本能が求める快楽……!
上の画像をご覧いただきたい。だらーんとしているようで、体は収まるべきところに収まり、覆い被さるように配置されたモニターは、適切な距離で視聴できるよう絶妙に調整されている。すばらしい、こんな環境でゲームを遊べたら最高すぎるじゃないか……!
この“寝ながらゲームシステム”など、多彩なゲーム環境を提案するプロジェクト“デスク秘密基地化計画”を展開しているのが、ゲーミング家具ブランド“バウヒュッテ”だ。その公式サイト(https://www.bauhutte.jp/bauhutte-life/making-gaming-desk/)では、同ブランドの製品を組み合わせることによって実現する、魅惑的なレイアウト例が多数紹介されている。
たとえば、大小さまざまな天板を岡のように連ね、広大な作業領域も実現した壮大な環境“ゲーマーズ・ビッグヒル”。
デスク回りをテントで覆って没頭できる環境を提供する“ゲーミングキャンプ”。
さらには、ペダルを漕ぎながらプレイすることで、運動不足を解消できる“サイクリング・ゲーミング”なんてものまで!
一見すると奇想天外にも感じるが、確かにどれも、ゲーマーの心をくすぐる魅力的なものばかり。これらの企画は、どんなふうに生まれたのか? そして、ぶっちゃけこれらは売れているのか!? 本稿では、仕掛け人に詳しくお話を伺った。
ピンチに生まれたチャンス、それは“セーラー服”
川瀬 隼利氏(かわせ はやと)
ビーズ株式会社 バウヒュッテ 商品企画部 商品企画3課 課長代理。“デスク秘密基地化計画”の仕掛け人。
――“デスク秘密基地化計画”は、いつごろから始められたものなのでしょうか?
川瀬公式サイトに“予算10万円で組めるゲーミングデスクのレイアウト集”という記事を作ったのが最初で、それが2017年の1月か2月でした。最初はこの公式サイトから始めて、その後ゲームショウに出展したり、カタログを作ったりして、ブランドを押し出していきました。
――“秘密基地化”というネーミングが、商品の特徴を正しく表現しつつとてもキャッチーで、絶妙ですよね。
川瀬僕らがやろうとしていることを、なるべくワクワク感があるワードでまとめたかったんです。男の子なら、子どものころに誰もが必ず思っているようなことを、大人になったいま、もう一度やってみようよ、と。
――すでに商品ラインアップとしては存在していたものを、“秘密基地化計画”として新たに提案した、ということでしょうか?
川瀬ゲーミング家具の取り扱い自体は、“秘密基地化計画”をスタートする1年前、2016年から始めていました。そのころに、いまメインとしているデスクや、ゲーミング座椅子がとてもヒットしたんですよ。
――ゲーミング家具単体での手応えがあったうえでということですね。そもそもゲーミング家具を扱うことになった経緯を教えてもらえますか?
川瀬バウヒュッテは10年くらいの歴史があります。僕が入社したのが2010年くらいで、そのころはオフィス家具部門がすごく儲かっていて、ゲーミング家具というコンセプト自体がまったく存在していませんでした。当時はインターネットで家具を販売すること自体が珍しかった時代で、私たちがそれをいち早くやって成功していたんです。
それが、2014年に増税があり、それとまったく同じタイミングで、中国の工場から直接日本のAmazonに出品するという動きが、急拡大してきまして……。
――なるほど。増税によるコスト増と、激安なライバルが同時に押し寄せてきた、と。
川瀬はい。それで方向転換を余儀なくされたわけですが、そのころ一時的に、ビビラボという別ブランドで、セーラー服などを作ったんです。
――セーラー服!?
川瀬セーラー服とか、人間型の抱き枕とかですね(笑)。そういうものが、メディアさんとか、SNSなどですごくバズって、めちゃくちゃ売れたんです。それこそ、それまでのオフィスチェアを売るビジネスがバカらしくなるくらい。
――それでオフィス家具に限らず、いろいろなチャンスがあるぞと。
川瀬そうなんです。そこで学んだのが、メディアやSNSで広がるキャッチーなものを作れば、売上につながるんだと。ただ落とし穴もあって、ガンッと話題になるものって、落ちるのも早くて。売り続けるには、毎回毎回新しいものを作り続けなければいけないんですよ。
――なるほど……まったく新しい商品なんて、そうそう生まれるものではないですよね。
川瀬それで2016年くらいに、やっぱり家具のほう、バウヒュッテのブランドに戻していこうという考えになりました。ただそこで、ふつうに家具を売るのではなくて、セーラー服時代に学んだように、キャッチーな家具にしたかったんです。考えた末に、僕もゲームが大好きだったので、ゲームと家具を組み合わせてやってみよう、と思いつきました。
――キャッチーなものが売れるという学びと、自社の強みである家具のノウハウが融合したと。
川瀬はい。それがうまくいったので、2018年に入ったくらいからゲーミング家具ブランドを名乗り始めて、いまにいたるという感じですね。
――安売り路線ではなく、きちんとした品質を求めたことも、ゲーマーの信頼を得るうえで大きかったのではないですか?
川瀬そうですね。ただこれは、うまくいかなかった時期の反省点として、低価格路線で戦おうとすると、利益が出せない状態になっていたんです。値下げすることは不可能で、上に行くしかなかった、というのはありますね(苦笑)。