CG界の最前線で活躍するティム・ミラー氏に『ラブ、デス&ロボット』や『ソニック・ザ・ムービー』のお話を聞いた
ティム・ミラー氏は、『ファークライ』や『トゥームレイダー』、『ディビジョン』、『タイタンフォール』など、多くの作品のCG/ムービーパートを専門に請け負うブラー・スタジオ(Blur Studio)の創立者としてCG制作の最前線で活躍するかたわら、2016年に公開され大ヒットを記録した映画『デッドプール』で初の長編監督に挑戦。
さらに、2019年11月に公開が予定されている大作映画『ターミネーター:ニュー・ フェイト』の監督にも抜擢されているほか、今秋公開予定の映画『ソニック・ザ・ムービー』では製作総指揮を務めるなど、エンターテインメント業界での活躍が目覚ましい人物のひとり。
そのティム氏が指揮を執るブラー・スタジオはゲーム制作だけに留まらず、大手映画会社のCGパートを手掛けたり、CGアニメーション作品を送り出すなど、いまもっとも勢いのあるCGスタジオとして注目を集めている。
以下の動画は、そのブラー・スタジオが手掛けたアニメーション作品をまとめて紹介する動画となっている。見てもらえばわかるように、ゲームファンにもなじみのあるシーンが多数見受けられるはずだ。
そんなティム氏がストリーミングサービス大手のNetflixとタッグを組み、生み出された作品が、2019年3月よりNetflixにて配信が行われている『ラブ、デス&ロボット』だ。
独特の世界観を持つ全18話のエピソードを、オムニバス形式のショートストーリーで見せる『ラブ、デス&ロボット』は、どのようにして生み出されたのか。
そして、ゲームファンとして気になる実写版のソニックはいつ頃お披露目されるのか。
いまエンタメの世界でノリにノッているティム氏にお話を聞く機会が得られたので、ここで紹介していこう。
※本インタビューは4月に行ったものになります。
ティム・ミラー
1995年にCG映像製作会社“ブラー・スタジオ”を設立し、視覚効果アーティスト兼クリエイティブ・ディレクターとして活躍。2004年に製作を担当した短編CGアニメーション『Gopher Broke』(監督:ジェフ・ファウラー『ソニック・ザ・ムービー』)は、同年のアカデミー賞短編アニメーション賞にノミネート。2016年に監督した映画『デッドプール』は、R指定映画の世界興行収入記録を塗り替える大ヒットを記録。2019年には製作総指揮として携わる『ソニック・ザ・ムービー』と、自身が監督を務める『ターミネーター:ニュー・フェイト』の公開が控えている。
――まずはじめに、『ラブ、デス&ロボット』を生み出そうとしたきっかけを教えてください?
ティム私は短編小説やアンソロジーとアニメーション作品が大好きなのですが、それらの要素を詰め込んだ企画をずっとやりたいと思っていました。世界中にあるすばらしい物語を自分で選び、それをアニメーション作品として皆さんにお見せしたかったのです。そこで、今回の『ラブ、デス&ロボット』を企画しました。
――本作には、リアルCGの作品もあれば、セルアニメ風のものがあったり、トゥーンシェーディング風の映像もあるなど、作品毎にいろいろな表現手法が用いられています。すべての作品のテイストが異なっているのはなぜなんでしょう?
ティム今回選んだ物語はSF、ホラー、ファンタジー、コメディと、ジャンルが多岐に渡っていますが、同じジャンルでも国やカルチャーによってストーリーの綴られかたが異なっています。そんなたくさんある物語を、どのスタジオが手掛けたらおもしろい作品に仕上がるのだろうかと考えました。そこで、フランス、イギリス、アメリカ、韓国、ロシアなど、さまざまな国の物語やスタジオをミックスしていったのですが、その結果がこのような多様性を生み出したのでしょうね。製作当初はストップモーションアニメの構想もあったのですが、これはシーズン1では実現できませんでした。でも、つぎのシーズンを作る機会があったら、さらに多くの物語と表現手法を見せたいので、もっといろいろな国の方に参加してもらいたいですね。
――いま、つぎのシーズンのお話がありましたが、シーズン2の構想はもうされているんですか?
ティム次回作をどのようにするかはもう考え始めています。私のKindleには1000本以上の短編が入っていますが、それを読み直しては、つぎにどんな挑戦をすべきか、クリエイターたちとつねに話をしています。あとは、NetflixがGOサインを出してくれるだけですよ(笑)。
――アニメーションと言えば、ジャパニメーションという言葉もあるように、日本では文化のひとつとして根付いています。そんな日本のアニメに対してはどのように印象を持っていますか?
