2019年2月28日にニンテンドーeショップにてダウンロード販売が開始したNintendo Switch用横スクロールシューティングゲーム『Rolling Gunner(ローリングガンナー)』。そのリリースを記念し、オリジナル版の開発メンバーと移植・販売を手掛けたメビウスのスタッフに話を伺った。

 全方向に自在に攻撃できる兵器“ローリングガン”と、リミッター解除が可能なパワーアップを駆使して全6ステージ+αに挑む同人横スクロールシューティングゲーム『Rolling Gunner』。2018年8月開催のコミックマーケット94からPC版の販売が始まり、コアなシューター(シューティングゲーム愛好家)から圧倒的な高評価を受けている。

 そのNintendo Switch版のダウンロード販売が、2019年2月28日からニンテンドーeショップにて開始された。価格は2480円[税込]。

 移植開発を担当したのはメビウス。『メゾン・ド・魔王』(petit depot)や『アガルタS』(神奈川電子技術研究所)といった数々のインディーゲームのコンシューマゲーム化を手掛け、その高い開発技術に定評があるメーカーだ。

小泉大輔氏

ディレクション/ゲームデザイン/プログラム。同人ゲームサークル“あるふぁ~秘密基地”所属のプログラマ。ウェブテクノロジで2Dアニメーション作成用ツール“OPTPiX SpriteStudio”の開発に携わった後、再びゲーム開発会社でプログラ マとして活動中。

脳しろっぷ氏

世界設定、グラフィック。数々のゲーム開発会社でグラフィックデザイナーとして活動。現在はウェブテクノロジに在籍。

小塩広和(COSIO)氏

サウンド。ゲームサウンドクリエイター。タイトーのサウンドチームZUNTATAの一員として『ダライアスバースト』シリーズ、『グルーヴコースター』シリーズなどのBGMを手掛けた後にフリーランスに転向する。

喜多村明夫氏

Nintendo Switch版のプロデュース。メビウスのゼネラルマネージャー。

こだわりの開発メンバーたちがパブリッシャーにメビウスに選択した理由

――『Rolling Gunner』のNintendo Switch版リリースおめでとうございます! PC版がリリースされた昨年8月から約半年後のリリースということで、思いのほか早かったなという印象があります。

脳しろっぷじつはメビウスさんからお話があったのは一昨年前なんです。その年のBitsummit(A 5th of BitSummit)に『Rolling Gunner』をウェブテクノロジのブースで出展していたんですけど、そこで喜多村さんに「コンシューマー移植を考えたときはぜひお声がけください!」って声をいただいていました。

――2017年5月時点というと、Nintendo Switch本体がリリースされて間もない頃ですよね。

喜多村そうですね。当時はまだNintendo Switchのタイトルが少ない時期だったのですが、すでにプラットフォームとして想定していました。これまでにメビウスは『メゾン・ド・魔王』、『dreeps』、『アガルタS』といったタイトルのコンシューマー移植を手掛けてきましたが、それらとの出会いはいずれもインディーゲームイベントの会場なんです。いままでは1000円以下の価格帯で販売してきましたが、『Rolling Gunner』に関しては初めて見たときから2000~3000円前後でいけるんじゃないかと思っていました。

――実際、その通りになりましたね。

PC版『Rolling Gunner』のパッケージ(左)と同サウンドトラックCD(左)。パッケージ版の店頭販売価格は2700円。

脳しろっぷ当初はコンシューマー展開も自分らでできればいいよねって話をしてはいたんですが、どうしてもスタッフのスケジュールの都合がつかなかったんです。

小泉じつを言うと、メビウスさん以外にも海外を含むパブリッシャー10社くらいからいろいろお話をいただいていました。

脳しろっぷそんなにありましたっけ?(笑)

小泉世界市場を見据えて海外のパブリッシャーさんに託してもいいかなと思った時もあったのですが、実際に同人ゲームのSteam版のパブリッシングを依頼した友人から、「ある時点からまったく連絡が取れなくなった」という話を聞いて、距離が遠いとそういうリスクもあるのかなと思い直しました。メビウスさんは国内で活動されているし、リリース後の展開もいろいろ考えてくださってくださっているとのことだったので、移植・販売ともにお任せすれば我々も助かるかなと。

