『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の世界を舞台に、実在する親子とのあいだで起きた感動のエピソードが語られる『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』が、2019年6月21日に全国で公開される。これに先立ち、東京・日比谷の映画館にて先行鑑賞会が実施。会場に集結した約500名の現役プレイヤーは、注目の話題作をひと足先に堪能するとともに、『FFXIV』プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏との交流も楽しんだ。

会場のTOHOシネマズ日比谷は、地下鉄の日比谷駅から直結の好立地。

 本記事では、『FFXIV』を長年取材してきた古参記者から見た『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』のリポートをお届け。むろんネタバレを排除してお伝えする。

テレビドラマ版を知っているほど楽しめる

 テレビドラマ版を毎週欠かさず視聴してきた記者が今回の映画を観た感想をひと言で表すと、“根幹のストーリー以外はほぼ別物”というもの。シナリオを“知っていても楽しめる”ではなく、“知っているとより楽しめる”作りになっていた。

 もともと約1ヵ月半にわたり放送されたテレビドラマを、2時間ほどの尺の中に収めてあるので、厳選されたひとつひとつのエピソードがコンパクトにまとめられている。物語がテンポよく進むので、冗長さを感じることなく物語に引き込まれた。

 また、配役が一新されたことで、物語全体の趣もひと味違うものになっている。主人公アキオ(マイディー)と父親の暁(インディ)の、“過去のわだかまり”から生じる微妙な心の距離感を、坂口健太郎と吉田鋼太郎が絶妙な演技で表現。かなり早い段階からこの親子に感情移入できたため、その後に展開されるストーリーがグサグサと心に刺さった。

 加えて、テレビドラマ版から家族構成が一部変更されており、それに関連して登場するエピソードはオリジナルの内容。詳しい説明は避けるが、山本舞香演じる岩本美樹(マイディーの妹)が加入したことで、父と息子の心情の移ろいがより深くまで掘り下げられており、それが物語の結末にさらなる味わいをもたらしている。

 個人的にもっとも心に残ったのは、やはりラストシーン。テレビドラマ版から、いい意味でのアレンジが加えられているのだ。その場面を目の当たりにした記者は、思わず「なるほど、そうなったか!」と膝を打った。抽象的な表現で恐縮だが、結末自体はそのままに、より多くの人が納得できる形にストーリーが着地しているように思う。もちろんそれは、人によって意見が分かれるというタイプのものではない。個人の主観だが、この結末を知るためだけでも映画館に足を運ぶ価値があるように感じた。

 映画には“人々に伝えたいメッセージ”が存在するとよく言われるが、今回の作品はそうしたところをじつにストレートに表現している。そのメッセージとは、“MMO(多人数同時参加型オンライン)RPGというジャンルの魅力をより多くの人に知ってもらいたい”という強い願いだ。アキオがゲーム内の仲間たちと楽しく会話する場面や、カタブツ人間の暁が興奮の面持ちでバトルに熱中するシーンの端々に、それを伝えようという思いがヒシヒシと伝わってくる。原作者のマイディーさんはもちろんだが、『FFXIV』の制作総指揮を執る吉田氏もきっと同じ思いだったのではないか。6年以上も同氏へのインタビューを重ね、その思いの詰まったコメントを幾度となく記事にしてきた私は、そう感じずにはいられなかった。

 結論。本作のプレイヤーは、『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』を映画館で鑑賞したほうがいい。きっと、テレビドラマ版をはるかに超える感動が味わえるはず。その際は、なるべく『FFXIV』未経験者を誘うのがオススメ。今回の映画を楽しんだその人も、きっとMMORPGというジャンルの『FFXIV』に興味を抱いてくれるに違いない。仲間を多く増やせば、そのぶんゲームの世界で暮らす楽しみがアップすることを、皆さんはよくご存じのはずだ。

 一方で映画をきっかけにMMORPGに興味を持った方は、ぜひ実際にプレイして、“どこか別の場所で暮らす誰かとモニター越しに語り合うワクワク感”を味わってほしい。この感覚を知らないままでいるのは、個人的には損だとさえ思う。『FFXIV』には、レベル35まで時間無制限で遊べるフリートライアルが用意されているので、いますぐにでもお試しプレイが可能だ。

映画館の巨大スクリーンで『FFXIV』をプレイ!

