『ときめきメモリアル』声優インタビューで聞く、当時の秘話

 好きとか嫌いとか、最初に言い出したのは誰なのかしら……。

 そうそれは『ときめきメモリアル』(以下、『ときメモ』)だ! 1994年に第1作が発売され、多くのメモラー(『ときメモ』ファンの呼称)を生み出し、ゲーム史における恋愛シミュレーションゲームのジャンルを確立した『ときメモ』。25周年を祝して、第1作のヒロイン役を演じた金月真美さんと鉄炮塚葉子さんのインタビューを掲載! 25年の歳月を振り返り、さまざまな思い出を語っていただいた。全メモラー必読の内容!!

金月真美(きんげつまみ)

藤崎詩織役。 幼少時代は子役として活動し、その後ナレーターになる。『ときメモ』の藤崎詩織役を担当した後は、アニメやゲームの声優としても活躍。

鉄炮塚葉子(てっぽうづかようこ)

朝日奈夕子役。 『ちいさなおばけアッチ・コッチ・ソッチ』のアッチ役で主演声優デビュー。劇団に所属していた時期もあり、舞台女優としての経験を持つ。

藤崎詩織と朝日奈夕子。

ヒロインとの運命の出会い

――第1作にご出演されたおふたりに、ぜひ当時の思い出をおうかがいできればと思います。まず本作との出会いからお話しいただけますか?

鉄炮塚私はとくにオーディションなどはなく、「お仕事決まったよ」と言われたのが『ときメモ』との出会いだったと覚えています。

金月私は事務所がテープオーディションに応募してくれていたんです。だからちょっと申しわけないのですが、知らないうちに詩織ちゃん役が決まっていたんです。

――なんと、じつはそんな過去が。

金月私は当時は別の事務所に所属していて、そちらではCMのナレーションをメインにお仕事させていただいていました。あまりアニメやゲームの声優の仕事をしてこなかったので、「そういうものなんだな」くらいの認識でしたね。

――となると、ゲームのキャラクターボイスを担当することは初めてだったのでしょうか?

金月私はほぼ初めてでした。葉子さんはそれまでにも声優をされていたから、慣れていたんじゃないんですか?

鉄炮塚そうですね。でも、これだけ膨大なテキストがあるゲームのお仕事は初めてでした。「電話帳みたいな台本が来るよ」と言われていて、「まさか~」とは思っていたんですけど、本当に電話帳みたいなのが届いて驚きましたね。私の台本でもけっこうな厚さだったから、金月さんはもっと分厚かったんじゃ……。

金月私もすごかったですね。当時、これだけキャラクターがしゃべるゲームというのはそんなになかったと思います。

鉄炮塚ひとつのシーンで、何パターンもボイスを撮るような収録も、これまでも経験したことがありませんでした。喜怒哀楽ごとに、立て続けにテンションの異なるセリフを言っていくというのは、当時はかなり慣れない作業でしたね。自分ではけっこう怒っているつもりなのですが、「もうちょっと激しく怒ってください」とリクエストされることもあって。

――こういった恋愛シミュレーションゲームのキャラクターになって膨大なセリフを読み上げるというのは、当時はかなり珍しいお仕事だったと思います。おふたりも苦労されたのでは、と思うのですが……。

鉄炮塚それほど経験のあるお仕事ではありませんでしたが、そのあたりはきちんとスタッフさんのアシストやご指導があったので、それほど苦労はありませんでした。

金月私の場合はけっこう苦労がありました。詩織ちゃんはすべてパーフェクトな女の子という設定だったから、逆にどこを目立たせたらいいんだろうとすごく悩みましたね。ほかのキャラクターだと、運動ができる、勉強ができる、大人っぽい、子どもっぽいといったわかりやすい長所があるんですけど、詩織ちゃんはすべて完璧だから、特化した部分がないんです。いまゲームのボイスを聴くと、かなりプレーンな声だなって感じています。でも、ゲーム、ドラマCD、キャラクターソングなどの収録を経ることで彼女のことがだんだんわかってきたので、ゲームとその後の詩織ちゃんの声ではけっこう違った印象を感じていただけると思います。

キャラバン全国行脚の思い出

――『ときメモ』の第1作は、当時としては珍しいマルチメディア展開も積極的に行っていましたよね。その当時の思い出なども聞かせていただけますか?

