ゲーム業界専門の求人サイト“ファミキャリ!”。その“ファミキャリ!”が、各ゲームメーカーの経営陣やクリエイターの方々からお話をうかがうこのコーナー。今回は、エヌシージャパンを訪問した。

“ファミキャリ!会社探訪”第73回はエヌシージャパン

 ファミ通ドットコム内にある、ゲーム業界専門の求人サイト“ファミキャリ!”。その“ファミキャリ!”が、ゲーム業界の最前線で活躍している、各ゲームメーカーの経営陣やクリエイターの方々からお話をうかがうこのコーナー。今回はエヌ・シ-・ジャパン株式会社(以下、エヌシージャパン)を訪問した。
 当コーナーには2度目の登場となる同社は、数々の人気PCオンラインゲームを開発・運営する“NCSOFT”の日本法人として設立され、2016年8月にはスマートフォン専用ゲームの開発に特化したスタジオ“LIONSHIP STUDIO”を新設。また、看板IP(知的財産)の『リネージュ』のモバイル版、『Lineage M(以下、リネージュM)』を2019年5月29日に配信するとともに、完全新規プロジェクトの発表も間近に迫っている。も発表した。そこで今回は、それぞれのキーマンとして、川南巌氏と鈴田健氏に話を聞いた。

川南 巌(かわみなみ いわお)

『リネージュM』運営プロデューサー

鈴田 健(すずた けん)

新規タイトルプロデューサー

『リネージュM』配信開始と完全新規タイトルが間もなくお披露目

――最初におふたりの経歴から教えてください。

川南初めて入った会社がエヌシージャパンです。PCで『リネージュ』をずっとプレイしていたのですが、いろいろあって働かないといけないと思った時にちょうどエヌシージャパンが求人していたこともあり、入社することになりました。入社してからはもう15年ほど経ちました。

――エヌシージャパンさんに入社したのは、好きな『リネージュ』に関わりたかった?

川南いえ、そこまでの熱い思いはなかったです(笑)。働かなければいけなくなり、たまたま好きなタイトルを手掛けていた会社だったから、という印象です。入社してから、最初はゲームマスターサポートをやっていました。

鈴田15年は長いですよね。

川南とても居心地がよくて(笑)。現在は、入社するきっかけとなった『リネージュ』のモバイル版『リネージュM』で、運営面のプロデュースとディレクションをやらせていただいています。『リネージュM』は会社的にも注力しているタイトルなので、とてもやりがいがあります。

鈴田僕は社会人になってからまず広告業界に入り、コピーライターをやっていました。そして26歳くらいのときに、当時のSCE、現在のSIEが行っていた“ゲームやろうぜ”や“PlayStation C.A.M.P!”といったクリエイター発掘企画がとてもおもしろいと思い、SCEの門を叩きました。以降、ゲーム業界でゲームを作らせてもらっています。プレイステーション3用ソフト『無限回廊』シリーズや『rain』でプロデューサーをやらせてもらいました。それからDeNAに転職して、『スーパーガンダムロワイヤル』の開発・運用プロデューサーを担当しました。

 DeNA在籍時、現在のスタジオ長である小川陽二郎と同じ職場になりました。じつは、自分は小川が過去に手掛けていた『AZEL-パンツァードラグーンRPG-』や『PSO』などがとても好きでした。憧れのクリエイターとある日突然いっしょの職場になり、それで意気投合しました。それから小川がDeNAを退職し、エヌシージャパンで新しいスタジオ“LIONSHIP STUDIO”を作ることになったとき、「いっしょにやらないか」と声を掛けてもらい、もちろん「ぜひやります」と答えました。エヌシージャパンに来てからは、約2年半になります。LIONSHIP STUDIOができて半年くらいたったころでしょうか。

――なるほど。経緯は異なりますが、おふたりのゲーム業界歴は、だいたい同じくらいになるわけですね。

川南そうなりますね。2004年か、2005年あたりから?

鈴田その辺の記憶があまり……(笑)。現在はプロデューサーとして、新しいタイトルの開発をしています。

“らしさ”を引き継いでいる『リネージュM』

――まず『リネージュM』から伺います。本作の特徴やおもしろさ、開発状況などについて教えてください。

川南ゲームのベースとして、PC版『リネージュ』があってこその『リネージュM』となります。最近のモバイルMMO RPGはとても便利に作られていますが、『リネージュM』では“キャラクター=プレイヤー自身”という没入感を大切に作っています。ですから『リネージュM』にもオート機能はありますが、わざとほかのタイトルのように充実させて作っていません。やはり自分の手で実際に動かしたほうが効率いいですし、プレイ中の没入感を大切にしています。

――韓国では2017年に配信されています。日本での配信プロジェクトはいつごろからですか?

