楽園のようなイベントを内側から見る
多数のゲーマーを1ヵ所に集めて煮詰めたような、濃厚な3日間のイベントが幕を閉じた。
そのイベントの名は“C4 LAN”。2019年5月10日~12日開催の“C4 LAN 2019 SPRING”で6回目を迎える国内最大級のLANパーティーだ。
LANパーティーとは、オフラインの会場にゲームを持ち寄って遊ぶイベント形式のこと。要するにゲーマーによるお祭りだ。
PC本体やゲーム機を持ち込んで遊ぶ参加者もいれば、ボードゲームやアナログゲームに興じる参加者もいる。プロゲーマーのファンミーティングを満喫する参加者もいる。さらに、スポンサーブースのタイムセールやイベントでゲーミングデバイスを勝ち取る参加者もいる。それだけ多彩な楽しみかたがある。
筆者はC4 LANが好きで、参加は今回で3回目。BYOC席(※)を取ったうえでの参加は2回目となる(C4 LANは椅子とゲーム機やモニターを設置できる自席を取るのが基本なのだ)。
※BYOC:Bring Your Own Computerの略。参加者がPC本体やゲーム機を持ち込むスタイルのこと。LANパーティーの多くはBYOCを採用している。
前回も相当に密度が濃かった。新しい友人との出会いあり、新しいゲームとの出会いあり、話して、笑って、笑い泣きして……とにかくゲーマーとして最高の3日間だった。そして今回のイベントもまた最高の3日間だった。
ときどき「C4 LANってどんなイベントなの?」と聞かれるのだが、ひと言で表現できるシンプルなイベントではなく、この文章を書いているいまも全容をつかめ切れていない。ファミ通.comのミス・ユースケは“ゲームイベント界のキメラ”と表現していた。たしかに、その通りだと思う。
とはいえ、筆者もゲームライターの端くれ。ミス・ユースケは取材メディア視点でのリポート記事を書いていたので、本稿は“C4 LANという巨大なイベントを個人の視点で切り取った体験リポート”という形でお届けしたい。ひとりでもC4 LANに興味を持ってくれる人が増えれば幸いだ。
PCを自分の席にセッティング
開催初日の金曜日、はやる気持ちを抑えきれずにテンション高く会場を訪れ、受付を済ませて自席へと移動する。BYOC席付き参加者のC4 LANは機材のセットアップから始まるのだ。
筆者は現地でゲーミングPC、モニター、ゲーミングチェアをレンタルした。手続きを進めつつ、自宅から持ち込んだゲーム類をPCにインストールしていく。
前回のC4 LANで新しくできた友人もいっしょに入場。彼は自宅からPC本体のほかにプレイステーション4やアナログゲームまで持ち込んでおり、スーツケースにダンボールにとすさまじい荷物の量だった。
と、他人事のように書いているが、筆者もキーボード、マウス、ヘッドセット、Nintendo Switch、アナログゲーム、着替えなどなど……を持ち込むとカバンはパンパン。2泊3日用のスーツケースも一杯になるほど。
搬入やセッティングは少々たいへんだ。だが、これから3日間の過ごしかたを想像するとワクワクするし、ほかの参加者と「僕コレ持ってきたんですよ」なんて話をするのも楽しい。
参加者全員がゲーマーなので共通言語は“ゲーム”。ふだんはできないような濃い会話ができるのは本当に幸せだ。
セッティングが終わると、いち参加者としてのC4 LANがいよいよ始まる。
ステージイベントに参加してもいいし、ひとりで黙々とゲームをプレイしてもいい。大規模オフ会のような一面もあるので、オンラインで出会ったフレンドに会いに来る人もいるそうだ。この自由さが本イベントの魅力。
初対面の人ともゲームで盛り上がる
C4 LANは3日間夜通し開催されている。最後まできっちり楽しむのもいいが、そこまで肩ひじ張る必要もない。
用事があって会場を離れたりしつつも、まずは会場内をブラブラして過ごす。
スポンサーブースはユニークな展示が目立つ。ゲーミングチェアのDXRACERは完全自動雀卓を持ち込み、サイコムはC4 LAN名物となったゲーミング足湯を展開。ドスパラのGALLERIAブースではプロゲーマーのtakomayo選手が『SEKIRO』をクリアするまで帰れません企画を実施し、眺めているだけでもおもしろい。
一般参加者のブースもスポンサーブースに引けを取らないオリジナリティ。
たとえば、MOD PC(※)をずらっと並べて視線を集めるコミュニティがあった。視線を集めると言えば、『機動戦士ガンダムオンライン』コミュニティには全身タイツを着込んでフェイスペイントまでした気合の入った人もいて、別の意味で注目されていた。
※MOD PC:本体の外見を個性豊かにカスタムしたPCのこと。
今回はBYOC“床”というエリアが新設された。ある程度広いスペースを、思い思いに使えるエリアだ。ここがまたおもしろい。
『DEAD OR ALIVE』コミュニティはゲーム機を複数台持ち込んでゲームセンターさながらの対戦ブースを作成。ゲーミングチームのENLIFEはVR体験ブースのようにセッティングしていた。
