『メゾン・ド・魔王』を手掛けたことで一躍有名になったインディーデベロッパー・プチデポットの最新作『グノーシア』が、プレイステーション Vita用ダウンロードソフトとして2019年6月20日に発売されました。価格は2480円[税込]。

 本稿ではアナログゲームの『汝は人狼なりや?』(通称:人狼ゲーム)をベースにしたSFアドベンチャーである本作の評価・感想をお届けします。

ちょっとした空き時間にプレイできるSF人狼ゲーム

 本作は、宇宙船の中に紛れ込んだ人間を襲う未知の敵“グノーシア”を見つけるアドベンチャーゲームです。

 人狼ゲームを題材にした内容で1度のプレイが短くて3分、長くて15分程度で終わるのが特徴です。ちょっとした空き時間にプレイできるのが魅力となっています。

 とはいえ、同じことの繰り返しというわけではなく、先が気になるような仕掛けもたくさん用意されています。

ドラマチックな戦いになることもあれば、あっさり負けて終わってしまうことも……。

 舞台は漂流する宇宙船の船内。その中には人類の敵・グノーシアが紛れています。1日につきひとりずつ人間を襲っていくグノーシアを排除するため、プレイヤーは船員たちと議論を重ねて、もっとも疑わしい人物をひとりずつコールドスリープしていくことになります。

 グノーシアに勝利したり、人間の数が減ってグノーシアに敗北したり、途中で自分がコールドスリープされたりして、戦いが結末を迎えると世界がループ。配役やキャラクターの組み合わせが変化し、新たな議論が行われることになります。

 最後まで人間側としていっしょに戦ってともに勝ち残ったメンバーが、つぎのループではグノーシアになっていてあっさり裏切られてしまうなんてことも。「あんなにいっしょにがんばった仲間なのに裏切られた……!」と悔しくなりますが、負けたときの悔しさも本作の醍醐味です。

ループによって役職が変わるので、キャラクターのいろいろな一面が見られます。

キャラクターの個性がしっかりしており、本当に対人戦をしているかのように錯覚!

 ループによっていろいろな立場で人狼に参加することになるキャラクターたちですが、根幹にある性格はしっかり固定されているので違和感がありません。AIもそれぞれの性格に則って行動するので本当に人間と人狼ゲームを遊んでいるような錯覚に陥ります。

 たとえば、“しげみち”という宇宙人のような外見をしたキャラクターはウソが下手なのが特徴。グノーシアだと疑われたりすると話題をはぐらかすのですぐにバレてしまいます。

 自分が人間側だったら「ラッキー」とか「ざまーみろ」ですむのですが、同じグノーシアだった場合は彼の失敗に「やりやがったな……」とイラつくこともしばしば。まぁ、ループをしていくうちに「これがしげみちというキャラクターなんだな」ということがわかってきて、生温かい目で見守れるようになります(苦笑)。

 また、“SQ”というキャラクターも特徴的。感情で動くタイプで、ロジックよりも人間の好き嫌いで投票することが多いです。人間側だと確定している役割“留守番”のキャラクターをグノーシアとして指名することなどもあり、「もうちょっと冷静になろうよ!」と言いたくなります。そんな彼女だからメンバーからの反感を買ってすぐに吊されることも多く、本物の人狼ゲームらしいと感じます。

 もうひとりおもしろい例を挙げるとすべての能力が高く、女王様のような性格の“夕里子”。まるでラスボスのような風格をした彼女はふつうのゲームだったら最後まで残るようなキャラクターですが、冷たく突き放すような性格や味方にいても敵にいてもやっかいそうな感じからか序盤ですぐに吊されることが多々あります。どんなにカリスマ性が高かろうが、数の暴力には勝てない……そんな社会の縮図を見ているようでおもしろいです(笑)。

役職の名前はオリジナルですが、ルールは人狼ゲーム。ループを続けるうちにプレイヤー自身の立ち回りもうまくなっていき、自然と人狼ゲームのセオリーなどを覚えていくことができます。

 そんな個性的なキャラクターたちの織りなす連鎖反応的な展開も見どころ。しげみちのようなわかりやすいグノーシア役に気を取られて、あまり積極的に発言しない“ジナ”がもうひとりのグノーシアだと気付いたときにはもう遅かったりと、毎回ランダムゆえのドラマが生まれます。人狼ゲームでいうところの狂人にあたる“AC主義者”や狐にあたる“バグ”などもいるので、歯ごたえのある戦いが楽しめます!

 グノーシアだったときに後半でエンジニア(占い師)を騙ると、それまでの占い結果はCOMが勝手に作ってしまうなど、ガチの人狼プレイヤーからするとスリルが足りなかったり物足りない部分もあると思いますが、ふつうに楽しむぶんには十分に問題なく遊べます。

ループの中で少しずつ明かされる謎に引き込まれていく!

 単純にグノーシアを見つけてクリアーというわけではなく、ループする世界の謎も本作の重要な要素。人狼シミュレーションとしてはもちろん、ループもののアドベンチャー、SFモノのストーリーとしてもしっかり楽しめるようになっています。

 ループものというと、いろいろな伏線が用意されていて後半にドバッと回収されることが多いですが、本作では特定の組み合わせでゲームに挑んだときにイベントが発生し、キャラクターのバックボーンが明らかになっていきます。

 きちんとフラグ管理されているため、いきなり大きな謎が明らかになることはありませんが、「関係なさそうなこのキャラクターとこのキャラクターにこんなつながりがあったのか!」、「なぜ人間の勝利条件を満たしたのにこのキャラクターはこんな行動を取るの!?」というふうにひとつひとつワクワクする内容になっています。

プレイを進めることで世界の謎が少しずつ明らかになっていきます。
キャラクターや舞台の設定が少しずつ明らかになるのですが、その小出しのしかたがうまく先の気になる作りになっています!

