自由気ままな牧場生活が楽しめる『牧場物語』と、『ドラえもん』のハートフルな物語が展開する本作のレビューをお届け。

 2019年2月に発表された『ドラえもん のび太の牧場物語』のニュースには激震が走った。どちらもよく知っているけれど、この組み合わせは予想だにしなかったからだ。そんな話題騒然の注目タイトルが、2019年6月13日に発売された。本作のプレイレビューの前に、まずは『ドラえもん』と『牧場物語』についておさらいをしておこう。

 説明不要かもしれないが、『ドラえもん』は藤子・F・不二雄氏によるマンガが原作。現在も放送中のテレビアニメは今年で40周年を迎える。未来からやって来たネコ型ロボットのドラえもんが、勉強もスポーツも苦手な小学生・のび太の身の回りで起きる問題を、“ひみつ道具”を用いて解決するSFコメディーだ。子どもから絶大な支持を集め、長寿番組だけあって国民的知名度を誇る。筆者も子ども時代はアニメを毎週かかさず観ていたひとりである。

 『牧場物語』は1996年に1作目が発売されて以降、コンスタントにシリーズ作品を発表し続けている牧場生活シミュレーションゲーム。主人公は、作物を育てたり動物から畜産物を生産して牧場を営む傍ら、恋愛をして結婚もできるシステムが人気となっている。なお、筆者は近年発売された『牧場物語 つながる新天地』や『牧場物語 3つの里の大切な友だち』などの完全攻略本のライティングを担当している。

 ファンから長く愛され続けている2作品が、まったく新しいコンテンツとして爆誕したのが『ドラえもん のび太の牧場物語』である。タイトルを聞いた当初、私の脳内は「いったいどんなゲーム内容になるの?」と疑問符だらけだったが、いざプレイを始めてみると、『ドラえもん』はナチュラルに『牧場物語』の中で存在しており、そこには心温まるやさしい世界が広がっていた。

家族の絆を描いたメインストーリー

 オープニングアニメーションが流れた後、物語はドラえもんとのび太が異世界に飛ばされてしまうところから始まる。もちろん、のび太の想い人しずかちゃん、友だちのジャイアンとスネ夫もいっしょ。舞台となる異世界“シーゼンタウン”は広大な自然に囲まれており、町の象徴である大樹はかつて女神が種を植えたという伝説が言い伝えられている。いったい、なぜこの世界に飛ばされてしまったのか? 世界の謎を解き明かし、もとの世界に戻ることはできるのだろうか……。

 この物語の導入を見て「映画みたいだな」と感じないだろうか? 映画版『ドラえもん』と言えば、子どもの付き添いで観に行った大人が号泣してしまうほど感動的なストーリー展開で“泣ける映画”として評判だ。本作もそんな映画版を踏襲するメインストーリーが用意されており、出会う人々との友情と絆、謎を解いていく冒険感といった『ドラえもん』らしさが溢れる体験ができる。

 極力ネタバレは避けたいので多くは語れないが、物語の根底にあるテーマとして“家族”が描かれており、子どもはもちろん親世代の大人にもグッとくる展開が待ち受けている。

 私はハンカチ片手にひとりでプレイしたけれど、もしも親子でプレイできる環境なら“家族”の物語をいっしょに体感することで、感動も2倍増しになるかもと感じた。

のび太がテキパキ畑仕事、でも疲れたらお昼寝

 つぎは、気になるゲームシステムの話に移ろう。もとの世界に戻る方法が見つかるまで、しばらくシーゼンタウンで暮らすことになったドラえもんたち。プレイヤーはのび太となり、「この牧場を好きに使っていいよ」と荒れた牧場を任されることに。しかも敷地内の家でひとり暮らしときた。「のび太はドラえもんいなくて平気なの? 牧場仕事できるの?」と心配になってしまう展開だが、それはプレイヤーのがんばり次第だ。

 さっそく任された牧場の敷地を見渡すと、かなり広大なうえに木と雑草が生えまくり、石がゴロゴロ落ちていて荒れ放題。「これはやりがいがあるぞ~」とおもむろに道具を持って、斧で木を伐り、ハンマーで石を砕き、クワで土地を耕し、カブの種を蒔いて、ジョウロで水をやる。これぞ“牧場1年目春の様式美”だ。牧場回りのシステムは、いままでの『牧場物語』を踏襲しており、何ら違和感ない操作で畑を整備できた。