金月いちばん思い出深いのはイベントですね。ゲームの発売後、“『ときメモ』キャラバン”というイベントで、日本全国を巡っていました。葉子さんとは、いっしょに金沢に行きましたよね?

鉄炮塚行きましたね! 金沢まで電車ですごい時間をかけて移動しましたよね。私は全イベント中で2~3ヵ所のみの参加でしたが、真美さんは全部に行ったからたいへんでしたよね。

金月会場から会場にハシゴするスケジュールが1週間以上続くのがピークでしたね。イベントで着る衣装が毎回変わるから、それを持って移動するのはなかなかの体力勝負でした。

――キャラバンはどういった内容のイベントだったのでしょうか。

金月いまやっているようなものとそれほど変わらず、トークやライブをファンの方の前で披露していました。イベントはトーク、ライブ、トークという流れで進行していたのですが、最初のトークはすごく緊張しているので無口。ライブが終わって緊張がほぐれたら「さあしゃべるぞ~」と元気になるっていうのがいつもの私のパターンでした(笑)。人がいっぱいになっているホールの舞台に立つなんて経験はこれまでなかったので、毎回緊張の連続でした。

鉄炮塚私は舞台でお芝居を以前からしていたので、人前に出るというのはそれまでにも経験がありました。ですが、私自身としてトークをしたりライブをしたりということは経験がなかったので新鮮な経験でした。いっしょに出演しているのですが、真美さんのことはいつも「華々しいな~」って思いながらやっていましたよ。

金月私は右も左もわからずでしたよ(笑)。

鉄炮塚私からはそう見えませんでした(笑)。

金月このころは本当に怒涛のスケジュールで、私は声優としてより、ステージに立っているほうが長かった時期でしたね。

――舞台のお仕事と、こういったイベント出演では、違いを感じるものでしたか?

鉄炮塚舞台をやるときは扮装していますし、役になりきっていますから平気なのですが、それとは全然違いました。フリートークが苦手なんです……(笑)。

金月お芝居をやるときって、基本は客席を見ませんからね。でも、イベントは客席を見てやるからコミュニケーションが必要だし、みんな手探り状態でしたよね。

――当時、キャラクターメインのゲームでそれだけのファンを集めるのは珍しいことだと思います。ファンの方の熱量もすごそうですが。

鉄炮塚すごかったですね。ライブをするときはアイドルのように掛け声を作っていただいたり、本当にアイドルのライブのような熱量で。

――いまではキャラクターソングなどの制作はゲームやアニメでは定番となっていますが、当時を考えると、そういった展開はかなり珍しかったのでは。

鉄炮塚私は男の子役とか、うさぎさんとか、たぬきさんとか、そういう小さい子向けの歌のお仕事はあったんですけど、キャラクターソングみたいなポップスをお仕事で歌ったことは初めてでした。ブースにひとりきりで入ってマイクに向かって歌を収録するというのも初めてで、本当に緊張しましたね。

金月私も歌を収録するというのがそもそも初めてでした。最初に歌を収録をするときにリズムを刻みながら歌っていたんですけど、そうすると声がブレるからあまり体を動かさないでくださいと言われたことも(笑)。あと、キャラクターソングなので、詩織ちゃんの声とニュアンスで歌うということは、私を含め、スタッフ一同がこだわっていました。

――と言いますと?

金月大人な私と、高校生の詩織ちゃんだと、人生経験からくる言葉の重みみたいなものが違いますよね。私自身の表現で想いを込めて歌いすぎると、すぐにスタッフさんから、「はい金月さん。いまの歌いかただと、たくさんの人生経験が見えました」と言われたり(笑)。

――なるほど(笑)。金月さんは『ときメモ』を機にお仕事がガラっと変わられたようですね。

金月そうですね。当時は、事務所に所属して声のお仕事をしながら、大学の研究室で助手として働いていたんです。大学なので夏休みの期間はお休みになるのですが、その夏休みの期間にやったお仕事が『ときメモ』だったんです。メディア展開が始まったころはちょうどアメリカの大学院で勉強している時期で、最初は勤めていた大学の先生方に内緒だったのですが、メディア展開をするうちにバレまして(笑)。「金月くんは何をやっているんだ?」と言われた記憶があります(笑)。

