2019年8月20日から24日まで、ドイツのケルンメッセにて開催中の欧州最大級のゲームイベント“gamescom 2019”(※日付は現地時間)。

 本イベント会場にて、2019年11月19日発売予定の『シェンムーIII』について、メディア向けの試遊体験会が行われた。約1時間の試遊が行えた。gamescom 2019試遊バージョンでのレビューをお届けする。

※gamescom 2019会場で行われた鈴木裕氏インタビューもチェック!

約20年ぶりの新作を触る!

 『シェンムー』の最新作を遊ぶというのはすごいことだ

 ドリームキャストで前作『シェンムーII』が発売された2001年から18年間、2015年のE3で制作発表とクラウドファンディングの受付が発表されてから4年間、ひたすら待ちに待ち続けていた作品だ。

 今日はその『シェンムーIII』が遊べる。そう考えるだけで、長い長いあいだ待っていて高まりすぎた期待感と、これでまさかデキがよくなかったらどうしようという不安感が胸をよぎり、コントローラを持つ手がすこし震えてしまう。

 そんな、期待半分、不安半分の気持ちで、スタートボタンを押した。

※試遊時は写真・動画の撮影、録音などは行えなかったため、限られた時間で、手もとでメモを取りながらのプレイとなった。記事中の動画・画像はメーカー提供のものです。

まぎれもない『シェンムー』体験

 試遊版は、主人公の芭月涼が白鹿村を散策(探索)し、バトルや育成要素、そのほかのミニゲームが楽しめるという内容。オープニングムービーやデモシーン、製品版には実装される予定だという“前作までのストーリー振り返り”は入っていない。

 ゲームを開始すると“顔に傷のある男を探せ”というメッセージウィンドウが現れる。

※試遊版は英語字幕&英語音声だったため展開やセリフの理解にすこしあやふやな部分がある点ご容赦ください。しかし筆者は『シェンムー 一章 横須賀』の英語版である『US Shemue』をプレイしていたので半分くらいは理解できた。やっててよかった『US Shemue』。

 白鹿村の入り口付近には、小さな色とりどりの花が咲き誇っている花畑がある。

 春真っ盛りの花畑には小さな蝶も飛んでいる。美しい中国の農村風景。Rトリガーを引くと涼は花畑の中を走る。Lトリガーでカメラは主観視点になり、オブジェクトに注目してアイテムを手に取ったり人に話しかけたりすることができる。

 探索時の基本的な操作は前作までと大きく変わっておらず、シリーズファンも違和感なくプレイすることができるだろう。

“赤い渦”とハーブ(生薬)

 『シェンムー』の世界を走り回る。それだけで思わずうれしくなってしまい、お花畑の中でちょうちょと戯れていると、一部に“赤い渦”を巻いている草があることに気づいた。

 Lトリガーで注目すると、涼が草に手を伸ばし、その草をアイテムとして採取できた。

 アイテム名は“リコリス”と(英語で)書いてある。日本語では“甘草”になるだろうか。

 『シェンムーIII』ではこのように、道端に生えているハーブ(生薬)を集めることができる。アイテム欄を見ると“ハーブセット”という項目もある。特定の種類を組み合わせることで何らかの効果が発揮されるのかもしれない。

 つまり、探索中、フィールドに現れる赤い渦は“採取できるよ”、“注目できるよ”というのを教えてくれるゲーム的なアイコンであり、これまでのシリーズ作品にはなかった親切なシステムだ。

 現実的な生活感や“リアリティー”を重視して作られているシリーズだけに、いかにもゲーム然としたこのシステムは少し違和感を覚えないでもない。けれど、このくらいなら許容範囲内だと思うし、お店に並ぶアイテムや、世界に用意された様々な調べられるオブジェクトがわかりやすくなるのは純粋にいいことだ。“作り込まれた世界を隅々まで眺めて楽しむ”という遊びを多くのプレイヤーが堪能できるので、メリットのほうが大きいと思う。

インベントリには昔のアイテムが

 アイテム欄では、涼が持っているアイテムをじっくり眺められる。横須賀港で撮った原崎とのツーショット写真や、ジョイの写真、薫芳梅との写真など、思い出の写真がたくさんある。

