高木謙一郎氏がマーベラスを退社することが明らかに。決断に至った理由や、『閃乱カグラ』シリーズなどの今後について聞いた。

 『閃乱カグラ』シリーズなどを手掛け、“爆乳プロデューサー”としても活躍してきた高木謙一郎氏がマーベラスを退社することになった。長年過ごしてきたマーベラスを離れる理由や、『閃乱カグラ』など、氏が手掛けてきたシリーズの今後について、さらには新天地での活動予定などを、根掘り葉掘り聞いてみた。

高木謙一郎(たかき けんいちろう)

マーベラス上席執行役員、HONEY∞PARADE GAMES代表取締役、爆乳プロデューサー

【訂正とお詫び】
週刊ファミ通3月28日発売号(4月11日号)におきまして、高木氏のプロフィールが誤っておりました。
正しくは“マーベラス上席執行役員 HONEY∞PARADE GAMES代表取締役 爆乳プロデューサー”です。
読者の皆様及び関係者様にはご迷惑をおかけしました。訂正のうえ、お詫び申し上げます。

子どものころに思い描いた夢の実現のために

――まずは、高木さんがマーベラスを退社されることになった経緯からお聞かせください。

高木いちばん大きな理由は、去年ぐらいから話題になっていたゲーム内でのセクシャル表現の規制……その変化ですね。これまでもじわじわと変わってきた部分はあったのですが、ここしばらくで「あれもダメ、これもダメ、多分ダメ」といろいろなものがNGになってきたのです。マーベラスを辞める、あるいは何か仕事のスタイルを変えるというイメージはこれまでまったく持っていなかったのですが、昨年のあるタイミングで急激に自分の中で糸が切れたような感じがありました。

――セクシャルな表現があることが、ゲーム制作に与える影響が大きくなってきた。

高木そうですね。そもそも開発期間やお金、人といったさまざまな部分で制限がたくさんあるなかで、できるだけいいものを作ろうとしてきたのですが、さらにクリエイティブの部分にも大きく制限が入ってきたのが、何より苦しいと思った部分です。セクシャルなものは何かと批判されるところもありますが、楽しんで応援してくれる人も多くて。『閃乱カグラ』は自由に無茶をやっているように見えても自分なりに気を遣って、関係各所の方々とつねに相談しながらこれまでもやってきたんです。ギリギリアウトなんて言いつつも、基本的にはすべてセーフなんです。一般的な支持は得られなくても、「こんなゲームもあっていいじゃないか」と始めた作品です。そういったバリエーションがゲーム業界全体の魅力を支えるひとつになっていると信じていましたけど、こうも簡単に壊されてしまうのか……と思って、いろいろと考えるきっかけになってしまいました。

――これまで作ってきたものが作れなくなる、というのはかなり大きな問題ですよね。

高木特定のジャンルや範囲を守るための規制、制限は歓迎です。ただ昨今の流れは、確実に潰すための流れに感じています。できる範囲で最大限のアイデアをひねり出すのは得意ですし好きなのですが、いまの状況ではそれが本当に『閃乱カグラ』と呼べるものなのか、ファンの方々が求めているものになるのか、とくにナンバリングタイトルでは大きく疑問が出てしまうのが現状です。

――『閃乱カグラ』にはもちろんセクシャルな表現もありますが、あくまで作品を構成する要素のひとつという印象です。それでもやはり難しくなってきてしまったのですね。

高木全体からすれば1割、2割程度の要素ではあり本質は違うのですが、目立つ部分でもあるので、やはりワールドワイドな基準で見た場合は、「全部セクシャルですよね」と判断されてしまうこともあるのが苦しいところです。
 私はいま42歳なのですが、「つぎの10年をどうするか?」を考えると50歳という年齢を意識するようになりました。現役バリバリ最前線で動ける時間もあまり多くは残っていないかもしれないですし、結婚して娘が生まれたという変化もあって、そもそも「自分自身が何をしたかったのか」を見つめ直したのです。もちろん、“美少女モノ”も自分がすごく作りたかったものではありますけど、いわゆる王道ファンタジーのような、自分たちが子どものころに熱狂したものも作りたい。でも、これまではあまりそういったチャンスに恵まれなかったんです。

――より広い層に向けた作品も作っていきたい、と。

高木そうです。これから3年や5年をかけて大型のタイトルを作る、関われるとしたら、「いましかない」という感覚があるなかで、いったんマーベラスを離れて、別の方法で仕事をしてみようかな、と思いました。マーベラスとの関係は円満ですし、まわりのスタッフもいい人ばかりで、役職や給料も本当にありがたい状況ではあるんですけど、やっぱり子どものころに思い描いた夢にもう一度挑戦してみたい、という前向きなところが抑えられなくなってきたのが大きいですね。これまでの自分の作品から距離ができるのは、ひと言では言い表せない葛藤と苦しみがいまだにありますが……。

――新たな挑戦をするために、新しい環境に踏み出すわけですね。

高木これまでの作品のファンの方々や、会社の部下や先輩方にはご迷惑をおかけすることになると思います。それは重々わかったうえで、自分が憧れたコンシューマ業界をもっと盛り上げる一端になりたい、というのがいちばんですね。

――退社された後は、どちらにお勤めされることになるのでしょうか?

高木サイゲームスです。コンシューマータイトルの開発に関わっていきます。世界中を探してもほとんどないくらいのチャンスだったので、思い切って決断しました。