川南スタートしたのは意外と最近です。PC版『リネージュ』のほとんどそのままのグラフィックで作成されているので、最近のかわいい3Dの女の子がワイワイとしているようなものとはかけ離れています。配信自体をどうしようかと棚上げ状態だった時期もあったと聞いています。というのも、私が参加したのは去年の年末くらいからなのです。

――川南さんにとっては特別なタイトルである『リネージュ』ですが、『リネージュM』の第一印象と、ご自身が実際に参加されることになって、どのような感想をお持ちですか。

川南事業チームに入って5年、PC版の運営プロデューサーを3年やっていたので、いちユーザーとして「『リネージュM』はどんなふうになるのかな?」と興味を持っていました。かなり変わっている部分もあるのですが、それはそれでおもしろくなっています。スマホでもタブレットでもプレイしていますが、プレイ感覚はPC版にかなり近いと思います。最初のころは、スマホでの操作方法の最適化に「なるほど」と新鮮な気分で見ていました。基本的にはこれまで『リネージュ』をプレイしたことのない、幅広い層への訴求を目指しています。最近では、モバイルでもMMO RPGタイトルが増えてきましたが、少し昔のシステムが好きだったといった、かつて『リネージュ』などのMMO RPGをプレイしていた人も楽しめるのではないかなと思っています。

――ファンの方の反応はいかがですか?

川南以前『リネージュ』をプレイされていた方、とくにPC版がサービスインした直後、2002年~2004年あたりにプレイされていた方からは「懐かしい」とSNSなどで反応されているのをよく見ています。変わった部分もありますが、『リネージュ』らしさを感じることができると思います。

鈴田氏が温めてきた新規プロジェクトの発表が間近

――鈴田さんが手掛けているオリジナルIPについて、開発体制はどのようになっているか教えてください。

鈴田パブリッシャーがエヌシージャパン、メインの開発をアクワイアさんに担当していただいています。また、シナリオ、音楽、アートなどさまざまな面で、ゲーム好きな人であれば名前を聞けば「おっ!」と思うような方に参加いただいておりまして、ゲーム内の隅々までギュっと個性が詰まっており、とてもおもしろい仕上がりになりそうです。気になるポイント、好きになるポイントがかなり多くあると思っています。

――プロジェクトはいつごろからスタートしたのですか?

鈴田2年くらいになりますね。小川に「この企画をやりたい」という話をし、この企画とともに入社しました。それがそのまま続いている感じです。小川とも何回かやり取りをして、最初の企画時点では「あんまり」と言われましたが、何度かアタックしているうちに、「いいね」と言ってもらえるものになっていきました。それで入社後2ヵ月くらいのタイミングで、プロダクトの合否を判断する担当者にプレゼンをしたところ、「ものすごくおもしろそうじゃないか」と承認していただき、開発が正式にスタートしました。

――ということは、エヌシージャパンさんに入社以降、ずっと進めていたプロジェクトがいよいよ陽の目を見るわけですね。

鈴田そうですね。本当はもっと早く出したかったのですが、弊社で設定しているクオリティーラインが高くて、それはうれしい悲鳴でもあるのですが、「もともとのアイデアがいいのだから、もっとクオリティーが上がるようにやりきってください」と何度もハッパを掛けられました。正直、自分の中にも「このくらいでいいかな」という甘えがあったのですが、「もっとできるはず」と言われ、その姿勢・考えかたはすばらしいと思いました。クリエイターとしてのやりがいも感じています。

とにかく充実しているNCSOFTの職場環境が理想形

――エヌシージャパンという会社の特徴や強みはどういった部分でしょうか? 開発環境や社内交流など、アピールしたい点があれば教えてください。

鈴田LIONSHIP STUDIO自体は、それほど多くのゲーム開発を手掛けてきたわけではありません。一貫して言えることは、韓国のNCSOFT本社や『リネージュ』開発チームと同様に、“クオリティーファーストであること”です。開発スケジュールよりも、クオリティの方が優先されることがよくあります。『リネージュ』もアップデートに数年かけていることがありますよね?