 ちなみにこの写真は、キャラクターが『III』バージョンではなく、『シェンムー 一章 横須賀』や『シェンムーII』のまま。見た目が変化した『III』の涼と比べて、写真に映るキャラクターは涼も含めて昔のままなので、なんというか、本当に古い写真を久しぶりに見たときのような感慨を覚える。顔変わったなあ。

 涼が身に付けている腕時計は、ドリームキャスト版でタイアップしていたブランド“TIMEX”のものではなくなっており、文字盤には“YS NET”のロゴが入っている。だからなんだ、と思う向きがあるかもしれないが、『シェンムー』シリーズというのはとにかく細部までこだわって作られているので、こういうささいな変化を見つけるのも楽しい。

村の商店で戸棚を開けたり締めたりする

 少し歩くと、村の商店、なんでも屋さん的な雰囲気のある“陶陶特価”がある。藁葺きの屋根がオーガニックでとってもステキだ。

 お店の前には“アルバイト”ののぼりとガチャガチャ、さらにマップ台が設置されている。ゲーム内でマップを手に入れることで画面にもミニマップが表示される『II』のシステムを踏襲しているのだと思う。

 マップには2種類あり、村の地図と、もうひとつは“生薬あるあるマップ”と書いてある。

 生薬あるあるマップ。

 繰り返して言うがゲームの舞台は中国の村だ。野暮なツッコミとは重々承知のうえであえて言うと、ここに日本語のマップが置いてあることは、おかしい。けれど、僕はそれを見てうれしくなる。

 ああ、これこれ! この感じ。

 ほどよく肩の力が抜けていて、ツッコミどころがある。

 『シェンムー』においてこの類のおかしなツッコミどころは、怒りを持つ感情ではなくて、“可笑しい”つまり“おもしろい”と感じてしまう。過去作でも、そういうものはたくさんあるが、狙ってやっているのか、本気でやっているのかわからない絶妙なものが多いところも好きだ。

 たとえば『一章』で葉っぱをくわえた詰め襟の“THE・番長”みたいな榎が出てきたり(いくら1980年代でもこんなやつおらんやろ)、『II』では九龍城の中に突然ゲームの筐体が置いてあったり、「なんでだよ!」と思わず笑いながらツッコミたくなるポイントがある。

 店内に入ると、老人がひとりで店番をしていて、店内には所狭しと商品が並んでいる。商品というのは、丸い甕(かめ)に入ったお酒であるとか、そういうものだ。甕のラベルを見ると、漢字の筆文字で、いちいち“二十年梅酒”とか“五年老酒”とか書いてある。

 戸棚にも注目することができて、ボタンを押すと、引き戸を開ける。中にはまた違った酒瓶がしまわれている。もう一度ボタンを押すと、引き戸を閉める。

 ……最高だ。

 いま僕は「『シェンムー』をプレイしているんだ」という実感をしみじみと噛みしめる。

 年老いて、顔中にひび割れたようなしわが走る店主に話し掛けると、聞いてもいないのに、「3ヵ月漬け込んだ自家製のヘビ酒がいかに滋養強壮に効くか」ということについて、滔々と語り出す。

 ……最高だ!

 この生活感というか、本当に実在しそうな感じと、キャラクターとしてデフォルメされている絶妙なバランスが、『シェンムー』のモブにはある。

 この店では各種の食料(バナナやニンニクなど)や、酒、ジュース、さらにコレクションアイテムなども購入できる。

 アイテムとして“お酒”も複数売っているのだが、これはどうやら、未成年である涼は使用できないようだ(ではなぜアイテムとして存在するのか? 単なるコレクションアイテムなのか? たまたまプレイ中は使えなかっただけで、使用できるタイミングがあるのか? 涼は未成年だから使用できないが、たとえば成年しているキャラクターとともに行動することがあったとしたら、そのキャラクターに使えるのだろうか? 詳細は不明)。

 さきほど語っていたヘビ酒らしきアイテムも購入できた。ただ、これは酒ではなくエナジードリンク的な扱いのようで、まだ未成年の涼も使用することができる(詳細は後述)。 

ガチャガチャで遊ぶ

 店を出てガチャガチャを遊ぶ。『シェンムー』と言えばガチャガチャだよね!

