2019年3月15日に丸ビル1階 マルキューブにて行われた“『ストリートファイターII』企業対抗戦”の様子をリポート。

 2019年3月15日、東京 千代田区にある、丸ビル1階 マルキューブにて、“『ストリートファイターII』企業対抗戦”が開催された。本イベントは、東京駅の周辺に位置する大手町・丸の内・有楽町地区の“まちづくり”を推進する“大丸有まちづくり協議会”の設立30周年記念イベント“大丸有まちづくり30周年 e-Sports Festival”の一環として行われた。そのため、大会参加者は同地区に事務所を置く企業、店舗に勤めている社会人に限定されたのだ。

 そこへ名乗りを挙げたのは、東急リバブル、日本交通、三菱UFJ銀行、読売新聞東京本社などお堅いイメージのある企業に勤めるエリートたち。平日であるにも関わらず、18時開始のイベントに参加可能というホワイト企業アピールもバッチリしつつ、働く大人たちによる真剣勝負がくり広げられた。

 会場にはカプコンの綾野智章プロデューサー、格闘ゲーマーのえいた氏、芸能界屈指の格闘ゲームプレイヤーとしても知られるゴールデンボンバーの歌広場淳さんがゲストとして駆け付け、MCは同じく格闘ゲーマーのなない氏が務めた。

 本記事では、そんな花金の丸ビルを大いに盛り上げた“『ストリートファイターII』企業対抗戦”の模様をお届けする。

※なお、企業対抗戦ではプレイステーション4ソフト『ストリートファイター30th アニバーサリーコレクションインターナショナル』収録タイトル『ストリートファイターII'(ダッシュ)』が使用された。

 企業対抗戦開始に先駆けて、まずは会場を温めるべくえいた氏対歌広場さんによるエキシビションマッチが実施された。キャラクターは両者ともにケンを使用。同キャラ対決ということで、お互いの実力差が出る熱い展開となった。

 『ストリートファイターII'(ダッシュ)』で行われた、1戦目は、えいた氏があっさりと勝利し、幾度となく世界の舞台で戦ってきたプレイヤーとして、格の違いを見せつけた。

 しかし、このままでは終われない歌広場さんは、続いての『ストリートファイターV アーケードエディション』対決で本領を発揮。会場に詰め掛けていた“歌広場ファン”からの「じゅんじゅん頑張ってー!」という黄色い声援が効いたのか、反撃を許さない怒涛の攻めでなんと1ラウンドを先取。その後、2ラウンド目を取られるも、3ラウンド目はまたしても勢いよく攻め立てる歌広場さんが大幅にリードを奪う展開に。ファンの声援にも熱がこもるが、そこはさすがのプロゲーマー・えいた氏。冷静な立ち回りで状況を逆転し、そのまま勝利を決めきった。

勝負には負けたものの、プロゲーマーから1本勝ち取る腕は本物。芸能界最強の称号は伊達じゃない。

企業の威信を背負って戦う志は、プロゲーマーそのもの!

 エキシビションマッチの興奮が冷めやらぬ中、ついにメインイベントである企業対抗戦がスタート。約40人の参加者が4ブロックに分けられ、各ブロックの優勝者が本戦へと駒を進める。1試合でも負けたら終わりのトーナメント方式ということもあり、選手の表情は真剣そのもの。しかも会社の名前を背負っているのだから、プレッシャーもあるだろう。その心境はまさにスポンサー企業を背負って戦うプロゲーマーと同じ。えいた氏も「今日の彼らはプロゲーマーですよ」と太鼓判を押した。

企業対抗戦名物(?)の名刺交換。真剣勝負の前であっても名刺の低さを競い合うのが日本のサラリーマンである。
丸ビル内でスーツを着た大人たちが真剣にゲームをしている、なんとも珍しい光景。
応援のために小道具を用意している企業も。

 企業の威信をかけた“負けられない戦い”を勝ち抜き、本戦(準決勝)へと駒を進めたのは、マイクロネットワークテクノロジーズ、BFT、野村総合研究所、セールスフォース・ドットコムに務める4人。なんと4人中3人がガイル使い。ガイルが優勝するのか、それともダルシムがガイルたちを一掃するのか、注目が集まった。