――(笑)。キャラバンのときは共演をされることもあったと思いますが、ほかのキャストの皆さんと交流されることはあったのでしょうか。

金月一堂に会するイベントって、じつはそれほどやっていないんです。記憶にあるのは2回くらいでしょうか。ゲームの収録は個別に行うので、収録中もほかのキャストの方と絡むことはありませんでした。イベントに参加したり、ドラマCDなどを収録したりという時期のほうが集まっていたと記憶しています。

鉄炮塚キャラクター3人で歌う曲で、ハモったほうがいいからと同時に収録した曲があるんです。私は、そのときの大先輩の笹木綾子さん(清川望役)と真美さんと3人で収録をしたのですが、そのときのことをはっきりと覚えていますね。すごく楽しくって。

金月キャストどうしの仲も深まりますし、ドラマCDは自分とほかのキャストさんのキャラクターとの関係もよくわかるので、より演技が深くなっていったなと。

鉄炮塚あと、ひとつ覚えていることがあって、『ときメモ』関係の収録と収録の合間に少し時間が空いたことがあったんです。その時間潰しに、いっしょにいた『ときメモ』キャストの皆さんとゲームセンターに『ときめきメモリアル対戦ぱずるだま』をプレイしにいったことがありました。みんな、自分のキャラクターが出ると「わ~」って喜びながらプレイしていたんですけど、気がついたらすごい人だかりができていて、慌ててその場を離れたっていう。

――ファンからすると、かなり驚く場面でしょうね(笑)。ちなみに、いまでも交流のある方はいますでしょうか?

金月毎月のようにお会いするということはありませんが、どなたかが舞台をやれば観に行かせていただいたり、時間が合えばご飯をごいっしょしたりといったことはあります。

鉄炮塚お仕事ではなくても、お会いすると同窓会みたいに懐かしい気持ちになりますね。いっしょにお仕事をする期間が長かったので、ただの共演者といった関係ではないと自分は思っています。

ファンとの交流も思い出に

――ご担当されたキャラクターの印象に残っているシーンやセリフなどがあれば教えていただけますか?

金月エンディングの告白のシーンのセリフは、いろいろな場面でリクエストされることが多くて、いまでも覚えています。セリフだと、「あなたと幼なじみだっていうだけでも嫌なのに」と、「いっしょに帰って噂とかされると恥ずかしいから」っていうのが好きです。

鉄炮塚朝日奈さんは流行に敏感な女の子だったので、「超ラッキー」みたいな当時の若者言葉をたくさん言ったのを覚えていますね。「電車がモロ混みで遅刻しちゃった」とか。電車が混んでも遅刻はしないでしょって自分でツッコミながら演じていた記憶が(笑)。ファンの方からは、朝日奈さんらしいこういったセリフを言ってくださいと言われることが多かったですね。

――現在と比べると、キャストの皆さんとファンの方との距離感も近い印象があります。

金月実際の物理的な距離も近かったですね。

鉄炮塚キャラバン中は、同じ移動方法で会場から会場に移動されるファンの方もいて、ちょっとしたタイミングでお話しさせていただいたりといったことも多かったですよ。

――当時のファンは男性のほうが多いですか?

鉄炮塚そうですね。男性のほうが多かったですが、女性もいましたよ。最近になって「中学生のころすごくプレイしていたんです」という方によくお会いします。「いちばん最初に結ばれたのが朝日奈さんなんです!」ということもけっこう言ってくださいますね。

――ゲーム的なお話で申しわけないのですが、朝日奈さんは攻略が比較的簡単なヒロインなんですよね。

鉄炮塚それもよく言われます(笑)。出会うのも簡単で、告白されるのに必要なパラメーターもやさしめなんですよね。

――ちなみに、『ときメモ』ファンのことを“メモラー”と呼んだりしますが、当時からこの愛称は使われていましたか?

鉄炮塚使われていましたよ。当時はアムラーとかシノラーとか、○○ラーという言葉が流行っていたので、わりと浸透するのは早かったと記憶しています。

――懐かしい(笑)。ご自身が演じられたヒロイン以外で、好きなキャラクターはいますか?