 『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』の先行上映会を終えた後は、吉田直樹プロデューサー兼ディレクターがプレイヤーとユル~く交流する、“吉P散歩”のスペシャルバージョンが開幕。今回はGaiaデータセンターのTiamatワールドを舞台に、次元の狭間オメガ零式:デルタ編/シグマ編/アルファ編のそれぞれの4層に挑戦。吉田氏の募集に応じて参加した光の戦士たちとともに、『紅蓮のリベレーター』で追加された高難度レイドダンジョンを順番にプレイしていった。

先行上映の終了後に、吉田氏(左)とグローバルコミュニティプロデューサーの室内俊夫氏(右)が登壇。
吉田氏は今回の映画について「すごく作品としての完成度が高いです。大スクリーンで観たらグッと(熱いものが)こみ上げてきました」と述べていた。
サウンドディレクターの祖堅正慶氏(写真中央)もイベントに参加。
時間の都合上、次元の狭間オメガ零式:アルファ編の4層は前半戦のみの攻略となった。

 映画館の巨大スクリーンに『FFXIV』が映し出されると、あまりの迫力に思わず息をのむ。視界に収まらりきないほど大きな画面が眼前に広がると、自分自身がバトルフィールドに迷い込んだかのような気分になれるのだ。スクリーンの端にあるユーザーインターフェースを確認する際に少しだけストレスを感じたが、それを差し引いてもあまりあるほど、ボスを中心とするキャラクターの動きにダイナミズムを感じた。

ステージに立つ吉田氏と周囲の表示類を見比べれば、スクリーンの大きさがよくわかる。画面の迫力に圧倒された来場者の一部は、イベント開始当初、しばらくのあいだ言葉を失っていたほど。

 「自分もこの大画面でプレイしてみたい」。そう思いつつ、うらやましげに吉田氏へ目を向けてみた。すると、同氏が熱い視線を注いでいたのは、巨大スクリーンではなく机上に置かれたノートパソコンのほうだった! この日のイベントの目的は、あくまでも来場者に『FFXIV』を巨大スクリーンで楽しんでもらう点にあるので、吉田氏はごくありふれたシチュエーションで本作をプレイすることになったのだ。ありがたい配慮だけれど、ちょっともったいない!

 吉田氏からすると、その“日常感”が功を奏したのか、高難度レイドの攻略はいたってスムーズ。当日行われた6戦のうち、全滅はわずか1回(前半戦突破直後の意図的な壊滅は除く)。黒魔道士で参加した吉田氏は「かなりミスしていますよ」と述べつつも、手際よくボスのHPを削っていった。

 あまりにも滞りなく攻略が進みすぎたせいか、場内に巻き起こる拍手の意味合いがしだいに変化。ナイスプレイのときだけでなく、吉田氏がミスして戦闘不能に陥ったときにも、バトルの盛り上がりを期待するファンから歓声が上がるようになったのだ。予期せぬアウェー状態に吉田氏は苦笑いするも、冷静さはまったく失わない。「好きなお菓子の種類は?」や「使っているシャンプーの銘柄は?」など祖堅氏の言葉による妨害(?)も跳ね除け、強敵をつぎつぎと撃破! 同氏の腕前もさることながら、攻略に参加したメンバー(とりわけヒーラー)の判断力の高さが際立っていた。

 そうして“吉P散歩”は無事に閉幕。来場者へのサービスとして、坂口健太郎と吉田鋼太郎が登場する『FFXIV』の最新CMと、『漆黒のヴィランズ』のオープニングトレーラームービーが巨大スクリーンで披露された。最後に吉田氏と祖堅氏が感謝のコメントを述べ、“劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん上映会+出張吉P散歩 in 日比谷”はお開きとなった。

この日に上映されたトレーラームービーは、劇場向けの5.1chサラウンドを使用。サウンドチームによる調整が加えられたスペシャルな音響表現に、来場者たちは酔いしれた。

祖堅氏コメント(要旨):
 まもなく『漆黒のヴィランズ』が遊べるようになります。拡張パッケージは新作RPG1本ぶんくらいのボリュームがあるので、ぜひ最後まで、そして細かいところまで見て楽しんでいただければと思います。本日会場に集まってくれたみなさんは、いつもより大きな音量でプレイしてください!

吉田氏コメント(要旨):
 『漆黒のヴィランズ』発売前のPRは、これでようやく、いったんすべて終了します。明日は久しぶりのお休みなので、自分のアカウントで『FFXIV』をプレイしようかなと。今回の拡張パッケージにはさまざまな変更点がありますし、数多くのコンテンツも用意されています。そして何より、一生懸命、開発チームが一丸となって作った最新の『FF』ストーリーがみなさんを待ち受けています。いろんな衝撃があるかと思いますが、焦らず、ご自身に合ったペースでじっくりとシナリオを楽しんでいただけるとうれしいです。今日は本当にありがとうございました!