左から、マイクロネットワークテクノロジーズ(ガイル)、BFT(ガイル)、野村総合研究所(ダルシム)、セールスフォース・ドットコム(ガイル)の代表選手。

 準決勝第1試合は、セールスフォース・ドットコム(ガイル)対野村総合研究所(ダルシム)。ガイルのソニックブームをスライディングでかいくぐるなど、見事な対策を見せつけるダルシムだったが、距離を詰めたガイルが連続で投げを通す展開が続き、セールスフォース・ドットコムが危なげなく1本目を先取した。

 しかし、本戦に勝ち上がってきた猛者はただではやられない。野村総合研究所のダルシムがすぐさまプランを修正し、2本目はひたすら間合いを保って長距離戦の構えに。実況席から、“働きかた改革”にちなんで“戦いかた改革”と称された戦略がうまくハマり、2本目は野村総合研究所が取り返す。そのまま勢いに乗った野村総合研究所が、3本目は完全にセールスフォース・ドットコムを圧倒し、逆転勝利で決勝戦進出を決めた。

 準決勝第2試合は、BFT対マイクロネットワークテクノロジーズのガイル対決。お互いにソニックブームを撃ち合い、そしてソニックブームをくぐるように中足(しゃがみ中キック)を狙う、まさに鏡写しの状況に。そんな中、強気に投げを通したBFTが1本目を先取すると、マイクロネットワークテクノロジーズも負けじと投げ返して2本目を取り返す、一進一退の攻防がくり広げられた。

 3本目でも状況は変わらず、もはや意地と意地のぶつかり合い。ソニックブームを撃ち合っては相殺し、お互いに出した中足が相打ちになってそれぞれ体力が削られていく。両者体力がわずかとなったとき、これまた同時にお互いが前ジャンプで接近。と、そのとき、BFTガイルがこの試合初の空中投げをくり出し、これが見事に炸裂! 最後の最後に隠し玉を決め、会場を盛り上げたBFTが笑顔で決勝へと進出した。

なぜかBFTの恒例となった“勝利後の名刺交換”(通常は対戦前)。勝ちを決めた後の名刺交換の味は格別!?

“野村ダルシム”の猛攻が止まらない! 勝利の一手は“ヨガファイア”

 ついに『ストII』最強の企業が決定する決勝戦は、野村総合研究所(ダルシム)対BFT(ガイル)の対決に。対戦前に「ダルシムは嫌い」と話していたBFTは、やはりダルシムの動きに対応しきれない様子。ソニックブームをスライディングでかいくぐられてからの投げを連続で通されてしまう。

 BFTがなかなか反撃に出られないうちに、野村総合研究所が1本目を先取。そのまま2本目もラウンド1を取り、優勝へ王手をかけた。しかし、ここでついにBFTが反撃ののろしを上げる。相打ちになってでも相手にダメージを蓄積させ、一方的な有利を許さない。そしてお互い体力がわずかになったところで、投げるために近づいてきたダルシムに強パンチがヒット! 散々苦しめられた投げを克服してラウンド2を取り返した。

 ラウンド3も同じように、相打ちになりながらも体力を削っていく。またも両者体力わずかとなったところで、今度はダルシムのヨガファイアがガイルを襲う。これをジャンプでかわそうとしたガイルだったが、タイミングが少しかみ合わず、飛び越えられずに空中でヒット! 全身を炎に包まれたガイルは起き上がれず、野村総合研究所の優勝が決定した。

BFTの十八番となっていた“ウィニング名刺交換”を、最後の最後で野村総合研究所に奪われてしまう形に。

 見事『ストII』最強企業の座に輝いた野村総合研究所には、キングストン製のヘッドセット、プリンストン製のゲーミング液晶ディスプレイなど豪華賞品が贈られた。

さらに、『ストリートファイター』シリーズの統括プロデューサーを務める小野義徳氏より、激レアアイテムの『ストリートファイター』30周年記念メダルが授与された。なお、小野氏の出演自体が予定外の飛び入りだったため、このメダルはサプライズプレゼント。

じつはガイル使いだった!? ダルシムに手も足も出なかった、昔の経験があったからこその優勝

 優勝した野村総合研究所の神原選手の模様をお届け!