金月ゲームの発売後に『ときメモ』をプレイしていたら、如月未緒ちゃんのことがすごく好きになりました。高校生の私なら彼女と友だちにならないだろうなと思うんですけど、『ときメモ』をプレイするときの“自分の中の男”が彼女をすごく好きになったみたいで(笑)。それ以来、同じキャストの仲間ではあるのですが、如月未緒役の関根明子さんとお会いできると、いちファンとして幸せでうれしい気持ちになります。

鉄炮塚私は古式さんかな。古式さんと朝日奈さんはペアになることが多くて、そばで黒崎彩子さんが演技しているのを見ていると、「古式さんいい子だな」って。

自分を変えてくれた『ときメモ』

――藤崎詩織は、本人として歌手デビューをしたりと、こちらも当時は珍しい展開や活動をされてきましたよね。

金月そうでしたね。詩織ちゃんがバーチャルアイドル藤崎詩織としてデビューするというとき、渋谷に大規模な広告がバーって貼られていたりして。当時はアイドル業界のことは詳しくなく、「こういったことをするんだな」程度にしか思っていなかったのですが、いま考えたら、新人アイドルだったらめちゃくちゃうらやましいと思うようなプロモーションをしていましたね。『ときメモ』は本当にすごいゲームで、それに関われてありがたいなって思います。

――金月さんにおうかがいしたいのですが、2018年にアーケードで稼動した『ボンバーガール』で、久しぶりに藤崎詩織を演じられましたね。

金月そうなんです。『ボンバーガール』の詩織ちゃんのセリフは懐かしいものばかりで、『ときメモ』を好きなスタッフの方ががんばって考えてくれたんだろうなって思いながら収録しました。

――すべて新規収録したボイスなのでしょうか。

金月すべて録り直してますよ。ゲーム中のグラフィックもいま風にアレンジされている部分があって、愛してくださっているんだな~って感動しました。

――収録の模様もかなり楽しそうですね(笑)。

金月楽しかったです。収録ブースの向こう側でスタッフさんが声を聴いていたのですが、用意されたセリフを私が言うたびにスタッフさんが喜んでくれているのが見えて、それもおもしろかったです(笑)。

――ここまでのお話しを聞くと、おふたりともキャリアの転機になるようなさまざまな経験を『ときメモ』でされてきたんだなと感じます。25年前を振り返ってみて、いかがでしょうか。

鉄炮塚鉄炮塚葉子という名前をたくさんの人に知っていただけたのは、本当に『ときメモ』のおかげだなって感謝しています。

金月私は本当に人生が変わりました。

鉄炮塚もう25年前になりますが、ご縁があって『ときメモ』に関わらせていただいて、すごく貴重な経験ができました。仲間ができて、役者としての自信にもなりましたし、いっぱい応援してくれる人がいて……。ステキなことがいっぱい詰まっている宝箱みたいなゲームです。一期一会のすごい出会いができて、本当にうれしかったなって思っています。

金月じつは私、詩織ちゃん役が決まる前に、もう声のお仕事を辞めようと考えていた時期があったんです。でも、『ときメモ』のおかげでまた役者のお仕事をできるようになりましたし、大好きだった歌をCDにして出させていただけました。私がいま現在も、こうやって役者をできているのは、本当に『ときメモ』があったからこそだと思っています。

――我々ファンも、『ときメモ』とそのキャストの皆さんに出会えて本当によかったと思っています。そのファンの方々に向けて、最後にメッセージをお願いできますでしょうか。

金月『ときメモ』をずっと応援していただいてありがとうございます。私たちも皆さんも、きらめき高校を卒業した同窓生です。いつかまたどこかで、同窓会ができたらいいなと思っています。同じ青春を過ごしてくださってありがとうございます。

鉄炮塚私からも、『ときメモ』をずっと応援してくださってありがとうございますとお伝えしたいです。一時期「生きているのか?」と思われていた方もいるかもしれませんが、いまも元気に活動しております。どこかで皆さんと同窓会できたらいいな。これからもよろしくね。

金月たぶんファミ通さんが同窓会を企画してくれると思いますよ(笑)。

鉄炮塚本当に?(笑)。

 おふたりのそんな反応を受けまして、同窓会……ではありませんが、金月さん、鉄炮塚さんおふたりの“中の人ゲーム実況”という番組をさせていただきました! 視聴者のコメントに応えながら名ゼリフを生で言っていただく、そんなおふたりが出演する番組(下記)をぜひご覧ください。