2019年8月20日~24日(現地時間)にドイツ・ケルンにて開催されたヨーロッパ最大級のゲーム見本市gamescom 2019。その会場で、『モンスターハンターワールド:アイスボーン』(『MHW:I』)開発陣へのインタビューを実施した。

 2019年9月6日に発売が迫る本作の開発の舞台裏や、メインモンスターイヴェルカーナなどについて直撃したインタビューをお届け!

辻本良三氏(つじもと りょうぞう)

『モンスターハンター:アイスボーン』プロデューサー(文中は辻本)

藤岡 要氏(ふじおか かなめ)

『モンスターハンター:アイスボーン』エグゼクティブディレクター/アートディレクター(文中は藤岡)

市原大輔氏(いちはら だいすけ)

『モンスターハンター:アイスボーン』ディレクター(文中は市原)

ドイツでも『モンハン』熱は最高潮!

――gamescomの『MHW:I』出展はどのようなものでしたか?

辻本『MHW:I』の試遊台を並べまして、4種類のクエストを体験できるようにしています。来場者はソロか4人マルチでの狩猟を選べるようにしていますね。あと、昨日、我々もステージに出演しました(笑)。

――会場のファンの反応はいかがでしたか?

辻本ブースに行列を作ってくれて、会場自体も広く人出が多いですし、ユーザーとの距離も近いイベントだなと感じますね。すごく盛り上がりを感じています。ドイツは以前から熱心な『モンスターハンター』のファンが多くいてくださっている地域です。

――ドイツのハンターは、日本のファンと比べて特徴みたいなものってありますか?

藤岡無印『モンスターハンター:ワールド』(『MHW』)のときからいろいろな地域のプレイを見たりするのですが、差はないと言えばないのですが、あえて言うなら、日本のプレイヤーは練度は高く、スキルやステータスの意味するものを熟知していて、考察は早いですね。

 逆に、こちらのファンは、カメラの動かしかたとかアクション部分は慣れが早いかもしれません。日本のプレイヤーは初めて触れたシリーズ作品の操作のイメージがあると思いますが、こちらの方はそんなに引きずられていないので。でも、楽しんでいるスタイルとしてはそんなに差がないかなと思います。

――『Horizon Zero Dawn』とのコラボも発表されました。

藤岡そうですね、とくにヨーロッパ圏でも人気のタイトルですし、反響は大きかったです。

辻本氏らが登壇したステージの模様。いつもの「一狩り行こうぜ!」の掛け声は、英語で「HAPPY HUNTING!」。

デベロッパーズダイアリーについて

――これまで、2回のデベロッパーズダイアリーで、かなり多くの情報を直接届けてきています。第3回のご予定などは?

辻本伝えたい情報については2度の配信でお伝えできたかなと思っていまして、第3回の予定はいまのところありません。

――第2回はとくに約1時間と、かなり充実した内容になっていましたよね。

藤岡タイトルアップデートのときなどはまた情報をお出ししますが、我々開発が直接ゲームについて説明するというのは効果的だなと思っています。無印から調整が入る部分について、かなり細かいところまで、開発側がどういう意図でやっているかというようなことも説明できました。スキルや装備など、伝えるべきものを伝えたら1時間くらいにはなるとは思っていました。

――「属性武器を作っておいたほうがいい」という発言もありましたが、『MHW』プレイヤーがいま何か育てていい武器はありますか?

藤岡とくに属性武器がないと戦えないというわけではないのですが、現状、無属性の武器がどうしても使われることが多いので、選択肢を増やしたいなと思っているんです。この敵にはこの属性の武器を使う、という感じで武器を使い分けてほしい。もちろん無属性の武器でも戦えますが、属性武器を作っておいても損はないかなと。

――今回、新たにCMも制作されて、とくに『英雄の証』に初めて“歌”が付いたというCMもありましたが、制作の経緯というのは?

辻本ソニー・インタラクティブエンタテインメントさんから提案をいただきまして、我々も「こういう感じがいいのでは?」と意見を言ったり調整させていただいたという形です。

――『英雄の証』に初めて歌詞が付くというところで、どんな歌詞なんだろうと思って見てみたら……モンスターの名前を、歌っているという。あれは、『英雄の証』の公式歌詞ということでオーケーなのですか? 今後、あの歌詞でCDを出したりというご予定は?