 今回のプレイでは確かめられていないが、前作ではガチャガチャ景品をシリーズでコンプしたり、特定の組み合わせで質屋に持っていくと高く買い取ってくれるというシステムもあった。

 シェンムーキャラクターのミニフィギュアが出てくるガチャガチャを遊んでみる……SDキャラクターになった稲さんが出てきた。

 続けて購入してみると……速い! 買うのがメチャクチャ速い!! ガチャガチャを再度購入するときはノブを回すアクションがカットされていて、連コインが可能になっている。つぎは陳貴章が出た。これはいい。どんどんお金を注ぎ込んでしまいそうだ。

ガチャガチャには多くの種類がある。『シェンムーIII』の中に『シェンムー』キャラクターガチャがあるというメタ構造。原崎かわいい。商品化してほしい。

 しかし、あまりガチャガチャばかりに熱中しているわけにもいかない。

 何しろこれは時間の限られた試遊だし、まさか「ガチャガチャばかりやっていて本筋はぜんぜんできませんでした」という原稿を書こうものなら編集長から裡門頂肘を喰らうことは必至。

 シェンムーSDキャラクターシリーズをコンプしたい誘惑を必死で抑えて、泣く泣く歩みを進めることにした。

 村に向かって歩いていくと、道を外れたところに“遊楽園”という看板を発見。

遊びの楽園。

 ここでは、“落とし玉”やサイコロでの“大小”といったミニゲームが楽しめる。つまりギャンブル場だ。

 遊びたい……。

 しかし、いまはそんなことをしている場合ではない……顔に傷のある男を探さなければ……まだバトル要素も体験していないし……。

 逡巡する僕に、門の奥から、男が不敵な笑みを投げかけてきた(ように見えた)。

 ちょっとだけ遊んでいこう!

 男を探す目的については一旦忘れ、僕はギャンブルに興じることにした。

金の切れ目は縁の切れ目。狙い目は亀レースか

 思えば『シェンムー』では第1作から“金”が大きな役割を担っていた。

 『一章』では香港行きのチケットを買うために福さんは豚の貯金箱を割り、プレイヤーは港でフォークリフトを運転しなければならず、『II』ではアルバイトのほかに、前述の質屋や、腕相撲や落とし玉など、お金の稼ぎかたが増えた。

 本作でもお金の重要性は変わっていない。むしろ、“食事”の概念が追加され、涼の体力は時間経過とともに減っていき、体力を回復するには食べ物を買い、食事をしなければならないため、お金はより必要性を増している。

 だから、その稼ぎかたのひとつであるギャンブルに興じるのは、本記事においても非常に重要なことだ(すこし言い訳じみているかな……)。

 遊技場の入り口でトークン(木札)を買い、その木札を賭けてミニゲームを遊ぶ。

 今回は『II』にもあった“落とし玉”や“大小”(上でやったり)のほか、新ゲームの“亀レース”が楽しめた。このほかに、花鳥風月というゲームもあるようだ。ゲームと遊楽園の見どころを簡単に紹介しよう。

落とし玉

 落とし玉を遊ぶ。パチンコのように釘がたくさん打たれた板の上からボールを落とし、ボールは釘の森を跳ねて左右に行ったり来たりしながら、丸の書いてあるゴールに辿り着いた。このとき遊んだ台では、掛け札は4倍になった。

大小

 つぎに、ふたつのサイコロの数の大きさで競う“大小”を試す。店主が出した数字は“8”。涼はやたら真顔でサイコロを振る。数字は“7”。今度は僅差で賭け札を失ってしまった。店主は笑顔。

亀レース

 最後に、亀レースを遊ぶ。4匹いる亀のなかから1匹選ぶとレースがスタート。画面に出るボタンを素早く連打すると亀が歩く。かつてこれほどまでスローモーなレースゲームがあっただろうか。正直、かなり簡単に勝つことができた。序盤の資金稼ぎでは、これで札を稼いで賞品に換え、それを売って換金するのが手っ取り早そうだ。でも、繰り返し遊ぶとほかの亀が強くなる仕様があったりするのかもしれない。