喜多村『Rolling Gunner』はすでに、アジア側からのラブコールがめちゃくちゃ来ているんです。具体的にどうするかはこれからの交渉次第ですが、(オンラインストアを利用できない)アジア地域ではパッケージ版を販売する可能性もあります。

――なんと! 海外とはいえパッケージ版がリリースされるのは嬉しいですね。

脳しろっぷあと、メビウスさんは、ニンテンドー3DS版とPC版の『鋼鉄帝国』(1992年にホット・ビィがリリースしたメガドライブ用横スクロールシューティングゲーム)の素晴らしい移植開発をされていたことも決め手になりましたね。

喜多村『鋼鉄帝国』のプログラムは、弊社の星屋というプログラマーが手掛けているのですが、今回の『Rolling Gunner』も担当しています。

Nintendo Switch版はオリジナル完全再現+サウンドクオリティーアップ!!

――メビウスさんでの移植開発がどのように行われたかお聞かせください。

喜多村去年の9月の終わりくらいから本格的にスタートしました。当初は最低半年かかるだろうとプログラマーが読んだのですが……せっかくなので本人、呼びますね。

(メビウスのプログラマー・星屋吉希氏登場)

――よろしくお願いします。星屋さんは『Rolling Gunner』を初めて見た時に、これは手ごわそうだぞと。

星屋 「大丈夫かな……」というのが第一印象でした(笑)。

――実際に移植される際、何か内部の仕組みを大きく変える必要などはあったのでしょうか?

星屋 ガラッと変えたところは無いです。基本的にベタ移植です。

喜多村星屋さんにお願いした当初、「フレームレートが若干落ちるかもしれない」「処理落ちが結構発生するかもしれない」と言われました。グラフィックのクオリティを多少下げることも検討していたのですが、最終的には99.9999パーセントの再現度で移植してくれてびっくりしました。

星屋 それは言いすぎですよ(笑)。

Nintendo Switchの携帯モードでのプレイ。処理落ちなどのストレスは微塵も感じられなかった。Joy-conはもちろんのこと、Proコンやアーケードコントローラーでのプレイにも対応している。

――処理の高速化は“プログラムの中身をどんどん削っていく”というイメージでよいのでしょうか?

星屋 動きを変えないように、かつ軽く……ダイエットみたいなものですね。マシンスペックに余裕あるPC版がオリジナルの場合、こうした軽量化の余地は十分にあるんです。

脳しろっぷオリジナル版はグラフィックをバンバンぶち込んでしまったので、PC用の2Dゲームとしてはやたら重い仕様になっちゃいました(笑)。

――正直、我が家のPCの性能では、快適に遊べませんでした。今回のコンソール版で、やっと本来あるべき状態でプレイできるというユーザーは、私を含めて結構いるじゃないかと予想しています。

脳しろっぷ昨年の12月に、オリジナルの開発メンバー全員でテストプレイさせてもらった時点で、ゲームバランス調整を担当したshtさんが「違和感がまったくない」と太鼓判を押していました。さすが、もともとネイティブでの開発に強いメビウスさんだな感服しました。携帯モードでのプレイも全然ストレスなく遊べるってすごいですよね。

脳しろっぷ氏。『Rolling Gunner』には、自身がグラフィックを手掛けたスーパーファミコン用シューティングゲーム『バイオメタル』の世界にリンクする仕掛けも入れているとのこと。

――やはり星屋さん自身のシューティングゲームへの思い入れがあればこそ、と。

星屋 あればちょっとカッコよかったですけど、じつはあまり……(笑)。

――そこはあくまでエンジニアとしての責任感なんですね(笑)。

星屋 テストプレイしていただくまでは、サウンド再生のタイミングのズレに気づけませんでした。

小塩サウンドのID……内部番号がずれていたんですよね。

星屋 細かい部分まで行き届いているとしたら、それはひとえに、オリジナル版開発メンバーの皆さんに協力してもらえたからです。

――基本的にオリジナル版の完全移植とのことですが、「この要素はNintendo Switch版だけ」というのもあったりするのでしょうか?