フィールドはクォータービューが採用されており、畑のマス目はひし形。これは『牧場物語 ハーベストムーン』をモデルにしているという。

 中の人がベテラン牧場主なので、のび太らしからぬ手際のよさを見せつけてしまったが、ひとつだけすごく“のび太らしいな”と感じた行動がある。外ならどこでも昼寝ができるのだ。のび太は“0.93秒で昼寝する”という世界記録保持者であり、この特技は牧場でも遺憾なく発揮される。昼寝をすると体力を回復できるし、けして怠けているわけではない(笑)。

じつは子ども時代は秒で寝るのび太の特技に憧れていたので、この昼寝システムがうれしくて仕方ない(笑)。

ぶっ倒れるまで働き、牧場を大きく開拓する

 序盤は物語に大きな進展がないため、しばらくはコツコツと牧場作業をする日々が続いた。そのときにいちばん困ったのはカバンの小ささだ。収穫をするとすぐにカバンがいっぱいになってしまい、何度も収納箱へ置きにいくはめに。それと金策もたいへんだった。種を買うにも動物を飼うにもお金は必要。

 そこで、私が行きついた序盤オススメのお金稼ぎは、採掘場で鉱石を掘りまくること。ただしこれは過酷な重労働で、無心でツルハシを振るって穴を掘り続けていると体力がゴリゴリ減っていき、気づいたときには病院へ運ばれてしまうため注意だ(マネしないでね)。よい子のみんなは食べ物で体力を回復しよう。

ツルハシとありったけの食料をカバンに詰めて1日採掘場にこもるとかなり稼げる。くれぐれも体力回復を忘れずに。

 そんな苦労を重ねて貯めたお金を握りしめ動物屋でウシを購入し、やっと畜産業も始めることができた。生き物のお世話は毎日欠かせないからたいへんだけど、手をかけたぶんだけ愛情度が深まるから、やっぱり動物はかわいい!

動物はウシ、ヒツジ、ニワトリを飼うことができる。エサの補給と体調チェックは毎日しよう。天気のいい日には放牧すると、さらに愛情度アップ!

 お金に余裕が出てきたら道具のパワーアップをして、作業の効率化を図っていこう。私はまっさきにカバンを大きくした。私が考えた道具のパワーアップ優先順位はこちら。

1位 カバン
2位 ジョウロ
3位 ツルハシ

初期のカバンはアイテム8種類のスペースしかない。大きいカバンは16種類、もっと大きいカバンは24種類のアイテムを入れることができる。

 作業の効率化が進むと畑を広げたり動物を増やしたりして、牧場を開拓していくのが楽しくなってくる。さらに大工屋でフェンスやアーチといったオブジェを作って敷地内を飾れるので、私はSNS映えを意識して公園のようなレイアウトにしてみた。ほかのプレイヤーはどんな牧場を作るのか見てみたい!

公園風牧場のつもりで作ってみたものの、微妙にダサイ。もっとセンスある牧場を見たいから、発売後はSNSで画像検索します。もっと映えた~い!

挨拶は基本、シーゼンタウンのみんなと仲よく!

 ずっと牧場に引きこもっていては物語が進まないので、毎日シーゼンタウンを歩きまわって町の人々に挨拶することを習慣にした。キャラクターには好感度が存在し、挨拶したりプレゼントを渡すことで上がっていく。町の人々は家族ぐるみで店を経営しており、その店の関係者全員の好感度が一定値に達すると、サブストーリーイベントが発生する仕組みだ。

 つまり特定の人とだけ交流しても何も進展しないので、町の人全員と仲よくなるつもりで広く交流したほうがいい。そうすると毎週のようにアチコチの店でイベントが起き、笑いあり涙ありのドタバタ劇がくり広げられる。これがまた「ドラえもんらしいお約束がてんこ盛りだな」と感じるほっこりエピソードのオンパレードで、思わず顔が緩んでしまう。

町長のヤーメイさんが、“精霊よびだしうでわ”を持っていたことが発覚。ほかの“ひみつ道具”も町の人々が持っている可能性が高く、それを確かめるためにも仲よくならなきゃ!