酔っぱらいの爺

 僕が『シェンムー』で好きなのは、モブキャラクターの顔が生活感とリアリティーで溢れているところだ。『一章』の魚屋さんや『II』の肉屋さんなど、とくに、キッタナイ顔をしたオッサンや、人生の苦労がそのまま顔に現れているようなキャラクターを見かけると、思わずうれしくなってしまう。

 そういう意味では遊楽園にいるオッサンはシリーズの中でも特筆モノの人材だ。

 白髪のボサボサ頭に赤ら顔、服はいかにも着古した一張羅という風情で垢じみている。そして「俺はぁ~酔ってなんかいないよぉ~」と言ってフラフラ動いているあたり、とてもいい。極めつけに左の穴から鼻毛が豪快に出ている。ドサッと出ている。すごい。この細かな描画が実現できるあたり、プレイステーション4(とPC)向けに開発されている甲斐があるというものだ。

ギャンブルそれは罪の味

 そうして、しばらくミニゲームに興じたりオッサンを眺めたりした。

 「そろそろ遊楽園を出て、話を進めなければ……原稿を書くためにもやらなければ……」という思いが頭をもたげてくるが、そういう思いが強くなればなるほど、ギャンブルは熱を増しておもしろくなってくる。

 小学生時代、夏休みの宿題を放り出して遊んでいた(僕のような)タイプの方はご存知だと思うが、遊びなんてものは、「いまはこんなことをしている場合ではないのに!」という切迫した状況下で罪悪感を抱えながら遊ぶのがいちばんおもしろいのだ。そこには罪の意識という魔法のスパイスが振り掛けられている。

 しかし、「ギャンブルばかりやっていて本筋はぜんぜんできませんでした」という原稿を書こうものなら、編集長からトルネードキックを喰らうことは必至。

 固い意志の力でギャンブルを切り上げ、本筋を進める決意をした。

男を発見、なぜかバトルに!

 やや寄り道が長くなったが、なんとか村の広場に付いた。そこでは子どもたちが拳法を練習している。子どもに拳法を教えているらしい太った拳法家に話し掛けてみる。

 「顔に傷のある男を知らないか」。この、手当たりしだいに自分の知りたいことを聞き回る感じも『シェンムー』らしくて懐かしい。

 村人の誰に話しかけても、みんなフルボイスでしゃべり返してくれる。しかもそれぞれ特徴的な口調だったり、生活のことをしゃべったりして、単なるゲーム進行のための装置ではなく、そこに「人々の営みを表現したい」という制作者の意思を感じ取る。

 何人かに話を聞き、目的の男を見つけた。その男が言うには「俺と戦って勝ったらいろいろ教えてやるよ」とのこと。

 なぜ初対面の男といきなり戦わなければならないのかという疑問はあるが、どうやらここは拳法が盛んな村のようだし、主人公の涼も芭月流柔術を修める芭月家の嫡男である。彼は売られたケンカは必ず買う。

 戦闘が始まった。

 『シェンムーIII』の戦闘システムは、『バーチャファイター』シリーズをベースにしていた前作までと、かなり異なっている。投げ技がなくなっているし、操作感も変わっているので前作までのプレイヤーはおそらく面食らうだろう。

 技を事前に設定しておきワンボタンで繰り出すことができるシステムもあり、それ自体は親切なのだが、それだけを連打していても勝てない。

 男との戦闘では、操作に慣れる間もなく倒されてしまった。

 「兄ちゃん、ちょっとクンフーが足りねえな」とまで言われる。シンプルに悔しい。まずはこの男を倒せるだけの実力をつけなければ。

 男に勝つためには修行しなければならない。体力を回復するために手持ちのバナナやニンニクを食べまくった後、村のはずれにある武道場を探し当てた。

 “武功館”と看板のかかった道場では、対人の組手と、木人(武術を練習するための木の人形)を使った“馬歩”、“寸拳”のトレーニングが行える。

 馬歩と寸拳はそれぞれミニゲームにもなっていて、寸拳はタイミングよくボタンを押して木人を叩く。馬歩は、涼の腕をガイドラインの高さに合わせるというシンプルなものだ。この地味さが、なんだか本当に武術の練習をしている感じがして、いい。2種類のミニゲームを繰り返し行うと、次第に“クンフー”レベルが上がっていき、涼が強くなる。

 組手では、“レッドタイガー”と呼ばれる男とのスパーリングを行う。今回の試遊では試せなかったが、組手を繰り返して勝っていくと、道場内に架かっている涼の名札がすこしずつ高い位置(高段位)に登っていくのだという。

 ああ、本筋の進行を止めてまで、ちょっとやり込みたくなるような楽しみがここにもある……。

 本当は、ここで納得がいくまで訓練をした後で、男に再戦を挑むのがいいのだろうが、試遊の終了時間がじわじわと近づいてきている。

 くそっ、ギャンブル場で時間を使いすぎたか!

