カプコンが2019年7月12日に、本社ビルでeスポーツへの取り組みに関する記者説明会、そして初のeスポーツ社内大会“カプコン カンパニー カップ2019”の決勝戦が行われた。ここでは、記者説明会についてリポートしていく。

 カプコンは、eスポーツが年齢、性別、対格差などを問わずに誰もが競い合える“未来のスポーツ”になると注目しており、新たなエンターテインメントとして社会に根付くよう、長年eスポーツ振興の推進に努めている。2022年にはグローバルで17億ドルを突破すると予想されているeスポーツ市場において、カプコンは昨年度からeスポーツ専門部署を設置し、“ストリートファイターリーグ”を国内で開催するなど取り組みを強化している。

 説明会では、初めにカプコンの常務執行役員 経営戦略室室長の荒木重則氏が2018年度のeスポーツへの取り組みを解説。

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常務執行役員 経営戦略室室長 荒木重則氏。

 2018年度は“CAPCOM Pro Tour”と呼ばれる大会を世界で開催しており、上位32名による決勝大会が年末に“カプコンカップ2018”としてアメリカのラスベガスで開催。また、日本では全国6都市で新人発掘を目的とした大会を開催するほか3対3の団体戦も行ってきた。世界では個人戦が主流だが、日本では個人戦、団体戦を行っていたことが説明された。2019年度では“ルーキーズキャラバン”で6都市の個人戦を開催するほか、“アーケードリーグ”、“学生リーグ”も開催。勝ち上がった選手たちは、プロライセンスを持つトッププレイヤーをチームリーダーとした3人のチームを組みリーグ戦を行う。そして上位に選ばれた2チームは、米国リーグ上位2チームとの“日米リーグ最終決戦”を開催するなど、最終的に世界で活躍できる環境を作るのが目的だ。

 また、新たな取り組みとしてアジア7ヵ国で選抜戦を開催し、上位3チームを日本に招待。日本を含む4ヵ国でトーナメントを実施するなどの“カプコンプロツアーアジアプレミア”も発表された。

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 続いて、『ストリートファイター』シリーズ プロモーションプロデューサー兼eスポーツプロデューサーの綾野智章氏から、eスポーツを通して見えてきた課題、そしてインナーコミュニケーションツールとしてeスポーツがどれほど活用できるかについて語られた。

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『ストリートファイター』シリーズ プロモーションプロデューサー 兼 eスポーツプロデューサーの綾野智章氏。

 まずは、カプコンとeスポーツについての歴史を紹介。1991年にゲームセンターで『ストリートファイターII』が稼動してから半年後、国技館で初めての全国大会が開かれた。2000年代に入っても『ストリートファイターIV』で全国大会を行っており、2013年からは『ストリートファイター』25周年を記念し、カプコンカップを開催。翌年からは世界中を予選の舞台として現地コミュニティを活用し、世界で通用するeスポーツ大会のブランドを確立した。これらの歴史の積み重ねが花開き、ビジネスの市場として考えられるようになったと綾野氏は語る。

 現在は、eスポーツに関する問い合わせも多いようだ。また、これらのイベントは東京に集中しているイメージがあるが、実際は各地域からeスポーツのイベントを行いたいという声も多く、カプコンは地方で開催されるイベントにも力を入れていく方針を語った。しかし、現状ではまだ課題もある。賭博や景表法、風営法などに抵触しない必要があるため、賞金つきの大会を簡単には行えないという点だ。カプコンとしてもっとも重要と認識していることは、参加する選手の安心、安全性。これらの施策として、視認性、安全性の高い公認証の発行も考えているとのこと。

 続いて、2019年7月5日に行われた“CAPCOM COMPANY CUP 2019(予選)”社内eスポーツ大会の様子が動画と併せて解説された。そこには参加者47組141名が、プレイステーション4版『ストリートファイターV AE』の対戦を通じて熱気に包まれる様子やプレイに一喜一憂する姿が。

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 綾野氏は、eスポーツは社内の結束にもつなげられると感じており、若者との親和性が高く、体力的な年齢差が出にくいため、幅広い年齢層への取り組みが可能な点、そしてゲーム機があれば実施できるという手軽な環境などから、eスポーツを福利厚生の選択肢のひとつとして提供できるよう、これまでカプコンが社内で行ってきたeスポーツの活用をノウハウを提供し広めていきたいと語った。ちなみに、2019年3月15~17日に大丸有で開催された“e-Sports Festival”で『ストリートファイターII』を利用した企業対抗戦では、全39社が大会に参加。大手町、丸の内、有楽町地区の企業間コミュニケーション促進に活用されるなど成功を収めた。社内だけでなく、企業間のコミュニケーションとしてもeスポーツは活用できるだろう。

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 最後に荒木氏から、eスポーツのビジネス構造を解説。これまでのゲームの販売は一般ゲームプレイヤーに向けたものだった。しかし、一般プレイヤーよりも卓越した技術を持つアマチュアやプロゲーマーが生まれてくると、その人たちのプレイを観たいという視聴者が生まれるため、ゲームの枠に留まらないスポーツ的な要素が発生する。ここで、大会を開催するイベント興行や映像を放送する配信会社、そしてスポンサー企業などが加わってくるという形だ。ほかにもインフラ企業や地方自治体、学校も関連性が高い。

 具体的には、地方から「ゲームのイベントを行いたい」という声を頂いたときは、集客をするための仕組みをお願いする。たとえば町内会ならば、イベント開催をチラシを配ったり放送するなどして多くの人に知ってもらうこと。また大会を盛り上げるため、司会者を用意したり、見ている人にゲームを知ってもらうためゲーム内容を紹介する枠を設けるなどという施策。最後に配信をすることで、足を運べない方たちにも観てもらう。これらを仕組化しつつ、カプコンがサポートしていくという展開を発表。eスポーツを一過性のブームとして捉えるのではなく、経済に発展させる形で進めていく狙いだ。

 質疑応答では、「実際にゲームを使ったイベントを行いたい場合はどのようにすればいいのか?」という問いに、綾野氏はカプコンが簡易的なウェブホームを作成し、「大会を行いたい」、「『ストリートファイター』を使ったイベントを行いたい」などを入力してもらえれば、カプコンが迅速に対応する仕組みを説明。その場合は、視認性の高い認証マークのようなものを発行することも考えているとのこと。たとえば認証番号をカプコンのサイトで入力することで、安全なイベントであるか把握できるようなシステムだ。「社内大会が、どう経済につながるのか?」という問いには、荒木氏が回答。インナーコミュニケーションについては、ビジネスとして捉えるのではなく、あくまで社内間のコミュニケーションツールとして使ってもらうのが目的とのこと。

 いずれは利益を求める形を作りたいが、現段階ではeスポーツとしての楽しさを広めていく段階だと認識しているので、ぜひ社内でゲームを利用したイベントなどを行って欲しいと伝えていた。必要であれば、綾野氏がインナーコミュニケーションの司会として足を運ぶという話も。この記事を読みeスポーツが気になった企業・団体は、ぜひゲームを使ったイベントを企画してみてはいかがだろうか?

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