 また、町でお手伝いをしているドラえもん、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫には、毎日会いに行くことをオススメする。彼らの好感度はメインストーリーの進行に大きく関わり、世界の謎を解き明かすにはやはり仲間の友情と団結が必要不可欠なのだ。

しずかちゃんとピクニックに出かけてとてもいい雰囲気。おいしそうな手作りサンドイッチをくれたけど、このあと事件が……。

 なお、手っ取り早く好感度を爆上げしたいなら、相手の好物をプレゼントすることがもっとも効果的。自宅のキッチンで料理を作ってプレゼントできるのだが、“どら焼き”のレシピを手に入れたときは、「ドラえもんの大好物じゃん!」と心躍った。さらに“焼きいも”のレシピも発見したときは「しずかちゃんに渡したら喜んでくれるかな?」とニヤニヤが止まらなかった(笑)。

しずかちゃんが好きな“焼きいも”。でも食べたあとオナラが出やすくなるから、ちょっぴり恥ずかしいらしい(原作のエピソード)。

散らばってしまった“ひみつ道具”はいったいどこに?

 本作では『ドラえもん』の象徴ともいえるアイテム“ひみつ道具”が数多く存在する。「ひみつ道具があるなら秒で問題解決できる?」と思いきや、世の中はそんなに甘くない。ドラえもんがこの世界にやって来たときの混乱で、四次元ポケットの中にあった“ひみつ道具”をぶちまけてしまったのだ。

 そんなわけで、この世界に散らばった“ひみつ道具”をすべて見つけ出すことも本作の目的のひとつ。“どこでもドア”や“タケコプター”などの超有名どころはもちろん登場。ほかにも物語の進行に欠かせない道具、牧場生活を便利にする道具など30種類以上ある。特定の“ひみつ道具”を持っているか持っていないかで、物語の展開が変化する場面もあるので重要だ。

代表的な“ひみつ道具”と言えば“どこでもドア”。扉を開ければ、シーゼンタウンの好きな場所へ移動することができる。

 とくに注目したいのは、町長の家にある“もしもボックス”。これは過去に戻って会話の選択肢を選び直せる道具。こんな便利なものがあるということは……。お察しの通り、選択肢でも物語が分岐することがあるのだ。過去の自分の過ちを正したいときに使ってみよう。

“もしもあのとき違う選択をしていたらどうなるか”を叶えることができる“もしもボックス”。リストからもう1度見たいイベントを選んで、やり直すことができる。1度失敗してもまだチャンスがあるなんて『ドラえもん』らしいやさしさだ。

 ちなみに、私が入手した“ひみつ道具”の中でいちばん感動したのは“ミニ雨雲”。畑に設置すると自動で雨が降る効果がある。毎日毎日ジョウロで1マス1マス水をかけていた日々はもう遠い思い出。文明の利器の勝利だ。

周辺に雨を降らせることができる“ミニ雨雲”。快適すぎて感動ものだけど、物語をかなり進めてからではないと手に入らない貴重なもの。

やり込み要素がいっぱい、でも遊びかたは自由!

 最後は、本作のやり込み要素について。『牧場物語』と言えばアイテム収集のやり込み要素が定番なのだが、それは本作でも健在。町長の家では、虫図鑑や魚図鑑といった図鑑で各種収集物のコンプリート率を確認できる。ただ、近年の『牧場物語』に比べると、アイテムの種類がちょっと少な目かなと最初は感じた。でも実際にプレイしてみると、『ドラえもん』のファンが初めて本作で『牧場物語』のシステムに触れることを考慮すると、このボリュームがちょうど遊びやすいバランスなのだと気づかされる。とはいえ、作物、虫、魚、料理など全部のアイテムをコンプリートしようとすると、かなりの時間を費やしてやり込むことになるだろう。

自然で採取できる生き物は、季節、時間、天気などの要素で出現する種類が変化する。なかなかお目にかかれない激レアな生き物も。

 さらに、やり込み要素は収集物だけに留まらない。ペットや野生動物と交流してサブストーリーを見たり、町で定期的に開催されるコンテスト大会で優勝を目指したり、ここでは書ききれないほどイベントが盛りだくさん。やれることがたくさんあるからこそ、何を目標にして牧場生活を楽しむのかはユーザー次第というわけだ。やり込みはほどほどに、のんびりメインストーリーを進める遊びかただって十分に本作を楽しめる。

 プレイヤーによってスタイルが自由でいいのが本作の魅力なのだから。自由気ままで楽しい牧場ライフを送ろう!