2019年3月21日、KOEI TECMO CAFE&DININGにて開催された、『ルルアのアトリエ』発売記念イベント“岸田メル先生 テキトー落書きサイン会”。トークパートでは、“アーランド”シリーズの開発秘話や、今後に関する気になる発言が?

 2019年3月21日、KOEI TECMO CAFE&DININGにて、コーエーテクモゲームスより2019年3月20日にリリースされた『ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~』の発売記念イベント“岸田メル先生 テキトー落書きサイン会”が開催された。

 本稿では、『ルルアのアトリエ』総合プロデューサー・細井順三氏と、キャラクターデザイン担当のイラストレーター岸田メル氏によるトークセッション、そして岸田氏による落書きサイン会など、盛りだくさんの内容となった同イベントの模様をお届けする。

 二部構成となっていたイベントの第一部では、細井氏と岸田氏によるトークセッションが実施。

 最初のトークテーマは、細井氏と岸田氏、おふたりの出会いとお互いの第一印象について。細井氏と岸田氏が初めて会ったのは、ファミ通書籍編集部が制作した書籍『アトリエシリーズ オフィシャルクロニクル』(2009年発売)での取材の現場とのこと。

ちなみに、岸田氏の顔が世に公開されたのは、この『アトリエシリーズ オフィシャルクロニクル』が初。

 そのころの細井氏はプロデューサーではなく広報で、岸田氏によると“社員の方”という印象が強かったそう。続けて岸田氏は、“『マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~』と『エリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士2~』をプレイしていたので、ガストに憧れを持っていた”と当時を振り返った。また当時、岸田氏と仕事のやり取りをしていたスタッフがとても気さくで話しやすく、そのことも思い出に残っているとのこと。

 なお細井氏は、岸田氏に対して“すごく真面目な方”という印象を持っていたという。まさか、こんなにもユーモアに溢れている人物だとは思っていなかったそうだ。

 それに対して岸田氏は、当初はみずから表舞台に立つことはなかったが、『トトリのアトリエ ~アーランドの錬金術士2~』のプロモーションの一環で生放送番組に出演したことをきっかけに、メディアに露出する機会が多くなっていった結果、いまの自分につながったと語る。

 その流れから、話題は岸田氏が個人で行っていた“アーランド”シリーズのプロモーション活動に関するものに。岸田氏は、『ロロナのアトリエ ~アーランドの錬金術士~』発売時、自身で宣伝ページを作っていたことや、その宣伝ページの中で直筆のエスティ(『ロロナのアトリエ』登場キャラクター)の絵を描いて宣伝していたというエピソードを語った。さらに岸田氏のユニークなプロモーション活動も話題に挙がると、会場は笑いに包まれた(詳しくは、ダブルソード、「ロロナだと思ったか? 俺だよ!」と検索してみよう!)。

 続いてのトークテーマは、当時の“アーランド”シリーズについて。岸田氏は『ロロナのアトリエ』のイラスト制作時、ガストから受け取ったキャラクターの設定を元にいくつかイラストをガストに提出したが、なかなかオーケーをもらえず、それゆえ、いずれのキャラクターのデザインも完成まで時間がかかったと、当時の苦労を語る。

 細井氏は、『ロロナのアトリエ』について、前のシリーズ作に当たる『マナケミア2 ~おちた学園と錬金術士たち~』の本数を超えないとまずい状況だったため、開発は慎重だった、と回顧。また、『ロロナのアトリエ』は『アトリエ』シリーズとしては初めてプレイステーション3(以下、PS3)でリリースされたが、ガスト内では、PS3で出すかプレイステーション・ポータプルで出すかで議論が起こったそうだ。結果としてPS3に決定したが、『アトリエ』シリーズ初の3Dゲームでもあったため、開発には苦労したという。しかしそれに負けない開発に対する情熱が『ロロナのアトリエ』制作時はあった、と当時を振り返った。