脳しろっぷグラフィックに関しては誤差程度の違いがあります。ちょこっと可笑しかったところを直してとか、そのくらいですね。

――じつは新曲が入っていたり……とかは。

小塩いえいえ(笑)。ひとつ違いがあるとすれば、当初はPC版同様に圧縮をかけた音声データをそのまま使用する予定だったのですが、せっかくだからと圧縮前のデータをそのまま使ってもらいました。

――つまり、オリジナル版よりもいい音質で聴けるんですね!

小塩Nintendo Switch版でも圧縮はかかるのですが、独自仕様の圧縮だと聞いているので、PC版と同等かそれ以上の音質になっていると思います。ロムからデータ全部引っこ抜いてくるような形の移植だったりすると、サウンド面もまあまあ酷いことになりますが。

――何か実感がこもっているような(笑)。

喜多村今回は、オリジナル版の時点で小泉さんがプロジェクト全体をきっちり仕切っていて、リソースが全部ちゃんと揃った状態で移植開発をスタートできたのが大きいです。

小塩Nintendo Switch版で個人的に感動したのが、デモシーンのサウンドと映像がガッチリ合っていることですね。僕が毎月参加しているゲームイベント“VGM Ghetto”で、リリースされた直後のPC 版を(ゲーミング用途ではない)ノートPCでプレイヤブル展示した時、多少の処理落ちはしょうがないかなと思っていたら、デモシーンで音と絵が大幅にズレてしまい、「ガチでタイミング合わせて作ってるんですけど……」と残念な気持ちになったので。その後 Nintendo Switch 版を「今度は処理落ちなしで遊べます!」って同じイベントで発表したら、「処理落ちがあったほうが簡単でよかったのに」って言われちゃいましたが(笑)。

――「そっちかい!」ってなりますよね。

『Rolling Gunner』のサウンド制作時に、『アリス・ギア・アイギス』のサウンドも並行して手掛けていたと振り返る小塩氏。両タイトルのサウンド世界は、自身のシューティングゲームBGM観をストレートに打ち出せたという意味で、切り離しがたいものになっているそうだ。

小塩『Rolling Gunner』ってガチのシューティングなので、ふつうの人が遊ぶぶんには、処理落ちがあるとかえってプレイしやすいみたいです。

小泉Nintendo Switch版は、本来の3つのゲームモード(カジュアル/オリジナル/エキスパート)のほか、PC版のアップデートで追加した、本当に初心者向けの“ノービスモード”も収録しています。このモードだったら処理落ちに頼らなくてもクリアできるはずです。

喜多村シューティングがそれほど得意ではない私も、裏のラスボスまで行けました。もともと『Rolling Gunner』はクリアー優先でも楽しめるしスコア稼ぎ目的でも楽しめるよう設計されているゲームなんですけど、初心者の方でも稼ぎの楽しさを楽しめるノービスモードがあるのは、Nintendo Switch用ソフトとしてもすごくいいですね。

シューティングゲームの新たな闘いは『Rolling Gunner』から始まる

――そもそも『Rolling Gunner』のような硬派な作りのタイトルをNintendo Switchでリリースできてしまう背景には、シューティングゲームというある時期に衰退したジャンルに対する近年の再評価というか盛り上がりの流れもあるかと思います。そういった一連のムーヴメント対して皆さんはどう思われているのでしょうか?

脳しろっぷ実際は、衰退はしていないんじゃないかなと思います。ただ増えなかっただけで。「好きな人はずっと好き」という意味ではいつの時代も一定人数はいるんですよね。ただ、ファミコンなどの時代にはもとから初心者向けの難易度のゲームがあって、そこを踏んでより高難度なゲームにステップアップしていく……という流れによってファン層が拡大していったんだと思いますが、近年はそこが欠けていたんでしょうね。そのあたりのステップがインディー中心に作られているのが、昨今の盛り上がりの一因ではないかと思います。

小塩闘会議などのイベント会場に『Rolling Gunner』の試遊台を置いてもらうと毎回盛況で、小学校低学年くらいの子どもも並んで一生懸命プレイしているのを見かけました。肌感覚として、こういうスタイルのゲームが受け容れられる素地は十分にあると思いますよ。

