GMOペパボがesportsチームの支援施策を発表したのは2018年12月のこと。その施策にはとあるゲーム好きアスリートが関わっていた。本当にesportsが好きなのか気になったので話を聞きました。

アスリートとesportsのすてきな関係

 陸上長距離で活躍する下田裕太選手をご存じだろうか。

 大学駅伝の名門・青山学院大学のエースとして活躍し、箱根駅伝では大学2年から3年連続で8区区間賞を獲得。2016年には東京マラソンで2時間11分34秒(10代日本歴代最高記録)の好タイムをマークしている。

 要はすごいアスリートだ。

GMOアスリーツ提供

 そんな彼の一部界隈での愛称は“下田P”。そう、『アイドルマスター』のプロデューサー(シリーズのファン)であることを公言しているのだ。日本最速のアイマスPである。

(本記事の2ページ、3ページ目でアイマスPとして本気出してます)

 下田選手は実業団チーム・GMOアスリーツ所属。2018年12月5日、GMOインターネットグループのGMOペパボがesportsチームを支援していくと発表した。

 GMOペパボはレンタルサーバー“ロリポップ!”やネットショップ作成サービス“カラーミーショップ”など、個人向けのネットサービスを提供する会社だ。

 自社サービスを活用してesportsチームを支援していくとのことで、発表内容はファミ通.comでも記事にしている(支援チームの公募は既に終了)。

【おもな支援内容】
・サーバーやホームページ作成サービスの無償提供
・ドメインの無償提供
・オンラインショップ作成サービスの無償提供
・チームウェアなどグッズの無償提供、グッズ販売支援

 この施策の中心には、どうも下田選手がいるらしい。ある日、こんなTweetを見つけたのだ。

 アイマスだけでなく、競技性ゲームにも興味があるようだ。

 本当か? 流行っているからキャラ付け的に「esportsが好きなんですよー」なんて言い出した可能性もゼロじゃない。esports愛はどれほどのものなのだろう。

オーバーウォッチ』は大学生の頃からやってますね。あの頃はPS4で、社会人になったときにゲーミングPCを買いました。そこからはPCも多いです。「マウスでやりたい!」って思いながらゲームパッドでやってたので。マウスでやっても結局うまさはそんなに変わらなかったんですけど(笑)。あとは『コール オブ デューティ』とか『レインボーシックス シージ』も少し。

前からMMORPGなんかは好きでしたけど、対戦ゲームはあまりやってなかったかな。あ、そうだ、『ファンタジーアース ゼロ』。50対50のやつ。あれはけっこうやりましたね。いまはFPSを少しとカードゲームをやってます。『ハースストーン』とか。

フォートナイト』はいいですよね。認知度は高いですし、プレイ自体も簡単だし、プラットフォームもたくさんあるし。(プレイするまでの)ハードルが低いから。

PUBG』もおもしろいんですよねー。最初は、がつーんと『フォートナイト』に抜かれたかなと思ったんですけど、プロリーグの流れがすごくいい。(ゲーム性が違うから)『フォートナイト』で同じことができるかと言われたら難しいでしょうし。

この前の『PUBG』アジア大会、ずーっと(配信を)見てました! 『PUBG』はリリースのタイミングからずっと注目していたので、けっこう楽しんでますね。

本気じゃねえか。どうも、ファミ通.comのミス・ユースケです。下田選手のファンです。

 想像以上だった。

 となると、GMOペパボのesportsチーム支援施策にも興味がわくというもの。中心人物の岡野佳世氏と下田裕太選手にインタビューを実施した。

岡野佳世(おかのかよ)

GMOペパボ所属。今回のesportsチーム支援施策のメイン担当者。

下田裕太(しもだゆうた)

GMOアスリーツに所属する長距離ランナー。現在、GMOペパボで勤務している。

かつてのモータースポーツと似たesportsの状況

僕は下田選手のTweetでこの施策を知ったんですけど、どういう流れで始まったんでしょうか?

社長が社内の懇親会で「つぎはesportsだな」と言い出したんですよ。もともとゲーマーで、大作ゲームが出るとしばらく外に出なくなるタイプ。引きこもって出社しなくなったら困るんですけど、いまのところは大丈夫です。

それが去年(2018年)の8月くらいでしたよね。

そうそう。お酒も入ってるから本気かどうかは後で見極めようと思って、そのときは話半分で聞いてました。

会社あるあるですね。

つぎの日に、社長自身がタスク管理ツールに“esports大会について調べる”というIssueを立ち上げたんですよ。本人もけっこう調べてるので、本気ぶりを察知して、下田にヘルプを……。

8月頃は大きな大会と海外合宿があって、会社の仕事にあまり関われなかったんです。出社できるようになったタイミングでそういう話があって。
僕は人より詳しいほうだと思うので、サポートしたほうがいいだろうな、と。

企画の基礎は私のほうで作ったんですけど、当時、私は(esportsのことを)聞きかじった程度しか知らなかったんです。リサーチしようにも、タイトルが多すぎてなかなか頭に入ってこない。

“esports”ってひと言で括られがちですけど、実際はいろんなタイトルの総称ですもんね。

ノウハウはなかったし、ゲーマーやチームとのつながりもない。ボンッとお金を出す手もあったんでしょうけど、それに対するリターンも読めない。
GMOペパボはネットインフラ事業をやっているので、僕たちができること・やれることを考えて最善策を練りました。得意分野で支援を始めて、つながりを作ったところでチームをスポンサードしたりできればいいよね、と。

