テキサス州サンアントニオで開催中のゲームイベント“PAX South”でホラーゲーム『Layers of Fear 2』のパネルディスカッションが行われ、本作の新たな映像などが公開された。

 『Layers of Fear 2』は、ポーランドのゲームスタジオBloober Teamによる一人称視点ホラーゲーム『Layers of Fear』の続編。対応プラットフォーム等は未定で、2019年にGun Mediaによりパブリッシング予定となっている。

画家が自身の創作の狂気の世界へと巻き込まれる前作『Layers of Fear』

 『Layers of Fear』は日本語ローカライズされて国内配信もされたのでご存知の人もいるかと思うが、改めて振り返っておこう。同作の主人公は自身の最高傑作を追い求めるあまりに芸術の狂気に飲み込まれてしまった画家で、自分以外に誰もいなくなった洋館を歩き回るうちに狂気の世界をさまよう羽目になるという、探索ベースのホラーゲームだった。

 特に優れていたのが、一人称視点のゲーム体験をうまく利用したトリッキーなシーン演出だ。振り返ると通路や扉が消えているとか、一瞬“何か”が見えるとか、あるいは部屋の構造的にありえない場所に出るといったような、心理的ホラー体験を生み出していた。

日常的に他人を演じる俳優の業が新たなホラー世界への扉を開く

 さて『Layers of Fear 2』に話を戻そう。本作は“Project Méliès”として昨年末に発表され、今回が本格始動といった形になる。

 仮題になっていた“Méliès”とは、多重露光によるトリック演出などで映画史にその名を残すジョルジュ・メリエス監督のこと。というわけで作品のテーマは“映画”へとシフトし、主人公はハリウッドの黄金時代を謳歌した映画スターの俳優へ。舞台も彼が主役として招かれた新作映画の大西洋上での船上ロケ現場へと移る。

 パブリッシャーにより公開されているドキュメンタリー動画ではこの設定について、(前作の恐怖の世界の土台となっていた画家の創作の狂気のように)俳優が“違う人間を演じる日常”の中で自分を見失う危険性が、ホラーな世界を探索する中で自身の隠された真のアイデンティティへと対峙するという『Layers of Fear』の手法にマッチしているからだと語られている。

 ジョルジュ・メリエスがそうしたように、映画という表現はその創成期からスクリーン上に現実ではありえない光景を出現させ、新たなストーリーテリングを生み出してきた。視覚的マジックによって心理的ホラー体験を生み出す本シリーズの長所と、映画というテーマの組み合わせはある意味必然のように感じる。

 パネルディスカッションの様子はTwitchで録画が公開されており、そこでは影響された映画作品としてロマン・ポランスキー監督の『反撥』(1965年作のサイコホラー)、ラース・フォン・トリアー監督の『ドッグヴィル』(実験的なストーリーテリングで知られる2003年の作品)、F・W・ムルナウ監督の『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922年作のホラー映画)などの作品や、その他さまざまなホラー映画やフィルム・ノワールからの影響について言及されている。