脳しろっぷとはいえ、我々はそこはガン無視して(笑)、ひたすら好きな人に向けて作りました。

小泉『Rolling Gunner』のPC版は1000本売れました。その前に即売会イベントで出していた体験版も累計で800本くらい出ていることからも、待ってくれた人にはちゃんと手にしていただいているのかなという感触はあります。

――Steamなどでオンラインダウンロード販売を行わず、パッケージ版のみの売り上げとしては相当なものですよね。

喜多村アーケードライクに振り切ったコンセプトがいいんです。

小泉人間の集中力が持続する時間ってだいたい30分くらいなんだそうです。前職でシューティングを作っていた時から意識し ている部分で、うまい人がプレイしている画面を見た時に「これは 僕が遊んでるゲームと違う!」って感じられるようなゲームシステムや、プレイ感の密度をどれだけ高められるかというゲームデザインがあり、これがアーケードシューティング特有のものなのかなと思っています。
 いま環境的にあまりなじみがないだけで、こうしたサクッと遊べるプレイ時間にの中にやり込み幅があるアーケードゲームのデザインは、学生当時の僕らもそうでしたし若い方にも遊びやすいのではないかと思います。
 ゲームデザインとは別のアーケードゲームのこだわりでロードを感じさせないというのがあるのですが、Nintendo Switch版はその部分も見事に再現していただいて大変感謝しております。

――アーケードシューティングの思想が、そのまま『Rolling Gunner』に受け継がれていると。

小泉某人気シリーズの最終作(※2019年2月時点)のゲームデザインを担当させていただいた時の心残り……稼動から数年経ってプレイヤーが発見した、僕がまったく想定していなかったプレイスタイルのフィードバックを生かして、当時開発者としてやり残したところ・やれなかったところを存分に消化したかったという思いはありますね。

――今回リリースされたNintendo Switch版でも、そうしたこだわりの部分が忠実に再現されいるというのは、オリジナル版の開発に携わったメンバーとしても喜ばしいことですよね。それでは最後にお一方ずつ、Nintendo Switchユーザーに向けてメッセージを。

小泉メビウスさんのおかげもあって、いつでもどこでも本格的なシューティングゲームが遊べるようになりました。大人のシューターは、飲み屋にNintendo Switchを持って行って酒のつまみにしていただいたりと、単純に攻略する以外のところでもゲームを愛してください!

脳しろっぷグラフィックに関しては、解像度から何からオリジナルとほぼ変わりません。先ほど話にもありましたが、PC版では処理が重すぎて満足にできなかったという人も存分に遊べるはずです。

小塩コンシューマー版ということで、テレビのいい音響でシューティングのサウンドを堪能していただければと。効果音も、ちゃんと聴くといい迫力でていますので(笑)。

星屋 移植の精度については開発メンバーの皆さんから太鼓判をいただけたので、原作そのままの楽しみかたができるんじゃないかなと思います。ぜひ遊んでみてください。

喜多村戦闘機が主人公のゲームっていまの時代に受けるのかどうか正直わかりませんが、シューティングゲームを好きな親世代が子どもたちに語り継いでいってほしいタイトルなので、Nintendo Switchとの相性はすごくいいんじゃないかなと思っています。また、メビウスにとっては『Rolling Gunner』が、今後シューティングゲームのラインアップを充実させていく狼煙(のろし)の意味あいを持ったタイトルでもあります。

――えっ、そうなんですか!?

喜多村私自身、歳をとって“短い時間でカタルシスを得られるゲーム”のありがたみをより実感できるようになったこともあるのですが(笑)、ゲーマーにはシューティングゲームをやりたくなる時って、絶対にあるんです。もちろん、若い世代にはあまり浸透していないジャンルであることは承知しているので、メビウスの得意分野であるインディータイトルと積極的に組み合わせていくことで、そこを打破していきたいですね。

――その第1弾が『Rolling Gunner』となると、いやが上にも期待してしまいますね。

喜多村ハードルがいきなり高めですが(笑)、誰も絶対に手を出さないラインアップを攻めていきますのでご期待ください!

メビウスのプログラマー・星屋氏(左端)、インタビュー当日来られなくなり急遽ビデオチャットでの参加となった小泉氏(中央モニター)を交えて記念撮影。

■撮影/江田紘明