 適当なところで修行を切り上げ、戦闘に役立ちそうなアイテムを購入するため、再び陶陶特価へ向かった。店の主人が自慢していた自家製のヘビエキスパワーを買おうとしたところ、お金が足りない。
 
 くそっ、ガチャガチャでお金を使いすぎたか!

 ここで、お店の前に“アルバイト”ののぼりが立っていたことを思い出す。そうだ、お金がなければ働けばいいのだ。店主に話をして“まき割り”のバイトをさせてもらうことにした。

まき割り

最初にできるアルバイトは青空の下でまき割り。ちなみに英語版では終了後に“Chop or Don't chop”の2択で続けるか止めるか選ぶことができた。割るか割らないか。初めてだなこの2択。

 これもシンプルなミニゲームになっている。涼が木を置き、マサカリを振りかぶった状態で、なぜか上半身を左右に動かすので、「ここだ!」と思うところでボタンを押す。するとマサカリを振り下ろし、木は“まき”の状態になる。木が置かれる場所はバラバラなので、位置と涼の上半身をしっかりと見てタイミングを見計らう必要がある。『一章』のフォークリフトや『II』の徳林さんとの荷物運び、落とし玉店のバイトよりは労働感が薄れ、シンプルなミニゲームになっている。

 ゲーム的には難しいことはなく、プレイヤーは基本的にはボタンを押すだけ。リズムよくまきを割って成功が続くとBGMが変わり、くせになるメロディーの“フィーバーモード”へと変貌する。時間がくると、激しい銅鑼の音とともにフィニッシュ。

 これだけのことなのになぜか何度も遊びたくなる中毒性を帯びている。

 君も割ろう、まきを。

※まき割りは上の動画後半からスタート。バージョンがやや古いものなのか、BGMが変化するフィーバー仕様はこの動画では見られない。応援してくれる店主の姿は見える。

男と再戦! その結果は……?

 ともあれ、ヘビエキスを買うお金ができたので、これを買い男と再戦することにした。

 戦闘のコツとしては、ワンボタンでの必殺技は便利なので多用したくなるが、むやみに連打をしないこと。敵の攻撃をよく見て、Lトリガーでガードをすること。ワンボタンでの必殺技を使うときは、登録してある技を随時切り替えて、相手のスキを見て打ち込むこと……などが有効なテクニックのようだ。

 しかしそれでも男は強い。激しい攻撃を受け体力が残りわずかとなり、ピンチに追い込まれる涼。

 だが、ここで汗水垂らして購入したヘビエキスが効果を発揮した! これを使うことで、HPは全回復し、攻撃力も一時的に上がるのだ。土俵際まで追い込まれていた涼だったが、形勢逆転! 一気呵成に攻め立てて、男を倒すことができた。

 ここで試遊版はクリアーとなり、試遊時間もちょうど終了。

壮大なゲームサイクルの一端を感じる濃密な1時間

 1時間ほどの試遊だったが、探索、ミニゲーム、バトルと『シェンムーIII』の要素を濃い密度で堪能することができた。白鹿村には『シェンムー』の魅力が凝縮されている。

 本編の序盤でも訪れるこの場所は、ゲーム全体のアウトラインというか楽しみかたをプレイヤーに示し、「『シェンムーIII』というのは、こういうゲームですよ」と暗に伝える役割も持っているのだろう。

 そこで楽しめたのは、

  • 探索
  • アルバイト
  • ギャンブル
  • トレーニング
  • バトル
  • (ストーリーが進行する)イベント

 と、まさに『シェンムーIII』を構成する各要素が詰まった遊び(あと取りこぼしたところとして、村の中に食堂っぽい建物があるんだけど、行きそびれた! やっぱり鈴木裕さんがインタビューで語っていた通り、試遊は4時間くらい必要だったかもしれない)。

