BitSummitで、ファミ通ドットコムが毎年楽しくインタビューさせていただいているソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデント吉田修平氏。そのインタビューの様子は後日お届けするとして、吉田氏が気になるタイトルとしてピックアップしていたうちの1本が、iPad用ソフトの『here AND there』。

 その特徴のひとつが、グラフィックがすべて手描きであること(しかもサインペン!)。『Cuphead』のような……と書くと、いまキャッチーかもしれないが、『here AND there』ではその動きの1枚1枚が、温かいタッチのイラストで描かれているのだ。ただし、ゲーム性という意味においては『Cuphead』とはまるで逆で、『here AND there』では画面上の気になる箇所をタッチすると動きがあり、ある一定の条件をクリアーするとさらなる展開が生まれ……と、ゲームというよりは絵本が動きをもったような、インタラクションコンテンツとなっている。

 本作を作ったのは小光(こみつ)さん。小光さん自身はアニメーション作家で、『here AND there』のもととなるアニメーション作品を作っていて、「ゲームにしたらどうなるのだろう?」と発想したのが、本作を作るきっかけだという。もともと小光さんの影響元が、「1990年代のパソコンのゲームともソフトとも言えないものがいっぱいあった時代のコンテンツがすごく好きということもあって、“触れる絵本”を目指して、こういうゲームを作りました」とのこと。

 すべて手描きで作られた本作に要したのは、「Unityに実装した枚数は7000枚」だというから驚きだ。もののネットの知識によると、テレビアニメ1話ぶんの作画枚数が約3000枚というから、2話以上に相当することになる。

 ちなみに、なぜサインペンで描いたかというと(正確にはコピックというらしい)、「水彩のような温かみが出つつ、アニメーションを描く際にとても描きやすいので、私はよく使用しています」(小光氏)とのこと。

 2018年11月に、iPad向けに無料で配信開始された『here AND there』。BitSummitのようなイベントに出展すると、けっこうダウンロードしてくれるというのは、無料という気軽さもあるかもしれないが、『here AND there』そのものの魅力によるところも大きいのだろう。

 さらに、本作をリリースすることによって、「1990年代のパソコンのアレっぽいよねという話をちょっとずつもらっていて、出会いがあるのは個人的にはとても貴重で、すごいおもしろいですね」という。

 そんな小光さんは、いま新作を制作中なのだとか。『here AND there』と同系統かと思いきや、それがそうではないらしく、『Samorost(サモロスト)』のようなゲームなのだという。『Samorost(サモロスト)』は、チェコの開発会社によるアドベンチャー。同作が大好きだという小光氏は、ポイント&クリックの短いストーリーを考えているのだという。リリース時期を聞いてみると、「これがメドがつかないなあ……(笑)」とのお答えで、本業があるためになかなか手が付かないようだ。もちろん、気長に完成を待ちますとも。

 ちなみに、小光さんの新作『Wander in Wonder』は公式サイトがオープンしています。