アメリカのシアトルで開催中のゲームイベント“PAX West”で、スクウェア・エニックスが2019年9月27日に発売予定のNintendo Switch用ソフト『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S』のトークイベントが行われた。

 開発チームから登壇したのは、岡本北斗プロデューサー、八木正人開発ディレクター、久保田光アシスタントプロデューサーの3名。会場には朝から現地のドラゴンクエストファンが詰めかけた。

開発トークから浮かび上がる『ドラクエ』の厚み

 トークは司会からの質問に答えていく形で行われた。八木Dが70年代、岡本Pが80年代、久保田Pが90年代生まれで、シリーズとの接点が多少異なることなどから、シリーズの歴史や蓄積を感じさせる場面もちらほら。

 例えば“思い入れのある作品”として、プロデューサー陣のふたりが「人生はロールプレイングだと堀井雄二さんがおっしゃっていたが、(この作品は)3世代に渡る話で、人生をこの1本で楽しめる」(岡本P)、「今出たとしても歴史に名を残すゲームになれると思う」(久保田AP)と名作の名高い“5”を挙げたのに対し、八木Dは初代『ドラゴンクエスト』をチョイス。

 これは、いまだPC向けのマニアックなジャンルだったRPGのエッセンスをうまく置き換え、家庭用ゲーム機でじっくり遊べるものにしたという当時の経緯を踏まえたもの。八木Dは同作をプレイすることで「RPGって楽しいものなんだな」という実感を得たという。

 またこの話は、堀井雄二氏らから学んだ“ドラクエらしさ”とはという質問に対し、八木Dが「お客さん目線であること」を挙げたこととも繋がってくるだろう。

 いわく、本作(11 S)の開発中に行っていた定例の会議でも、開発チームが十分だろうと考えていた内容に対し、堀井雄二氏が「お客さんから見た時にそれはちゃんと遊びやすくなっているのか?」という観点から「もっとこうした方がいい」と提案されることがしばしばあったという。

 同じ質問に対し、久保田APが答えたのは「言葉の暖かさ」。これは先程も触れたように(今で言う所の)ハードコアなジャンルだったRPGに対して、鳥山明氏によるキャラクターデザインやテキストにより、優しく温かいファンタジー世界の冒険を提示した初代のスタンスに通じるもの。

 そのアプローチは現在でも継承されており、シナリオ会議などを通じて「そのキャラクターがその状況だからこそ言う、他ではないセリフ」を発するようキャラクターのセリフが考えられていることに感銘を受けているそうだ。

“王道のドラゴンクエスト”を求めて

 本作の土台となった11は「王道のドラゴンクエストをもう一度」(岡本P)というコンセプトで開発がスタート。シリーズ30年の間に多様化したプレイヤーそれぞれのドラゴンクエスト像に応えるべく、当初よりマルチプラットフォームに展開されたり、2Dグラフィックと3Dグラフィックが両方あるといった特徴も持つ。

 Nintendo Switch版ではプレイステーション4版のリアル寄りの3Dとニンテンドー3DS版の2Dドット絵のスタイルの両方を切替可能という構成になっているほか、すでに公開されているように、旧作の世界を2Dグラフィックで訪れられるとか、元のシンセサイザー音源と新たなオーケストラ音源を切り替えられるといった新要素も。

 岡本Pいわく、オーケストラ音源の採用は海外からの要望が特に大きかった要素のようで、採用を聞いた会場からは実際に結構な拍手と歓声が。北米版では同じく要望の高かった日本語ボイスが従来の英語ボイスとともに収録されるそうで、会場に集った現地の熱心なファンにとって“Definitive Edition”(決定版)の名にふさわしい内容と言えるのではないだろうか。

 ちなみに新要素の旧作世界については、オリジナルが3Dの作品は初2D化となりマップ構成が少し異なってくるため、作中では「過去にあったかもしれない世界」という解釈での登場になるそう。その微妙な違和感を表現するために、(ドット絵がスーパーファミコン風であるのに対して)サウンドもファミコン風の音源での再現になるとか。

ゾーン突入であの戦闘民族に? 『スマブラSP』勇者参戦の経緯などの裏話も

 トークでは開発中の裏話なども披露された。岡本Pが明かしたのは、ロウのデザインの変遷の話。

 鳥山明氏へのデザインの発注書では身長や年齢がおおまかなイメージイラスト付きで書かれていたそうなのだが、上がってきた初期のラフイメージは「ヨボヨボすぎる」(岡本P)もので、現在のふくよかな体型のロウはリテイクを依頼した結果だという。

 一方、八木Dからは“ブースト”状態のエフェクトとして、“髪が金髪になって逆立つ表現”が検討されていたことが明かされた。要は鳥山氏の代表作でおなじみの表現ではあるが、さすがに「そのまますぎる!」ということでボツになったそう。

 また、フィールド上で仲間が主人公から離れて独自にアイテムを拾いに行ったりモンスターと戦って倒してしまうという要素も検討されていたそうだが、コンセプトとしてあった“一緒に冒険している感じ”がまったくなくなってしまうため、こちらもボツに。

 久保田APからはローカライズの裏話が。テキストの単純な置き換えとしての訳を行うのではなく、「プレイヤーが感じる気持ちを翻訳」(久保田AP)できるよう目指しているという。

 そこで「日本のプレイヤーが感じている堀井節」を海外プレイヤーにも感じてもらえるよう、“虹色の枝”は“Rainbough”(レインボー=虹とBough=枝の合成)、そして“りゅうはかせ”なら“Professaurus”(プロフェッサー=博士と恐竜などに使われるSaurusの合成)といったように、ダジャレを使った翻訳も行っているというのが面白い。

 終盤ではニンテンドー・オブ・アメリカ主催のイベントということもあって、岡本Pから『スマブラSP』への勇者参戦の経緯も触れられた。

 オファーは同作のディレクターの桜井政博氏からだったそうで、魔法や技などが豊富に実装されているのも「これぐらいやっていいですか」という趣旨の確認が来たのに対してオーケーを出した形。

 スクウェア・エニックス側からの依頼は11 Sに合わせて11の主人公を出して欲しいという事ぐらいで、その上で打ち合わせを行い、カラーバリエーションを使って旧作の主人公も加えるという仕様に固まっていったと語った。

 なお岡本Pはメインキャラは“むらびと”なものの、勇者を使用する際はKamikaze(=メガンテ)を使って荒らしていくスタイルらしい。久保田APのメインキャラはネスで、八木Dは開発が忙しくてなかなか触れなかったため、これからプレイしていくそう。