ゲーミングPCなどを扱う“ドスパラ”を展開するサードウェーブは、毎日新聞社と共同で、第1回全国高校eスポーツ選手権を開催する。その開催にいたるまでの経緯や苦労、“eスポーツ部発足支援プログラム”の実施、そして今後の展望について、サードウェーブ副社長の榎本一郎氏に話をうかがった。

 “esportsの甲子園”とも言えるこの大会。いい時代が来たものだ。いや~、僕が高校生のころ(何十年前だ?)に実施してほしかったなぁ!

■全国高校eスポーツ選手権とは
 “eスポーツを楽しむ高校生を応援し、新しい文化として発展させていくこと”を目的とした大会。第1回の競技タイトルは『リーグ・オブ・レジェンド』と『ロケットリーグ』。

ゲーミングPCショップ“ドスパラ”で知られるサードウェーブが“全国高校eスポーツ選手権”に懸ける想い――それは、文化の創造_03

ゲーミングPCショップ“ドスパラ”で知られるサードウェーブが“全国高校eスポーツ選手権”に懸ける想い――それは、文化の創造

ゲーミングPCショップ“ドスパラ”で知られるサードウェーブが“全国高校eスポーツ選手権”に懸ける想い――それは、文化の創造_01
サードウェーブ 取締役副社長
榎本一郎氏

espotrsを楽しむ高校生を応援。新たな文化の定着と発展を目指す

 全国高校eスポーツ選手権の開催にいたった経緯は、今年4月にオープンしたesports施設“LFS(ルフス)池袋 esports Arena”の発表会まで遡る。そこで榎本氏は、ユーザーを中心とし、プロチームやメーカー、メディアなどがレイヤー構造となったesportsの“エコシステム”の構築を提唱。「ユーザーの選択肢の幅を広げ、あらゆる人の可能性を拡大したい」と、サードウェーブがesportsの取り組みにいっそう注力していく姿勢を示した。

 この発表会を受けて、毎日新聞社が榎本氏にプロジェクトを提案した。そのアプローチが、全国高校eスポーツ選手権の発足のきっかけとなったのだという。

 榎本氏は、ここ数年の国内におけるesportsの動向について、「ブームの波はくり返し来ているが、依然として定着していない。esportsが文化のひとつとなれば、自然と定着するはずだ」と語る。先に述べた“エコシステム”の発展こそが、esportsを文化たらしめる基盤となるものだろう。

 文化の創造という意味では、古くからさまざまな芸術や文化の普及と発展を支えてきた毎日新聞社とタッグを組めたことは、とてもいいタイミングだったと言い、急ピッチで選手権開催の準備が進められた。

 大会実施の発表後の反響も多数。中には、中学生の子どもを持つお母さんから、「子どもがゲーム好きなので、そういった大会が続くなら、esports部がある学校に願書を出したい」と相談されたという声も寄せられたとか。

先生たちの熱意に感動。学校への支援プログラムを実施

 開催は決定したものの、そこからも大きな苦労があった。しかも、開催者側ではなく、学校側の苦労のほうが大きかったという。esportsを部活動として行っている学校はほとんどなく、部を発足するにしても、ゲームに対する学校や親の認知なども問題になった。それでも、新しい可能性を提供するのが学校の本分だと、先生たちが非常にがんばってくれたとのこと。

 また、学校側には機材(ゲーミングPC)の準備の問題もあり、そこでサードウェーブは、“eスポーツ部発足支援プログラム”を開始。これは、先着100校に5台のゲーミングPCを、3年間無償で貸し出すというもの。サードウェーブの負担は相当なものだったと思われるが、これについて榎本氏は、「商売よりも文化を作ることが先」との理念に基づき、自ら企画に加わりゴーサインを出したと答えた。

 加えて言えば、(今回は100%ではないが)各校の機材を同一に揃えられることで、競技(オフライン予選)の公平性が担保されるという意味でも、本プログラムには大きな意義があろう。

 そして、競技タイトルのひとつである『リーグ・オブ・レジェンド』の参加レギュレーションには、各選手が20人のチャンピオン(キャラクター)を有するというものがあるが、オンライン予選が迫る中で、学生に条件を課してしまうことも、榎本氏は気にかけていた。

 今後は部として活動していく中で、先輩から後輩へ「こういう準備が必要だ」、「去年はこうだった」と受け継いでもらうことで、そういった課題は解決でき、その受け継ぎが文化の礎になると信じている。

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高校生にesportsのグローバルな世界観を感じてほしいという思いから、世界的なesportsタイトルとなっている『リーグ・オブ・レジェンド』が競技タイトルとして選定された。

文化の芽はやがて大樹に。サードウェーブが目指すもの

 全国高校eスポーツ選手権を立ち上げ、ひとまず“文化の芽”を蒔くことができたと榎本氏は述べ、サードウェーブは今後さまざまな環境(エコシステム)を整え、文化のブラッシュアップを図りたいと語る。榎本氏個人は、全国高校eスポーツ選手権の年2回開催を目指し、決勝戦(オフライン大会)は毎回別の地方都市で順次実施するようなことも夢に描いている。

 全国高等学校野球選手権大会は、2018年で第100回を迎えた。esportsが文化となれば、全国高校eスポーツ選手権も同じくらい続けていけるだろうと、榎本氏は将来の展望を抱く。

■第1回 全国高校eスポーツ選手権 概要
ALL JAPAN HIGH SCHOOL esports CHAMPIONSHIP

■主催:毎日新聞社
■共催:株式会社サードウェーブ
■開催日時:
  エントリー受付:終了
  オンライン予選:2018年12月23日~26日(終了)
   ※試合はインターネット上のみで開催
  オフライン決勝:2019年3月23日~24日
   ※会場は幕張メッセ1ホール
■競技タイトル:『リーグ・オブ・レジェンド』(PC)、『ロケットリーグ』(PC)
■配信チャンネル:Twitch https://www.twitch.tv/ajhs_esports
■Twitter大会公式アカウント:@MAINICHIesports