ゲームミュージックの楽譜業界で、大手出版社と肩を並べて活躍している、楽譜出版ケイ・エム・ピーの住谷知宏氏に話をうかがった。

 ゲームに夢中になればなるほど、耳から離れなくなるゲームミュージック。イベントで盛り上がるシーンや感動的なシーンなどでのそれは、とくに記憶に残ります。ゲームミュージックが好きになると、サウンドトラックを購入して日常生活の中で聴いてみたり、さらには自分の手でゲームミュージックを演奏してみたくなるもの。そんな後者に需要があるのが、楽譜でしょう。昨今の動画配信ブームの影響で、“○○の曲を弾いてみた”といった使われかたもしている様子。そこで、ゲームミュージックの楽譜業界に注目してみました。大手出版社と肩を並べて活躍している、楽譜出版ケイ・エム・ピーの住谷知宏氏に話をうかがいました。

住谷知宏(すみたにちひろ)

楽譜出版ケイ・エム・ピー 編集部 編集長

意外に奥の深い楽譜の世界 こだわりの楽譜の作りかた

――ゲーム音楽の楽譜といえば、大手から小さな出版社まで数十社ありますが、大手に負けじと御社は活躍しています。楽譜出版ケイ・エム・ピーとは、どのような会社なのでしょうか?

住谷クラシックから邦楽、洋楽までオールジャンルの楽譜を手掛けていますが、J-POPやアーティストもの、ゲームミュージック、アニメなど、比較的やわらかいジャンルが多いですね。

――最近では、『NieR(ニーア)』や『ドラゴンクエスト』関連の楽譜が人気のようです。

住谷はい。『NieR(ニーア)』関連では、ピアノとギターの楽譜集が出ていまして、おかげさまでたいへん好評をいただいております。

――『NieR(ニーア)』は名曲が多いですよね。

住谷はい。岡部啓一さんを始め、MONACAさんの作曲陣の楽曲は、旋律がきれいで、泣かせるメロディーが多いんですよ。ゲームのいい場面でよく流れるので、ピアノやギターで弾いてみたいと思う方も多いのではないでしょうか。

――御社から出版される楽譜は、ユーザーから高い評価を得ているものが多いですが、その秘訣について、お話しいただけますでしょうか?

住谷最初に手掛けたのが、『ファイナルファンタジー』のピアノ楽譜です。やさしいアレンジのほうが裾野が広いぶん、売上がいいのが楽譜業界の通例ですが、弊社ではあえて中級以上のレベルのものを出しました。弾き応えがあるわりに、原曲に近い感じを目指して作ったところ好評で。改訂を重ねております。

――それを機にゲーム分野を広げていこうと?

住谷はい。『ファイナルファンタジー』のつぎは、やっぱり『ドラゴンクエスト』かなと思い、ご縁で、すぎやまこういち先生のご監修で出版させていただいております。

――『ドラゴンクエスト』の楽譜は、どういったところにこだわりを持って出版していますか?

住谷こちらも、当初から中級レベル以上の難易度を念頭に企画しました。また、先ほどのご質問の秘訣と言っていいのかはわかりませんが、弊社では編曲者さんから楽譜が上がってきた後に、必ずひと手間加えています。ゲームミュージックは、ゲームのプレイ中、くり返し何時間も聞くものですよね。原曲を単にピアノアレンジして譜面に落とし込んだだけでは、少し物足りなく感じることがあるんです。自分で弾いたときに、ゲームをプレイしていたときの記憶となるべく近い雰囲気が体感できるように心掛けています。もちろん原曲に近いほうがいいのですが、ひとりで演奏する楽譜には、どうしても再現に限度があります。そうした中でも、きれいに聞こえて、かつ原曲に近く、実際に弾いてみて自分がゲームと同じ音楽を再現しているという、ワクワクするような気持ちが得られるようにできればと。

――そこが御社と他社さんとの違いであると?

住谷弊社では小回りが利くぶん、なるべく社内で制作する手作り感を出すというか、そこがこだわっているところで、強く意識しています。弊社には、音大出身やバンドを組んでいたなど、音楽に何かしら関わってきたスタッフが揃っているので、できる限り自分で演奏して譜面の間違いをチェックしますし、ちょっとイメージが違うと感じたところは、編曲者に確認しながらブラッシュアップしていきます。

――同じ曲だとしても、アレンジャーによって、内容が微妙に変わってきたりするんですね。

住谷そうですね。楽曲はもちろん、編曲者のセンスや、難易度によっても左右されます。ゲームミュージック、とくに『ファイナルファンタジー』の場合ですと、音数は多めにして、壮大さやカッコよさを重視します。かといって、詰め込みすぎると難度が高くなってしまったり、音が濁ってしまう部分もあるので、和声的な響きを大事にしながら調整していきます。編曲は、音数を多めにするのは比較的ラクなのですが、音を抜くのは意外と難しいんですよ(笑)。

――音を厳選しつつ、壮大になるようにすると。

住谷あとは迫力のあるアレンジを目指したり。『ドラゴンクエスト』の場合は、すぎやま先生のオーケストラアレンジの譜面がとてもすばらしいので、先生の持ち味を活かしながらアレンジさせていただいております。おかげさまでファンの方から、温かいお声をいただいております。

――なるほど。そういった手作り感やこだわりによって、御社がユーザーから高い評価を得ているということがわかりました。これからも、愛のある楽譜を作り続けてください。

住谷ありがとうございます。“愛のある”ってフレーズ、いいですね(笑)。

(画像上段左) ピアノ曲集『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて オフィシャル・スコア・ブック』(監修:すぎやまこういち)

(画像下段左) やさしく弾けるピアノ曲集『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて オフィシャル・スコア・ブック』(監修:すぎやまこういち)

(画像下段右) ピアノ曲集『ドラゴンクエスト オフィシャル・ベスト・アルバム』(監修:すぎやまこういち)

(画像上段中央) ピアノ曲集『ニーア オートマタ オフィシャル・スコア・ブック』(監修:岡部啓一・MONACA)

(画像上段右) ギター・ソロ『ニーア オートマタ オフィシャル・ギターソロ・セレクション』(監修:岡部啓一・MONACA、ギター・アレンジ:宇高靖人)