ティム日本のアニメーションが嫌いな人なんてこの世にいないでしょう。日本の作品はいろいろ見ていますが、中でも『AKIRA』と『獣兵衛忍風帖』が大好きです。また、一時期ですがデヴィッド・フィンチャー(『ラブ、デス&ロボット』の共同監督、代表作『エイリアン3』、『セブン』、『ドラゴン・タトゥーの女』など)といっしょになって、『子連れ狼』をCGアニメ化しようという企画を温めていたこともありました。そのときは村上春樹がストーリーを書き下ろすと言った話もあったんですが、もし実現していたらかなりぶっ飛んだ作品になっていたでしょうね(笑)。
――ティムさんが作られたブラー・スタジオは、これまでゲームや映画など、多数の作品に携わってきましたが、いま作られている映画『ソニック・ザ・ムービー』や『ターミネーター:ニュー・ フェイト』の制作にも関わっているのですか?
ティムもちろん、両作品とも制作に関わっています。じつは『ソニック』の監督を務めるジェフ(ジェフ・フォウラー)は、彼が大学を卒業してすぐに私のスタジオに雇った人物で、それから17年間いっしょに仕事をしてきました。いま、彼は私の隣りの席でがんばって『ソニック』を作っていますよ。『ターミネーター』は、私がスタジオで編集をしています。スタジオには140名のクリエイターが在籍していますが、おもしろいシーンができたらスタッフを集めて、「このシーン、どう思う?」って意見を聞きながら、作業を進めています。
――いま日本では、映画に登場するソニックの容姿についてさまざまな議論が飛び交っています。ソニックを実写化するにあたって、どのような点に気をつけているのか教えてください? また、ソニックの姿はいつ頃お披露目するのでしょうか。
ティムいまは、近々お見せできます……ということしかお話できません。ソニックが実際にいるという世界をどう成立させるか。ここは、いまもっとも力を注いでいるところです。ひとつ言えるのは、私もジェフも心からソニックの大ファンだと言うことです。僕自身、ひとりのオタクとして自分の愛しているキャラクターを忠実に見たいという思いを持っているので、そうであるべき姿というものをしっかり表現しようとがんばっています。
――最後に、日本のゲームファンに『ラブ、デス&ロボット』の楽しみかたを教えてください。
ティムゲームには、冒険ものや逆境に立ち向かうヒーローものなど、いろいろな作品がありますが、物語という観点で見れば、ゲームであれ映像作品であれ、メディアは関係なく同じように魅了されますよね。ですので、ゲームが好きな人なら『ラブ、デス&ロボット』も気に入ってくれるはずです。たとえば『ファイナルファンタジー』が好きな人は、ファンタジーとスチームパンクと魔法の要素を持ったエピソード“グッドハンティング”を気に入ってもらえるのではないでしょうか。『ラブ、デス&ロボット』には、ほかにもさまざまなエッセンスを持った作品が揃っているので、きっとお気に入りのエピソードがあるはずです。でも、お気に入りの作品だけでなく、さらにほかのイケてる作品も見て、この世界にドップリと浸ってもらえたらうれしいですね。
子どもには決して見せられない、愛・官能・暴力・血・死などの描写が制限なしで描かれた珠玉の18編で綴る『ラブ、デス&ロボット』
カートゥーン風のCGや、トゥーンシェーディングCG、ゲーム風、実写と見紛いそうなリアル描写からセルアニメ風の描写など、エピソードごとに異なるテイストで作り込まれている『ラブ、デス&ロボット』。本作は18のエピソードからなっており、いずれのエピソードもタイトルにあるように、愛と死とロボットをテーマに個性的な物語が描かれている。
過激なまでの暴力描写に関しても遠慮なく描かれているのは、ストリーミングサービスのNetflixならではといったところ。さらに、どのエピソードも10分前後と手軽なサイズなうえ、1話完結なので好きなタイミングで好きな話を楽しめるというのは、本作の大きな特徴と言えるだろう。
Netflixの作品は、Wi-Fi環境化でスマートフォンやタブレットなどにあらかじめダウンロードしておけるので、通勤時の電車の中で視聴するのにもってこいというのも◎(※大人向け作品なので、視聴時は周囲への配慮は心掛けたい)。
ブラックなノリや救いのないオチ系の作品が好きな筆者の個人的感覚としては、どのエピソードもハズレ無しと言えるほどで、視聴後の満足度は非常に高めだった。
Netflixはプレイステーション4でも視聴可能なうえ、初めて登録する場合は1ヵ月間無料体験もできるので、気になる人はNetflixのサイトでチェックしてもらいたい。
『ラブ、デス&ロボット』シーズン1 エピソード紹介
世界的人気キャラクター『ソニック』の実写映画版にも期待が高まる!
まさかの実写映画化の発表で話題を集めた『ソニック・ザ・ムービー』は、今回紹介したティム・ミラー氏と、やはり大ヒット映画『ワイルド・スピード』シリーズを手掛けたニール・H・モリッツ氏が制作を担当。ティム氏とは旧知の仲のジェフ・フォウラー氏が監督を務め、『X-メン』シリーズのサイクロップス役を演じたジェームズ・マースデンや、『マスク』や『トゥルーマン・ショー』など、数多くの作品に出演する人気俳優のジム・キャリーが出演するなど、エンターテインメント界やショウビズの世界で活躍するクリエイター、俳優陣が集結し、今秋の公開に向けて制作が進められている。