 また、ゲームを進めることでキャラクターとのイベントが発生し、彼らの素顔を知ることも可能。ループをくり返しながら彼らのプロフィール欄(乗員データの特記事項)を埋めるのも楽しみのひとつとなっています。

 ちなみに特記事項が埋まるとキャラクターのステータスが上がり、ゲームの難易度も上がっていく仕組み。ちゃんと物語とシステムが噛み合っているのでプレイしていて楽しいです。

メインストーリーやキャラクターのイベントが随所に挟まるので、単調なプレイになりません。特記事項を埋めるのも本作の楽しみです。

自分のパラメータによってゲームの立ち回りも変わってくる!

 ゲームは“疑う”や“かばう”といったコマンドを選択して進めていきます。アナログの人狼ゲームでは基本的にゲームを進めるマスターが必要ですし、そのマスターもルールを間違えてしまうこともあるため、本作のように自動的にゲームが進行していくのはありがたいです。

 最初は選べるコマンドも少ないですが、物語を進めることでコマンドが増えていき、できる行動も増えていきます。不用意な発言をしたり黙ったりしたままだと怪しまれてしまうので、周囲の空気を読むのも重要です。

 1日の終わりに選んだ人物がグノーシアかどうか調べる“エンジニア”やふたりセットで生き残っていると乗員(能力を持たない普通の人間)だと確定できる“留守番”といった特殊な役職を事前に選んでプレイすることもできます。もちろんグノーシアやグノーシア側の人間である“AC主義者”などでもプレイ可能で、グノーシア側でないと発生しないイベントも存在します。

役割を自由に設定してゲームを楽しむことができます。
グノーシア側になることで見えてくる真実もあります。すべての謎を解き明かすのが目的です。

 本作が通常の人狼ゲームと違っておもしろいのは、勝つだけではなくさまざまな条件を試して、イベントを探しながら物語の真相を暴いていくことも重要なところ。早々に“留守番”が判明したとき、ほかの全員がコールドスリープすることを決意するなど意外な展開も多く、そういったイレギュラーなときに新たな謎が判明したりすることも多いです。

 そのため、人狼ゲームのシミュレーターとしてもすばらしいですが、それだけではない魅力も併せ持っています。キャラクターたちも個性的で彼らの秘密を知りたくなり、それもプレイの原動力になります。

 ゲームを進めると“イベントサーチ”という機能が解禁されるのもポイント。これはイベントの起きる組み合わせを教えてくれる機能で、かなり便利。とにかくストーリーが気になるという人は“イベントサーチ”を頼りにプレイしていくといいでしょう。

不自然な行動を取ると一気に疑われてしまいます。

 キャラクターが個性的とお伝えしましたが、すべてのキャラクターには“ロジック”や“かわいげ”、“直感”といったパラメータが存在し、このパラメータによって行動が変わってきます。

 パラメータが存在するのはプレイヤーも同様。各ゲーム終了時に手に入れた経験値を各パラメータに割り振ることが可能なので、RPG的な成長要素も楽しめます。

 高い“カリスマ”でほかのキャラクターの意見を誘導したり不利な状況を“かわいげ”で乗り切ったりと、さまざまなロールプレイを楽しむことができます。自分は最初のほうは“かわいげ”だけを上げて吊られないようにがんばっていたのですが、おなじく“かわいげ”の高いシロイルカの“オトメ”に投票で負けてしまってからは、かわいげだけでは最後まで生きていけないことに気付きました。

 それからは“ロジック”を上げて、みんなの意見を統一して自分から誰かを吊る流れを作ってがんばっています。とはいえ、自分自身の予想が外れていることも多く、みんなの意見を統一しておきながら自爆してしまうことも多いです(笑)。

 また、ほかのキャラクターもループをくり返すごとに(正確には特記事項を埋めるたびに)能力値が上昇し、自分へのヘイトを減らす“雑談する”などさまざまなスキルを使ってくるようになるため、絶えず歯ごたえのある戦いが楽しめるようになっています。その点も本作が飽きないポイントになっています。

性格が悪かったり立ち回りが下手だったりするせいでコールドスリープされやすいキャラクターたちも。仲間のときは彼らを庇うことも重要になってきます。組み合わせによっても戦いかたが異なるので何度遊んでも楽しい!
中盤になるとスキルを使って場を支配しようとしてくるため、より戦略的なプレイが必要になってきます。

PS Vitaを引っ張り出してでもプレイしてほしい!

 魅力的なキャラクターやストーリー、何度も遊びたくなるゲーム性など多彩な魅力を持った本作。「AIと人狼ゲームをして楽しいの?」と思っている人もいるかもしれませんが、ちゃんとひとりでも楽しめるようにさまざまな導線が引いてあるので安心して楽しめる作りになっています。

 個人的にはボイスがないことが少し残念ですが、ボイスがないことでテンポよく進めることもできるため、そこは一長一短なのかなと。すでに生産終了してしまっているPS Vitaオンリーというのもネックですが、値段も安めですし、多くの人にプレイしてもらいたい作品です。このレビューを読んで気になったら、ぜひダウンロードしてみてください。