捜査機関エージェントの嘘、男と女の嘘、上司と部下の嘘、ビデオチャット嬢と客の間の嘘。あなたはそうして何層にも重ねられた嘘が引き起こした結末を目撃することになる。

 実写映像を使ったアドベンチャーゲーム『Her Story』のサム・バーロウ氏による新作『Telling Lies』を紹介しよう。本作は2019年8月23日深夜よりPC/Mac/iOSで順次配信開始。

 『Telling Lies』の基本は、“断片化されたある事件の事情聴取映像を検索して見ていくことで全貌を探る”という内容だった『Her Story』とほぼ同様だ。

 今回プレイヤーは、何らかの経緯で盗み出されたNSA(アメリカ国家安全保障局)のデータベースが入ったマシンの前に座り、そこに収められた映像を検索で取り出して視聴することで、そこに登場する人々に一体何があったのか、そもそもこれはどんな目的で収集された映像なのかを探っていく。

『Telling Lies』推理力と検索力で何重にも重ねられた嘘を暴け。名作実写アドベンチャー『Her Story』のクリエイターによる新作が日本語対応で登場_03
基本的には単語ベースの検索で、ヒットした内のトップ5件のみが再生可能になる。ちなみにメモアプリも日本語対応(個人的にはゲーム内のメモアプリを使うより、リアルなメモ用ノートやタブレットなどのアプリに書き込むのをオススメするが)。

検索によって断片的に進む物語

 さて、最初データベースの検索バーには“愛”と入力されているので、そのまま検索を走らせてみよう。“愛”という言葉が出てきた動画がヒットし、頭の5件のみが再生可能となる。

 そこに映っているのは、さまざまな人々のビデオチャットなどの映像だ。彼らはどんな人物で、どういう関係性にあるのか? 他愛のない会話の端々から手掛かりになりそうなことをメモしながら見ていくといい。

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記者がタブレットアプリ“Notability”で作ったメモ。人物の写真をその場で撮って貼り込んだりできるのでマジ便利だった。
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検索ワードが複数回登場する場合は、どこから再生するか選ぶこともできる。ちなみに再生はキーワードが出てきた部分から行われるので、最初から見たい場合は巻き戻さないといけない(今回は『Her Story』にあったスキップ再生ができないのでややめんどい)。

 最初の5本の動画を見終えて、次にどうするかは完全にプレイヤーに委ねられている。原因も経緯も結末も既にこのデータベースの中にあるのだが、ゲームはあなたを正解に向けて誘導してはくれない。

 もっと検索が必要だ。例えば、最初に出てきた動画の男は引っ越してきたばかりのようだし、“アパート”で検索してみるのはどうだろう? 自分で打ち込んでもいいし、動画の字幕で“アパート”と言ってる場所から検索を起動することもできる。

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字幕から直接単語を選んで検索可能。

推理力を検索力に組み合わせて道を切り拓け

 このデータベースはやや不便な仕様になっていて、検索ワードが合っていても最初の5件しか表示してくれないばかりか、複数単語や長いフレーズでの検索は完全一致の場合にしかヒットしてくれない。

 例えば仮に「いま新作ゲームのレビューを読んでるんだよね」と言っている場合は「ゲーム」や「レビュー」単独や「新作ゲームのレビュー」ではヒットしてくれるが、「新作ゲーム レビュー」とか区切ってもアウト。

 従ってほぼ一単語の検索になっていくので、推理力のサポートが必要になってくる。「新作ゲームのレビューだって?」といったような事を話している場合は、それについて言及している対になる会話相手の映像が存在する可能性が高いし、初耳の名前が出てきたらそれが新たな動画の山への道を切り拓く検索ワードになりうる。

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ソリティアを遊ぶこともできる。

 そういった制限を設けつつ脚本が巧妙に作られているおかげで、終始まったくランダムに動画を再生しているように見えて、ある程度は一定の方向性が発生するようになっているのが本作の素晴らしい所。

 ちょっと考えてみて欲しいのだが、作中の出来事を時間軸順に並べると、当初は嘘をついていたことが後でバレたり、序盤では言及されていなかった事が後で明かされたりするわけだ。

 となれば、その嘘に関するワードが出てくる動画はバレる以前のものに集中しているだろうし、登場人物たちが新たに口にするようになったことは必然的にそれ以降の動画に関わってくるだろう。あるいは、ある単語が人によって異なる意味を持っていたり、あること(または人)が別の名前を持っているのがわかれば、それもまた新たな絞り込みの手掛かりになる。

 このように、事態が少しずつわかっていくに連れて“過去の嘘”や“新たな事実”が、より深く掘り下げるための検索ワードとして機能するように設計されているのだ。

検索式アドベンチャーの新たなマスターピース

 『Her Story』は“事件聴取を受ける女性”という狭い範囲の話に絞った内容だったが、今回はキャラクターが一気に増え、関係性とその変化を探るという要素も登場。どんな映像を重点的に見ていったかでエンディング後のエピローグでその後が明かされる人物が変わるという要素も面白い。

 それ自体はあまり“事件”に直接関わりのない映像も見なければいけなくなったのは好き嫌いがあると思うが、個人的にはそういった日常パートの演技の良さも含めて歓迎したい(スキップ再生がなくなったのはめんどいけど)。

 なおレビュー版では本作の日本語対応にはいくつかの問題があったが、クリアーは可能なのを確認しており、かつ製品リリース版ではさらなる修正が行われているとのこと。

(※8月23日午後7時50分追記: 日本語・中国語・韓国語版で不具合が残っており、SteamでのPC版等では修正完了まで一旦オプションから外すことが告知されている)
(※8月29日午後5時追記: PC版での日本語・中国語版の修正が完了した事が公表された)