 また岸田氏は、『ロロナのアトリエ』のビジュアルを描くときに、“風景に花を多く描くことを意識していた”という。その理由は、花が情景に描かれていることでがきらびやかなイメージが増すと考えたことがひとつ。ふたつめの理由は、アーランドの街のモデルにしたフランスのとある街があり、その街の写真を調べたとき、街に花が溢れていたゆえ、“アーランドの街並も花が溢れるように描こう”と意識したのだそう。

近年の『アトリエ』シリーズのイラストは、花のモチーフが取り入れられているものが多いが、その流れを生み出したのはこの『ロロナのアトリエ』メインビジュアルであると言える。

 続いて、“アーランド”シリーズの主人公、ロロナ、トトリ、メルルのキャラクターデザインに関しての話題へ。岸田氏はまず、ロロナのキャラクターイラストの制作時、イメージカラーを何色にするかで開発陣と一悶着があったことを明かす。

 岸田氏は色合いを落ち着かせるため、アースカラーを採用したイラストを提出していたが、『アトリエ』シリーズの主人公である錬金術士たちに牧歌的なイメージがあったため、最終的に赤色やピンク色などを採用したイラストに決定したという。細井氏は、パッケージに赤色を採用した『マリーのアトリエ』がヒットしたことを受けて、当時のプロデューサーは赤色に対する思い入れを強く持っており、それがロロナの色合いに影響したと説明した。

 トトリに関しては、岸田氏が最初に描いたデザインがそのまま採用されたこともあり、あまり苦労しなかったという。また、岸田氏はバレエの衣装が好きで、“バレエの衣装を身にまとったキャラクターを出したい”と思っていたそうで、それがトトリの衣装のデザインに反映されているのだそう。さらに、『トトリのアトリエ』の舞台が当初は海辺であったため、魚や海を感じさせる要素を衣装に盛り込みたかったことから、トトリの衣装には魚のヒレや貝のイメージが使われているのだそうだ。

 続くメルルのキャラクターデザインには、“膨大な時間を要した”と岸田氏。デザイン作業の最後の最後まで悩み続けたそうで、完成した後も“『アトリエ』ファンに受け入れられるか不安だった”、“発表後、受け入れられて安心した”と当時の心境を打ち明けた。

ゲームは、開発段階でプレイすれば改善すべき点がわかり、それを修正すればおもしろくなるが、デザインは世に出してみなければ受け入れられるかどうかわかりにくい……と細井氏。

 そしてトークのテーマは『ルルアのアトリエ』へ。同作について、細井氏は“順調に開発でき、そしてプレイしたユーザーからの評価も好評で、開発陣もうれしく思っている”と語った。また、同作は『アトリエ』の数あるシリーズの中でも、初の4作目となるが、細井氏は“アーランド4作目を望んでいるユーザーが多く、その想いに応えるためにも作りたかった”と、『ルルアのアトリエ』制作に対し強い思いがあったことを明かす。

 岸田氏は、『アトリエ』関係のイラストが世に出るたびに反響が大きく、個人で開催しているファンイベントでも『アトリエ』関連の話をされることが多いことから、“アーランド”の続編を望まれていることを実感していたそう。また、『BLUE REFLECTION(ブルー リフレクション) 幻に舞う少女の剣』(以下、ブルリフ)の経験があったからこそ、『ルルアのアトリエ』の制作を実現できたとも語った。

 細井氏いわく、もともと『ルルアのアトリエ』の構想自体はずいぶん前からあったが、開発の体制や時期の問題があり、なかなか着手できなかったとのこと。だが、『ブルリフ』の開発を通じて、岸田氏のテイストを活かした3Dキャラクターモデルや動きを実現でき、そして岸田氏の考えを開発陣も共有できたことから、『ルルアのアトリエ』でも理想の3Dモデルを実現できた、と振り返った。