広いスペースがあるだけに、大きな設備が目を引く。ローカルマルチプレイのゲームに興じていたコミュニティ(ゲーミング蛮族を自称していた)が持ち込んだ65インチモニターには驚かされたし、ストリーミングチームのRADに至ってはミニ四駆のコースを設置。
クリエイティビティあふれる“自分たちなりのC4 LAN”を見せつけられた気分だ。
ちなみに、筆者は友だちをひとり席なしのチケットで招待した。楽しんでもらえるか不安もあったが、杞憂だった。ブースを見たり、ほかの参加者の席でゲームを遊ばせてもらったりすることで楽しんでもらえたようだ。
会場内の散策後は自席に戻り、自分で持ち込んだNintendo Switch用ソフト『Keep Talking and Nobody Explodes』を遊ぶことにした。爆弾を解除する“処理担当者”と解除を指示する“分析担当者”に分かれてプレイするゲームだ。
コミュニケーションが非常に重要な本作。筆者の旧友と前回のC4 LANで新しく友だちになった合計6人で遊んだところ、「あーでもない、こーでもない」と初対面同士でも盛り上がることができた。
10年以上付き合いのある友人でも、今回が完全に初対面でも、まったく変わりなくみんなで楽しめる。そんな空気がC4 LANにはある。
友人が帰るのを見送った後は『ポッ拳』や『DEAD OR ALIVE Xtreme』のステージを見つつ、席でだらだらとゲームをプレイ。深夜はアナログゲームで遊んだり、ほかの参加者とおしゃべりをしたり。
そして朝日が登る頃、C4 LAN3日目朝恒例の『Golf with your friends』がスタートした。本作はギミック満載のコースを攻略する紳士のためのゴルフゲーム。だが、マルチプレイヤーモードでボール同士が当たるように設定すると、お互いの足を引っ張りあうエゲツないゴルフゲームに変化するのだ。
3日目は穏やかにゲームや交流を楽しんだ。せっかくいろいろな人に会えるのだからと、知り合いを見つけては世間話をしている時間が長かったように思う。
魅力というより“魔力”に満ちている
そうこう遊んでいるうちに閉会の儀を迎えてしまった。楽しい時間はすごいスピードで進むもの。始まるまで待ち遠しかった3日間はあっという間に過ぎてしまった。
3日間を駆け抜けて、改めて“ゲーム”という共通語の偉大さを実感した。周りにゲーマーしかいないから、コミュニケーションしやすさが圧倒的。マツコ・デラックスさんの名言(?)「お前らDotaをやれ!」をみんな知っているし、『Apex Legends』や『League of Legends』の話題なんかは鉄板だ。流行りの『Dota Auto Chess』トークもアツかった。
一方で、自分たちの好きな『Quake Champions』やインディーのローカルマルチプレイ専用のゲームの普及活動に精を出す人もいれば、Nintendo 64の『マリオパーティ3』など濃ゆいゲームの話題をしている参加者もいる。プレイしているゲームは違うが、ゲームという共通語は同じなので、話すだけでワクワクが止まらない。
C4 LANはひと言では表現しにくいイベントだ。BYOC席付きの参加者だけでも400人以上、席なしの参加者も含めるとそれ以上だが、参加者それぞれに別の体験、別のドラマ、別のC4 LANがある。この記事はその中のひとりのC4 LANを言語化したものだ。
参加者全員に共通するのは、ゲーマーであり、全力で楽しもうという気持ちを持っていること。ゲームをするときは真剣な眼で、オフのときはキラキラした眼で。日本でゲーマー密度がもっとも高いのが、C4 LANの会場なんだと思う。
この原稿を書いているいまも、思い返すと楽しかった記憶しかない。さすがに3日間フル参加すると30代のおじさんの肉体はバキバキになるし、とんでもない疲労感にさいなまれる。正直なところ、睡眠不足すぎて記憶が薄れているところもある。
それでも、どんなに疲れてもどんなに辛くても、「次回も参加したい!」と思ってしまう魅力を持ったイベントなのだ。ちなみに、仕事で参加できないはずだったひとりの友人は、C4 LANの配信を見ていたら居ても立ってもいられなくなり、仕事終わりに会場を訪れたそうだ。ここまできたら魅力というより魔力である。
(おそらく)日本で最も濃厚なゲーマーのエキスが詰まった本イベント。興味を持ったらまずは遊びに来てほしい。
いきなりBYOC席ありのチケットを取るのはハードルが高いと感じるようなら、席なしのチケットで遊びに行ってみるのもいいと思う。ゲームライターとしてすべてを伝えきれない自分の力不足が恨めしいのだが、体験しないとわからない魔力がC4 LANというイベント内に渦巻いている。それは間違いない。
次回は2019年12月6日~12月8日までの3日間開催。次回もまた濃厚なゲーム体験ができることが楽しみでしょうがない。