 これらの要素は、一見、それぞれ独立した要素になっているように見えるが、じつはすべてつながっている。

 探索をしていたらバトルが始まる。バトルに勝つためにはトレーニングをしたりアイテムを買ったりする必要がある。アイテムを買うにはお金が必要だけど、そのためにはアルバイトをしたり、ギャンブルやコレクションで増やしたりしなければいけない。

 男との戦いをどのようにクリアーするか、その方法はプレイヤーによって変わるだろう。地道にトレーニングをしてクンフーを積んでもいいし、お金を稼いでヘビエキスパワーに頼るというのもいい。そして戦闘難度はプレイヤーが設定することも可能だというから、あえて難しい設定にして、自分の腕を磨き物語を進めるスパルタンな遊びかたもそれはそれで楽しそうだ。

 今回のプレイでは素直にバトルのあるルートに進んだが、選択によっては、ひょっとすると、あの男との戦いをパスしてストーリーを進めることすらできたかもしれない。

 どのように目的を達成するか、手段の選択はプレイヤーに委ねられている。用意されている各要素をどう組み合わせ、何を楽しみ、クリアーしていくか。それは自由だ。

どういう風に遊んだっていい

 物語だけを進行しようとすれば、おそらくギャンブルは一度も遊ばなくていい。ひょっとしたら、アルバイトすらする必要はないかもしれない。

 でも、『シェンムーIII』には用意されている。

 生薬を集める楽しみも、クンフーを積んで涼を育成する楽しみも、人々に話し掛けまくって、クスッと笑ってしまうような会話を引き出すようなおもしろさもある。

 人々もバリエーションに富んでいて、薄汚れて生活感あふれる愛すべきオッサンもいれば、目が覚めるような美人もきっとどこかにいるだろう(今回の試遊では出会えなかったが!)。

 『シェンムーIII』は紛れもなく『シェンムー』だ。最新作だ。

 場面によってはすこし描画がカクついたり、ちょっと物足りないところがないとは言えない。戦闘で投げ技がカットされているというのは象徴的なことのひとつだろう。描かれる農村風景は美しいが、AAA級のオープンワールドゲーム、最新のビッグタイトルとグラフィックを比較すると、本作が確かに上回っているとは言い難い。豊富な資金力と世界トップレベルの開発力を存分に使い、ハード設計から関与し、膨大な人海戦術も駆使しながら、強大な腕力でぶん殴るみたいに力技で開発していた前作までと本作では、やはり異なる点もあるだろう。

 それでも、僕はこの作品が遊べることに大いなる喜びを感じる。

 そこには開発者のアイデアが詰め込まれ、遊びのそれぞれの要素はつながっていて互いに作用している。

 1時間だけのプレイなので、全体を通して遊んだときにどうなっているかというのはまだわからないが、この各システムの連携、関係性は“(一見本筋とは無関係に見えるかもしれない)細かな体験を積み上げることで大きなゲーム体験になる”という構造を予感させる。これは前作よりも緻密になり、練り込まれている。この点は前作よりも進化していると思う。

 そういう構造をしているゲームだから、プレイヤーは自分が思うような遊びかたで、思うように遊ぶことができる。そのプレイは、遊んだプレイヤーだけのオリジナルなものになり、それはプレイヤーの思い出になる。言い換えると、プレイヤーは、自分だけの旅をしている。

 それが『シェンムー』の体験だ。

 だから、『シェンムーIII』が前作までと同様の味わいを持っているのが確かめられたのはとてもうれしい。“シェンムー味”の作品を長年待ち続けていたプレイヤーが、変わることのない、シェンムー味を感じるゲームを楽しめるというのは、とてもいいことだろう。

 だって、シェンムー味がするゲームって、『シェンムー』のほかにないんだもの。

 唯一無二と言っていい独特の味わいを持つこのゲーム、いまはデバッグとチューニング作業中だという(複雑な構造のゲームだしデバッグはたいへんそうだなあ)。あとはもう、発売延期を重ねてきた本作が、2019年11月19日、本当に発売されることを祈るだけだ。