 ここで話題は、『ルルアのアトリエ』のキャラクターたちのデザインに関するものへ。岸田氏は、ニコのキャラクターデザインについて、元海賊で年齢は20代後半という設定から、“開発陣はもっと渋く、熱血感あふれるキャラクターを求めていただろうが、自分は男キャラクターは全員カッコよく描きたかった”と、甘いマスクにした理由を語った(細井氏も、もともとは見た目がいかつい、“ザ・海賊”というオーダーをしていたことを明かした)。

キャラクターたちが年齢を重ねたことをイラストで表現することに苦戦した、と岸田氏。『ロロナのアトリエ』のころから“老け顔”と言われていたステルクは、より渋いお姿に。

 続くトークテーマは、“『ルルア』のここを楽しんでほしい!”。細井氏は、ゲーム内のすべての要素を“シリーズ初の4作目”にふさわしいクオリティーにするという思いを込めて制作し、それを実現できたので、さまざまな面を存分に楽しんでほしいと語った。

 また、本作のバトルが、5人でのパーティーバトルとなった理由については、“仲間が8人いるので、キャラクターを切り換えつつ、どのキャラクターもまんべんなく使ってほしい”という思いがあったから、と細井氏。さらに、『リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~』のバトルシステムで採用していた前衛・後衛システムを引き継ぎつつ、W型の陣形にすることで、“前衛、後衛がどうしたらうまく機能するかを、より深く考える”という戦略性を持たせたということも明かされた。

 トークセッション最後のテーマは、“ふたりの今後に関して”。岸田氏は「今後もガストと組んで、いろいろなことをやりたい」と語ると、細井氏も、「今年の年末か、来年、岸田氏とまた新しい発表ができるのではないかと思います」と、ガストブランドのさらなる展開を期待させる発言も飛び出した。

 また、『アトリエ』シリーズがどこまで続くかに関しては、細井氏は“ユーザーの期待を裏切らないコンテンツを作っていきたい”、“ひとつのシリーズを完結させるのはキレイな形だが、ずっとその世界にいたいという人の気持ちも大事にしていきたい”と、ゲーム制作への想いを語った。

 これを受け、岸田氏が「ガストはユーザーの声をフィードバックする会社ですね」と述べると、細井氏は、“『サージュ・コンチェルト』は7周年接続記念祭を開催するし、『拡張少女系トライナリー』もサービスは終了したが、2周年記念イベントも実施する”と例を挙げ、“一度作ったコンテンツはずっと続けていきたい、ユーザーの声を聴いて、ユーザーの求めている物を作っていくのがガストの信念である”と、ガストブランドの方針を述べていた。

 そして最後に、細井氏が「ユーザーがゲームを買ってくれて、楽しんでくれなければ、ゲームを作ったとしてもタダの自己満足作品になってしまう。ユーザーが遊んでくれるからこそ、自分たちのモノづくりは完成する。ガストのクリエイター全員が、ユーザーあってこそのものだと認識している」とゲーム制作についての熱い想いを語り、トークセッションは幕を閉じた。

 休憩を挟んで始まった第2部では、岸田氏によるお絵描きイベントが実施。これは、来場者全員にプレゼントされたTシャツ、あるいは参加者がみずから持ち込んだ『アトリエ』シリーズのグッズに、岸田氏が自由に絵(落書き)を描いてくれるというもの。イベントの最中、岸田氏はときにファンの無茶ぶりに応えつつ、ひとりひとりに素敵な絵(落書き)を贈った。

お絵描きイベント中には、本イベントオリジナルのランチが振る舞われた。左側のランチプレートは“思い出のスパイスカレー”(ルルアの大好物)、中央のドリンクは“ぷにぷにゼリードリンク”(シリーズ名物の敵キャラ・ぷにぷにがモチーフ)”、右側のデザートは“アップルパイ”(パイはロロナの大好物)。“アーランド”シリーズファン大満足のラインナップになっていた。