――優勝おめでとうございます! いまの心境を教えてください。

神原選手 ありがとうございます! 純粋にうれしいのが半分と、安心したというのが半分です。やはり、社名を背負っているというプレッシャーは感じていましたので(笑)。それから、同じエリアに勤めているプレイヤーたちと交流できたこともうれしいです。

――これをきっかけに、関係が深まりそうですか?

神原選手 はい。名刺も交換させていただきましたので、さっそく連絡させていただきたいなと思います。

――今日の敵は明日の友、ということですね! ちなみに、ふだんはどんなお仕事をされているのでしょうか?

神原選手 システムコンサルタントをしております。おもなお客様は国や大企業で、新しい技術をどう使えばいいかの実証実験などを行っています。

――『ストリートファイター』シリーズはどれくらいプレイされていますか?

神原選手 『ストリートファイターII』は稼働した当初からプレイしていました。当時は小学校5年生でしたね(笑)。大人になってからも、『ストリートファイターIV』をけっこうやり込んでいました。

――かなりのベテランプレイヤーですね! 本戦出場者では唯一のダルシム使いでしたが、キャラクターを選択した理由はなんですか?

神原選手 じつは、最初はガイルを使おうと思っていました。ただ、今回はプレイステーション4のコントローラを使用するルールだったので、技をうまく出す自信がなかったんです。それなら、ということでダルシムを選びました。アーケードコントローラが使えるなら、ガイルを選んでいたのですが(笑)。

――なんと、まさかの全員ガイルパターンもあり得たわけですね……(笑)。そんなガイルを相手にした決勝戦でしたが、勝因は何だったと思いますか?

神原選手 いわゆる、“分からん殺し”でしょうか(笑)。僕自身、子どものころにダルシムにやられた辛さを知っているので、今回はその辛さを対戦相手に味わってもらいました(笑)。

――もともとダルシム使いだったわけではないんですか?

神原選手 今回初めて使ったんです。当時の思い出をもとに、やられて嫌だったことをやるようにしていました(笑)。

――当時の敗北があったからこその、今日の勝利だったんですね! お見事でした。改めて、優勝おめでとうございました!

作品にちなんだ表彰台も用意された。

あのころの強豪たちは真面目な社会人になっていた!? ゲームで企業に貢献する社会に

 イベント終了直後に、MCのなない氏、そしてゲストのえいた氏と歌広場さんが、本イベントの感想について語ってくれた。

――イベントを終えて、いまの率直なご感想をお聞かせください。

なない氏 じつは、『ストII』の知識があまりなくてひやひやしていました(笑)。でも、だからこそなのか、試合そのものの展開や、イベントを楽しんでくれている人たちに目がいきました。町おこしイベントのローカルな雰囲気を味わえて、僕自身すごく楽しかったです。

えいた氏 最初は皆さんわいわいと楽しんでいる雰囲気だったのですが、準決勝くらいからプライドを持ったプレイヤーの真剣な表情を見られるようになって、ひとつのイベントでふたつの側面が楽しめました。見てる人もゲームの楽しさをどちらも味わえたと思うので、いいイベントだったなと思います。プレイヤーたちの「負けるわけにはいかない!」という強い思いが見え隠れするのもゲームのおもしろいところだと思うので、見ていた人たちに刺さっていればいいなと思います。

歌広場さん 今日の選手の皆さんの顔は、家の中でゲームを遊んでいるときにしか見られない顔だったと思うんです。それが外で見られるなんて、なんだか社会の転換期を見ているような、壮大な気持ちになりました。

――スーツを着た大人たちが格闘ゲームで競い合うという、めずらしい光景が見られるイベントでしたよね(笑)。とくに印象的だったシーンや参加者の方はいらっしゃいましたか?