川南そうですね。大型アップデートの場合、そうなることもあります。

鈴田ユーザーにとって何がベストなのかをつねに考え、後世に語り継がれるようなゲームにするべく、隅々までこだわって作っています。代表作の『リネージュ』がまさにそういったスタンスで作っていますからね。『リネージュ』というIPは20年以上も続いていて、しかもまだ発展し続けているというすごいゲームだと思います。

川南僕はクリエイターではなく、ゲームのパブリッシングや運営に携わっている立場ですが、NCSOFT本社の規模の大きさや開発力の高さのおかげで、コンテンツのクオリティーの心配をしなくてもいいのはとても助かっています。
 働く環境としても、エヌシージャパンは福利厚生がしっかりしていますし、とても居心地がいいです。4月からはフレックス制も導入され、さらに働きやすくなりました。また、会社全体で旅行に行ったり、お花見をやったりしています。僕自身は人付き合いがいいほうではありませんが(笑)、そんな自分が参加することに抵抗がないのも、社内の雰囲気がいいからなのかもしれませんね。

鈴田そういったイベントにはかなり力を入れていますよね。たとえば、ハロウィンのイベントでは社員全員がコスプレをしました。また、“カフェテリアポイント”という制度があり、1年にけっこうな額のポイントが会社から付与されます。ポイントの使用についての自由度も高く、今年、僕は自宅に椅子を買いました。

川南うちは子どもが4年前に生まれたのですが、おむつ代を申請して、かなり助かりました(笑)。

鈴田NCSOFTの現社長(※金 澤辰氏)は、『リネージュ』のエンジニア出身なので、とてもゲームが好きで詳しいです。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が発売されたときも「これはとてもおもしろいゲームだから、社員はみんなやるべきだ」と言っていました。『ドラゴンクエストXI』を200時間プレイしたとか、『ペルソナ』シリーズも全部クリアーしたとか(笑)。また、とあるゲームのMODがとてもおもしろいからぜひやりなさいとアドバイスされました。現在のプロジェクトを進めるうえで、必ず血肉になるからと。

――トップがゲームに詳しく、理解があるというのは、現場はやりやすいでしょうね。

鈴田そうですね。信用できるという面もあります。最初のプレゼンでも、おおまかな予算などよりも、仮に用意した画面について、「そこはもっとこうしたらいいのでは?」という話になったことがありました(笑)。ユーザー目線で考えていると感じました。

――鈴田さんは転職経験がおありですが、他社と比べての職場環境についてはどのように感じていますか?

鈴田いちばんは風通しのよさだと思います。大きい会社になればなるほど、「この書類を提出したいけど、誰にどのようにすればいいのか」が複雑だったりしますよね。弊社の場合、会社の規模の割にまだフラットな面があるので、直接それなりの役職の人に聞くことも可能です。プロジェクトの進行についても、会社の上層部と直接やり取りするので、変なフィルターがかかることがありません。反面、“直球勝負”になりますから、それなりのメンタルの強さは必要になります(笑)。ゲームについて遠慮することなく、何でも話せる環境というのはクリエイターにとってありがたいし、働きやすいですね。仮にプロジェクトがダメになったとしても、なぜダメになったかの理由がクリアーです。

――川南さんは15年在籍されていますが、15年前と変わった部分はありますか?

川南それまではずっとパブリッシャーだったわけですが、LIONSHIP STUDIOができてからは自社でも開発を行うようになり、会社自体がクリエイティブな雰囲気が出てきましたね。一気にスタッフの人数も増えましたし、社内の空気も変わったと感じています。それまでPCの部署は黙々と仕事をこなす感じでしたが、コミュニケーションが密になり、活発に議論している様子を見るようになりました。

鈴田LIONSHIP STUDIOができて最初にリリースした『クロノ ブリゲード』ですが、4月にサービス終了となりました。体制や運営などあまりうまくいかず、いろいろな反省点がありました。至らなかった部分を全社的に真摯に捉え、クオリティーファーストであるのはもちろんですが、つぎに出すタイトルでは何としても挽回しないといけないと思っています。何が問題だったのか、しっかりと検証して現在の開発体制に活かしていきたいと思っています。新作については、本社に開発中のゲームを分析し、課題などをリポートしてくれるチームがあるのですが、そのエキスパートチームによって、僕のゲームも定期的に丸裸にされています(笑)。大量のリポートが上がってきては頭を抱えていますが、指摘されていることが至極真っ当なことばかりです。スタジオの理念である“高品質なゲームをスマホで遊ぼう”は変わらずに、もう一度振り向いていただけるように、気を引き締めて開発に取り組んでいます。

――求人するにあたり、どのような人といっしょに仕事をしたいとお考えですか? どのようなタイプの人が御社にマッチしていると思いますか?