いろいろ調べましたね。チームをリストアップして、公式サイトはあるかとか、どこのドメインを使っているか、とか。

バーッと調べたところで、社長に提案することになったんですね。パワポで資料を作ってプレゼンしました。それが11月くらい。

8月にスタートして、11月に社内プレゼンして、12月5日にプレスリリース。けっこうなスピード感。

その流れで、1月14日には“思考行結”さんを支援させていただくことになりました。ご応募いただいて、審査をして、話し合って。今回の施策の第1号ですね。
支援するなら(チームが)大きいほうがいいみたいな考えはあまりないんです。それよりもスピード。esportsの早い流れについていかないと

思考行結さんは地方(岡山県)に向けている印象を受けました。絶対、地方とesportsはつながっていくと思うんですよ。地元でオフラインイベントを開催したり、都市圏じゃなくてもしっかり活動できるチームは強いなと思います。
スポーツには地域性が出ます。プロ野球もサッカーJリーグもそう。スポーツと地方は親和性が高いんです。地域に向けた活動をしているところは、個人的にも注目しています。

地方は個性的な動きがあっておもしろいですね。僕がいま注目しているのは九州勢です。福岡県にはSengoku Gamingがありますし、最近は大分県も動きが活発。別府市あたりに根付いた活動がおもしろそうで。

自治体が関わっているんですね。九州は熱いなあ。

あと僕が知っているところだと岡山県とか。

思考行結さんも岡山県ですね。maraさん(※)も。maraさんは『Dota 2』というのが渋くていいですよね。日本語化されてないゲームだけど、好きだから自分が動く。熱意がすごいですよ。

※maraさん:岡山県在住の『Dota2』プレイヤー 小笠原修氏。家業は牡蠣漁師。牡蠣を賞品にした大会“Dotaまらカップ”を自分で開催するなどして話題に。

esportsのチームだけじゃなくて、そういう活動をされている方も支援したいんです。ストリーマーも。広がりに期待したくて。

広がりってどういうことですか?

競技の高みを目指すプロ(チーム)と、ストリーマーとしての地位を確立したい人を、同じようなくくりで見ている企業はあると思います。ベクトルは全然違うのに。そこをいっしょくたにすると、どこを支援していいか迷うと思うんですね。

競技のほうだと、代表はLJL(※)に参加しているようなチームかな。資本金や売り上げがいくら以上のチームが参加できるみたいな基準があって、たしかユニフォームにつけられるスポンサーロゴの数に制限があるんでしたっけ。

※LJL:『リーグ・オブ・レジェンド』日本プロリーグ“League of Legends Japan League”の略。

そうですね。ある程度の予算がないとスポンサーになるのが難しいと感じるのかも。

たくさんお金を積まないと支援できないような印象があると、(新規参入の)ハードルが上がると思うんです。でも、実際はやりようもあるわけで。
esportsはリアルのスポーツよりも広くアピールできると思うんですよ。プロ選手だけじゃなくて、その周辺の人たちも支援できるので。Youtuberの流れもありますし、ストリーマーなら企業側にも多少は理解されやすいんじゃないかなと。

なるほど。GMOペパボさんが動くと、ほかの企業も支援しやすくなるイメージですかね。

2年、3年と支援を続けていくには、いまは大きな予算を出すような施策よりも、盛り上がりをいろいろな人といっしょに体感することが大切かなと思います。
個人からの応募も受け付けられるように準備中で、チーム単位の募集が落ち着いたら告知したいですね。
支援は、いまのところはインフラの提供が中心ですけど、それだけだとesportsの発展に寄与しにくい。継続的にお付き合いしていく中で模索していくつもりです。
流行ってるからといって、参入して1年で撤退みたいなことは絶対やりたくないんです。

うおおお、そういうことを言ってもらえるのは超うれしい。いきなりハシゴを外されるのは怖いんですよ。ふつうにありえる話ですから。

プレイヤーを使い捨てにするようなやりかたはいただけないですよ。私、前職でモータースポーツのチーム運営に関わっていたんですけど。

何そのおもしろそうな話。

(選手を取り巻く状況が)ほとんど同じなんですよ。「体を動かしてないからスポーツじゃない」って言われる問題もありますよね。完全にデジャヴです。
F1が流行ったときにほかのモータースポーツ人気も引き上げられたんですけど、「手を動かしてるだけでスポーツを名乗るな」みたいな空気もありました。
チーム運営のたいへんさはよくわかっています。esportsは素人ですけど、スポーツチーム運営はかなりやってましたから。
チームがスポンサード収入だけでやっていくのはすごく厳しいんです。だから、まずは別軸で直接的な収益を上げられる体制をチームに早く作ってあげたい。たとえば、オフィシャルグッズの販売ができるECサイトを構築できれば、ファンの方もダイレクトにチームを支援できますよね。

似た境遇を見てきた人が言うと重みがある。選手もチームも雰囲気がよくて、プレイもがんばってるのに、商売がうまくないチームもありますから。

「そっちじゃない、そっちじゃないよ!」と言ってあげたいチームもあるんですよね。
父ノ背中さん(※)あたりはファンを虜にするやりかたがすごく上手だなと思っていて。ファンサービスをきちんと考えているチームは長く続くでしょうし、貴重ですよね。
試合の成績に目がいきがちですけど、成績を上げてスポンサー取るぞみたいな方向だけを向いていると、どうしても苦しくなっちゃうと思います。その辺をサポートできるとうれしいですね。

※父ノ背中:『レインボーシックス シージ』などで活動するプロゲーミングストリーマー集団。