歌広場さん やっぱり野村総合研究所さんです! 何を研究しているのか、恥ずかしながら僕は存じていなかったのですが、今日わかりました。ダルシムを研究していたんですね(笑)。

えいた氏 じつは優勝した野村総合研究所の神原選手は、昔から全国大会などにも出場していて優勝候補になるくらいの強豪プレイヤーだったのですが、アーケードゲームの人気が衰えていってしまったころから姿を見なくなってしまったんです。ほかにもそういう選手を今日何人か見ることができて、そういう意味では注目選手は多かったです。「みんな働いてたんだ!?」みたいな(笑)。

歌広場さん 真人間になっていたんだよ(笑)。

なない氏 格闘ゲーマーはいなくなったら本当にそのままいなくなるもんだと思っていたけど、社会に溶け込めていたという。

歌広場さん それでも、格闘ゲームへの愛は消せなかったですね。

なない氏 僕は準優勝のBFTさん。決勝戦後のコメントがすごく印象的で、完全にゲーマーのコメントだったんですよね(笑)。本気でダルシム対策の反省をしていて、しかも話し終わった後に上を向いてめちゃくちゃ悔しそうな顔をしていたんですよ。

えいた氏 いい表情だったね。

なない氏 企業対抗戦というイベントではありましたけど、闘劇のような本格的な大会とまったく変わらない熱量を感じられる決勝戦でした。

――えいたさんが先ほど仰られたように、本格的な部分とゆるく楽しむ部分と、どちらも見られる大会でしたよね。ふだんは本格的な大会に関わられることの多い皆さんですが、本大会の独特な雰囲気というのは、とくにどういうところに感じましたか?

歌広場さん ふだんゲームをプレイしていない人がプレイするきっかけとなる場になっていて、とてもよかったなと思います。「1P側では技を出せるけど2P側では出せない」という出場者の方がいて、すごく印象に残っています。けっこうあるあるですよね。「わかるー!!」って、めっちゃ共感しました。将来、僕があの場にいることもあるのかな、なんてふと思っちゃいましたね。そのとき僕は技を出せるのかなって(笑)。

えいた氏 同僚の方々がすごく一生懸命応援されているのを見て、ゲームという文化が認められているということを強く実感しました。“ゲーム=遊び”というイメージが払しょくされつつあるのを感じられて、とてもうれしかったです。

なない氏 応援がすごかったですよね(笑)。メッセージの書かれたうちわを用意している人たちもいて。まさにスポーツの大会で見るような光景でした。

歌広場さん ゲームを通してみんながひとつになっている感じがして、すごくよかったよね。

――やはり一般的なゲームイベントとは参加者層が違うことで、感じられる雰囲気も独特なものがありましたよね。そして今回のイベントをきっかけに、新しくe-Sportsに興味を持たれた方も多いと思います。そうした方々に向けて、メッセージをお願いできますでしょうか?

なない氏 e-Sportsという単語について、自分とはあまり関係ないと思っている人がたくさんいらっしゃると思います。でも、少なくともこの大会に参加したり、見てくれた人たちは「e-Sportsは楽しいものなんだ」と肌で感じてくれただろうと思います。そうやって、自分も楽しめるものなんだと気づいてくれる人たちが増えてくれたらいいなと思います。

えいた氏 今回でゲームの楽しさは知ってもらえたと思います。今度は、どういうプレイヤーがいるのかを知ってもらいたいです。実際にプレイしていなくても、観戦する楽しさがあることは分かっていただけたと思うので、つぎは自分だけのお気に入りプレイヤーを見つけて、応援する楽しさを味わってほしいです。もっともっとe-Sportsの魅力に惚れ込んでほしいですね。

歌広場さん 本当に時代が変わったことを実感しています。僕が小さいころは、「ゲームなんかやって何になるの」って100万回くらい言われてきましたが、この企業対抗戦を見れば、「ゲームをやっていたら企業に貢献できるんだ」って言えますよね。企業対抗戦に限らず「ゲームをやっているといいことあるよ!」ということを、声を大にして言いたいです。

[2019年3月18日14時50分 記事修正]
本文中の一部表記を修正いたしました。