辻本今回の歌はCM用で、インパクト重視で作らせてもらいました。

藤岡あれがオフィシャルになってCDがリリースされるという展開は……ないですね!(笑)

――(笑)。

辻本監修しているので、まあ、オフィシャルはオフィシャルなのですが、あれが『英雄の証』の公式歌詞になるということはないでしょうね(笑)。あと、CMはゲーム画面で構成されたものも制作していますので、そちらも見ていただけたら……見たほうがいい……見ていただけたらいいと思います。

藤岡なんで、3回言うたん(笑)。

辻本言っておいたほうがいいかと思って(笑)。

メインモンスター“イヴェルカーナ”

――本作のメインモンスターになる“イヴェルカーナ”は「まとっている氷を剥がしていく遊びになる」という発言をデベロッパーズダイアリーでされていました。

藤岡ひとつの攻略のしかたとしてはそういうやりかたもあるということですね。

市原攻略として“いかにモンスターを抑え込むか”というところに行き着くと思うので、氷を剥がしていくやりかたは有効な手段のひとつではありますが、そうしないと倒せないかというと、そうではなくて、いろいろなやりかたができるように設計しています。そこはプレイヤーのチョイスでいいかなと。“古龍がまとっているものを剥がしてレベルを下げていく”という遊びだと考えていただければいいかなと。

藤岡あえて氷をまとった手強い状態のままでわたり合いたいというひとがいれば、そういうふうに遊ぶこともできます。

――インタビューの前に試遊をさせてもらい、“超上級者向け”となっているイヴェルカーナ討伐にも挑戦したのですが、当然のごとく狩猟失敗しまして……。

辻本ハハハ。

――氷は吐くわ、尻尾の攻撃は厄介だわ、時間はないわであえなく時間切れに。あれを15分で狩猟というのは相当キツいのでは……?

※イヴェルカーナ討伐クエストについては以下のリポート記事もチェック!

藤岡会場で、ソロでクリアーした人がいると聞いていますよ。何度かくり返して挑戦はしていたそうですが。

――ええっ! それはすごいですね。でも、がんばれば、クリアーできる難易度になっているということでもありますよね。

※イヴェルカーナ討伐は第3回ベータテストでも遊べる。トライしてみよう!

藤岡時間制限があるのでかなり攻め込まないといけないとは思いますが。

――ほかのモンスターについても教えてください。水の古龍ネロミェールは羽根の内側に電飾のようなものがついていますが、あれは?

藤岡そういう……デザインです。

一同 (笑)。

藤岡クラゲとか深海魚の色鮮やかさをイメージして、デザインに取り入れています。そういう記号性を体感してもらえればと思います。今回はあまり説明せずに、体感していただければと思っています。

――イヴェルカーナについてはいかがでしょうか。『MHW』のメインモンスターであるネルギガンテのときは“破壊と創造”というコンセプトがあって作られたというお話をされていましたが、イヴェルカーナはどのようなテーマで制作されたのでしょう。

藤岡まず“氷を自在に使ってくる”ということをやりたかったんです。でも、魔法のように氷を自由自在に出せるというのは、『モンスターハンター』らしいアプローチではないなとも考えていました。かといって、メインモンスターらしいインパクトもあるように作らなければいけないので、そこはかなりアイデアを出し合いましたね。

――アイデアを出し合った結果、イヴェルカーナの前に霧というかモヤのようなものがあって、そこにドカンと氷が来るという形に。

藤岡ギミックとしては、すこしマニアックな話になるのですが、“過冷却水”を使っているという設定になっています。

――過冷却水というのは、温度が摂氏0度以下になっているのに凍っていない水ですよね。

藤岡その状態で衝撃を与えるといきなり凍るんですよね。そういったものを体内で生成していて、それを、霧とか地面とか物体にぶつけることで氷を発生させるという古龍です。
   

――本作の新要素で、“ボワボワ”がいます。彼らがどういう存在か教えてください。

市原ボワボワはかなり有用なアクションをしてくれますし、サイド的にボワボワ関連のイベントも用意していますので、そちらも楽しんでいただければと思います。

藤岡ガジャブーは顔を見せることはないんですけど、ボワボワは何気ないときに仮面を取ることがあるので、ぜひ見つけてください(笑)。

――本作発売の直後、約1週間後の2019年9月12日からは東京ゲームショウ2019(TGS)も始まりますが、こちらでは何か予定していることはありますか?

辻本『モンスターハンター』シリーズとしてはこういうタイミングで発売するのは珍しいのですが、きっとまた多くのプレイヤーの方に来ていただけると思いますし、考えていることもございますので、追ってまた発表したいと思います。ぜひブースに遊びに来ていただければと。

「最低でも『MHW』のクオリティーを」

――本作の開発自体はかなり順調に行えたのでしょうか? 難航したポイントなどは?

