームの文法だけで作っていてはいけないし、全部をアニメに寄せてもいけません。

 ケースバイケースと言ってしまうのは簡単ですが、そのすべてのケースをひとつずつ検証して、その体験を阻害し得るものは1個1個丁寧に取り除いていく必要があるんです。

――途方もない作業量になっていそうですね……。それだけ細部までこだわられているということでもありますが。

福﨑もはや細部になってくるとどんな技術が使われているのか、僕もすべては把握しきれていません(笑)。本当に細かいところにすごい技術が組み込まれていて、中には特許が取れるような話もあります。リリースを終えてひと段落したら、開発チームは全員CEDECで講演してほしいですね。僕が聞きたいので(笑)。

鈴木それは僕も聞きたい(笑)。

賢すぎるモンスターとのパーティー戦がアツい!?

――ゲーム性においてウリとなる部分はどこでしょうか?

下岡αテストでは実装できなかったのですが、パーティー対パーティーが戦闘でのメインテーマです。というと、PvPを連想すると思うのですが、あくまでもPvEでのパーティー戦となります。

――つまりどういうことでしょう? エネミー側もパーティーを組んで戦うんですか?

下岡耐久力の高いタンクが敵を引きつけているあいだに、攻撃力の高いディーラーが敵を攻撃するのが一般的なパーティー戦術。もし相手も同じようなパーティー構成だった場合、プレイヤーならわざわざタンクを殴らずにディーラーから倒していきますよね。

 本作では、エネミーもディーラーから狙ったり、プレイヤー側がディーラーを狙っているとわかればタンクが後ろを守るために下がったりします。

――めちゃくちゃ賢いじゃないですか。

下岡αテストでも、一部のダンジョンでは左右に分かれた道にそれぞれエネミーが配置されている場所があったと思うのですが、ああいった場所ではエネミーに挟撃される可能性が出てきます。要は、周囲の状況を鑑みてエネミーもコミュニケーションを取り合うのです。

 社内テストの段階ではエネミーが賢すぎてプレイヤーが勝つことが難しいバランスになってしまったので、αテストではまだ実装できなかったのですが。

――つまり、エネミーどうしが連携を取り合う仕組みはすでにできているということですか?

下岡まだまだ粗削りな部分はありますが、基礎的な形はできています。

――各クラスにはエネミーからの“狙われやすさ”を上昇させたり低下させたりするスキルがありますが、そういったスキルとの兼ね合いはどうなるのですか?

福﨑たとえば、狙われやすさを上昇させるスキルを使うと少しのあいだ足止めはできますが、その効果が切れたらまたディーラーを狙い出すイメージです。

 さらに、そこに状態異常を付与するスキルを使って動きを止めて、なんていう駆け引きが生まれていくのではないかなと思っています。αテストではほとんどありませんでしたが、今後は状態異常系のスキルも増やすつもりです。

下岡またそれとは別に、偶然おなじ場所に集まったプレイヤーたちが突発的に協力して楽しめるようなイベントも設計しています。αテストでは“彷徨える逆鱗”というドラゴンが出現していました。

 ある人はクエストで、ある人は採集で、別々の目的でそこにいるプレイヤーたちが要る中で、突然緊急ミッションが発生したら、その瞬間彼らの目的がひとつになります。そうした偶然の出会いから、プレイヤーどうしのコミュニケーションが発生するのではないかと思っています。

――ドラゴンを倒したときに貢献度のランキングは出ていましたが、あれもコミュニケーションのきっかけになるようにでしょうか?

鈴木うーん、あれは改善が必要ですね。クラスによる格差がわかりやすく出てしまっていたので、得点のつけかたや、そもそも得点を出すのかどうかも考え直さないといけません。

下岡ダメージを出すだけが活躍ではありませんからね。回復したり雑魚処理をしたりするのも活躍のはずなので、そこも評価されるような仕組みにしなければいけません。

 そうしたプレイ内容だけではなく、「いっしょにいて楽しかったな」とか「周りが広く見渡せている人だったな」といった、突発的なイベントだからこそ際立つ部分に着目できるようになるといいなと思っています。

――プレイヤーどうしの出会いはオンラインゲームの醍醐味のひとつですもんね。それが自然と起こりやすい設計になるのはありがたいです。αテスト以降はどういう展開を考えていますか?

下岡αテストには、本当にたくさんの方にご参加いただきました。アンケートなどでいただいたご意見にお応えできるよう、この後はしばらく開発に専念する期間が続きます。

 αテストでは触れられなかったストーリーやカスタマイズ機能に加えて、魅力的なキャラクターたちにスポットライトが当たるような企画もゲーム内外問わず考えています。引き続き、“PROJECT SKY BLUE”および『BLUE PROTOCOL』を楽しみにお待ちいただきたいですね。

この記事用にご用意いただいた未発表の画像。PVにも登場しているふたりのNPCによる掛け合いのシーンだ。アニメのように見えるこの世界で実際に動き回れるのだから、期待は高まるばかり。

 5年間水面下でひっそりと動き続けていたプロジェクトだけあって、衝撃の事実が出るわ出るわ。ボリュームがありすぎて、事前に用意していた質問の半分も訊けていない!!

 ということで、(先方のご好意に甘えさせていただきながら)取材を続行! αテストに対するユーザーからの反応や新たなスキルやクラスの実装予定、気になる料金体系や今後のサービススケジュールなどなど、鈴木氏と福﨑氏のおふたりを質問攻めにさせていただいた。

 こちらの記事にまとめているので、ぜひそちらも最後までご覧ください。