2019年6月1日~2日、京都市勧業館みやこめっせにて開催された、インディーゲームの祭典BitSummit 7 Spirits。コーラス・ワールドワイドよりNintendo Switch版、プレイステーション4版、Xbox One版のリリースが発表されているバリスタ体験アドベンチャーゲーム『Coffee Talk』の開発メーカー・Toge Productions(インドネシア)が体験版をブース出展するとのことで、開発者インタビューを敢行した。
Mohammad Fahmi氏(モハメド・ファーミ)
『Coffee Talk』のディレクター兼ライター兼ゲームデザイナー。今回のBitSummitには本国インドネシアから単身での参加となった。
――BitSummitの会場の雰囲気はいかがでしょうか?
ファーミ世界の中でもっともクールなイベントです!
――そこまでですか!?
ファーミ私はもともと日本のゲームが好きで、『ファイナルファンタジー』シリーズなどの大作からインディーゲームまで楽しんでいます。ただ、日本のインディーゲームは国内の市場向けに作られているものが多く、ウエスタン(欧米圏)に行こうとしているものがないように感じられていました。その点BitSummitは、日本の作品をウエスタンにアピールする最高の場だと思っています。
――ブースで体験版をプレイする人々を見たり接したりしていて気づいたことなどあれば。
ファーミ私は日本語の語彙に乏しいので、感想や質問を話しかけてくれた皆さんにうまく対応できなかったのですが、ゲームプレイを観ていて気づいたことがありました。お客さんには“ゲームのストーリーを楽しむ”、“ドリンク作りを楽しむ”、“ラテアートを楽しむ”という3タイプの傾向があったことです。
――イベント前のインタビュー(※)で、本作を作ろうと思ったきっかけを伺いましたが、やはり“コーヒー”は本作にとって重要な要素でしょうか?
ファーミコーヒーに関しては深い愛着と知識があります。また、私はムスリム(イスラム教の教徒)なのでお酒は飲まないのですが、バーの雰囲気自体は好きです。以前、友人の元プログラマーが日本の北千住にオープンしたゲームバーに行ったことがあるのですが、その時、フランス人客と日本人客のやりとりをたまたま見かけました。フランス人は片言の日本語を話し、日本人はブロークンイングリッシュで話す……というとても興味深いインタラクションも『Coffee Talk』の物語世界を象徴するものになっています。
――そうした“異文化間コミュニケーション”の要素は、ファンタジー世界のキャラクターが混在する独特の物語世界として表現されていますが、あえて“変化球タイプ”を採用した意図は?
ファーミ“特別なもの”を作りたかったんです。ふつうに現代を舞台にしたものを作ってしまうと、単純なものになってしまう。日常的な世界の中で、サキュバスやエルフといったファンタジー世界の住人たちがが人間のために働いている……という世界観は、ちょっと変わっていますよね?(笑) 物語世界内でのさまざまな出来事や問題は、現実世界にもあることを反映させています。そしてその一部は、私自身のストーリーでもあります。
――2Dで表現されたグラフィック世界も特徴的です。
ファーミもともとこの会社(Toge Productions)がピクセルアートを作る知識と技術があったことと、私が『ポリスノーツ』や『スナッチャー』といった小島秀夫作品が好きだったのが大きな理由です。ただ、当時のままに再現するとレトロ調になりすぎるので、現代風のライティングをミックスしています。
――数あるアドベンチャーゲームの中で『ポリスノーツ』などの日本作品が特別だったのはなぜでしょうか?
ファーミウエスタンのアドベンチャーゲームはパズル要素が強いけれど、これらのタイトルはストーリーベースで作られているところがなじみやすかったです。インドネシアは日本の漫画が普及している……という事情もあるので。
――本作のストーリー面で、とくに注目してほしい部分は?
ファーミ部分や要素というよりは、全体を遊んでほしいです。『Coffee Talk』には、異種族どうしの恋人の問題や、サラリーマンとしての会社の問題など、いろいろな立場やシーンでの葛藤を収めています。全編をプレイする過程で「こんな葛藤を抱えているのは自分だけじゃないんだ」と思ってもらいながら楽しんでもらいたいですね。
――ちょっと大人向けのテーマですね。
ファーミ想定ターゲットは22~40歳くらいの社会人です。漫画のジャンルでいうと、少年漫画ではなく青年漫画ですね(笑)。夜、仕事から疲れて帰ってきて、このゲームの雰囲気とテキスト、そしてコーヒーを飲むまったりした感覚を30分ほど楽しんでから就寝してもらえたら、嬉しいですね。