辻本これまでのシリーズのいわゆる“無印”と『G』の関係でいうと、無印の発売から約1年で発売していたのですが、今回は、開発期間自体はいままでよりも長かったです。

――『MHW』が2018年1月26日発売で、『MHW:I』が2019年9月6日ですから、1年と7ヵ月くらい。

辻本というのは、『MHW』自体のタイトルアップデートがありましたから。タイトルアップデートが終了してからは4ヵ月くらい。両方を並行して開発していた期間もあって、最初はアップデートと『MHW:I』の発売の兼ね合いもありながら計画していきましたので少し長めになりましたね。

市原そこが開発の難しい点にもつながってくるのですが、開発サイドとしては、開発期間は長ければ長いほどありがたいのですが、本作の場合、時間が経てば経つほど、プレイヤーのレベルの差が開いていきます。その差をどう合わせるか、難度設計はかなり気を使いました。

――そのあいだずっとやり込み続けたプレイヤーと、メインストーリーをクリアーしたくらいで止まっているプレイヤーのどちらも楽しくならないとダメなわけですよね。

市原完全に、プレイを休んでいたプレイヤーの方のほうに合わせてしまうと、ゲームとして遊びが成立しなくなってしまうので、“モンスターをどう攻略するか”という楽しさを、どう伝えていくか……まずは、ふつうにモンスターを倒すのが楽しい難度を設計し、その後、攻略の楽しさにどう気づいてもらうかという発想で設計していきました。基本的には、G級、マスターランクとして楽しめるモンスターを用意した上で、アクション的に「ちょっと難しいな」と感じる人を、どうそこの攻略の楽しみまで連れていくか、フォローしていくかというコンセプトで難度設計をしていきました。

――アクションが得意な人もそうでない人も一緒に楽しめるというのは、当然、無印のときからも気を使って開発されていると思うのですが、今回はそのバランスにより力を入れたと。

市原そうですね、『MHW』をカリカリに遊んでくれている人と、『MHW』をクリアーしたてのプレイヤー層というのは、かなり開きがあると思いますので。

――その開きを埋めるために、たとえば、どのような工夫がなされているのでしょう?

市原モンスターに対する攻略方法だったりというのを、よりプレイヤーがわかりやすく気づくようにしたりですとか、マルチプレイで上位ランクの人が下位ランクの人を助けたときに専門の報酬枠が出るですとか、助けてあげやすいような仕組みを作ったりしています。また、マルチプレイも盛り上げたい気持ちがあり、ふたりでも行きやすい、4人だとさらに狩りやすいというような仕様にもしています。

辻本それと、今回から『MHW』を始める人や、『MHW』が途中になっている人のフォローもしています。『アイスボーン』にすることによって、今回入るアクションを活用しながらスムーズに遊ぶことができるようにしていますので。

――『MHW:I』の制作時は、どういったことが部内で共有されて、どのようなコンセプトで開発が進められたのでしょう。

藤岡『アイスボーン』でのミッションですよね。“単に『MHW』をやり込んでいる人のためのアッパー版を作るのではない”ということは、よくチーム内で言っていました。もちろんそういう面はあるのですが、『MHW』をまだ遊んでいない人や、休んでいる人のためにも作ろうという意識は、開発の初期からチームで共有して進めました。最後までそこはぶれずに進められたかなと思います。

市原コンセプトではないのですが、チームメンバーがいちばんプレッシャーを感じていたのは、『MHW』の続きとして出るゲームですから、(求められる)クオリティーラインがそこを下回ることは絶対にない。最低でも『MHW』以上のものが求められるというところにはプレッシャーを感じながらやっていましたね。

――“最低でも『MHW』以上”というのは、たいへんなことですね。

藤岡別のタイトルを作るわけではなく、『MHW』を遊び続けていただいている方からすれば、続いて“マスターランクが新しく開かれます”という受け取りかたになるので、いまある『MHW』にさらに上積みしていこうと。

 急にベクトルが変わったり、おもしろさが変わっちゃったなと受け取られないようにし、そこはチームも気合を入れてやっていました。いちからまったく別の遊びで『MHW』を上回るというのではなく、いま遊んでいただている方にさらにおもしろさを感じてもらえるものにしなければならないという意味合いですね。そうするには、『MHW』と同等かそれ以上でないと、絶対に楽しめないですよね。

――なるほど。

藤岡スタッフにも開発の経験値が溜まっていますから、逐一ああしろこうしろと言わなくても、考えを先回りして作ってくれるようなチームに育っていますから。各セクションでやるべきことを考える時間を作れたので、そういう意味では自然とよりクオリティーの高いものができた面もあると思います。

――何か、開発の際に予期していなかったことなどは起きませんでしたか?

藤岡ベータテストの際に、ガンランスが意図がうまく伝わらない設計になってしまっていたので、そこはすこしテコ入れしましたね。

辻本gamescom版はもう改良版になっています。

――発売がいよいよ近づいていますが、なにか期待感の高まるコメントをお願いします!

辻本 すでに言っていることなのですが、出していない情報じつはまだありますし、出てくるモンスターはまだいます。1体ではないです。それらも、出せる情報は出そうと思ってますので、また期待していただければ。今週末はアメリカ・シアトルのイベント“PAX West 2019”にも出展しますし、2019年9月3日には『モンスターハンターワールド:アイスボーン』狩猟解禁直前!プレミアム生放送も予定しています。
 
 いままで『MHW』を遊んでいない方も、ちょっとお休みされていた方も、新アクションが入ったり、ひと味違った感覚だったり、さらにスムーズに『MHW』を遊べるようになっていますので、アップデートして遊んでいただきたいなと思います。