川南運営という仕事には、自分が担当するタイトルについてぶれない信念を持っている方が向いていると思います。たとえば予定されているアップデートについて、マーケットの現状に即さないようなものがあって、調整する必要があると提言するためには、自分の中にしっかりとした信念がないとできません。一方では、信念を補強するような客観的な見方も必要になると思います。ゲーム自体やジャンルにも詳しいほうがいいかもしれませんが、個人的には必須ではないと思っています。入社後に理解を深めることも可能ですから。「あまり詳しくないけど、興味があるな」くらいでもいいと思います。

鈴田現在手掛けている新規プロジェクトは開発も佳境に入ってきました。リリースしてからもコンテンツを追加したり、継続的に新しくしていきたいと思っていますので、具体的になりますが、クライアント系のプログラマーとアートディレクター候補となるデザイナーが急募です(笑)。少しでも興味を持ってくれたなら、ぜひ来ていただきたいと思っています。

――現在、転職を考えているクリエイターにひと言お願いします。

鈴田僕の場合、広告業界からゲーム業界へ転職したことは人生の転機になったと思っています。人は3年周期くらいで悩むことがあるように思います。もしいまゲーム業界に興味があるとしたら、とりあえずやってみるのがいいかもしれません。いまはゲームを簡単に作れる環境も整ってきています。ゲームエンジンも各種ツールも揃っていて、ゲームを作るハードルがかなり下がってきています。一方で、ハードルが下がったゆえにライバルも多いかもしれませんが、実際にちょっとやってみようと思ってもやる人とやらない人で差が出ています。口で言うだけではなく、実際にやってみる。それで初めて自分が向いているかどうかがわかることもあります。昔に比べたら、随分と恵まれていると思いますよ。

――それでは最後に、会社の将来像など、もしお持ちでしたらお聞かせください。

川南僕は出自がPCのMMO RPGなので、そのジャンルが将来も元気だといいなと思っています。本体であるNCSOFTの基盤もPC向けの超大作MMO RPGですし、ブランドイメージにもなっています。それを続けていけるのかどうか……もちろん、個人的にはぜひ続いてほしいと思っていますし、いろいろなタイプのゲームを出してほしいですね。

鈴田NCSOFTといえば、とにかくスゴイんですよ。何度か本社に行って、常駐して仕事をしたこともあるのですが、『リネージュ』というヒット作が会社の太い幹となっているおかげで、施設の充実度がハンパないです。会社と周辺がひとつの街のようになっています。大規模な保育園があり、食堂もものすごい広さで、ジムやスパ、美容室、病院、図書館……など。朝、お父さんが子どもを連れて出勤し、保育園に預けてから仕事に行くわけです。昼食も子どもといっしょに食べたりできますし、もちろんいっしょに帰宅します。そういった生活スタイルを見ると、いろいろと考えさせられますね。

川南本当に本社の設備はスゴイですよ。生活と仕事が一体化しているというか。

鈴田ヒットするゲームを生み出さなければいけませんが、その先にはそうした生活があるべきなのではないかと感じました。ある種の理想形を見てしまったので、将来、エヌシージャパンもそうなっていけたらいいなと思っています。

エヌシージャパンってどんな会社?

  『リネージュ』を始め、数々の人気PCオンラインゲームを開発・運営する“NCSOFT”の日本法人として設立されたエヌシージャパン。“楽しいでつながる新しい世界を創る”ことをミッションとし、PCオンラインゲームやスマホ専用ゲームの運営・開発を手掛けている。2016年8月に、スマートフォン専用ゲームの開発に特化した“LIONSHIP STUDIO”を創設し、それまでのPCゲームの運営に加え、スマホ専用ゲームの開発を日本国内でも本格的にスタートさせている。また、今回スマホ向けゲームの『リネージュM』を5月29日に配信し、近日中に鈴田氏が手がける完全新作プロジェクトの発表を予定している。

エヌ・シー・ジャパン株式会社
●代表取締役:金 澤憲 ●設立年月日:2001年9月27日
●従業員数:140名(2019年4月現在)
●事業内容:モバイル及びPC向けオンラインゲーム等の企画・開発・運営など

リラックスしてもよし、仕事をしてもよし。港区を一望できるリフレッシュルーム。
5月29日より配信がスタートした『リネージュM』(iOS/Android)。